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4.01_CEシミュレーション

CCC支部、地下2階。

シミュレーションルーム。


格闘戦闘や射撃、パルクールなどを、専用のシミュレーターで練習することのできる区画。

クラスやスキルの練習に適したこの場所では、CE (センチュリオン)のシミュレーションもすることができる。


『それでは、CEパイロット養成プログラムを開始します。パイロットは、CEに搭乗してください。』


訓練用の仮想空間に、シミュレーションルームを管理するAIの電子音声が響く。

ここは、電脳の世界の、そのまた電脳の世界。


後ろに待機しているCEに乗り込む。

直立しているCEの胸にマジックワイヤーを撃ち込み、機体に接近する。


CEのコックピットがある胴体部分に近づくと、テレポートが作動し、機内へと瞬間移動する。


コックピット内にはCEを操作するためのインターフェイスがいくつも並んでいる。

目の前には、棒状の操縦桿が床から伸びており、その床の左右にペダルがいくつか並び備え付けられている。


この操縦桿とペダルを、座った状態で操作。

その他、手の届く範囲には、多目的出入力装置やレーダー各種が表示されており、全体的な雰囲気は飛行機やヘリコプターのコックピットや操縦席に似ている。


飛行機やヘリに似ているからこそ、CEを駆る者のことは「パイロット」と呼称される。


パイロットと呼ばれているものの、CEに乗るのに空を飛ぶ乗り物を操作できる必要はない。

なぜなら、CEは「巨大人型兵器」なのだから。


人体の扱いは、機械よりも人間の方が良く知っている。

それが道理だ。


ならば、人間の電脳野とCEの中枢(メイン)システムをリンクして、CEを巨大な外装、パワードスーツとして利用する。

あるいは、拡張された人体、第二の人体として操ってやればよい。


電脳野は、エージェントであれば皆、自分の脳内に構築されているはずなのだから。

※M&Cは、ハードVRと呼ばれるゲームで、電脳野の構築および保有するためのライセンスが求められる。


CEの操縦桿を握る。

人間の電脳野と、機械の中枢システムがリンクし、CEが起動する。


機内の前方と左右の壁に、カメラで捉えた映像が投影される。

電脳野でCEを動かす。


電脳野の中に、自分以外の身体を認識するためのイメージが、CEとのリンクによって構築される。

まるで、CEに自分の意識が憑依したかのように、自分の身体では無いはずなのに、何をどうすればどのように動くのかが理解できる。


自分が二足歩行する時、あるいは呼吸をする時、ヒトはそれをそれとして意識し、身体を意識的にコントロールするだろうか?

その応えは否。歩く、呼吸する、持ち上げる――、諸々の動作は無意識によって処理される。


CEの操縦を、物凄くざっくばらんに説明すると、子どもの人形遊びと一緒だ。

自分で無い物を、自分の意思で自由に動かす。


CEの操作もそれと同じだ。


CEの重心の情報や、複雑な駆動系の回路、金属の肉体を構成パーツの運動能力や関節の可動域。

それらの一切は、エージェントの電脳野によって、人間の「感覚」に翻訳される。


CE内のシステムで処理されている、膨大な情報やプログラムを、人間特有の「何となく」というファジーな感覚で捉えることができる。


プログラムを読む、見るのではなく、感じる。

これにより、複雑な巨大な人間の身体を、素早い処理で操縦することができるのだ。


人形を動かす時に、素材が何かとか、どんな風に製造されたかなんて考える子どもは居ない。

だけども、人形遊びは問題なく実行される。


AI研究の雄、マーヴィン・ミンスキーは自著にて語った。

コンピューターは、人間の赤子がする積み木遊びを模倣するにも、実に100個の命令をこなさなければならない、と。


これが、さらに複雑な運動や思考、判断を同時にこなすとなると、高性能なコンピューターを用意する必要性を語っている。

それこそ、レトロな時代のAI研究では、ブタの脳をAIのハードウェアとして利用しようと、ウソか本当か考えていた時期があったほどに。


脳は、マルチタスクと処理に優れたハードウェアなのだ。

これを、CEを動かすための「部品」として使わない手はない。


結局、CEの操縦に必要となる、資格や才能は別のところにある。

大切なのは、人形に意識と命を吹き込む「所作」だ。


CEの操作とは、自分以外の物に、命を吹き込む。

その動作に他ならない。



セツナは、CEを操作して、機体の足元を見下ろすような姿勢を取らせる。

カメラが、訓練用に出力された仮想空間の、地上の様子を捉える。


――高い。

普段の視点よりも、圧倒的に。


CEの体長は8メートルほど。

コックピットはCEの胴体部分にあり、機内に外の映像を送るカメラも、ここに装備されている。

CEの頭部には、その他の各種センサーや補助カメラが取り付けられている。


カメラが拾っている視点の高さは‥‥、6メートルほどだろうか?

高性能なカメラとディスプレイのおかげで、まるで窓一枚を挟んだだけのように、外の景色をありありと感じられる。


もう何度もCEのシミュレーションを経験したが、この巨人の肩に乗っているような感覚は、とても心地よい。

車のハンドルを握ると気が大きくなるプレイヤーも、車を運転する時に、こんな気持ちになっているのかも知れない。


視線を地上から前に戻す。

普段では想像がつかない、高所からの風景が広がる。


‥‥これは、高所恐怖症にはツラそうだ。


地上6メートル。

建物で言うと、2階建ての屋上くらいの高さである。


前方180度ガラス張りで、そこからせり出すような椅子に座っているのだから、その気がある(そのけがある)者は、気が気ではない。

断崖絶壁というのは、自然物であろうとも人工建築物であっても、ヒトの恐怖心を強く刺激する。


実際の高さよりも、想像以上に高く感じる。

現実でもパルクールの練習をしているセツナにとって、建物の6メートルは大した高所ではない。


もちろん、1メートルは一命取る(いちめいとる)という格言が示す通り、どんな高さにあっても油断や悪ふざけをしてはならない。


が、相撲の土俵と同じで、ある程度高い方が、空中で姿勢を変えられる時間が長いので、逆に怪我をしにくい場合があるのも確かである。

限度やケースにもよるが、高い方が安全である場合もあるのだ。


けれども、プールの飛び込みとなると、一気に話しが変わってくる。

例え5メートルの飛び込み台であっても、その上から見る風景は、跳ねたり跳んだりすることに慣れているセツナであっても、目を回すには充分な高さなのだ。


CEから見る景色は、美しくも恐ろしい。

高性能なカメラが、ありありと美しい景色をパイロットに伝え、ありありと死のイメージを想起させる。


操縦桿から手を離し、両手で顔をごしごしと擦る。

意識の切り替え。


前を向くCEの先には、ダイナが乗機するトレーニングCEが立っている。


セツナと同じ訓練用の機体。

右手にエネルギーブレード、左手にサブマシンガンの武装。


2機の距離はかなり離れており、相対する8メートルの巨体が、人差し指と同じくらいの高さになっている。

だいたい、1kmは離れているだろうか?


CEのディスプレイの、左の側面に通信ウィンドウが表示され、ダイナがウィンドウの中で手を振っている。


「やっほ~、よろしくね。」


セツナとダイナは、合同訓練。

ダイナに、こちらも手を振って返した。


JJは、訓練そっちのけで、内装の模様替えや外装の塗装に精を出している。

聞くところによると、湯呑と茶請けがどうのとか言っていた。


‥‥湯呑? 茶請け?


彼は、気の良いタフガイだが、その実マイペースで、妙にこだわりが強いところがある。

――柴犬みたいである。


昔は身体も小さかったらしいので、元豆シバだ。

現在は、大型犬の貫禄と体格。


『CEパイロット養成プログラム、シンクロの実技訓練――、開始してください。』


AIの開始宣言がなされると同時、2人のアサルトゲージが限界まで回復する。


アサルトゲージは、CEに搭乗している間も蓄積する。

機械に乗って戦おうとも、闘志がそれだけで萎える所以(ゆえん)は無い。


2人は足元のペダルを踏む。操作に呼応して、CEが走り出す。

CEの脚や背中に取り付けられたブースターが、魔導ジェネレータから出力されるエネルギーを変換し、ロケット推進に変換する。


さらに、魔力によって、周辺の大気の粘度を高める。

科学全盛の時代において、ロケットブースターによる推進力を高めるには、燃料の燃焼と、ガスの圧力と膨張などが重要であった。


しかし、科学と魔法の世界においては、炎が燃えるのに酸素は必要ないし、魔力は通常の物質と異なり、同じ座標に複数の魔力原子(※)が存在することができる。

科学の力で生み出したガスのように、膨張させすぎると大気圧に負けて出力が低下してしまうという、物理的な技術の限界に悩むことも無い。


※魔力原子:厳密には原子では無いのだが、簡単さを優先して、そう呼ばれることが多い。


魔力の持つ重なり合う性質こそが、E = P*mc^2 という法則を支えており、理論上では青天井で出力を上昇させることができると考えられている根拠だ。


水に砂糖を溶かすには限度があるが、水に魔力を溶かすのに限度は無い。


かと言って、青天井で出力しては、機体もパイロットも耐えられない。

だからこそ、空気の粘度を高め、空気を押すことによる反作用の力を強めることで、出力上昇による自壊を防ぎつつ、CEに速度を与えるのだ。


巨大兵器に似合った、巨大な魔導ジェネレータの圧倒的な出力と、空気を操る魔法により、CEはまるで物理法則を無視するかのように、大地と空を駆ける。


セツナとダイナの意思に反応したCEは、機械の身体に取り付けられた複数のブースターを点火。

バーニア(火柱)を吹かせる。


8メートルある巨体が、反作用の力で押し出され、みるみる加速して、地面を滑るように疾駆する。


その速度、時速0kmから時速100kmまでに到達するまで、1.5秒。

0-100区間の加速は、(ぜい)と技術の粋を集めたハイエンドスポーツカーであっても、2.5秒はかかる。


CEは、同区間の加速を、たったの1.5秒でやってのける。


それも、自動車よりも遥かに大きく重い、8メートルの巨体で。

この急加速は、パイロットにG(重力加速度)の力を与える。


飛行機が離陸する前に、滑走路を高速走行する時に似た、身体を後方へと押す力が働く。

電脳の肉体であっても、Gが重くのしかかるのを感じる。


CEは100km/hを優々と越え、彼我の距離が一気に接近する。


10秒強の全速力軌道の(のち)、CEが左手に握るサブマシンガンを構える。

交戦距離に到達、ディスプレイに銃の照準が表示される。


CEがパイロットの視線と思考を読み取り、ディスプレイに表示される照準がパイロットの意識に追従する。

追従速度は、ほぼパイロットの思考とリンクし、操縦者がライムラグを覚えることは無い。


また、CEの現在の設定として、エイムアシストがオンとなっており、ターゲットに対しての偏差射撃の補正を、自動で行ってくれる。


人間の直感的で素早い判断を、機械が正確さと精密さによりサポートをする。


サブマシンガンの引き金を引く。

装弾数30発、発射レート分間600発。


片手で扱える、サブマシンガンを、CEは機械の持つ正確さにより反動をコントロールし、無反動に近い状態で発砲する。


セツナとダイナ、両者が操る2機は、互いの弾幕を回避するために進行方向を変える。


セツナは上に飛び、CEの巨体が鳥のように自由に空を飛ぶ。


ダイナは横に回避。直後、飛んだセツナの足元に潜り込むように急接近。

サブマシンガンの射角が確保できないポジションを取ろうとする。


生身では味わうことができない、時速100kmを超える中での高速戦闘。

それが、CEを駆るパイロットの特権だ。


空に飛んだセツナは、選択に迫られる。

押すか? 退くか?


後退しつつダイナと撃ち合うことも可能だが、再度加速するまでに時間がかかる。

いま得ている速度を捨ててまで加速をしていたら、一気に足元に潜り込まれるだろう。


地面に水平方向の姿勢を取れば、射角の確保は可能だ。

ただ、そうすると下からの攻撃に対して被弾面積が増える。


逆に、立った状態で射撃するダイナ側の被弾面積は、こちらよりも小さい。

どの道、この状況で撃ち合うのは賢明では無い。


さらに、両機の性能は同じ。

一度張り付けられたら、形勢の逆転は難しい。


留まるも、背中を見せるも賢明では無い。

‥‥‥‥。


ならば、こちらも仕掛けるのみ!

セツナの身体を、青い光が覆う。


「シンクロ!」


CEが有する機能、リンクシンクロを発動。

アサルトゲージに溜め込まれた闘志が機体に流し込まれ、機体の性能が強化される。


――魔力は、人間の感情に感応する性質を持つ。

ゆえに、人間は優れた魔導ジェネレータである。


プレイヤーが有する、3つのリソース、体力・アサルトゲージ・ブレイブゲージ。

これは、感情に感応された魔力に他ならない。


体力とは気力、アサルトゲージとは闘志、ブレイブゲージとは勇気。


敵に攻撃すれば気力が満ち、体力が回復する。

敵と戦い続ければ闘志が溢れ、アサルトゲージが回復する。

敵を打ち破るために勇気を振り絞れば、ブレイブゲージが消費される。


魔力がもたらす、感応と官能が、エージェントが致命傷を負ってもなお万全のパフォーマンスを取らせ、敵が居る限り疲れず戦い続ける肉体をもたらす。


――人間の可能性(Possibility)とは、無限大なのだ!


そして、人間の持つ膨大なエネルギーを、人型兵器であるCEは受け取ることができる。


それが、リンクシンクロ。

機械に、魂と感情を宿す技法。


セツナの闘志を受け取ったCEが、スペック以上の速度を発揮する。

右手側、自機に対して、3時の下方向から足元に潜り込もうとするダイナを、上空から撃ち下ろす。


機体を地面と水平にして、頭を3時の方向に向けて一気に加速。

リンクシンクロをした機体は、先ほどよりも速く時速100kmの世界に到達する。


空と地上、2機が一瞬のうちにすれ違った。

互いに少々の被弾。


「うぐっ‥‥。」


リンクシンクロをすると、CEが負ったダメージがパイロットにもフィードバックされる。

セツナの体力が減少する。


機体の高度を下げる。

左手のサブマシンガンを肩にしまう。


左の背中からマウントアームが伸びて、アームがサブマシンガンを受け取った。

フリーハンドになった左腕を、地面に突き刺す。地面を削りながら、旋回。


地面と水平方向を維持することで、被弾面積を減らしながら方向転換をする。

切り返して、ダイナの方へと飛翔。


地を飛ぶように、ダイナへ接近する。

そんなセツナを迎え撃つために、ダイナも闘志をCEに送り込む。


「シンクロ!」


CEに魂と感情が宿る。

溢れるばかりの闘志に突き動かされ、精神がが肉体を超越し、自身のスペックを凌駕する。


両機、右手のエネルギーブレードを展開。

前腕に装備された形成器 (エフェクター)が、魔力で両刃の剣を形成する。


エネルギーブレードは、一瞬しか刀身を形成できない代わりに、威力とリーチに優れる。

エフェクターが、CE本体よりも長いブレードを形成、それを互いの機体に目掛けて振るった。


より、甚大な被害を受けたのは、ダイナであった。

シンクロのフィードバックで、体力が減り、顔が痛みで歪む。


胸から頭を切り上げられたCEの痛みが、自分の痛みのように感じる。


セツナは、ダイナの放った袈裟斬りを、機体を持ち上げることで回避。

回避しながら、自分もブレードを振り上げて反撃。

反撃は、ダイナ機の胸から頭にかけてを捉えるに至ったのだ。


ブレードの一撃により、CEの出力が低下。速度が低下してしまう。

これでは、上空を駆けるセツナの良い的だ。


それを悟っているかのように、セツナは左手にサブマシンガンを装備し直し、照準を合わせている。


すると、ダイナ機を覆うように、スモークが発生。

トレーニングCEに搭載されていた、防御手段を活用して、危機をやり過ごす。


セツナはサブマシンガンをリロード。


マガジンを保持している銃のパーツである、マガジンキャッチが自動で動き、マガジンをリリース。

マガジンが自重で落下して、右手に新たなマガジンをテレポートで呼び出し、サブマシンガンに取り付けた。


上空から、スモークの中へ射撃。


姿が見えなくとも、そこに機体が居るのは変わらない。

弾幕の面による制圧で、ダイナにプレッシャーを掛ける。


弾は、何発か命中した手応えがあった。

あっという間にワンマガジン打ち切り、リロード。


――しようとした瞬間。


ダイナ機が、セツナ機に目掛けて突進してくる。

サブマシンガンで制圧射撃をしつつ、急接近してきた。


セツナは、それに対してエネルギーブレードで応戦。


近距離戦闘では、こちらに分がある。

得意な距離で仕留めにかかる。


互いの距離が詰まり、エネルギーブレードの間合い。

互いのエフェクターが緑色に輝く。


「セツナなら、そうするって――。そう思っていたよ。」


ダイナからの通信。

瞬間、機内にアラート。何かにロックオンされている。


エネルギーブレードで、ダイナ機を切り裂いて、地面に突き落とす。

――浅い。アラート音に気を取られた。


ダイナ機の大振りでバレバレな斬撃は、近接戦で秀でるセツナを捉えるに至らない。

ブレードでの斬り合いは、セツナ機が一方的に制した。


しかし、機内で響く警告音が、実際の被害となってセツナの機体を襲う。


CEの背中に、誘導弾が命中した。

誰の仕業かは明白。ダイナしか居ない。


訓練用に装備されていた主力火器、対大型兵器用の誘導ランチャーの攻撃だ。


彼女は、「スーパーイジェクト」と呼ばれる、元はバグ技であったテクニックを駆使して、CEの遥か上空にテレポート状態で射出されていたのだ。


機体を降りるためのテレポートが発動する瞬間、パルクールスキルのテレポートも同時に発動すると、両者の挙動が干渉し合って不安定になり、上空に射出される。

ベータテストの時に発見されたこのバグ技は、製品版で正式な仕様として採用された。


プロトコル999。コックピット右手側の入力端末で「999」と入力し、右手下の脱出レバーを引けばスーパーイジェクトが発動する。


これにより、CE戦において、パイロットが生身で空中から、不意の一撃を放つことが可能。

スーパーイジェクトは、パイロットが敵のCEに晒される諸刃の刃であり、起死回生の刃でもある。


無人になったCEは、サポットが操縦してくれる。


パイロットのダイナと、サポットのマイトが、セツナに連携攻撃。

誘導弾で出力の下がったセツナ機を、マイト操るCEが蹴り飛ばす。


ブースターの取り付けられた脚部による一撃は、想像以上の威力がある。


「ぐぅ!?」


機体がキックの威力で、コントロールを失う。


宙をフラつく彼の前方に、スーパーイジェクトされていたダイナが落ちてくる。

――暴走した魔力を抱えて。


「グリモワール・エレメンタルブラスト!」


訓練が開始された直後、潤沢に与えられたAGを使用して、EXスキルを発動。


龍の再演たる一撃は、トレーニングCEを捉えて甚大な被害を与えるも、破壊には至らない。

CEであれば、赤龍とだって戦える。


何とか、暴走した魔力を耐えたセツナであったが‥‥。

目の前に、エネルギーブレードを振りかぶったCEが控えていた。


人間の身体を扱うに不慣れなAIの大振りな攻撃。

それでも、今の状況でトドメを刺すくらいは充分にできる。


緑色の光が、袈裟の軌跡を描き、CEを両断した。

両断されたCEが、空中で爆発する。


マイト機は、爆発に背を向け急降下。

落下しているダイナを、右手の手の平に乗せて回収した。


ダイナを乗せたマイトは、ゆっくりと地上に着地。

ダイナが、手の平の上でサムズアップしている。


「ありがとう! ナイスだったよ、マイト!」

「ダイナも、見事な戦いでした。」


マイトも、CEを操って左手の武器をしまい、サムズアップを返した。


人間と機械、人間とAI。

電脳の世界では、こうやって共に戦い、触れ合うことができる。


――全くもって、良いものだ。


『パイロットセツナのCE撃墜を確認。――訓練を終了します。お疲れさまでした。』


シミュレーションAIがそう告げると、仮想空間が分解されて、黒い世界に塗り替わっていく。

シミュレーションは終了だ。


『お二人とも、素晴らしい内容でした。十二分に、CEでの戦闘に耐えられると判断します。』


AIはそう告げて、通信を終えた。

シミュレーション用のポッドが開き、意識がCCC支部内に戻り、白い室内灯が視界を眩ませる。


セツナとダイナは、ポッドから立ち上がり、伸びをして、互いの健闘を称えた。

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