第5話 結の敗北
結が支局に帰ってきたのは、朝日が昇り始めた頃だった。
「そうだった……私、今から仕事あるんだった……」
冷え切った体に、溜まりきった疲労。結はすでにくたくただった。
「仕方ない……行きますか……」
午前8時。結は帯広支局を出た。
今日は、帯広周辺の町を巡回する予定だ。
明後日には北海道を離れ、青森へ向かうことになっている。
結はまず、昨日事件が起きた幕別町へと向かった。
「そういえば、あの女性……もしかして……いや、そんなはずはないか……」
幕別町に到着した結は、小学校周辺の巡回から始めた。
「昨日のあの男、犯罪組織に所属していたらしいし……もしかしたら、この辺にも組織の一員とかいるのかな……」
警戒を強めながら歩いていると、右手首に鈍い痛みが走る。
「手首が……いてて……」
昨日、凍った道で転んだ時に痛めたものだった。
「疲労に加えて手首まで……これは、きついな……」
しばらく巡回していると、住宅街で不審な気配を感じた。
(後ろから……何かを……)
振り返るが、そこには誰もいない。
(おかしい……誰かいるはず……)
次の瞬間、近くの茂みから、日本刀を持った男が姿を現した。
「えぇ……ちょ、ちょっと……」
男は刀に手をかけ、いつでも抜けるように構える。
結もまた、腰の杖に手を添えた。
静かな住宅街に、ピリピリとした空気が張りつめる。
「な、なんなんですか……あなた」
結の問いに、男は低い声で答えた。
「昨日、貴様らに捕らえられた我々の幹部を返してもらおうか」
「私に、拘束した人物を解放する権限はありません。仮にあったとしても、解放はしません」
男は顔をしかめた。
「ならば――貴様を、人質とする」
男は刀を抜いたが、すぐに鞘へと戻した。
(刀を鞘にしまった……? どういうこと……)
刀が完全に収まった、その瞬間。
結は、いつの間にか足を斬られていた。
「えっ……な、何が……」
結は痛みに耐えきれず、地面にしゃがみ込む。
「さあ、来てもらおうか……」
男が近づいた瞬間、結は杖を抜き、反撃しようとした。
「そうか。なら今度は、肩を斬る」
男は刀を抜き放ち、結に振り下ろした。
防御が間に合わないと判断した結は、杖で受け止める。
「いっ……くっ……!」
右手首を痛めていたせいで、衝撃がそのまま痛みに変わる。
「その杖、なかなか頑丈でありますね。しかし――私の刀に、斬れぬものはない」
男が力を込めた次の瞬間、結の杖は真っ二つに折れた。
(あぁ……杖が壊れた……私の負けか……)
結は抵抗を諦め、男に担がれる。
そしてそのまま、廃墟へと連れ去られていった。
次回に続く...




