第7話 別れ
札幌での二週間の巡回が、静かに終わりを迎えた。
それと同時に、結と玲奈のバディも解消されることになった。
仮眠室で、二人は黙々と荷物をまとめていた。
「先輩……これまで、ありがとうございました。」
玲奈はそう言って、深く頭を下げた。
「……玲奈……」
結は一瞬言葉に詰まり、次の瞬間、思わず玲奈を抱きしめていた。
「こちらこそ……ありがとう。」
抱きしめ返されることはなかったが、玲奈は静かに受け止めていた。
やがて二人は離れ、少しだけ気まずい沈黙が落ちる。
その後、荷物を持って管区本部の外へ出た。
「そういえば、玲奈は次、どこの部署に行くの?」
結の問いに、玲奈ははっきりと答えた。
「保安学校の、格闘指導官です。」
「……え?」
結は目を見開いた。
「玲奈、格闘できたの?」
「はい。保安学校時代の成績、結構良かったんですよ。」
「……知らなかった……」
別れが近づくほど、どうでもいい会話が続いてしまう。
それでも、いつまでもここにはいられない。
やがて、結が覚悟を決めたように言った。
「……また、会えたらいいな。」
「……そうですね。」
短い返事だったが、それで十分だった。
二人はそれぞれ箒に跨り、別々の方向へと飛び立った。
石狩湾の方角へ向かう結の視界が、少しだけ滲む。
北海道管区本部を離れてしばらくした頃、結はふと、左側を見た。
「……そっか。もう、隣にはいないんだ……」
風を切る音だけが、やけに大きく感じられた。
それから数時間後。
結は留萌市にある道の駅「るもい」に立ち寄っていた。
建物の中に入った瞬間、思わず息が漏れる。
「……ふう……あったかい……」
身体の力が、ゆっくりと抜けていく。
「お腹も空いたし……何か食べようかな。」
結は食堂に入り、にしんそばを注文した。
運ばれてきた丼から、湯気が立ち上る。
「……やっと……温かいものが食べられる……」
まずは、汁を一口。
冷え切っていた身体の芯まで、じんわりと温もりが広がる。
「……体が温まるし……この汁、美味しい……最高……」
次に、そばをすすった。
「……うま……」
余計なことを考える暇もなく、箸を動かす。
気づけば、丼は空になっていた。
「……ごちそうさまでした。」
外に出ると、冷たい風が頬を打つ。
結は箒に跨り、空を見上げた。
「……行こっか。」
自然とそう呟いて、再び一人、北の空へと飛び立っていった。
次回に続く....




