第5話 楽しみと少しの危険
翌朝。
窓の外では、パラパラと雪が降っていた。
そんな中、一番最初に起きてきたのは玲奈だった。
「はぁ……」
起きてすぐ、玲奈は暗い表情でため息をつく。
そこへ、結も目を覚ました。
「ふぁ〜……おはよう、玲奈。」
玲奈ははっとして、慌てていつもの明るい表情に戻す。
心の中では、ため息を聞かれていないかと少し不安だった。
「お、おはようございます。先輩。」
どこか元気のない様子を感じ取った結は、ふと思いついたように言った。
「今日は休暇だし、どこか行かない?」
「いいですね。私、札幌雪まつり行きたいです。」
「いいね。じゃあ、そこにしようか。」
――それから一時間後。
二人は大通公園に来ていた。
「うわ〜……すごいですね、先輩。」
巨大な雪像が立ち並ぶ光景に、玲奈は目を輝かせる。
結はその様子を見て、少し安心していた。
「うん、ほんとにすごいね。」
「先輩、あの建物の雪像、すごくリアルに作られてます。」
「うん、そうだね。」
「あ、あの馬の雪像も……すごく綺麗……」
その時、玲奈がお腹を押さえた。
少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「先輩……お、お腹空きました……」
その様子に、結は思わずクスクスと笑った。
「じゃあ、何か食べよっか。」
二人は屋台の並ぶ一角へ向かう。
「色んな食べ物がありますね……」
「迷うね。」
「時間はたくさんあるし、ゆっくり悩もう。」
悩みに悩んだ末、二人が選んだのは味噌ラーメンだった。
ここは札幌だ。
席に着いた二人は、同時に手を合わせる。
「「いただきます。」」
「あったかくて美味しい……」
「体の芯から温まりますね〜。」
その後も、他愛のない話をしながら、会場をゆっくりと巡った。
夕方頃、二人は管区本部へ戻ってきていた。
「先輩、今日は楽しかったです。」
「うん、それはよかった。」
――その夜。
仮眠室へ戻ってきても、二人の会話は途切れなかった。
そんな中、玲奈は静かに身支度を始めた。
「どうしたの?」
「ちょっと、散歩してきます。」
「あ、うん。気を付けてね。」
結はそれ以上追及せず、玲奈を見送った。
夜の札幌を一人で歩く玲奈は、どこか寂しげだった。
「結構来たな……」
閑静な住宅街で立ち止まり、ぽつりとつぶやく。
「……いつ、先輩に話したらいいんだろう……」
そろそろ戻ろうとした、その時。
背後から、走ってくる足音。
振り向いた瞬間、男がナイフを手に突進してきた。
「……っ!」
回避がわずかに遅れ、ナイフが右腕をかすめる。
「……刺されてないだけ、ましか……」
玲奈はすぐにハンカチで腕を縛り、構えを取る。
「……さあ、かかってきなさい。」
男が再び襲いかかる。
玲奈は動きを見切り、体勢を崩して地面に押さえつけた。
「……襲う相手を、間違えましたね。」
ほどなく警察が到着し、男は連行されていった。
事情聴取は短く済んだが、腕の治療に時間がかかり、
気付けば時刻は午後十時を回っていた。
病院を出た玲奈は、管区本部へ戻る。
「……まずい。先輩、絶対心配してる……」
仮眠室の扉を開けると、そこには落ち着きなく歩き回る結の姿があった。
「せ、先輩……何してるんですか?」
「え、あ、うん、何も···それより……そのコートの血、どうしたの?」
「あー……ちょっと、カクカクシカジカで……」
結はしばらく黙った後、深く息をついた。
「……でも、大丈夫そうでよかったよ。
一人の時は、ちゃんと気を付けてね。」
「はい……すみません。」
結はそう言って、玲奈の頭にそっと手を置いた。
こうして、楽しい時間と、少しの危険が混じった、とても内容の濃い休暇は終わりを迎えた。
次回に続く...




