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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第五章 関東巡遊(後編)
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第1話 バディ

翌朝、2人は朝食を終え、宇都宮支局の控室で仕事の準備をしていた。


「先輩ともこれでお別れですか…」

玲奈が寂しそうに呟く。


「まあ、私は全国を巡回する部署だから…ずっと同じ場所にいるわけにはいかないんだ」

「……先輩、ありがとうございました」

「うん、私も一緒に仕事できて楽しかったよ」


荷物をまとめ、出発しようとしたその時――

「お、いたいた!」

廊下の奥から七海が歩いてきた。


「七海さん?」

「連絡しなくてもここに来ると思ってね。ちょうど良かった」

七海はニコッと笑い、本題を切り出す。


「君たち2人、今日から正式にバディを組んでもらうよ」


結と玲奈は一瞬時が止まった。

「えぇぇぇ〜〜〜!?」

結が叫ぶ。一方、玲奈は飛び跳ねて喜ぶ。

「やったぁぁぁ!!」


「ど、どうして急に…?」

「相性がいいからさ。現場での連携も、判断も、カバーも、あれだけ噛み合うバディは貴重なんだ。だから昨日と一昨日の休暇は“親睦を深める”意味もあったのさ」

「え、じゃあ……完全に計画されてたってことですか?」

「まあそういうこと」


結は頬を赤くして視線を逸らす。

玲奈は悪戯っぽく笑って――

「ってことは!これからはいつでも先輩の可愛い顔を写真に撮れるんですね!」

「や、やめてよぉ!! なんでそこだけやたらテンション高いの!?」

「だってレアじゃないですか!先輩が照れたり笑ったり怒ったりする顔!」

「うぅ……褒められてるのかからかわれてるのか分からない…」


七海は楽しそうに見守り、次の指示を出す。

「はい、真面目な話に戻す。次の任務は――東北管区本部を経由して盛岡支局に向かってほしい」

「盛岡…岩手県ですね」

「そう。東北の魔力観測データに気になる波形が出てる。調査名目だけど油断はしないこと」


結と玲奈は顔を見合わせ、頷く。

「「了解しました」」


七海は満足そうに微笑み、言葉を添える。

「じゃあバディ第一任務、期待してるよ。気をつけて行ってらっしゃい」

「はい!」

「はいっ!」


2人は箒を手に支局の外へ出て準備を整える。

「先輩!バディ第1任務、頑張りましょう!」

「うん、張り切りすぎて魔力暴走させないようにね」

「だ、大丈夫ですそれは!!」


箒に跨がり、青空へ舞い上がる。結は心の中で小さく思う。

また一緒にいられるんだ――ほんの少しだけ笑っていた。


盛岡に向かう途中、管区本部を経由する。

管区本部では水戸支局長が出席するはずだった会議に、七海が代理で出席するため結と玲奈はサポートとして背後に座る。

会議室は緊張感に包まれ、管区本部長や支局長たちが円卓を囲む。


「3日前の宇都宮での案件に関してですが——」

説明が始まったその瞬間、警報音が鳴り響く。


《緊急警告! 不明勢力の侵入を確認! 全職員は戦闘配置に移行せよ!》


室内がざわつき、職員たちが立ち上がる。

「侵入!?ここは管区本部…!」

司会進行が慌てて指示を飛ばす。

「皆さん落ち着いて!」


結と玲奈も立ち上がる。

「玲奈、行くよ!」

「はい!」


廊下を駆け抜け、中央ロビーへ向かう途中、複数の職員と合流。無線が飛び交う。


轟音。衝撃波が廊下を吹き抜け、2人は思わず身を低くする。


ロビーに現れたのは、フードとサングラスで素顔を隠した男。倒れた職員たちを見下ろすように歩く。


玲奈が一歩踏み出す。

「止まりなさい!!」

男は振り返るも、表情は揺れない。


玲奈が魔力展開に入る瞬間――


ドンッ!!


衝撃波が直撃し、玲奈は後方の壁に叩きつけられる。

「玲奈!!!」

結が駆け寄る。玲奈は意識があるものの身動きできない。

「せ、先輩……行って……大丈夫だから……行って……」


七海が駆けつけ、玲奈を抱えて叫ぶ。

「結!ここは任せろ!お前はあいつを止めろ!!」


結は怒りと恐怖に震えながら、男の前へ立つ。

「……あなた、何者……?」

男は結をじっと見つめ、名前を呼ぶ。

「会いたかった。—結」


結の目に涙が滲む。

背後では救護班が玲奈を運び出す。


「私は……大切な仲間を傷つける奴を……絶対許さない!」

男はわずかに目を細める。

「感情は不要だ。来い。お前はここにいていい存在ではない」


結は震える声で答える。

「ふざけないで……私はここで戦うの。玲奈を守るために!!」


職員たちも構え、支援態勢に入る。

しかし男は首を横に振り、静かに消える。


「っ!? 消え——」


遅れた瞬間、衝撃が結の腹部に直撃。

全身が空中に浮き、後方の柱に叩きつけられる。

「ぐっ……ッッ……!!」


倒れた結を前に、男は静かに言い残す。

「次に会う時、お前は選ばなければならない。世界か——自分か」


結は震えながら声を絞り出す。

「黙れ……やめろ……っ……!」


男は立ち去り、静寂が訪れる。

七海が叫ぶ。

「結!!!! 救護班!結が倒れている!!」


結は魔法で治療しようと試みたものの、視界が揺れ、意識を失った。


次回に続く....


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