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「ローマの休日」のスローリーディング その1

◎場面1

ヨーロッパ親善旅行の最終訪問地、イタリアの首都ローマ。舞踏会を終えた夜、宿舎となった大使館のアン王女の寝室。アン王女と秘書役の伯爵夫人


(英語のセリフ)


〇アン王女: I hate this nightgown. I hate all my nightgowns. And I hate all my underwear too.

〇伯爵夫人: My dear, you have lovely things.

〇アン王女: But I'm not two hundred years old!  Why can't I sleep in pyjamas?

〇伯爵夫人: Pyjamas!

〇アン王女:Just the top half. Did you know there are people who sleep with absolutely nothing on at all?

〇伯爵夫人: I rejoice to say that I did not.

〇アン王女: Listen.

〇伯爵夫人: Oh, and your slippers. Please put on your slippers and come away at the window.  Your milk and crackers.


(私訳)


〇アン王女: (ベッドで髪をとかしながら)このネグリジェ大嫌い。私のネグリジェはどれも嫌い。下着だってどれも嫌いなのばかり

〇伯爵夫人:王女様、素敵なものをお持ちですよ

〇アン王女: 私は二百歳じゃないわ。どうしてパジャマで寝てはいけないの?

〇伯爵夫人:パジャマですって!

〇アン王女: それも上だけでよ。何も着ないで寝る人もいるってご存じ?

〇伯爵夫人:幸せなことに存じません

〇アン王女: (屋外から音楽が聞こえてくる)聞いて(アンはベッドから飛び出し、窓に駆け寄り外を見る)

〇伯爵夫人:まあ、スリッパもはかないで。さあ、スリッパをお履きになって、窓から離れてベッドにお戻りください。ミルクとクラッカーをどうぞ。


(ちょっとひとこと)


①ヘプバーンとマリリン・モンロー


アン王女は寝間着に着替え、髪をとかしている。

アンはこのクラシックな寝間着が気に入らない。

世話役の伯爵夫人との会話。

◎アン王女:。私は二百歳じゃないわ。どうしてパジャマで寝てはいけないの?

◎伯爵夫人:パジャマですって!

◎アン王女:それもパジャマの上だけで。…何も着ないで寝る人がいるのをご存じ?


このアン王女の「それもパジャマの上だけで。…何も着ないで寝る人がいるのをご存じ?」というセリフの背後に私は「ひょっとしてモンロー…」と思った。


「ローマの休日」のオリジナル脚本を書いたのはダルトン・トランボ。

この映画の制作が進行していた1950年代の初頭はマッカーシズムと呼ばれる共産主義者排斥運動が映画の都ハリウッドにも吹き荒れていた。

ダルトン・トランボは左翼主義者であるとの理由で当局のブラックリストに載せられ、ハリウッドから追放状態にあった。

発表の場を奪われたトランボは友人のイアン・マクラレン・ハンターの名前を借りて「ローマの休日」のオリジナルシナリオを発表し、それをハリウッドが買ったことで「ローマの休日」が陽の目を見ることになった。

私は上記のセリフはトランボがマリリン・モンローのインタビューにヒントを得たのではないかと思ったのだ。


果たしてそうだった。

1952年、当時人気の絶頂にあったモンローは記者のインタビューに次のように答えている影像があった。

「何を着て寝ていますか? パジャマ? パジャマの上だけ? ネグリジェ?そう聞かれたの。 だからシャネルの五番と答えたの。 本当のことだから。 裸でなんて言えないでしょう。でも…本当なの」


インタビューのモンローの言葉「パジャマトップ?」 はアンのセリフの「それもパジャマの上だけで」というセリフに、そして「裸でなんて言えないでしょう」 は「何も着ないで寝る人がいるのをご存じ?」というセリフに符合する。


「ローマの休日」が公開された1953年、ヘプバーンより3歳年上のモンローは「ナイアガラ」「紳士は金髪がお好き」「百万長者と結婚する方法」の3作に主演しており、押しも押されもせぬハリウッドのトップスターの座にあった。

一方、当時24歳のヘプバーンはアメリカ映画第一作の「ローマの休日」で、モンローがついに手に入れることが出来なかったアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、一気に栄光の座についた。

「ローマの休日」のこのシーンの背後に、オードリー・ヘブバーンとは正反対の個性のマリリン・モンローがいた事は、チョット面白い。

モンローはこのシーンを見て人知れず微笑んだと私は思いたい。


②「私は二百歳じゃないわ」について


このセリフ、映画の字幕によっては「私はおばあさんじゃない」となっている。

この映画が封切られた1953年のアメリカの映画館では、このセリフ

”I'm not two hundred years old”

がアン王女の口から発せられた時、そのユーモアに観客の間からは笑い声が起こったのではないかと私は想像する。

私も年寄り扱いされた時には長年このセリフを使っているが、相手は苦笑も含めてだが、まず例外なく笑ってくれる。

そしてそのセリフが「ローマの休日」のヘプバーンに由来することを教えると、相手は何となく私を見直したような、「おぬし、やるな」という表情になり、私はしてやったりということになる。



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