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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第八章 北海道巡遊(後編)
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第4話 帯広と吹雪

天気は快晴な昼だが、とても寒い帯広市。


「やっとついた。帯広。」


結は早速、帯広支局へと向かった。


支局に着くなり荷物を置く。


「ふぅ。思ったより肩が痛かったな……」


そう言って、結はベッドに飛び込んだ。


「今日は、もうお休みらしいし……明日から……がんば……ろう……」


部屋はとても暖かく、そのまま眠ってしまった。


結が目を覚ましたのは、午後9時。


「ふぁ〜……制服のまま寝ちゃってたか……」


外はとても寒く、おまけに吹雪いていた。


「うわ〜……どうしよう……」


入り口で立ちすくむ結。


「仕方ない……今日は非常食を食べるか……」


諦めて仮眠室へ戻る。


非常食は、もしもの時のために一週間分持っている。今日は、その非常食を初めて食べることになった。


「えーっと……お湯を袋に入れて……20分待つ。これ、美味しいのかな……?」


結が選んだのは、カレーだった。


20分後。


仮眠室の机で、完成した非常食を実食する。


「いただきます。」


恐る恐る、スプーンを口に運ぶ。


「……意外と、いける。」


想像よりも美味しかったことに、結は少し驚いた。


数分後、非常食を食べ終えた。


「ん〜……なんかちょっと物足りないな……」


結は、非常食の袋をゴソゴソと漁り始めた。


「カレーに……赤飯に……乾パンか……。乾パンにするか。」


缶詰に入った乾パンを取り出す。


「いただきまーす。」


乾パンを一つ手に取り、口に運んだ。


「ん〜……味はいいけど、水分が……」


中から氷砂糖が出てきた。


「氷砂糖も入ってるんだ。」


結は氷砂糖を口に入れる。


「おー。これなら、結構食べやすい。」



こうして乾パンを食べ終えた結は、支局にある小さなシャワールームで体を洗い、ようやく寝る準備を整えた。


「ふー……寝れるかな……」


少し不安に思いながらも、ベッドに入ろうとした、その時。


コンコン。


仮眠室の扉が叩かれた。


「こんな時間に、誰だろう……?」


扉を開けると、そこには支局の事務職員が立っていた。


「夜遅くにすみません。隣の幕別町で、魔法を使った事件が発生しています。

ですが、現在、帯広市内の巡回担当が誰もいなくて……」


結は、しばらくポカーンとしていた。


「も、もしかして……私が……巡回を……?」


職員は、何の躊躇もなく答えた。


「そうですね。」


それを聞いた瞬間、結の顔から血の気が引いた。


「う、うそでしょ〜……」


ということで、嫌々ながら外に出てきた結は、徒歩で帯広市内の巡回を始めた。


「うぅ……寒い……なんで私がこんなことを……」


フードを深くかぶり、ネックウォーマーを口元まで引き上げる。

厚着もして、防寒対策は万全なはずだった。


それでも、骨の芯まで冷える。


「目の前……真っ白だな……」


吹雪のせいで、街灯の光さえぼんやりと滲んでいた。


その時、携帯端末に通知が入った。


「なんだろう……うわ〜……この手袋だと反応しない……」


結は手袋を外し、かじかんだ指で端末を操作する。


「て、手が……」


《幕別町で発生した、魔法を使った殺人事件の容疑者は、帯広市内へ逃走したもよう。》


それを見た瞬間、結は再び絶望した。


「えぇ……早く帰らせて……」


仕方なく、結は容疑者の捜索を開始した。


「早く見つけて……早く帰ろう……」


吹雪の向こうに、明らかに不審な男の姿が見えた。


「えーっと……特徴は、全身黒色で、体格がよくて身長は2メートル……

うん、絶対あの人だ。」


結が近づこうとした瞬間、男は突然、走り出した。


「ちょ、ちょっと待てー!」


こうして、徒歩での追跡劇が始まった。


厚着のせいで動きにくい体を必死に動かし、男を追いかける。


「くっ……なかなか追いつかない……」


しばらく走ったところで、男は少し狭い路地へと入っていった。


「え〜……そこで曲がるの……ぐはっ……!」


結は凍った地面に足を取られ、派手に転んでしまった。


「いてて……あ、逃しちゃった……」


その時。


路地の奥から、先ほどの男のものらしき叫び声が聞こえた。


結は急いで立ち上がり、音のした方へ駆け寄った。


そこにあったのは――

ぐるぐるに拘束された男と、背中に《魔法管理庁》と書かれたコートを着た、フードをかぶった女性の姿だった。


「あれ……なんだろう……この懐かしい魔力……」


胸の奥がざわつく。


結が近づこうとした、その瞬間。


突然、猛烈な吹雪が結を襲った。


「な、なんだこれ……!」


視界が真っ白になる。


しばらくして、吹雪が収まった頃には――


「……あれ?……い、いない……?」


そこには、誰の姿もなかった。


男も、謎の女性も、まるで最初から存在しなかったかのように。


次回に続く....

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