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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第八章 北海道巡遊(後編)
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第5話 結の敗北

結が支局に帰ってきたのは、朝日が昇り始めた頃だった。


「そうだった……私、今から仕事あるんだった……」


冷え切った体に、溜まりきった疲労。結はすでにくたくただった。


「仕方ない……行きますか……」


午前8時。結は帯広支局を出た。

今日は、帯広周辺の町を巡回する予定だ。

明後日には北海道を離れ、青森へ向かうことになっている。


結はまず、昨日事件が起きた幕別町へと向かった。


「そういえば、あの女性……もしかして……いや、そんなはずはないか……」


幕別町に到着した結は、小学校周辺の巡回から始めた。


「昨日のあの男、犯罪組織に所属していたらしいし……もしかしたら、この辺にも組織の一員とかいるのかな……」


警戒を強めながら歩いていると、右手首に鈍い痛みが走る。


「手首が……いてて……」


昨日、凍った道で転んだ時に痛めたものだった。


「疲労に加えて手首まで……これは、きついな……」


しばらく巡回していると、住宅街で不審な気配を感じた。


(後ろから……何かを……)


振り返るが、そこには誰もいない。


(おかしい……誰かいるはず……)


次の瞬間、近くの茂みから、日本刀を持った男が姿を現した。


「えぇ……ちょ、ちょっと……」


男は刀に手をかけ、いつでも抜けるように構える。

結もまた、腰の杖に手を添えた。


静かな住宅街に、ピリピリとした空気が張りつめる。


「な、なんなんですか……あなた」


結の問いに、男は低い声で答えた。


「昨日、貴様らに捕らえられた我々の幹部を返してもらおうか」


「私に、拘束した人物を解放する権限はありません。仮にあったとしても、解放はしません」


男は顔をしかめた。


「ならば――貴様を、人質とする」


男は刀を抜いたが、すぐに鞘へと戻した。


(刀を鞘にしまった……? どういうこと……)


刀が完全に収まった、その瞬間。

結は、いつの間にか足を斬られていた。


「えっ……な、何が……」


結は痛みに耐えきれず、地面にしゃがみ込む。


「さあ、来てもらおうか……」


男が近づいた瞬間、結は杖を抜き、反撃しようとした。


「そうか。なら今度は、肩を斬る」


男は刀を抜き放ち、結に振り下ろした。

防御が間に合わないと判断した結は、杖で受け止める。


「いっ……くっ……!」


右手首を痛めていたせいで、衝撃がそのまま痛みに変わる。


「その杖、なかなか頑丈でありますね。しかし――私の刀に、斬れぬものはない」


男が力を込めた次の瞬間、結の杖は真っ二つに折れた。


(あぁ……杖が壊れた……私の負けか……)


結は抵抗を諦め、男に担がれる。


そしてそのまま、廃墟へと連れ去られていった。


次回に続く...

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