第1話 バディ
翌朝、2人は朝食を終え、宇都宮支局の控室で仕事の準備をしていた。
「先輩ともこれでお別れですか…」
玲奈が寂しそうに呟く。
「まあ、私は全国を巡回する部署だから…ずっと同じ場所にいるわけにはいかないんだ」
「……先輩、ありがとうございました」
「うん、私も一緒に仕事できて楽しかったよ」
荷物をまとめ、出発しようとしたその時――
「お、いたいた!」
廊下の奥から七海が歩いてきた。
「七海さん?」
「連絡しなくてもここに来ると思ってね。ちょうど良かった」
七海はニコッと笑い、本題を切り出す。
「君たち2人、今日から正式にバディを組んでもらうよ」
結と玲奈は一瞬時が止まった。
「えぇぇぇ〜〜〜!?」
結が叫ぶ。一方、玲奈は飛び跳ねて喜ぶ。
「やったぁぁぁ!!」
「ど、どうして急に…?」
「相性がいいからさ。現場での連携も、判断も、カバーも、あれだけ噛み合うバディは貴重なんだ。だから昨日と一昨日の休暇は“親睦を深める”意味もあったのさ」
「え、じゃあ……完全に計画されてたってことですか?」
「まあそういうこと」
結は頬を赤くして視線を逸らす。
玲奈は悪戯っぽく笑って――
「ってことは!これからはいつでも先輩の可愛い顔を写真に撮れるんですね!」
「や、やめてよぉ!! なんでそこだけやたらテンション高いの!?」
「だってレアじゃないですか!先輩が照れたり笑ったり怒ったりする顔!」
「うぅ……褒められてるのかからかわれてるのか分からない…」
七海は楽しそうに見守り、次の指示を出す。
「はい、真面目な話に戻す。次の任務は――東北管区本部を経由して盛岡支局に向かってほしい」
「盛岡…岩手県ですね」
「そう。東北の魔力観測データに気になる波形が出てる。調査名目だけど油断はしないこと」
結と玲奈は顔を見合わせ、頷く。
「「了解しました」」
七海は満足そうに微笑み、言葉を添える。
「じゃあバディ第一任務、期待してるよ。気をつけて行ってらっしゃい」
「はい!」
「はいっ!」
2人は箒を手に支局の外へ出て準備を整える。
「先輩!バディ第1任務、頑張りましょう!」
「うん、張り切りすぎて魔力暴走させないようにね」
「だ、大丈夫ですそれは!!」
箒に跨がり、青空へ舞い上がる。結は心の中で小さく思う。
また一緒にいられるんだ――ほんの少しだけ笑っていた。
盛岡に向かう途中、管区本部を経由する。
管区本部では水戸支局長が出席するはずだった会議に、七海が代理で出席するため結と玲奈はサポートとして背後に座る。
会議室は緊張感に包まれ、管区本部長や支局長たちが円卓を囲む。
「3日前の宇都宮での案件に関してですが——」
説明が始まったその瞬間、警報音が鳴り響く。
《緊急警告! 不明勢力の侵入を確認! 全職員は戦闘配置に移行せよ!》
室内がざわつき、職員たちが立ち上がる。
「侵入!?ここは管区本部…!」
司会進行が慌てて指示を飛ばす。
「皆さん落ち着いて!」
結と玲奈も立ち上がる。
「玲奈、行くよ!」
「はい!」
廊下を駆け抜け、中央ロビーへ向かう途中、複数の職員と合流。無線が飛び交う。
轟音。衝撃波が廊下を吹き抜け、2人は思わず身を低くする。
ロビーに現れたのは、フードとサングラスで素顔を隠した男。倒れた職員たちを見下ろすように歩く。
玲奈が一歩踏み出す。
「止まりなさい!!」
男は振り返るも、表情は揺れない。
玲奈が魔力展開に入る瞬間――
ドンッ!!
衝撃波が直撃し、玲奈は後方の壁に叩きつけられる。
「玲奈!!!」
結が駆け寄る。玲奈は意識があるものの身動きできない。
「せ、先輩……行って……大丈夫だから……行って……」
七海が駆けつけ、玲奈を抱えて叫ぶ。
「結!ここは任せろ!お前はあいつを止めろ!!」
結は怒りと恐怖に震えながら、男の前へ立つ。
「……あなた、何者……?」
男は結をじっと見つめ、名前を呼ぶ。
「会いたかった。—結」
結の目に涙が滲む。
背後では救護班が玲奈を運び出す。
「私は……大切な仲間を傷つける奴を……絶対許さない!」
男はわずかに目を細める。
「感情は不要だ。来い。お前はここにいていい存在ではない」
結は震える声で答える。
「ふざけないで……私はここで戦うの。玲奈を守るために!!」
職員たちも構え、支援態勢に入る。
しかし男は首を横に振り、静かに消える。
「っ!? 消え——」
遅れた瞬間、衝撃が結の腹部に直撃。
全身が空中に浮き、後方の柱に叩きつけられる。
「ぐっ……ッッ……!!」
倒れた結を前に、男は静かに言い残す。
「次に会う時、お前は選ばなければならない。世界か——自分か」
結は震えながら声を絞り出す。
「黙れ……やめろ……っ……!」
男は立ち去り、静寂が訪れる。
七海が叫ぶ。
「結!!!! 救護班!結が倒れている!!」
結は魔法で治療しようと試みたものの、視界が揺れ、意識を失った。
次回に続く....




