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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第八章 北海道巡遊(後編)
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第10話 新しい発見と感謝

吹雪が収まり、真っ白な世界が広がっている翌朝。


窓から差し込む柔らかな光が、静かな朝の訪れを知らせていた。


「おはようございます。昨日はお風呂や毛布に、何から何までありがとうございます。」


結は、キッチンで朝食を作っているフミに頭を下げた。


「いいのよ。久しぶりに若い子が家に来て、まるで孫がいる時みたいだったからね。」


「フミさん。お孫さんいらっしゃるんですね。」


フミは卵焼きを返しながら、どこか嬉しそうに頷いた。


「えぇ。結ちゃんよりちょっと年上の子だよ。」


「ほぇ〜...」


するとフミはキッチンから出てきて、一冊のアルバムを取り出した。


「ほら。これが私の孫だよ。」


結がアルバムを覗き込む。


次の瞬間、思わず目を見開いた。


「あれ...七海さん?...」


フミは少し驚いたように結の顔を見る。


「おや、知り合いかい?」


「はい。私が水戸でお世話になった上司です。」


「そうかい、世の中って狭いもんだねぇ。」


フミは目を細めて微笑んだ。


アルバムの中の七海は、今より少し幼く見えるが、落ち着いた雰囲気は変わらない。写真の中で祖母の肩に寄り添って笑っている姿から、人柄の良さが伝わってきた。


「七海さん、昔から優しい人だったんですね。」


「小さい頃から、困ってる人を放っておけない子でね。危なっかしいくらいだったよ。」


結は小さく笑った。


(確かに、今もそんなところあるな…)


やがて食卓に、湯気の立つ味噌汁と焼き魚、卵焼きが並ぶ。


「さあ、冷めないうちにお食べ。」


「いただきます。」


温かい朝食が、冷え切っていた体にじんわり染みていく。


食事をしながら結はふと尋ねた。


「七海さんは、最近こちらには?」


「仕事が忙しいみたいで、なかなか帰って来られないんだよ。でも、たまに連絡はくれるから安心だよ。」


「そうなんですね…」


結は少しだけ懐かしい気持ちになった。


食後、外を見ると空は澄み渡り、昨夜の吹雪が嘘のようだった。


「今日はもう出発するのかい?」


フミの問いに、結はゆっくり頷く。


「はい。本当は苫小牧に向かう途中だったので。でも、その前に箒を探さないと…」


「あら、それなら今朝、家の裏手の畑の方に見慣れない棒が刺さってるのを見たよ。」


「ほ、本当ですか!?」


急いで外へ出ると、雪の中に半分埋もれた箒が見えた。


「よかった…」


ほっと息を吐く結。


家の前に戻ると、フミが小さな包みを差し出した。


「道中で食べなさい。おにぎりだよ。」


「えっ、そんな…」


「遠慮しないの。」


結は包みを大事に受け取り、深く頭を下げた。


「本当にありがとうございました。フミさんがいなかったら、どうなっていたか…」


「気をつけて行くんだよ。うちの孫にも、元気にしてるって伝えておくれ。」


「はい!」


箒に跨り、空へ舞い上がる。


白銀の大地の中で、フミが小さく手を振っているのが見えた。


結も手を振り返す。


(また、必ず会いに来よう。)


澄み切った冬空の下、結は次の目的地へと飛び立っていった。


次回に続く....

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