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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第八章 北海道巡遊(後編)
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第9話 希望の光へ

猛吹雪の北海道の夕方。


「ま、前が見えない...それに風も強いな...」


結は冷たい雪に打たれながら、必死に箒のバランスを保っていた。


「早くどこかに降りないと...とは言っても...田んぼと山しかない...」


その時、とても強い突風が結を襲った。


「くっ...あっ——!」


耐えきれず、結は箒から放り出されてしまった。


急速に地面が近づいてくる。


「えーっと...何か役に立つ魔法あったっけ...そうだ、あれを使おう。」


結は両手を空へ向け、風を操る魔法を発動させた。落下の勢いがわずかに弱まり、雪の上へと転がるように着地する。


「いったたた...でも、助かった...」


立ち上がると、吹雪の向こうに箒の姿はもう見えなかった。


「箒もどこかに行ったから、探さないと駄目だな...」


それからしばらく歩き、ようやく見つけた岩陰に身を潜める。


「さ、寒い...そうだ...」


右人差し指に小さな炎を灯す。


「ん~...無いよりまし...」


凍える指先をかざしながら、必死に体温を保った。


やがて遠くに灯りが見える。


「た、助かった...!」


しかし近づいてみると、それはただの街灯だった。


「なんだ...街灯か...」


一瞬、胸に広がった希望がしぼむ。もう助からないのではないか——そんな考えが頭をよぎった。


だが、ふと思いつく。


「あれ、この道を辿っていけば、街に出られない?...」


再び小さな希望が灯る。


「よし、行こう。」


真っ白な雪道を、一歩ずつ踏みしめながら進んだ。


数分後、周囲が少し開けてくる。それでも家の気配はない。


「暗くなってきたな...もっと冷えそう...」


さらに十分ほど歩いた頃、ようやく建物が見えてきた。


「あれは、民家かな?...もう、人がいるなら何でもいい...」


力を振り絞り、その家へ向かう。


扉が開き、中から老婆が顔を出した。


「あらあら、どうしてこんな所に若い子が?」


結は息を切らしながら答える。


「はぁ...はぁ...私...魔法管理庁の...神代結と...申します...」


「魔法管理庁さんがどうしてこんな所に?」


「実は...強風で箒から落ちてしまって...山の中からここまで歩いてきました...」


老婆は目を細め、優しく頷いた。


「そうかい、それは大変だったね。体が冷えているだろうし、中にお入り。」


「え、いいんですか?」


「ええ、いいよ。」


結は深く頭を下げた。


「ありがとうございます。」


暖かい家の中に入った瞬間、張り詰めていた緊張がほどける。


ストーブの前に座ると、指先の感覚がゆっくり戻ってきた。


それからしばらくして——。


「結ちゃん。お風呂入る?」


フミと名乗ったその老婆が声をかける。


「いいんですか?」


「いいよいいよ。ストーブだけじゃ、暖まらないでしょ。」


「すみません。ありがとうございます。」


湯船に浸かった瞬間、結の肩から力が抜けた。


「はぁ〜...生き返る...」


風呂場の窓の外では、雪が静かに降り続いている。


「北海道...良いところだね...」


小さく呟いた。


厳しい自然の中にも、確かな温もりがある。


風呂から上がると、フミが用意してくれた部屋着に着替え、居間へ戻る。湯気の立つスープを両手で包むと、体だけでなく心まで温まっていくのを感じた。


「今日は泊まっていきなさい。こんな吹雪の中、外に出るもんじゃないよ。」


窓の外で唸る風を見て、結は素直に頷く。


「……はい。お言葉に甘えます。」


毛布にくるまり横になると、すぐにまぶたが重くなった。


吹雪の夜。


小さな民家の灯りだけが、雪の中で静かに輝いていた。


次回に続く....

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