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「ローマの休日」のスローリーディング その8

◎場面4 その2


夜、古代ローマ市の広場の遺跡であるフォロ・ロマーノ。

ジョーは石のベンチで寝ている若い女アンを見かける。

タクシーを呼び止め彼女を送っていこうとするが…


(英語のセリフ) 


〇ジョー: Come on; climb in the cab and go home.

〇アン: Mmmmm... so happy.

〇ジョー: You got any money?

〇アン: Never carry money.

〇ジョー: That's a bad habit.

〇ジョー: Alright, I'll drop you off; come on.

〇アン: It's a taxi!

〇ジョー: Well, it's not the superchief.

〇タクシー運転手: Dove andiamo? Where are we going?

〇ジョー: Where do you live?

〇アン: Mmmmmm? Colliseum.

〇ジョー: Now, come on, you're not that drunk.

〇アン: If you're so smart I'm not drunk at all. I'm just being verrrrry haaaappy......

〇ジョー: Hey, now, don't fall asleep again.

〇タクシー運転手: Per favore, senore, dove andiamo? Where are we- we going?

〇ジョー: Look, now where do you wanna to go? Hmmm? Where shall I take you? Where do- where do- where do you live? Huh? huh? Come on. Come on, where do you live? Come on, where do you live? "

〇アン: Colliseum.

〇ジョー: She lives in the Colliseum.


(私訳)  


〇ジョー: (再び眠りかけたアンを支えて起こしながら)早く、タクシーに乗って、帰りなさい

〇アン: とても光栄です

〇ジョー: 金は持ってるか?

〇アン: お金は全く持ち歩きません

〇ジョー: そいつは悪い習慣だ

〇ジョー: 分かった、便乗させてあげるよ。さあ、来なさい。

〇アン: タクシーじゃない!

〇ジョー: そりゃスーパーチーフじゃないさ。

〇タクシー運転手: どこへ向かいますか?

〇ジョー: どこに住んでるんだ?

〇アン: コロセウム

〇ジョー: おい、よせよ。君はそんなに酔っ払っちゃあいないだろ

〇アン: とても頭がいいのね。私、全然酔ってなんかいないわ。 ただとても楽しいの

〇ジョー: おい、また寝ちゃダメだ

〇タクシー運転手: お願いしますよ、旦那。どこへ行けばいいんですか?

〇ジョー: (苛立ってアンを揺さぶりながら)どこへ行きたいんだ? え? どこ へ連れていってほしい? どこ、どこに住んでいるんだ? なあ、えっ? さあ、言いなさい。どこに住んでいる?

〇アン: コロセウム

〇ジョー: (ついに万策尽きてあきらめたように)コロセウムだとさ


(チョットひとこと)


①タクシーについて

タクシーを見たアンは

It's a taxi! (タクシーじゃないの!)

と驚きの声を上げる。

やんごとなき身分の王女であるアンはタクシーに乗る事など今までなかったのだろう。

ジョーの口笛で停まったタクシーをよく見てみることにしよう。

前のドアの横にLIBEROと表示が出ている。「リーベロ」と発音し、サッカー用語の「リベロ」もこれに由来するが、ここでは「空車」を意味するイタリア語。

しかしそれを除けばタクシーであることを示すサインはこの車体には見当たらない。

現在のイタリアのタクシーはどうかというと、車の屋根にTAXIの表示が乗っているのでそれと分かる。車体の色はイタリア全土で白であり、ドアにタクシードライバーのライセンス番号も明記されている。

タクシーに乗るにはTAXIの表示が出ているタクシー乗り場で乗るか、ホテルなどで呼んでもらうかで、「ローマの休日」の時代と違って現在では流しのタクシーはない。

もしあれば、それはもぐりの白タクで、ぼったくられる危険が無きにしも非ずである。


②タクシードライバーについて

このシーンでイタリア語と英語のチャンポンでしゃべる滑稽なタクシードライバーを演じているのはイタリア人俳優のアルフレード・リッゾ。

1902年フランスのニース生まれで、1991年、ローマで89歳で亡くなった。

「ローマの休日」の後、1956公開のキング・ヴィダー監督作品「戦争と平和」では出演者名の出ないノンクレジットではあるが出ている。この作品ではヘプバーンが主役のナターシャを務めており、役の重要さこそ違うが「ローマの休日」以来3年ぶりの共演だった。

さらに1960年のフェデリコ・フェリーニ監督作品「甘い生活」にもこれまたノンクレジットではあるが出演している。

アルフレード・リッゾはその後監督としてもいくつか作品を残している。


③スーパーチーフについて

さて、アンが

It's a taxi! (タクシーじゃないの!)

と驚きの声を上げたのに対してジョーは

Well, it's not the superchief.(まあ、スーパーチーフじゃないけどね)

と答えている。

この「スーパーチーフ」という言葉は映画の日本語字幕では訳出されていないようだ。

「スーパーチーフ」は1936年から1971年までシカゴとロサンゼルス間に運行していた大陸横断の豪華列車。

映画の都ハリウッドを通ることから、俳優などの映画関係者の利用も多く、"The Train of the Stars"(スター列車) と呼ばれたそうな。

タクシーに乗りこむシーンではアン王女は(この時点でジョーはまだ彼女が王女であることには気づいていない)宿舎で医師にうってもらった注射の影響で睡魔に襲われ続けている。

「スーパーチーフ」には寝台車も連結されており、ジョーのセリフにはそれにちなんで「豪華寝台列車では送ってあげられないが、今夜はこれで我慢してくれ」というユーモアが込められていることを、1953年この映画公開当時のアメリカ人の観客は嗅ぎ取り、笑いを誘われたことだろう。



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