第10話 新しい発見と感謝
吹雪が収まり、真っ白な世界が広がっている翌朝。
窓から差し込む柔らかな光が、静かな朝の訪れを知らせていた。
「おはようございます。昨日はお風呂や毛布に、何から何までありがとうございます。」
結は、キッチンで朝食を作っているフミに頭を下げた。
「いいのよ。久しぶりに若い子が家に来て、まるで孫がいる時みたいだったからね。」
「フミさん。お孫さんいらっしゃるんですね。」
フミは卵焼きを返しながら、どこか嬉しそうに頷いた。
「えぇ。結ちゃんよりちょっと年上の子だよ。」
「ほぇ〜...」
するとフミはキッチンから出てきて、一冊のアルバムを取り出した。
「ほら。これが私の孫だよ。」
結がアルバムを覗き込む。
次の瞬間、思わず目を見開いた。
「あれ...七海さん?...」
フミは少し驚いたように結の顔を見る。
「おや、知り合いかい?」
「はい。私が水戸でお世話になった上司です。」
「そうかい、世の中って狭いもんだねぇ。」
フミは目を細めて微笑んだ。
アルバムの中の七海は、今より少し幼く見えるが、落ち着いた雰囲気は変わらない。写真の中で祖母の肩に寄り添って笑っている姿から、人柄の良さが伝わってきた。
「七海さん、昔から優しい人だったんですね。」
「小さい頃から、困ってる人を放っておけない子でね。危なっかしいくらいだったよ。」
結は小さく笑った。
(確かに、今もそんなところあるな…)
やがて食卓に、湯気の立つ味噌汁と焼き魚、卵焼きが並ぶ。
「さあ、冷めないうちにお食べ。」
「いただきます。」
温かい朝食が、冷え切っていた体にじんわり染みていく。
食事をしながら結はふと尋ねた。
「七海さんは、最近こちらには?」
「仕事が忙しいみたいで、なかなか帰って来られないんだよ。でも、たまに連絡はくれるから安心だよ。」
「そうなんですね…」
結は少しだけ懐かしい気持ちになった。
食後、外を見ると空は澄み渡り、昨夜の吹雪が嘘のようだった。
「今日はもう出発するのかい?」
フミの問いに、結はゆっくり頷く。
「はい。本当は苫小牧に向かう途中だったので。でも、その前に箒を探さないと…」
「あら、それなら今朝、家の裏手の畑の方に見慣れない棒が刺さってるのを見たよ。」
「ほ、本当ですか!?」
急いで外へ出ると、雪の中に半分埋もれた箒が見えた。
「よかった…」
ほっと息を吐く結。
家の前に戻ると、フミが小さな包みを差し出した。
「道中で食べなさい。おにぎりだよ。」
「えっ、そんな…」
「遠慮しないの。」
結は包みを大事に受け取り、深く頭を下げた。
「本当にありがとうございました。フミさんがいなかったら、どうなっていたか…」
「気をつけて行くんだよ。うちの孫にも、元気にしてるって伝えておくれ。」
「はい!」
箒に跨り、空へ舞い上がる。
白銀の大地の中で、フミが小さく手を振っているのが見えた。
結も手を振り返す。
(また、必ず会いに来よう。)
澄み切った冬空の下、結は次の目的地へと飛び立っていった。
次回に続く....




