「ローマの休日」のスローリーディング その9
◎場面4 その3
夜、古代ローマ市の広場の遺跡であるフォロ・ロマーノ。
ジョーは石のベンチで寝ている若い女アンを見かける。
タクシーを呼び止め、やむなくアンを連れて自分のアパートに向かいことになる。
(英語のセリフ)
〇[タクシー運転手: It's wrong address. Now look, senor, for me it is very late tonight ... mia moglie ... wife ... I have three bambinos-three bambinos, you know, bambino? My- my taxi go home, I- I go home, er, to- together. Senor-.
〇ジョー: Via Margutta, fifty-one.
〇タクシー運転手: Via Margutta, fifty-one. Oh, molto bene
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Yes, Via Margutta fifty-one. I am very happy. Thousand lira
〇ジョー: Cinque mia
〇タクシー運転手: One, two, three, four mila
〇ジョー: Ok. mille per te
〇タクシー運転手: For me? Oh,grazie mille
〇ジョー: Ok, ok. Now look, take a little bit of that. Take her wherever she wants to go. Hmmm? Capito? Capito. Buona notte
〇クシー運転手: Oh- no, no; moment, moment, moment! No, no, no
〇ジョー: Alright, alright; look: as soon as she wakes up, see? she tells you where she wants to go. Ok?
〇タクシー運転手: Moment, moment: my taxi not for sleep; my taxi-no sleep. You understand? You understand?
〇ジョー: Look, look, pal: this is not my problem, see? I never see her before. Huh? Ok.
〇タクシー運転手: It's not your problem, it's not my problem. What you want: you don't want girl, yeah? Me don't want girl-. Police: maybe she wants girl.
〇ジョー:Stay calmo, stay calmo, ok, ok, ok.
(私訳)
〇タクシー運転手: その場所は違ってます。いいですか、旦那、あっしにとっちゃあ夜もだいぶ遅いし、カミさんが...カミさんが...あっしに は3人のバンビーノ、3人のバンビーノが、バンビーノって分かります? あっしの...あっしの タクシー家に帰る.あっしも一緒に家に帰る。ねえ,だんな
〇ジョー:(ついにあきらめて行き先を言う)マルグッタ通り51 番
〇タクシー運転手:マルグッタ通り 51番ですね! ああ、よかった!
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(タクシーはマルグッタ通り 51番に到着する) マルグッタ通り 51 番です。あっしはすごくハッピーです。
(アパートに到着して)1000リラです。
〇ジョー: 5000リラだ
〇タクシー運転手: 1、2、3、4000リラのおつりです
〇ジョー: どうも、1000リラはチップだ
〇タクシー運転手: 私に?どうもありがとうございます
〇ジョー: オーケー、いいんだ。ところで、ちょっと 頼みがあるんだ。彼女の行きたい所へ連れていってやってくれ。分かった? いいね。じゃあ、お休み。
〇タクシー運転手: おっと! ダメ、ダメ。ちょっと、ちょっと。 ダメ、ダメ、ダメ、
〇ジョー: 分かった、分かった。いいかね、彼女が目を覚ましたらすぐに、いいか? どこへ行きたいか教えてくれるよ、いいね。
〇タクシー運転手: ちょっと。私のタクシーは寝る所じゃないっすよ。分かります? 分かりますか?
〇ジョー: いいかね、あんた、これは僕の問題じゃない、いいね? さっき初めて会った娘なんだ、いいね。
〇タクシー運転手: 旦那の問題でもないし、あっしの問題でもない。どうしたいんです? 旦那がこの娘に用がないなら、そう、あっしにだってこの娘に用はないですよ。そうだ警察だ。警察ならこの娘に用があるかも!
〇ジョー: 落ち着いて、落ち着いてくれ。分かった、分か った、分かったよ。
(ジョーはアンをタクシーから連れ出し、自分のアパートへ向かう)
(チョットひとこと)
1:ジョーのアパートの住所「マルグッタ通り51 番」について
ジョーのアパートは今もその51番地に残っている。この夜のアパートの階段シーン、翌朝の緑が茂る中庭、トンネルのような細い通路、小さな見晴らしの良いバルコニーなどがこのマルグッタ通り51 番のこの小さく素敵なアパートで撮影されたそうな。
若い時、私はこんなアパートに住むことに憧れたものだが、現実は南こうせつの歌う「神田川」のアパートに近かった。
ちなみにこのマルグッタ通りには映画「道」で知られたジュリエッタ マシーナ、 フェデリコ フェリーニも住んでいたことがある。
2:5000リラの由来
タクシーがマルグッタ通り51 番のアパートに到着し、1000リラの運賃を払おうとしてジョーは背広のポケットを探る。そして一瞬「こいつにやられたか!」という表情をしてアンを見つめ、「ああ、そうか」と気付いてズボンのポケットから5000リラをとりだす。5000リラ札がその位置にあった訳は、フォロ・ロマーノで寄りかかってきたアンを不審に思ったジョーが念のために背広の内ポケットからズボンへと場所を変えていたからだ。
ジョーは財布を持たず金をポケットにそのまま入れる習慣を持つ人物として描かれている。私の学生時代にもなけなしの有り金を全部、無造作にポケットに入れていた知人がいた。
ちなみにこの5000リラ札はポーカーで負けたジョーに残されたなけなしの金だった。
3:1000リラのチップ
現在イタリアではタクシーでチップは渡さないか、せいぜいおつりの端数をチップとするようだ。
この場面でジョーのこのイタリア語のセリフmille per te(1000リラはチップだ)は映画の字幕では反映されていないが、このシーンでジョーは運賃と同額の1000リラもチップとして渡している。
字幕で1000リラのチップが翻訳されていれば、この直後のシーンを見る観客は1000リラものチップを渡したジョーの心の内を察したことだろう。
1000リラは手間賃の意味も含まれていたのだ。
4:警察はなぜ彼女?
タクシー運転手のセリフにこうある。
Police: maybe she want girl. (そうだ警察だ。警察ならこの娘に用があるかも)
ここでgirlはヘプバーン演じるアン王女の事、she(彼女)は警察を指す。
何故、警察がshe(彼女)なのだろうか?
運転手がイタリア人だから英語を間違えたのか?それもありうる。
私はこう考える。
イタリア語のすべての名詞は男性名詞と女性名詞に分かれている。名詞に性別があるのだ。
police(警察)はイタリア語ではpoliziaとなり女性名詞だ。そのためこの運転手はshe(彼女)と言ったのだと私は想像する。




