表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第七章 北海道巡遊(前編)
33/39

第6話 悩みから解放

翌朝。

二人は管区本部の食堂で、朝食を取っていた。


空は、雲で覆われており薄暗い世界が広がっていた。


「玲奈、腕……大丈夫?」


結がそう声をかけるが、玲奈は返事をせず、頬杖をついて外を見つめていた。


「……」


「玲奈?」


少し遅れて、玲奈ははっとしたように結を見る。


「え……あ、はい。大丈夫ですよ。」


「本当に?」


「はい。大丈夫です。」


だが、その声にはどこか張りがなかった。


結は箸を置き、玲奈をじっと見つめる。


「……最近、様子が変だよ。

 本当に、大丈夫なの?」


その瞬間だった。


玲奈は机を《ドン》と叩き、勢いよく立ち上がった。


「……もう、ほっといてください。」


それだけ言い残し、玲奈は食堂を出ていく。


「玲奈!」


結の声は、背中に届かなかった。


食堂を出た玲奈は、管区本部の近くにある小さな公園まで歩いていた。


ベンチに腰を下ろした瞬間、力が抜ける。


「……はぁ……やっちゃった……」


ぽつり、と呟いた途端、視界が滲んだ。


涙が一粒、また一粒とこぼれ落ちる。

それに合わせるように、空からも雪が降り始めた。


そのまま俯いていた玲奈が、ふと顔を上げる。


目の前に立っていたのは——結だった。


「……せ、先輩……」


結は息を整えながら、静かに口を開く。


「玲奈……ごめん。」


一瞬の沈黙。


「実は私……薄々、気づいてたんだ。

 玲奈が、異動すること。」


玲奈の肩が、わずかに震える。


結はそっと近づき、玲奈の目に溜まった涙を、指先で拭った。


「……ずっと、一人で悩んでたんだね。」


玲奈は小さく頷く。


「……うん。

……でも、今は……」


一度、深く息を吸ってから。


「……やっと、解放されました。」


「……そっか。」


結は少しだけ微笑み、いつもの穏やかな声で言った。


「じゃあ、帰ろっか。管区本部に。」


「……はい。」


二人は並んで歩き出す。

雪は、いつの間にか弱まり、静かに地面へと落ちていた。


次回に続く....

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ