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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
4章_夢の跡地

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98/229

4.32_赤龍

赤茶けた大地に眠る、夢の跡地。

楽園の戦いを締めくくる相手は、全ての生物の頂点、ドラゴンだった。


かつてセントラルに顕れ、一息で摩天楼の一角を破壊した赤い龍。


黄色い瞳に、爬虫類のような縦に長い瞳孔。

灼熱を思わせるような、紅に揺らめく鱗。

四本の足に、巨大な翼。


絶対者の存在感が、地上に暗い太陽の影を落とす。

影の下では、3機のCEが赤龍を睨む。


『報告、力場の乱れの鎮静化を確認。赤龍の魔力が、時空間に作用していると推定。』


暗い太陽の上に立つ赤龍は、生物の頂点。

絶対の支配者。


彼の者は、存在するだけで時空間に影響を及ぼす。


圧倒的な質量が、空間を歪めて重力を生み出すように。

彼の者が内包する魔力は、存在するだけで時空間を押し潰し圧迫する。


――世界が、龍という存在を抱えきれない。


龍の周りを、暗い黒環が覆っている。

太陽の光が捻じ曲げられ、龍の魔力に絡め取られているのだ。


『パイロット、戦い勝つより道はありません。共に参りましょう。』

「大丈夫。みんな、そのつもりさ。」


3機のCEが、同時に空に飛び立った。



この大地には、赤龍を追って来た。

月の女神の導きに従って、ここまで来た。


だから、赤龍との交戦も予想はしていた。


「――ジャッカルさん、応答をお願いします。――ジャッカルさん。」


アリサが、戦線から一時撤退していたジャッカルに応答を呼びかける。

もとより、龍を3人で相手取れるとは想定していない。


そのためのジャッカル、そのための前線基地。

‥‥だがしかし、ジャッカルは通信に応えない。


「こちらアリサ。前線基地に連絡。夢の跡地に赤龍が出現。対龍兵器の準備を――。」

「無粋な真似は許さないわ。」


底冷えするような声が、アリサの声を遮った。


「動いてはダメよ。そうすれば、龍の火を待つまでもなく、あの子たちを私が殺す。」


動こうにも、動けない。

輸送機に居る誰もが、アリサも、ブレッドも、副操縦手のロボットでさえ、動けない。


まるで、血管に直接氷を流し込まれるような、威圧感とプレッシャー。

自分の身体が世界から切り離されてしまったような、強烈な孤独感。


いま、自分の皮膚の――、皮一枚の向こうには虚無が広がっていて、それに触れたら身体がバラバラに崩れてしまいそうな、肌のすぐそこに触れている絶望感。


何も聞こえない、何も考えられない。

自分の心臓の音と、()()の声以外。


‥‥まだ、自分は生きている。生きていられる。

生きることを許されている。


「‥‥そうよ、良い子ね。素直な子は好きよ。」


そう言い残して、それは居なくなった。


解放される。

場を支配していた威圧感や孤独感、絶望感から解放される。


「‥‥こちらアリサ。全ての部隊と基地に連絡。エージェントと龍が交戦を開始。

 介入は不要です。繰り返します、絶対に介入は止めてください。」



鉄の戦士が、龍に挑む。

それはかつて神話の再演、超自然超常たるドラゴンに、刃を向ける英雄譚。


赤龍が空から吠えた。

吠えた口から、彼が内包する魔力が漏れ、空間を圧し潰していく。


龍に挑むCEが、魔力を纏った大気に圧し潰される。

ブースターの推力が、龍の一声に押し負けて地上に叩き落とされる。


龍が息を吸い込む。

それだけで、灰色の平原の地表に砂煙が舞う。


夢の跡地を覆う森の木々がざわめき立つ。


赤龍が口から灼熱の火炎を吐いた。

――太陽が落ちるなどという生温い表現では足りない。


例えるならば恒星の爆発。


口から零れた炎によって、乾燥しているはずの大気が爆発した。

水蒸気爆発ではない。これは窒素爆発。


空気中に最も多く存在する分子が、魔力による高熱と高圧で爆発を引き起こしたのだ。


エヌツー爆弾。

架空の兵器を、サイエンスフィクションの兵器を、魔法の世界の生物が事も無げに駆使する。


吐き出された爆発が地上を襲う。

爆発は魔力を纏い圧縮され、火球に変化する。


CEほどの大きさの火球が地上へと落ちる。

ブースターを吹かし、回避する。


握りしめる操縦桿に、妙な引っ掛かりを感じた。

瞬間、火球が爆発し、爆風に機体が煽られる。


爆発の寸前、魔力の凝縮を感じた。

あの火球は引力を持っている。


爆発の力を、魔力で無理やり火球のサイズに押し留めているのだ。


モニター越しから龍を見上げる。

何もかも、その一挙手一投足が規格外。


直撃したら、それだけで終わる。


赤龍は、また息を吸い込む。

一撃必殺を、自分でも理解しているのだろう。


足元の生き物を嘲笑うかのように、空から一方的に蹂躙を行う。


息を吸い込み、大地に塵を上げさせ、木々をざわめかせる。

自分以外の者が、(こうべ)を上げさせることを許さない。


「そこだぁッ!」


一矢報いる。

ダイナの操るホワイトナイトが、肩に載せた武装で反撃をした。


エネルギーショットガンは、チャージが可能。

チャージすることにより、魔力弾の拡散を抑え、スナイパーライフルのように運用ができる。


両脚だけでなく、両腕も地面について、反動に備える。


白銀の魔力が射撃される。

――銃口から、怪物が放たれた。


反動でホワイトナイトは10メートルほど後退。

白銀の魔力は、巨大なバリスタとなり、空に向けて一直線に向かう。


龍の周りに漂う、暗い黒環。

時空間の歪みを貫通して龍の喉に直撃した。


赤龍が怯んだ。

そこに追撃、空に飛び出していたプロトエイトが赤龍の翼を切り裂く。


「シンクロ!」


褪せたカラスに、自分の闘志を流し込む。

魂と鉄の肉体がリンクする。


カラスの傷が、身体を蝕む。

機体に負っているダメージがフィートバックされ、自身も自傷してしまう。


リンクの代償を払い、対価として機体の性能が向上する。

翼は速度を増し、刃は切れ味を増す。


龍の表皮の薄い部分、龍の翼を狙った斬撃は、見事に切り傷をつけた。


褪せたカラスが翼を大きく広げる。

旋回、伸ばした翼の末端を起点にして、機体を切り返す。


赤龍とて、無欠では無い。

旋回性能ではプロトエイトに軍配が上がっている。


機体を切り返し、赤龍が反撃に映る前に後ろ足を斬りつけた。

この攻撃は、鱗に阻まれる。


しかし、切れなくとも、剣の質量による打撃は通ったようだ。


――畳みかける。

JJの駆るテストウドが頭突きを放つ。


翼と後ろ足に気を取られていたタイミングで、胸に向けて頭突きが突き刺さった。


(‥‥重いッ。)


CEの中でも最重量の突進を食らっても、赤龍はビクともしない。

逆に、テストウドが反作用で跳ね返されてしまう。


ならばと、JJはシンクロ。

機体に闘志を吹き込む。


機体はより堅く、より重く。


「ぬぅん!!」


テストウドのぶちかまし。

再び龍の胸部に、全霊の体当たりをぶちかました。


両手を短く構え、捨て身の突撃。


突っ込み、ぶちかまし、組み付く。

テストウドの両手に魔力が集まる。


鉄砲。

魔力回路がショートし、爆発を起こす。


ぶちかましの衝撃と、爆発による衝撃で赤龍を攻撃した。


赤龍は、愚かにも組み付いてくるテストウドを長い首で見下ろし、息を吸い込む。

エヌツーブレスが来る。


それを白銀の矢が阻む。

悠長に伸ばした首を、ホワイトナイトのバリスタが穿った。


再び赤龍が怯む。


テストウドが組み付きを解く。

――頭突き。


自分を見下ろしていた顔の下顎を、全霊で頭突きで叩く。

下顎を叩かれて無防備に伸びた首筋を、プロトエイトが狙う。


バリスタが命中した傷跡に、カタールを突き刺した。

深々と、カラスの嘴が通る手ごたえを感じる。


これは、ダメージになった。

‥‥食らいつけている。薄氷の上で、勝負になっている。


赤龍が再び吠える。

彼を覆っている黒環が膨張する。


その中にいたプロトエイトと、テストウドが弾き出されて強制的に高度を下げられる。

カタールを首に刺したまま龍から離されてしまった。


龍が、ゆっくりと地上に降り立つ。

自身に群がる矮小な生き物を、敵と判断した。


‥‥‥‥。

‥‥。


ブレスを吐く。

大きく息を吸い込まず、ただ呼吸をするように息を吐き出した。


火球はホワイトナイトを狙う。

ブースターを吹かせる、盾を構える。


シンクロ。白銀の盾が火球を打ち破る。

赤龍の顔面をシールドバッシュが捉えた。


さらに、納刀していたエネルギーソードを抜刀。

居合ブレード、白銀の刃が龍を切り裂く。


――効いている、戦えている。


赤龍は首を振るい、ホワイトナイトを叩き落とそうとするが、それは空を切る。


空から、翼の生えた力士が頭突きを放った。

プロトエイトに抱きかかえられ、加速をしてもらったテストウドが、赤龍の背中に頭突きを落とす。


金属と金属がぶつかった音が響き、龍の鱗にヒビが入る。


そして、ヒビから炎が噴き上がる。


「‥‥ぐッ!?」


テストウドが炎に巻かれる。


炎はマグマように、機体に付着し、CEの耐久力を削っていく。

マグマから逃れるため、空に避難する。


赤龍が翼を広げ、黄色い瞳を不気味に光らせる。


翼に幾つもの魔法陣が出現し、そこから熱線が放たれた。

周囲を無作為に、そして見境なく焼いていく。


赤龍の正面に立っていたホワイトナイトが、熱線を掻い潜る。


正面に熱線を浴びせる背後から、プロトエイトが龍の翼を狙う。

――が、その目論見は龍の長い尾によって阻まれる。


自分の背後から翼を狙うカラスに対して尻尾を振るい、追い払った。


赤龍は四つ足を踏み鳴らす。

自身のプライドを傷つけた怒りを大地にぶつけるように踏み鳴らす。


すると、地中から憤怒の炎が地上を襲う。

翼の熱線と、地中からの憤怒によって、地上を炎獄の牢へと変えていく。


この波状攻撃には、たまらずCE3機は空へと逃げようとする。

ブースターを吹かし、高度を上げる。


その時‥‥、龍が吠えた。


黒環が一層暗くなり、場の圧力が一層強くなる。

CEの翼が奪われる。


地面に叩きつけられ、憤怒の嵐に飲まれた。


CEの耐久が、熱に当てられて削られていく。

熱線や憤怒に触れずとも、機体が悲鳴を上げている。


「――ッ!? このッ!!」


ホワイトナイトが、ショルダーショットガンにエネルギーを送る。

軽量級CEを跡形も無く吹き飛ばす一撃で、龍の独尊を止める。


CEの出力が低下し、コックピットの光源が消える。

シンクロ、更にショットガンの威力を増幅する。


照準を合わせる。照準を睨み、その向こうの龍を捕捉する。

操縦桿の引き金に指をかけた暗い機内で、龍と眼があった。


ショットガンのトリガーが引かれ、魔力の束が発射される。

魔力の子弾は龍を捉え、近距離であったこともあり、龍の独尊を止める。


火炎の暴走は収まった。


だが、同時にホワイトナイトが龍の前で跪かされた。

機体の上から、巨大な鎚で殴られたように、機体が強烈な衝撃と共に地べたに叩きつけられた。


その衝撃で、肩のショットガンが破損。

マウントレールの上から千切れて地面に転がる。


素早く機体を起こし、咄嗟に盾を構えた。

龍の尻尾が、ホワイトナイトをムチ打った。


盾に守られて、直撃は免れる。


プロトエイトが翼を広げる。

黒環の圧力を振り切って、空を駆け、龍の首を目指す。


そこに刺さった、カタールに手を掛ける。


「シンクロ!」


突き刺したカタールを捻じり、刃を下に向けて思いっきり振り下ろす。

テストウドが、そのプロトエイトの上に飛び乗る。


瞬発力で黒い圧力を振り切り、プロトエイトにヒップドロップをする。


これで二馬力――、二百人力!!


褪せたカラスが、力士の力を借りて、赤龍の首を深く長く切り裂いた。


龍が吠えた。

吠えて、黒環の圧力が強まり、ますます自分をカラスの嘴が傷つける。


しかし、龍に挑んだ小鳥もタダでは済まなかった。

マグマのような血によって機体が爛れ、カタールを握っていた右腕が限界を迎え、胴体と離れ離れになる。


機体の重心が変わり、翼の制御が利かなくなる。

それを、テストウドが小脇にかかえて着地する。


龍が前足を上げる、カラスと力士を踏み潰そうとする。


シンクロ、堅さと重さを強化する。

テストウドが、龍の右前足を片手で受け止めた。


前腕に魔力を送る。

効率化されたジェネレータの最大出力。


全身全霊の鉄砲!

魔力の爆発で押し返す!


‥‥と、それをやろうとしているのに、一向に魔力の爆発は起こらない。


なぜか?

簡単である、魔力回路がショートするほど、テストウドに余剰魔力が発生していない。


ヨモギ力士は、龍と拮抗するので一杯一杯なのだ。


プロトエイトが、テストウドの手を離れる。


背中に装備しているブロードソードをパージ。

残った左手で拾い上げる。


遠心力を使って、龍の前足、左の前足を切りつける。

片手で、なおかつスピードの乗っていない攻撃は、大したダメージになっていない。


左前腕に装備したクナイガンを射撃。


高度を上げつつ、頭を狙う。

それを赤龍は、鬱陶しがるように翼で叩き落とした。


人間が、目の前をちろちろ飛ぶ蚊でも叩くように、翼でカラスを叩き落とす。


ホワイトナイトが、その振るった翼に剣戟を放つ。

緑色の魔力で形作られた刀身が、翼を傷つける。


龍は反射的に翼を操り、ホワイトナイトも弾き飛ばす。

それを盾で防ぎ、慣性のまま離れていく。


テストウドの反撃。赤龍の手が緩んだ。

ホワイトナイトを追い払うために、上体が浮いたのだ。


――鉄砲!


力士の腕が爆ぜて、龍の骨の芯を響かせた。

鱗が裂けて、マグマのような血が滴り落ちる。


テストウドが後退する。赤龍も後退する。


‥‥力士が膝をついた。

先ほどの取っ組み合いが響いている。


3機とも、目に見えてボロボロになっている。

プロトエイトは片腕を失い、テストウドは正面の装甲が溶け、ホワイトナイトは肩の武装を失っている。


もう、長くは持たない。

一気にケリをつける必要がある。


ダイナが、機体の肩から外れたショットガンをモニター越しに見つめる。


「セツナ、JJ。ボクに時間をちょうだい。」


ダイナに、何か状況を打開する策があるらしい。

JJが、彼女に問いかける。


「何をすれば良い?」

「ボクを守って。それで決める。」

「セツナ、聞こえたな?」

「任された。」


作戦は決まった。


プロトエイトが飛び立ち、龍の前に出る。

その隙に、ホワイトナイトは肩から外れたショットガンの元に駆ける。


片腕のカラスが左手で剣を握りつつ、左腕のクナイガンで射撃。


クナイガンの威力は雀の涙ほど。

だから急所の目を狙う。


機体が右側に傾いたまま、龍に接近する。


しかし、肝心の赤龍はどこ吹く風。

プロトエイトを無視し、彼を適当に翼であしらって前進。


ホワイトナイトに狙いを定め、ブレスを吐いた。

弱い火球が白銀騎士を狙う。


そこにテストウドが割って入る。

両手を交差させ、火球を機体の装甲で受け止めた。


その後ろで、白銀騎士がショットガンを両手で拾う。

拾い上げて、背中からチューブが伸びて、ショットガンに接続された。


ショットガンはまだ生きている。

およそ武器と認識されないコレは、射撃の負荷に耐えるため、相応に丈夫に拵えられている。


チューブからエネルギーの充填が始まる。


CEの運動性能が著しく低下する。

まともに、赤龍の攻撃など躱せない。


赤龍は、ホワイトナイトに向けてブレスを吐き続ける。

翼は度重なる被弾で傷ついた。回復にはしばし時間を要する。


銀色騎士のバリスタを最も警戒すべきと、ブレスを吐きつつ前進する。


――バリスタのチャージが終わる。

けど、まだ足りない。龍を仕留めるにはまだ足りない。


リミッターを解除。安全弁を封鎖。

チャンバーの許容限界まで魔力を詰め込む。


テストウドは、騎士を守る盾となり火球の雨を耐えている。

腕の装甲が剥がれても、機体が溶けようとも、一歩も動かない。


攻勢一方の赤龍、防衛一方のCE。


その戦況を、褪せたカラスが塗り替える。

カラスの爪が、空から強襲。


スピードをつけ、重力を味方につけ、回転斬りの遠心力を追加して、のうのうとブレスを吐く頭に剣戟を浴びせた。


龍のブレスは止まった。

剣は砕け、プロトエイトの左腕が千切れた。


龍が口を開き、ブレスの構えを取る。


「――シンクロ。」


もう武器は無い、そう龍は油断した。

だがプロトエイトに武器はまだ残されている。


鳥が持つ最大の凶器は、いつだって足にある!


闘志によって急加速した褪せたカラスが、龍の目に爪先(つまさき)を食い込ませた。

横幅が狭い袴のような形をした足の爪先が、急所を穿った。


頂点としての驕りを突いた、か細い生命の一撃。


龍の左眼が潰れた。

痛みに悶え、首を振るい、鳥を地べたに落とした。


左足で踏みつける。

怒りと膂力に任せて、機体を潰す。


プロトエイトの胸が潰れ、コックピットがひしゃげていく。


龍は、隻眼でホワイトナイトを睨む。

息を大きく吸い、遠くの木々をざわめかせ、爆発する火球を放った。


エヌツーブレス。

科学を凌駕した魔法の一撃。


「シンクロ!」


JJが闘志をテストウドに送り込み、エヌツーブレスと激突した。


テストウドが爆発を濃縮したブレスを抱え込む。

抱え込んだ指が、腕が、瞬く間に溶けていく。


コックピットの室温が上昇する。

操縦桿を握る手から煙が上がる。


着ているスーツのネクタイピンが溶けて、ネクタイにへばりつく。

機内の湯沸かし器が、気化した水の圧力に耐えられずに爆発し、室内が煙に覆われる。


そんな地獄のような機内に、電子音が響く。

ショットガンのチャージが終わった。


「ぬぅぅぅぅん!!」


最後の力を振り絞り、ブースターを吹かせる。

ホワイトナイトに直撃はさせない!


腕の無い機体で爆発を抱え込み、火球を左へと僅かに逸らした。

銀色騎士の左で、爆発が起こる。


爆発によって、銃を構えた銀色騎士は横に滑る。


盾の外に出たホワイトナイトを、赤龍が睨んでいる。

左足で潰していたカラスを引き摺ってから捨てて、騎士に向かってブレスを放つ。


エヌツーブレス。

あくまでも頂点は自分であると、歯向かった者に身の程を分からせるため、龍は攻撃を選ぶ。


ホワイトナイトは横に滑る。

横に滑りながら照準を合わせる。


迫る火球の向こうの赤龍。

彼の者に向かって、引き金を引いた。


白銀のバリスタが放たれる。

引き金を引いた瞬間、ショットガンは両腕の中で砂になって消えた。


白銀は、火球と衝突し、それを貫き、龍の胸を深々と貫いた。


龍が吠える。爆発が起きる。

ホワイトナイトは膝をつき、吹き飛ばされ、動かなくなった。


‥‥夢の跡地に、静寂が訪れる。

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