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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第四章 関東巡遊 (前編)
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第6話 休暇(前編)


支局に帰ってくると受付の職員が声をかけてきた。


「結さん、玲奈さん。支局長がお呼びです。」


突然の呼び出しに、結は隣の玲奈へ視線を送る。


「……玲奈、心当たりある?」

「ないですよ!?今日ずっと真面目でしたよ私!」

「まぁいいや。行こ。」


二人は支局長室の扉を叩き、中へ入る。


「失礼します。」


室内には宇都宮支局長の鈴木、そして水戸支局の先輩の七海が座っていた。


「あれ?七海さんも?」

「ちょっとね。で、二人に話があるの。」


七海と支局長が目を合わせ、七海がニヤッと笑って宣言する。


「君たち二人は明日、明後日休暇にすることになった。」


玲奈は一瞬フリーズした後、弾ける。


「……え、休暇!?いいんですか!?本当に!?」

「本当。異常処理の働きが素晴らしかった。ちゃんと休みなさい。」

「わぁーい!!ありがとうございます!!」

結は控えめに、少し照れながら。

「ありがとうございます。助かります。」


支局長が微笑む。


「ホテルも手配済みだ。二人で疲れを取ってきなさい。」


部屋を出た瞬間、玲奈は破裂しそうな勢いで跳ねた。


「先輩!休暇ですよ休暇!!!」

「はいはい、騒ぎすぎ。」

「嬉しいんですよ!!!」


翌日、二人は観光を楽しみながら夕方、支局長が用意してくれたホテルへ向かった。

豪華なロビー、上質な照明、上品な匂い。


「先輩……あれホテルですよねぇ……?夢じゃないですよね!?」

「夢じゃないってば。チェックインしよ。」


部屋の扉を開けた瞬間、二人は同時に声を漏らす。


「すご……!」

「露天風呂まであるんだ。」

「もう最高じゃないですかここ!!!」


ベッドに飛びつきそうな玲奈を結が止める。


「ちょっと!先に夕飯に行こ。」

「はーい!」


ホテルから歩いて数分の餃子専門店へ入る。


「先輩どれにします?」

「普通の餃子としそ餃子。」

「じゃあ頼みますね!すみませーん!」


注文を終えた玲奈は上機嫌で、足をバタバタさせる。


「先輩と仕事じゃないご飯って初めてですよね!?」

「そういえばそうだね。」

「なんかデートみたいじゃないです?」

「変なこと言わない。」


それから料理が届く。


「わぁぁめっちゃ美味しそう……!」

「玲奈、熱いから──」

「子供扱いしないでって言ってるじゃないですか!」


しかし一口食べると表情がトロけた。


「……うまっ……!!」

「しそもいいね。香りが最高。」

「先輩、幸せってこういうことですよ!!」


店を出てホテルへ戻る途中、街のイルミネーションが目に入った。


「先輩!見に行きたいです!」

「元気だなぁ。いいよ。」


2人は点灯したイルミネーションを眺めながら歩く。

夜風が心地よく、静かで美しい光に包まれていた。


「綺麗……」

「でしょ!宇都宮すごいですね!」


その時、玲奈が突然スマホを構える。


「先輩、ちょっとそこに立って!」

「なんで?」

「写真撮らせてください!」

「いやいや私を撮っても意味ないって──」

「はい笑って〜!」


パシャッ


結は微妙に照れながら、でも悪くない表情で写っていた。


「……先輩、その顔めちゃくちゃ可愛いです。」

「はあ!?何言って──」

「保存。」

「ちょっと待って!?後で消しなさいよ!!」

「絶対消しません。」

「やめてぇ……」


だけどその顔はほんの少し嬉しそうで、玲奈はそれに気づいていた。


ホテルへ戻り、露天風呂に浸かってのんびり過ごす。


「先輩。」

「なに?」

「今日ほんとに楽しかったです。」

「それは良かった。」


結は玲奈の頭をぽんと撫でる。

玲奈は少しくすぐったそうに笑う。


寝る頃には、玲奈は数秒で眠ってしまった。


「すぐ寝るんだから……子供みたい。」

だが結は優しい顔で、毛布をかけ直してあげた。


「お疲れ様。おやすみ。」


隣で静かな寝息が響く中、結もゆっくり目を閉じた。


朝、カーテン越しの朝日が差し込み、部屋が温かく照らされていた。

玲奈はまだ布団にくるまっていたが、結は先に目を覚ます。


「……よく寝たなぁ。」


ふと横を見ると、玲奈がギュッと枕を抱きしめたまま寝ている。

結は苦笑しながら軽く肩を揺らす。


「玲奈、起きて。朝ご飯行くよ。」

「むにゃ……先輩ごはん……行く……」


眠そうにしながらも玲奈はベッドから起き上がり、なんとか支度を始めた。


ロビー階のレストランに入り席につくと、豪華な朝食ビュッフェが並んでいる。

玲奈は一気にテンションMAX。


「先輩!!パンもあるし卵もあるしサーモンもあるしパフェもありますよ!!」

「パフェは最後にしなさい。」

「ぐっ……見透かされてる……」


2人は皿をいっぱいにし、席に戻って食べ始める。


「先輩、スクランブルエッグめちゃくちゃ美味しいです!」

「ほんとだ、これ作ったシェフ強いな……」

「パンふわっふわですよ!」

「静かに食べなよ。」

「あ……すみません……」


しゅんとした玲奈を見ると、結はくすっと笑う。


「でも楽しそうでいいじゃん。」

「え、怒ってないんですか?」

「怒ってないよ。嬉しそうなの伝わってるし。」


玲奈は耳まで赤くなる。


朝食を食べ終え、ホテルの玄関前で地図を広げながら相談する。


「どこ行く?観光できるの今日だけだし。」

「先輩!大谷資料館ってところどうです!?洞窟みたいでめっちゃ綺麗なんですよ!」

「洞窟……寒そうだけど楽しそう。」

「よし、決まりですね!」


バスで移動し、大谷資料館へ到着。

巨大な採石場跡の地下空間は薄暗くても幻想的な光に照らされていて、まるで別世界。


「すごぉ……」

結は思わず息を飲む。

玲奈は既にスマホを構えている。


「先輩、あそこで写真撮りましょう!」

「また!?昨日撮ったでしょ。」

「いいじゃないですか記念なんですから!」


結は渋々横に立つが、ライトアップされた壁面に映る影が綺麗で、どこか絵になる。

シャッター音が何度か鳴り、玲奈は満足げに微笑む。


「保存……永久保存です。」

「こわいこわい。」

「だって先輩可愛いんですよ?」

「だから!そういうことをサラッと言わないでってば!」


2人は笑い合いながら見学を続け、洞窟の中央付近で立ち止まった。


静かでひんやりした空気。

頭上に広がる広大な空間。

その神秘さに、ふと会話が落ち着く。


「先輩。」

「ん?」

「また……こういう休暇一緒に来たいです。」


玲奈の声は小さく、真剣だった。

結は意表を突かれ、少し間が空く。


「……そうだね。いつかまた来よう。」


玲奈はうれしそうに笑った。

結も笑った。

ただの後輩と先輩の時間なのに、どこか特別な温かさがあった。


資料館を出る頃には昼近くになっていた。


「お昼どうしますか?」

「駅前に行ってカフェでも行こうかな?」

「賛成です!」


2人は笑顔のままバス停へ歩いていく。


後編へ続く....



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