第5話:王都の陰謀が動く
夜の王都は静まり返り、街灯の明かりが石畳に揺れている。紗夜は赤い薬瓶を手に、庶民街を巡回していた。昨夜調合した薬で、青い斑点の症状は落ち着いていたが、根本的な原因はまだ解明されていない。
「……まだ誰かが動いている」
ルイスが心配そうに後ろをついてくる。
「お姉さん、王城の内部にも手がかりがあるんじゃないですか?」
紗夜は頷く。「ええ。でも、慎重に行動しなければ。犯人は巧妙だから」
その頃、王城では第二王子フィリップが密かに動いていた。青い瓶の毒成分を調べ、独自に追跡している。王城内の医療関係者の間にも、微妙な緊張が走る。誰が味方で、誰が敵なのか、見極めは容易ではない。
紗夜は夜闇に紛れ、王城裏手の倉庫街へと向かう。情報筋によれば、香料の一部が密輸組織を通じて王城に持ち込まれているという。倉庫に忍び込むと、積まれた箱の中に香料の入った小瓶が並んでいた。青い瓶と同じ成分を含むものもある。
「やっぱり……計画的に運ばれている」
紗夜は手際よく成分を分析し、毒性を中和する応急処置薬を作る。箱を一つずつ調べていると、背後に微かな気配を感じた。振り向くと、薄暗い影が立っている。
「……貴女が紗夜か」
声の主は、密輸組織の一員だった。刃物を手にしている。
「ここで何をしている!」紗夜は毅然と叫ぶ。
「俺たちは……王都を操る力のために動いている」
組織の男は冷笑する。香料に毒を混ぜ、人々の恐怖を利用しようとしていたのだ。
瞬間、カイが影から現れ、手刀で男の攻撃をかわす。
「紗夜さん、危ない!」
ルイスも後ろから駆けつけ、男を押さえる。紗夜は冷静に薬瓶を取り出し、毒の中和液を振りかける。すると、男は苦しみもだえることなく倒れた。
「……これで、今夜の被害は防げます」
紗夜は息を整え、周囲の香料を確認する。全ての毒成分は、現場で抑制可能だと判断した。
翌日、王城では事件の余波が広がる。第二王子フィリップは紗夜に目を合わせ、わずかに微笑む。
「貴女の力は本物だ……協力してくれるか?」
紗夜は頷く。「ええ。王都の人々を守るために、できることは全部します」
街では青い斑点の症状が次第に消え、庶民も安心を取り戻しつつある。しかし紗夜の心には、新たな疑問が芽生えていた。香料に毒を混入した真犯人は誰なのか。王都の陰謀は、まだ完全には解明されていない。
赤い薬瓶を手に、紗夜は青い月の夜を思い浮かべる。
「この事件を解決したからといって、王都の闇が消えるわけじゃない……でも、少なくとも、私が立ち向かう道は見えた」
青い月夜と赤い薬瓶――紗夜の戦いは、ここからさらに大きく動き始めていた。
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