第3話 待機
管区本部襲撃事件から二週間後、結は東北管区本部の医務室で医師の最終確認を受けていた。
「うん、大丈夫だね。今日から通常業務に戻っていいよ」
「……ありがとうございます」
医務室を出ると、廊下の壁にもたれた七海が手を振ってきた。
「やあ、思ったより元気そうじゃないか」
「七海さん。はい、今日から復帰していいそうです」
「そっか、それを聞いて安心したよ」
七海は軽く笑ったあと、真面目な声に戻る。
「で、本庁から連絡だ。結と玲奈は、しばらく水戸支局で“待機命令”だ」
「……待機、ですか」
七海は結の表情を読み取り、冗談めかして肩をすくめる。
「そんな顔するなって。待機といっても、鍛える時間なら山ほどある。むしろ好都合だよ」
結は一瞬考え、ふっと小さく笑った。
「……じゃあ、そういうことにしておきます」
「よし。そのくらい前向きなら十分だ」
七海の声には、安心と期待が混ざっていた。
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その後、水戸支局に戻った結は、入り口で先に戻っていた玲奈と再会した。
「先輩、おかえりなさい!」
「ただいま、玲奈」
「ということで、先輩の写真、撮ってもいいですか?」
「えぇ……まあ、いいよ」
「はーい!撮ります!」
パシャッ。
「おぉ!今までで最高の笑顔です!!」
「そう?せっかくだからね」
そんなやり取りをしていると、七海が廊下に現れた。
「二人とも、そんなところで話していないで、こっちに来なさい」
「はぁい……」
玲奈は少し残念そうに口を尖らせた。
二人は七海に連れられ、事務室へ向かう。
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「今日からしばらく、事務作業をしてもらうよ」
「マジですか?」
結は少し残念そうに聞く。
「マジ。でも、訓練の時間はちゃんと取れるから安心して」
「やっぱりそう言いますよね……」
七海は少し間を置き、次の指示を出す。
「それと、住む所なんだけど……仮眠室が足りなくてね。玲奈と共同でマンションに住んでもらえるかな?」
「まあ、いいですよ」
「え!先輩と一緒に住めるんですか!やった〜!」
玲奈は思いっきり喜び、飛び跳ねる。
「はい、これが部屋の鍵と住所」
「ありがとうございます」
結は小さく微笑み、少しだけ心が軽くなるのを感じた。
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二人は荷物を持ってマンションに到着。
部屋はこぢんまりとしているが、十分に落ち着ける空間だった。
「先輩、今日はゆっくりしましょうね」
「うん、そうだね……」
玲奈は窓際の椅子に座り、外の景色を眺める。
結はソファに腰を下ろし、深く息をつく。
「ふぅ……やっと一息つける」
「先輩、魔力を使わなくていいって最高ですよね!」
二人は少し笑い合った。
その後、洗濯を始めた二人。
「ねぇ、先輩、この洗濯ってどうします?」
「うーん、手洗いで軽くやるくらいで十分だと思う」
「了解です!じゃあ私がやりますね」
玲奈は小さな洗濯物を手に取り、手際よく洗う。
結はソファで魔力異常探知機の確認をしつつ、洗濯の進み具合を眺める。
「先輩、今日は魔力の消耗少なかったですよね」
「そうだね。今日は本当に落ち着いた一日だった」
「これならゆっくり休めそうです」
洗濯物を干し終えた玲奈は、結に向かって笑う。
「先輩、明日からまた支局で仕事ですけど、一緒なら頑張れますね!」
「うん、私もそう思う」
夕食はコンビニで買ったサンドイッチを二人で広げる。
「こうして何も考えずに食べるのも悪くないね」
「先輩、たまにはこういう日も大事ですよ!」
軽い会話をしながら、二人は笑顔で食事を楽しむ。
部屋には魔力異常探知機があるが、今日は静かで平和だった。
食後、結はソファで少し休み、玲奈は窓の外の夕焼けを見つめる。
「先輩、明日からまた仕事ですよね……」
「うん、でも無理はしないようにしよう」
「はい!先輩と一緒なら大丈夫です!」
結は微笑み、心の中で思う。
「明日からまた忙しくなるけど、玲奈となら乗り越えられるかも」
窓の外で夕日が沈み、部屋はオレンジ色に染まる。
二人だけの穏やかな時間が静かに流れ、心を休めるひとときとなった。
夜、二人は軽く魔力の管理を行う。
「先輩、今日はもう使わなくていいですよね?」
「うん、もう大丈夫」
玲奈は小さく魔力を整え、手をかざして微調整する。
「ふぅ、落ち着きました」
「ありがとう。安心できるね」
結はその様子を見ながら、微笑んだまま毛布を整える。
「おやすみ、玲奈」
「おやすみなさい、先輩」
隣で静かな寝息が響き、マンションでの初めての共同生活の夜は、平穏に過ぎていった。
翌朝、カーテン越しの光が部屋に差し込む。
玲奈はまだ布団にくるまって寝ていたが、結はそっと起き上がり、軽く伸びをする。
「よく寝たな……」
昨日の疲れは少し残っているが、今日から支局での業務が始まる。
結は深呼吸を一つして、静かに心を整える。
「さて、玲奈と一緒に仕事頑張ろう」
隣で寝ている玲奈の寝顔を見つめ、結は小さく微笑んだ。
朝食を食べた二人は、いつもとは違うスーツに着替える。
「先輩、なんかいつもと違う服で変な感じがしますね」
「うん、でもすぐ慣れると思うよ。よし、行こうか」
「はい!」
次回に続く....




