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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第七章 北海道巡遊(前編)
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第4話 札幌

北海道に朝が来た。

昨日の吹雪が嘘だったかのように、澄んだ青空が広がっている。


「ふぁ〜……朝か……」


先に起きてきた結は、ベランダに出て洞爺湖を眺めた。

朝の光を受けて、湖面が静かにきらめいている。


「きれいだな〜……」


寝起きの結は、まだ少しぼんやりとしていた。


一方、部屋の中では――


「すー……すー……」


玲奈が温かい部屋で、ベッドの掛け布団に包まり、ぐっすりと眠っている。


しばらく洞爺湖を眺めていた結は、ふとスマホで時間を確認し、目を見開いた。


――9:30――


「ま、まずい……朝食の時間終わっちゃう……!」


慌ててベランダから戻った結は、机に足をぶつけ、その場に倒れ込んだ。


「うぅ……こ、小指が……」


その物音で目を覚まし、玲奈が眠そうに起き上がる。


「先輩……朝から何してるんですか……」


「机に足ぶつけちゃって……って、それよりも!

 早く準備しないと朝食が……!」


玲奈は机の上の時計に目を向け、固まった。


「え……ほ、ほんとだ!?」


二人は慌てて身支度を整え、朝食会場へと駆け込んだ。


それから三十分後。

なんとか朝食に間に合った二人は、食事を終えて部屋へ戻ってきていた。


部屋に入るなり、結は椅子に深く腰を下ろす。


「うぅ……急いで食べたから、ちょっと気持ち悪い……」


「大丈夫ですか、先輩。」


ベッドに座った玲奈は、くすくすと笑っている。


しばらく部屋でのんびりしたあと、名残惜しさを感じながら荷物をまとめ、二人はチェックアウトを済ませた。


「先輩、このホテル良かったですね。」


「うん、そうだね。また来よっか。」


すると、玲奈が結の前に立ち、じっと目を見つめる。


「絶対ですよ!」


突然の距離の近さに、結は少し驚いた。


「う、うん……」


そうして再び歩き出す二人。


玲奈は心の中で、そっと思っていた。


(こんな日々が、ずっと続けばいいな……)


約一時間後。

雪に覆われた街並みと、遠くに見える海を横目に、二人は箒を進めていた。


いつの間にか、小樽市の上空に差し掛かっている。


「先輩、もう少しで札幌ですね。」


「うん、そうだね。

 でも、油断してると落ちるかもよ?」


「大丈夫ですよ。私を誰だと思ってるんですか?」


北海道の冷たい空の下、二人はそんな会話を交わしていた。


それからしばらくして、とうとう札幌市内へと入る。


「ふぅ……やっと札幌か。

 えーっと、管区本部は……」


玲奈が前方を指差す。


「先輩、あれじゃないですか?」


「あれだね。」


視線の先には、一部がガラス張りになった大きなビルが建っていた。


管区本部前に降り立った二人は、箒を手に中へ入る。


「大きなエントランスだな……」


「そうですね……」


エントランスを眺めていると、若い男性職員が声をかけてきた。


「結さん、玲奈さんですね。

 本庁からの指示で、二人には二週間ほど管区本部に駐在し、札幌市内の巡回を担当してもらうことになりました。」


「え……そうなんですか?

 でも、どうして……?」


「実は、市内の巡回担当者が足りていなくて……」


「そうですか……分かりました。

 札幌市内だけでいいんですよね?」


「はい。二週間だけですが、よろしくお願いします。」


それから一週間ほどが経った。


二人は今日も札幌市内の巡回を終え、管区本部の事務室へ戻ってきていた。


「先輩、今日も疲れましたね。」


「うん……今日は銭湯にでも行こうかな。」


「いいアイデアですね。」


そのとき、玲奈が職員に呼び止められた。


「先輩、ちょっと行ってきます。」


「うん、いってらっしゃい。」


玲奈は職員の後を追っていった。


数分後、戻ってきた玲奈は、どこか表情が暗い。


「どうしたの?

 なんだか元気ないけど。」


結が声をかけると、玲奈はすぐにいつもの明るい表情に戻った。


「大丈夫です。なんでもありません。

 それより、銭湯に行きましょう。」


「……うん。分かった。」


その後、二人は管区本部を出て、近くの銭湯へ向かった。


湯気の立ちこめる中でも、玲奈はどこか考え込んでいるようだった。


その日の夜、銭湯から戻った二人は仮眠室で静かに一日を終えた。


次回に続く....

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