第7話 限界で....
真っ白な空の下に、二人の女性が立っていた。
「いてて...立てないことはないけど...傷口がすごく痛い...あの日本刀、切れ味凄いな...」
足を引きずりながら、結は苦笑いを浮かべた。
「本当に大丈夫ですか?……先輩…」
玲奈は不安そうに結の顔を覗き込む。
「う、うん。なんとか。」
心配をかけまいと結は軽く答えたが、内心では立っているのも辛いほどの痛みに耐えていた。
(本当は、立ちたくないくらい痛い…)
「それにしても、玲奈。まさか情報部だったとは…保安学校に行くっていうのは嘘だったの?」
怪我の話題を避けるように、結は問いかける。
「保安学校に異動っていうのは本当ですよ。」
「そうなんだ…」
結はすぐに納得した。
すると玲奈は、人差し指をそっと口元に当てた。
「先輩、このことは秘密で。」
「大丈夫だよ。誰にも言わないよ。」
迷いのない返事だった。
その時、結はふらりと手を顔に当てた。
(うぅ…頭痛が…あれ…目の前が何も…)
次の瞬間、力が抜けるように倒れ込み、雪の上に音もなく崩れ落ちた。
「え、ちょっと…先輩!?だ、大丈夫ですか?…」
突然の出来事に玲奈は慌てて駆け寄る。
「えーっと…呼吸はある…心臓も動いてる。……よかった、気を失っているだけか…」
胸をなで下ろしながらも、玲奈の表情にはまだ緊張が残っていた。
「……おぶって行くか。」
小さく呟くと、玲奈は慎重に結の体を背中へ乗せる。触れた体は驚くほど冷えていて、その軽さに思わず眉をひそめた。
「先輩……無茶しすぎですよ。」
返事はない。ただ、かすかな寝息だけが耳に届く。
玲奈は足元に気をつけながら、一歩ずつ雪道を進んでいった。
辺りは静まり返り、聞こえるのは雪を踏みしめる音と、風の低い唸りだけ。
白一色の世界の中、二人の足跡だけがまっすぐに続いていく。
「早く、暖かいところへ連れて行きますから。」
玲奈は背中の重みを確かめるように背負い直した。
降り続く雪は、まるで二人を外界から切り離すように、静かに包み込んでいた。
次回に続く....




