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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第八章 北海道巡遊(後編)
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第7話 限界で....

真っ白な空の下に、二人の女性が立っていた。


「いてて...立てないことはないけど...傷口がすごく痛い...あの日本刀、切れ味凄いな...」


足を引きずりながら、結は苦笑いを浮かべた。


「本当に大丈夫ですか?……先輩…」


玲奈は不安そうに結の顔を覗き込む。


「う、うん。なんとか。」


心配をかけまいと結は軽く答えたが、内心では立っているのも辛いほどの痛みに耐えていた。


(本当は、立ちたくないくらい痛い…)


「それにしても、玲奈。まさか情報部だったとは…保安学校に行くっていうのは嘘だったの?」


怪我の話題を避けるように、結は問いかける。


「保安学校に異動っていうのは本当ですよ。」


「そうなんだ…」


結はすぐに納得した。


すると玲奈は、人差し指をそっと口元に当てた。


「先輩、このことは秘密で。」


「大丈夫だよ。誰にも言わないよ。」


迷いのない返事だった。


その時、結はふらりと手を顔に当てた。


(うぅ…頭痛が…あれ…目の前が何も…)


次の瞬間、力が抜けるように倒れ込み、雪の上に音もなく崩れ落ちた。


「え、ちょっと…先輩!?だ、大丈夫ですか?…」


突然の出来事に玲奈は慌てて駆け寄る。


「えーっと…呼吸はある…心臓も動いてる。……よかった、気を失っているだけか…」


胸をなで下ろしながらも、玲奈の表情にはまだ緊張が残っていた。


「……おぶって行くか。」


小さく呟くと、玲奈は慎重に結の体を背中へ乗せる。触れた体は驚くほど冷えていて、その軽さに思わず眉をひそめた。


「先輩……無茶しすぎですよ。」


返事はない。ただ、かすかな寝息だけが耳に届く。


玲奈は足元に気をつけながら、一歩ずつ雪道を進んでいった。


辺りは静まり返り、聞こえるのは雪を踏みしめる音と、風の低い唸りだけ。


白一色の世界の中、二人の足跡だけがまっすぐに続いていく。


「早く、暖かいところへ連れて行きますから。」


玲奈は背中の重みを確かめるように背負い直した。


降り続く雪は、まるで二人を外界から切り離すように、静かに包み込んでいた。


次回に続く....

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