第10話 バタバタ捜索劇
湯気がもうもうと立ちのぼる温泉に浸かり、
結はふにゃ~っと頬が緩んでいた。
「はぁぁ……生き返る……」
ここは浜頓別町の温泉。
すぐそばにはクッチャロ湖があり、周囲にはキャンプ場やゴルフ場も揃っている。
――もちろん、冬にやる気はまったくない。
風呂から上がった結は、瓶の牛乳を一気に飲み干した。
「ぷはぁ~……やっぱり風呂上がりは牛乳でしょ!」
休憩スペースでほんの少しだけのんびりし、
冷え切った外へ出ると、震えながら箒へまたがる。
「さ、寒っ……せっかく温まったのに……」
厚着しているはずなのに、容赦ない寒さが全身に刺さる。
だが、ゆっくりしているわけにもいかない。
結は覚悟を決めて飛び立った。
左手には流氷に覆われたオホーツク海。
右手は雪の壁のような山々。
山を越えるため、高度を上げざるを得ない。
そのぶん、さらに寒い。
「うぅ……南に向かってるのに寒くなってない!?」
風を切りながら数時間飛び続け――
午後6時。
結はついに紋別市の支局にたどり着いた。
「……とりあえず、今日はここで一泊」
報告などを済ませ、仮眠室に入り、布団に潜り込む。
「明日は釧路へ向けて出発……着くのは夜かな……」
そうぼんやり考えながら、そのまま眠りに落ちた。
――しかし、休息は長く続かなかった。
午前1時。
突然鳴り響いた業務端末のアラートで、結は飛び起きた。
「な、なに……?」
表示されたメッセージを見た瞬間、眠気は吹き飛ぶ。
《緊急配備。紋別市内で魔法を使った重大事件発生。容疑者逃走中。》
慌てて支度を整え、
フードを深くかぶり、ネックウォーマーを鼻まで引き上げる。
「南が丘町の巡回……って、私ひとり!?」
この夜支局に残っていた職員は少なく、
役割分担の結果、結は単独行動になってしまった。
容疑者の情報は最低限。
――全身真っ黒の服、小柄な男。
「いやいや……真夜中の住宅街にひとりって、普通に怖いんだけど……」
杖の灯りだけを頼りに、
ひたひたと雪の上を歩きながら巡回を続ける。
しばらく歩くが、人影どころか生活音すらない。
やがて空が淡く明るくなり――
朝が近づいている。
「……誰もいない。
もう捕まった?」
状況を確認しようと、端末に手を伸ばして――気づく。
「端末……置いてきた……」
ぎゅっと目をつぶり、額に手を当てる。
「も~~~!!」
数秒固まったあと――
「とりあえず!支局に戻ろう!!」
箒も端末も置き忘れたままの結は、
夜明けの街を走り、支局へ戻っていくのだった。
次回に続く....




