第6話 悩みから解放
翌朝。
二人は管区本部の食堂で、朝食を取っていた。
空は、雲で覆われており薄暗い世界が広がっていた。
「玲奈、腕……大丈夫?」
結がそう声をかけるが、玲奈は返事をせず、頬杖をついて外を見つめていた。
「……」
「玲奈?」
少し遅れて、玲奈ははっとしたように結を見る。
「え……あ、はい。大丈夫ですよ。」
「本当に?」
「はい。大丈夫です。」
だが、その声にはどこか張りがなかった。
結は箸を置き、玲奈をじっと見つめる。
「……最近、様子が変だよ。
本当に、大丈夫なの?」
その瞬間だった。
玲奈は机を《ドン》と叩き、勢いよく立ち上がった。
「……もう、ほっといてください。」
それだけ言い残し、玲奈は食堂を出ていく。
「玲奈!」
結の声は、背中に届かなかった。
食堂を出た玲奈は、管区本部の近くにある小さな公園まで歩いていた。
ベンチに腰を下ろした瞬間、力が抜ける。
「……はぁ……やっちゃった……」
ぽつり、と呟いた途端、視界が滲んだ。
涙が一粒、また一粒とこぼれ落ちる。
それに合わせるように、空からも雪が降り始めた。
そのまま俯いていた玲奈が、ふと顔を上げる。
目の前に立っていたのは——結だった。
「……せ、先輩……」
結は息を整えながら、静かに口を開く。
「玲奈……ごめん。」
一瞬の沈黙。
「実は私……薄々、気づいてたんだ。
玲奈が、異動すること。」
玲奈の肩が、わずかに震える。
結はそっと近づき、玲奈の目に溜まった涙を、指先で拭った。
「……ずっと、一人で悩んでたんだね。」
玲奈は小さく頷く。
「……うん。
……でも、今は……」
一度、深く息を吸ってから。
「……やっと、解放されました。」
「……そっか。」
結は少しだけ微笑み、いつもの穏やかな声で言った。
「じゃあ、帰ろっか。管区本部に。」
「……はい。」
二人は並んで歩き出す。
雪は、いつの間にか弱まり、静かに地面へと落ちていた。
次回に続く....




