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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第六章 東北巡遊
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第4話 落ち着き

夕暮れの郡山支局。

廊下には静かな空気が漂い、事件後の慌ただしさも少し落ち着いていた。


結と玲奈は、全身に包帯を巻き、傷や疲労の残る体を引きずるようにして休憩室へ向かう。


「ふぅ……やっと座れた。」

結はソファに腰を下ろし、肩の力を抜いた。


「はい……先輩も、肩とか腕、大丈夫ですか?」

玲奈も隣に座り、頭の包帯や腕を軽くさすって確かめる。


「ん……なんとか。でも無理しちゃダメだよ、玲奈。」

結は微笑みながら、傷が残る手首や肩を軽く確認する。


二人とも動きが鈍く、互いに支え合うように座ったまま、しばしの静寂に包まれる。

外の夕焼けが窓から差し込み、室内を柔らかいオレンジ色に染めていた。


「……先輩、正直言って、私は今日、ちゃんと役に立てたんでしょうか。」

玲奈は小さく笑い、下を向く。

戦闘中の自分を思い返し、体の痛みと合わせて少し自己嫌悪が浮かんでいた。


「立ち向かえただけで、十分だよ。」

結は穏やかに声をかける。

肩や腕の痛みで動きが鈍くても、その言葉には温かさがあった。


「怖かった……でも、先輩がいたから立っていられました。」

玲奈の胸に、じんわり熱いものが込み上げる。

戦闘での緊張と痛みが残る中、互いに支え合える安心感だけが残っていた。


「ありがとう、玲奈。」

結はゆっくり息を整えながら、玲奈の肩をそっと支える。

「私もね、怖くて動けない瞬間があった。でも玲奈がいたから最後まで動けたんだ。」


玲奈は顔を少し赤らめながら、結を見上げる。

心臓の奥が、少しばかり温かくなる。


「でも、無理はしちゃダメだよ。傷が治る前に動くと、余計に悪化するから。」

結は包帯を巻いた手を優しくさすり、微笑む。


「はい……先輩も、無理しないでください。」

玲奈は小さく頷き、まだ少し痛む頭や腕をそっと動かす。


「うん。ありがとう。今は休む時間。こうして回復するのも訓練の一部だから。」


二人の体はぎこちなくても、心は少しずつ落ち着いていく。


しばらく沈黙が続く。

湯気の立つお茶を飲みながら、窓の外に目をやると、郡山の街は夕焼けに染まっていた。


「……でも、次は必ず幹部を捕まえましょうね。」

玲奈がぽつりと呟く。


「うん。そのためにも、今はこうして休んで回復するのが一番。」

結の声は穏やかだが、決意の色が強く混じっていた。


「……先輩、こうして静かにしていると、今日のことが昔の話みたいです。」

玲奈は肩の痛みを気にしながら、ふっと笑う。


「そうだね。でも、戦いの記憶も消えるわけじゃない。覚えてるから次に活かせるんだ。」

結は窓の外を見つめ、柔らかい光に包まれた街を眺める。


しばらくして、玲奈がバッグから小さなお菓子を取り出した。


「先輩、甘いもの、食べますか?」


「えっ……あ、いいね!」


結も包帯の手を気にしつつ、お菓子を受け取る。


「こういうの、久しぶりです。」

玲奈は小さく笑いながら、一口分を口に入れた。

結も同じく、ゆっくりと噛みしめる。


「疲れた体には、甘いものが効くんだな……」

結は微笑みながら言い、外を眺める。


「……先輩、こうして休める時間も、大事ですね。」

玲奈は包帯の腕をそっとさすり、体の痛みと戦いながら、温かいお茶を口にする。


「うん。戦闘後の回復も立派な任務の一部だから。」

結は頷き、少し照れたように笑う。


お茶を飲み終わったあと、玲奈は少しずつ体を伸ばして言った。


「……でも、まだ腕も足も痛いですし、頭も少し重いです。」


「だから無理しないで。少しずつ回復させればいいよ。」

結は肩越しに手を伸ばして、玲奈の背中にそっと触れる。

互いの傷を気遣うように支え合う姿は、戦闘の後の二人にしかない、特別な瞬間だった。


やがて、外がすっかり夜に変わり、支局の灯りが二人を柔らかく照らす。

傷や疲労は残るけれど、戦闘後の日常――ほんのひとときの平和が、二人の心を包んでいた。


「……先輩、今日もありがとうございました。」

玲奈は小さな声で言い、微笑む。


「こちらこそ。次はもっと楽に戦えるようにしよう。」

結も笑顔を返す。


こうして、傷だらけの二人は、夜の支局で静かに過ごした。

戦闘の余韻と痛みを抱えながらも、互いの存在が安心の支えとなる――


次回に続く....

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