第4話 札幌
北海道に朝が来た。
昨日の吹雪が嘘だったかのように、澄んだ青空が広がっている。
「ふぁ〜……朝か……」
先に起きてきた結は、ベランダに出て洞爺湖を眺めた。
朝の光を受けて、湖面が静かにきらめいている。
「きれいだな〜……」
寝起きの結は、まだ少しぼんやりとしていた。
一方、部屋の中では――
「すー……すー……」
玲奈が温かい部屋で、ベッドの掛け布団に包まり、ぐっすりと眠っている。
しばらく洞爺湖を眺めていた結は、ふとスマホで時間を確認し、目を見開いた。
――9:30――
「ま、まずい……朝食の時間終わっちゃう……!」
慌ててベランダから戻った結は、机に足をぶつけ、その場に倒れ込んだ。
「うぅ……こ、小指が……」
その物音で目を覚まし、玲奈が眠そうに起き上がる。
「先輩……朝から何してるんですか……」
「机に足ぶつけちゃって……って、それよりも!
早く準備しないと朝食が……!」
玲奈は机の上の時計に目を向け、固まった。
「え……ほ、ほんとだ!?」
二人は慌てて身支度を整え、朝食会場へと駆け込んだ。
それから三十分後。
なんとか朝食に間に合った二人は、食事を終えて部屋へ戻ってきていた。
部屋に入るなり、結は椅子に深く腰を下ろす。
「うぅ……急いで食べたから、ちょっと気持ち悪い……」
「大丈夫ですか、先輩。」
ベッドに座った玲奈は、くすくすと笑っている。
しばらく部屋でのんびりしたあと、名残惜しさを感じながら荷物をまとめ、二人はチェックアウトを済ませた。
「先輩、このホテル良かったですね。」
「うん、そうだね。また来よっか。」
すると、玲奈が結の前に立ち、じっと目を見つめる。
「絶対ですよ!」
突然の距離の近さに、結は少し驚いた。
「う、うん……」
そうして再び歩き出す二人。
玲奈は心の中で、そっと思っていた。
(こんな日々が、ずっと続けばいいな……)
約一時間後。
雪に覆われた街並みと、遠くに見える海を横目に、二人は箒を進めていた。
いつの間にか、小樽市の上空に差し掛かっている。
「先輩、もう少しで札幌ですね。」
「うん、そうだね。
でも、油断してると落ちるかもよ?」
「大丈夫ですよ。私を誰だと思ってるんですか?」
北海道の冷たい空の下、二人はそんな会話を交わしていた。
それからしばらくして、とうとう札幌市内へと入る。
「ふぅ……やっと札幌か。
えーっと、管区本部は……」
玲奈が前方を指差す。
「先輩、あれじゃないですか?」
「あれだね。」
視線の先には、一部がガラス張りになった大きなビルが建っていた。
管区本部前に降り立った二人は、箒を手に中へ入る。
「大きなエントランスだな……」
「そうですね……」
エントランスを眺めていると、若い男性職員が声をかけてきた。
「結さん、玲奈さんですね。
本庁からの指示で、二人には二週間ほど管区本部に駐在し、札幌市内の巡回を担当してもらうことになりました。」
「え……そうなんですか?
でも、どうして……?」
「実は、市内の巡回担当者が足りていなくて……」
「そうですか……分かりました。
札幌市内だけでいいんですよね?」
「はい。二週間だけですが、よろしくお願いします。」
それから一週間ほどが経った。
二人は今日も札幌市内の巡回を終え、管区本部の事務室へ戻ってきていた。
「先輩、今日も疲れましたね。」
「うん……今日は銭湯にでも行こうかな。」
「いいアイデアですね。」
そのとき、玲奈が職員に呼び止められた。
「先輩、ちょっと行ってきます。」
「うん、いってらっしゃい。」
玲奈は職員の後を追っていった。
数分後、戻ってきた玲奈は、どこか表情が暗い。
「どうしたの?
なんだか元気ないけど。」
結が声をかけると、玲奈はすぐにいつもの明るい表情に戻った。
「大丈夫です。なんでもありません。
それより、銭湯に行きましょう。」
「……うん。分かった。」
その後、二人は管区本部を出て、近くの銭湯へ向かった。
湯気の立ちこめる中でも、玲奈はどこか考え込んでいるようだった。
その日の夜、銭湯から戻った二人は仮眠室で静かに一日を終えた。
次回に続く....




