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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第七章 北海道巡遊(前編)
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第10話 バタバタ捜索劇

湯気がもうもうと立ちのぼる温泉に浸かり、

結はふにゃ~っと頬が緩んでいた。


「はぁぁ……生き返る……」


ここは浜頓別町の温泉。

すぐそばにはクッチャロ湖があり、周囲にはキャンプ場やゴルフ場も揃っている。

――もちろん、冬にやる気はまったくない。


風呂から上がった結は、瓶の牛乳を一気に飲み干した。


「ぷはぁ~……やっぱり風呂上がりは牛乳でしょ!」


休憩スペースでほんの少しだけのんびりし、

冷え切った外へ出ると、震えながら箒へまたがる。


「さ、寒っ……せっかく温まったのに……」


厚着しているはずなのに、容赦ない寒さが全身に刺さる。

だが、ゆっくりしているわけにもいかない。

結は覚悟を決めて飛び立った。


左手には流氷に覆われたオホーツク海。

右手は雪の壁のような山々。

山を越えるため、高度を上げざるを得ない。


そのぶん、さらに寒い。


「うぅ……南に向かってるのに寒くなってない!?」


風を切りながら数時間飛び続け――


午後6時。

結はついに紋別市の支局にたどり着いた。


「……とりあえず、今日はここで一泊」


報告などを済ませ、仮眠室に入り、布団に潜り込む。


「明日は釧路へ向けて出発……着くのは夜かな……」


そうぼんやり考えながら、そのまま眠りに落ちた。


――しかし、休息は長く続かなかった。


午前1時。


突然鳴り響いた業務端末のアラートで、結は飛び起きた。


「な、なに……?」


表示されたメッセージを見た瞬間、眠気は吹き飛ぶ。


《緊急配備。紋別市内で魔法を使った重大事件発生。容疑者逃走中。》


慌てて支度を整え、

フードを深くかぶり、ネックウォーマーを鼻まで引き上げる。


「南が丘町の巡回……って、私ひとり!?」


この夜支局に残っていた職員は少なく、

役割分担の結果、結は単独行動になってしまった。


容疑者の情報は最低限。


――全身真っ黒の服、小柄な男。


「いやいや……真夜中の住宅街にひとりって、普通に怖いんだけど……」


杖の灯りだけを頼りに、

ひたひたと雪の上を歩きながら巡回を続ける。


しばらく歩くが、人影どころか生活音すらない。


やがて空が淡く明るくなり――

朝が近づいている。


「……誰もいない。

 もう捕まった?」


状況を確認しようと、端末に手を伸ばして――気づく。


「端末……置いてきた……」


ぎゅっと目をつぶり、額に手を当てる。


「も~~~!!」


数秒固まったあと――


「とりあえず!支局に戻ろう!!」


箒も端末も置き忘れたままの結は、

夜明けの街を走り、支局へ戻っていくのだった。


次回に続く....

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