SS14.12_赤い終末(アデト)
プレイヤー:ハル
クラス :ガンスリンガー
〇スキル
1.飛燕衝
2.ブレイズキック
3.ブレイザー
4.ムーンスタンプ New!
5.リボルビングスピン
6.⇒リボルビングチェイン New!
7.⇒⇒リボルビングブレイズ New!
8.異界武器:ドリー(回復アイテム) New!
〇パッシブ
1.★試作型バヨネット
2.★試作型バヨネット
3.⇒仕込み刃
4.⇒⇒仕込み針
5.R-キャンセル
6.ワイルドアサルト New!
7.バッドアップル
8.No equip
〇EXスキル
1.アプルジャック
2.???
3.⇒???
〇Ultスキル
S.???
P.反逆心の燕 New!
〇主力火器
1.グレネードショットガン
2.魔導レールガン New!
3.ジャックオーランタン New!
◆
セツナとライザは、アゲインに連れて行かれた。
ハルとグレイは、チューズデイを倒す。
人となった紳士の背後で、異界化をもたらした巨岩が輝いている。
巨岩を破壊し、この街の異界化を止める。
異界化に病める人々を、救う。
身体が有機物から無機物となっていく、結晶の病を根絶する。
ハルが銃口をチューズデイへ向けた。
スキル ≪飛燕衝≫ 。
二丁拳銃を発砲。
銃口から魔法の矢が4発、撃ち出される。
人の肌を得たチューズデイは、虚空からステッキを取り出す。
杖は紳士の身だしなみ。
矢を2本、杖で落とす。
残りは、横に身を翻し躱す。
その隙に、グレイが急接近。
翼を広げ、地上すれすれを飛び、ハルの射線を塞がないように。
そのままチューズデイとの距離を詰める。
晶力解放:巳
腰に巻いたシルバーアクセサリーを右手に取る。
アクセサリーが変形する。
液体化し、すぐさま硬化。
シルバーは、槍となった。
チューズデイの持つ紳士杖より、リーチに優れる槍
突きを放つ。
‥‥槍は、影に防がれた。
――槍は、盾に防がれた。
「――――!?」
巨岩の逆光により、足元に伸びたチューズデイの影。
そこから、西洋の鎧を身に纏った騎士が姿を現す。
影がゴボゴボと沸騰し、沸いて煮え立って、起き上がる。
起き上がった影は、グレイの槍を凌ぐ。
槍の一撃により、影の黒い塗装が剥げ、そこから豪華絢爛な甲冑が日差しに輝く。
騎士の後ろから、またひとつ、影が飛び立つ。
地面を蹴り、宙へと跳ぶ。
白い忍装束に身を包んだ、忍者。
手裏剣を次々とグレイに投擲。
グレイは槍を回転させ、投擲物を防ぐ。
忍者が消える。
騎士の姿が変わる。
液体金属のように溶けて、銀色の円柱になったと思ったら、そこからすぐ、別の姿へ。
金属戦士が雄叫びを上げた。
音圧が、グレイを襲う。
スキル ≪ウォークライ≫ 。
クラス「ベルセルク」のスキル。
槍で、音は防げない。
雄叫びに怯み、たたらを踏む。
騎士から変形した狂戦士が襲い掛かる。
狼のファーコートを着ている野蛮な外見の戦士。
刃渡り1メートルを誇る大鉈を、大上段から振り下ろす。
グレイに必殺の通常攻撃が迫り――、弾かれる。
ハルの銃剣。
対CE用の試作武器が、狂戦士の膂力を弾き返した。
チューズデイが、グレイを攻撃する。
銃剣の下を潜り、紳士杖の先で鳩尾を付いた。
ハルの操作で、銃剣が浮き上がる。
刃先が、チューズデイの方を向く。
勢いよく降りかかる。
チューズデイの影から忍者が出現。
彼を影の中に連れてこんで、銃剣を回避。
遁術で逃げられて、巨岩の麓まで移動された。
ハルは、グレイの横に移動。
銃剣をしまい、銃を手に持つ。
チューズデイはその様子を、杖を手慰みに回しながら見ている。
しばしの沈黙。
しばしの睨み合い。
「――君たち人間は、仲間と協力することで、パフォーマンスを向上させるらしいな。
私も、真似してみよう。」
影から、魔法使いが出現する。
白いマントに、白いとんがり帽子。
魔法の杖を握る、女の魔法使い。
スキル発動 ≪ウインドカッター≫ 。
魔導書ではない、連射の利く魔法。
5枚の風の刃。
ハルとグレイへ放たれる。
晶力解放:剣
晶力解放:焔
グレイが大剣を握る。
上段から振り下ろす。
そよ風を掻き消し、風を食らって膨張した闇の炎を、魔法使いに送りつける。
――魔法使いは、武器を変える。
魔法の杖から、灰色の杖へ。
魔導旧書クラウ・ア・ルーイン
灰色の杖に、魔導書の力をエンチャント。
杖を抜き放つ。
魔法の剣が、緑色に輝く。
竜巻の力。
暴風。
竜の息吹を掻き消した。
熱を帯びた暴風が、グレイを襲う。
翼で飛んで回避。
ハルが、魔法使いとチューズデイに近接戦闘を挑む。
魔法使いを、銃で殴る。
杖を抜刀し、抜き身の無防備となった魔法使い。
灰色の杖は、抜刀攻撃でのみ、魔法を発動する。
この性質上、抜き身は、無防備。
隙の生じた彼女を、チューズデイがフォロー。
紳士杖から、弾丸が飛び出した。
脇腹に弾丸が命中し、ハルが怯む。
怯んだところに、魔法使いが攻撃。
杖の鞘が、側頭部を狙う。
銃で受ける。
右の銃で受けて、左の銃で魔法の矢を撃って反撃。
命中の確認もせずテレポート。
3人が居た場所を、黒き焔が焼き尽くす。
グレイが、ハルもろとも焼く、火炎攻撃をした。
ハルは焔をテレポートで回避し、チューズデイたちは騎士の盾で防いだ。
――魔法使いの抜刀。
暴風、狙いはハル。
銃をホルスターに戻す。
両手を組む。
ウェポンシフト、銃剣。
地面に突き刺す。
暴風を、銃剣を盾にして受けた。
フィードバックダメージが発生。
ハルの両手に、じんわりと痛みが走る。
ホルスターから、武器を取り出す。
仕込みナイフ。
パッシブ「仕込み刃」と、「仕込み針」の効果により装備した追加武装。
銃剣を装備したとき、ホルスターに装備される補助武器。
二丁拳銃が消え、ホルスターを4本のナイフが占有している。
ホルスターから、ナイフを引き抜く。
両手に1本ずつ、合計2本。
銃剣の影から投げる。
指を鳴らす。
ナイフが弾けて、5本の拡散するレーザーへと変わる。
合計10本の細いレーザーが、雨のようにチューズデイのパーティを襲う。
――グレイが、ハルの意図を察した。
空から地上へ急降下。
地上では、ナイトがチューズデイの前に立つ。
盾を構え、レーザーの雨から彼を守った。
メイジの方は、影に潜って回避。
選手交代。
影の中から、背中に剣を背負った青年が姿を見せる。
グレイが、チューズデイに攻撃。
青年が、ハルに攻撃。
2人の攻撃は、それぞれ命中した。
グレイの尻尾攻撃。
地中からの銀尾が、チューズデイのふくらはぎを穿った。
青年は、ブーメランを投擲。
遊具ではなく、狩猟武器の方のブーメラン。
ブーメランは円の軌道を描き、銃剣の影に隠れるハルの頭に直撃した。
不意打ち気味に攻撃をもらい、銃剣の影から身体が出てしまう。
ブーメランを投げた青年は、手に火球を握っている。
クラス「ブレイバー」の、 ≪ファイヤーボール≫ 。
≪勇気のファイヤーボール≫ が青年から放たれた。
グレイが、倒れているハルの首根っこを掴む。
掴んで、銃剣の影に戻す。
火球が地面に着弾する。
空に火柱が伸びていく。
小さき竜が翼を広げ、ハルを熱から守る。
彼女のホルスターから、ナイフを奪う。
自分の口に運び、噛み砕く。
ナイフが消滅し、グレイに取り込まれる。
銀色の尻尾を地面に突き刺す。
チューズデイたちの足元から、いくつものレーザーが飛び出す。
地中からの攻撃なら、ナイトの盾で防がれない。
レーザーが、チューズデイ含む3人に命中。
ハルが銃剣から飛び出す。
‥‥2人の、ハル。
2人のハルが、クルクルと銃剣の影から飛び出した。
1人は、正真正銘本物のハル。
1人は、グレイがチューズデイの力を奪って使って投影した、鏡像。
銃剣が消える。
ウェポンシフト。
銃剣から、二丁拳銃へ。
Ultパッシブ「反逆心の燕」を発動。
2人のハルが発砲する。
4丁16発。
魔法の矢が強化され、青い彗星となってチューズデイたちを穿つ。
尾の長い燕が、手や足、胴体を捉える。
チューズデイは、背中から巨岩にもたれかかる姿勢となった。
鏡像のハルが消える。
グレイの影に潜り、奪った力が消えた。
ハルの「反逆心の燕」も、180秒のクールタイムに入る。
二丁拳銃の非力を補うに便利なパッシブだが、連発できないのが困りもの。
チューズデイの背後で、巨岩が輝く。
ブレイバーは、ベルセルクに姿を変える。
ベルセルクが、チューズデイとナイトの前に立ち塞がる。
その後ろで、ナイトは回復魔法。
チューズデイの傷が、回復する。
そしてベルセルクは、自分の首をハンドアクスで掻っ捌き、影の中に消えた。
チューズデイとナイトを、緑色の光が包む。
ベルセルクのパッシブの効果だ。
被ダメ回復により、2人が回復した。
ナイト・ベルセルク・メイジ・忍者・ブレイバー。
M&Cの、5強クラス。
チューズデイは、彼らの力を借りることができる。
彼だけに備わった、特別な異界武器の力。
彼の師より教わった、サプライズマーシャルアーツ。
それらを融合させた、晶力投影。
この街で特別な存在である、チューズデイの能力。
彼はそれで、5強クラスを模倣した。
クラスは、概念であり、武器である。
クラスとは、魔力を効率的に運用するための道具だ。
脳にクラスのルーンを構築することによって使われる、れっきとした武器なのだ(※)。
※ep.108_「週刊エージェント_クラスと月の女神」より
魔法の地、フロド大陸。
教会の工房で働いていた天才技師、スピークレスの最高傑作。
月の女神が4番目、「樫の木」の叡智に人智にて挑んだ作品であり、また彼女を讃えるために書いた賛歌。
賛歌は力となり、凡人を超人へと変え、人々の武器となった。
ならば、クラスが異界武器となることには、何ら不思議が無い。
スペシャルな紳士は、細長いシャープな眼鏡を、人差し指で掛け直す。
「私は選ばれたのだ、この異界に。
貧しい屑拾いは夢を持っていて、そこに明かりが灯った。」
‥‥‥‥。
異界化には、核が存在する。
落とし子と呼ばれる、異界の主であり番人が存在する。
チューズデイは、落とし子となったのだ。
この異界に見初められ、この異界に魅入った。
何が、彼を引き付けたのか?
何処を、異界は気に入ったのか?
人間への理解? 敵対心?
答えは知らない。
知る必要も無い。
エージェントの仕事とは、立ち塞がる敵を倒すことにあるのだから。
‥‥‥‥
‥‥
◆
チューズデイの元に、メイジが召喚される。
灰色の杖を持った、抜刀固定砲台。
チューズデイとナイトの前に立ち、杖を抜刀。
暴風が地上に吹き荒れる。
グレイは空を飛んで回避。
ハルは、主力火器のジャックオーランタンを召喚しようとする。
両手の人差し指と中指を立てて、両手を合わせる。
ウェポンシフト。
‥‥‥‥。
しかし、何も起こらなかった。
「あれ‥‥?」
カボチャが呼び出せない。
咄嗟に、暴風をテレポートで避けた。
間一髪、テレポートが間に合う。
前方向へ瞬間移動。
ハルの脳内に、カボチャの声が響く。
(トリックオアトリート~☆
働いて欲しけりゃ、お菓子をよこせ~~☆)
真剣勝負中の、唐突なアクシデント。
勘弁願いたい。
実は、この異界化によって、ジャックオーランタンも人の姿を得ていた。
呼び出すには、いつもと異なり、AGを2本要求される。
イタズラカボチャのせいで、計画が狂ってしまった。
ハルが瞬間移動した先には、チューズデイがいた。
テレポートを狩りに来たのだ。
紳士杖が振るわれる。
ハルは、ウェポンシフトの都合上、現在は素手。
武器を切り替える時、ガンスリンガーはウェポンシフトの動作のために、素手となる。
そこが、ガンスリンガーの明確な弱点。
スキル ≪リボルビングスピン≫ 。
クルリと身を翻し、後ろに下がる。
杖の先がハルの方を向く。
チューズデイが、持ち手部分のボタンを押す。
銃弾が、杖の先から飛び出す。
≪リボルビングスピン≫ を連続発動。
エコーキャンセル、 ≪リボルビングチェイン≫ 。
連続使用可能となった移動スキルで、チューズデイの攻撃を避ける。
銃弾を、横方向にクルリと回避。
エコーキャンセル、 ≪リボルビングチェイン≫ 。
≪リボルビングチェイン≫ に、 ≪リボルビングブレイズ≫ を上乗せ。
ハルの足に、炎が纏われる。
≪リボルビングブレイズ≫ は、 ≪ブレイズキック≫ と ≪ブレイザー≫ を装備している時のみ、発動が可能。
スピンの動作に、炎の推進力を加えることができるようになる。
スピンの移動量と、移動速度が上昇する。
ハルは、屈みながら前へスピン。
チューズデイの足を刈り取るように、炎の回転蹴りを放つ。
炎による推進力により、チューズデイの杖が振るわれるよりも速く、ハルの攻撃が紳士の足元へ到達する。
チューズデイは後ろへ下がり、回避。
改めて、屈んだハルに対して杖で攻撃。
顔を狙い、杖を横に振るう。
スキル発動 ≪ムーンスタンプ≫ 。
屈んだ姿勢から、炎の力でバックフリップ。
杖を躱す。
ホルスターに触れる。
銃を呼び出す。
空中で銃口を向ける。
引き金を引く。
スキル ≪ブレイザー≫ 。
小爆発する榴弾を、フルオートで射撃。
小さなが爆発が、連続で小さなダメージを与える。
「――避けろ! 眷属!」
グレイが声を上げた。
ハルに向けて、メイジの起こした暴風が迫る。
グレイが、空から魔法使いへ強襲するも、ナイトに邪魔された。
ナイトの守りを崩せないでいると、メイジに抜刀された。
さすがに、地中からの攻撃が何度も通用する連中じゃない。
そうでなければ、5強を投影する意味が無い。
暴風を再びテレポートで回避する。
メイジの姿が消える。
ハルが移動した先に、メイジが現れる。
抜き身の杖を持った、隙だらけの魔法使い。
ハルに接近して、勝算があるらしい。
メイジの足元に炎が灯る。
ハルの足元に、炎が灯る。
互いのブレイズキックが衝突。
力は相殺され、互いに少しだけノックバック。
チューズデイがハルに接近。
人数差で攻めたてる。
紳士を魔法矢で牽制。
ハルはクルリと身を翻し、再び射撃。
今度は、メイジとチューズデイ、2人に向けて2発ずつ撃った。
メイジの足元が燃え、姿が消える。
今度のは、ただのブレイズキックではない。
≪魔女のブレイズキック≫ 、瞬間移動して矢を躱し、前蹴り。
炎のキックが、ハルの腹を捉えた。
魔導書系統の、近接攻撃。
臓器が沸騰し、肺が焦げながら膨らみ、身体が張り裂けそうになる。
この世界は、近強遠弱。
飛び道具をやりくるめる手段は、山ほどある。
5強メイジが持つ、理不尽なまでの万能さが、ハルを追い詰める。
メイジに、チューズデイが合わせる。
杖で背中を一発。
それから背後に回り、杖を使って首を絞める。
ハルの窮地に、グレイは割って入れない。
彼女の方へ目を離した瞬間、ナイトからマジックワイヤーが飛んできた。
黄金の鉄の塊でできた、ナイト謹製の代物。
右手の籠手から伸びたワイヤーを撃ち込まれて、引っ張られて、盾で殴られた。
「小癪な――!」
悪態をつくグレイ。
その背後では、メイジが姿を変え、ベルセルクとなった。
大鉈に嵐を纏わせ、振るう。
必殺の通常攻撃に、必殺の嵐を掛け合わせた、猛攻が襲い来る。
――ホルスターに、銃をしまう。
ウェポンシフト。
両手を組む。
右手を、地面へ向けて。
左手を、空へ向けて。
両手を組む。
‥‥竜の顎が、獲物を噛み砕くように。
AGを1本消費。
EXスキル発動。
EXスキル、≪.試作術式:ドラゴニックダイブ≫ 。
EXパッシブ「仮想ルーン:竜の顎」発動。
ドラゴニックダイブのAG消費量を、2本から1本に減らす。
ハルが、竜のオーラを纏う。
首を締め上げる杖を、左手で握り潰す。
赤い竜のオーラで、チューズデイを攻撃。
思いもよらない拘束の解かれ方で判断力が鈍った紳士の顔を、竜の尾で叩いた。
ベルセルクが、嵐の大鉈を振るう。
大上段、竜狩りの一撃。
左腕で受ける。
竜の力を持ってしても、嵐は完全に防げない。
無視できないダメージ。
体力を200ポイント近く持っていかれた。
ハルは右手を伸ばす。
翼を広げながら跳躍。
狂戦士の大男の、顔を掴む。
持ち上げ、飛ぶ。
ベルセルクを、力任せに、大地へ叩きつける――。
竜の力が大地に流れる。
大きな火柱が起こった。
火柱の中で、ベルセルクの姿が消えていく。
火柱に背を向けて、ハルが着地。
膝から崩れ、ふらつく。
本来は、ベルセルクが使うべきスキル。
狂戦士でない者が、竜の力を使った代償。
ベルセルクのタフネスがあって初めて、竜の力の運用に耐え得るのだ。
身体に強烈な脱力感が広がり、立っていられない。
回復アイテムを使う。
異界武器の、ドリーを召喚。
気弱そうな少年が、ハルの傍に召喚された。
「ハルさん、グレイ君、がんばって!
エリアヒーリング!」
ハルと契約することにより、魔力が回復した少年による回復魔法。
消耗した体力を、200ポイント取り戻す。
「――! ハルさん!」
ハルの背後に忍び寄る影。
逆張り忍者こと、モノノフ。
音も無く現れ、籠手に仕込んだ暗器、かぎ爪を振るう。
攻撃の反動で動けないハルを、ドリーが庇った。
彼女に飛びつくように庇い、背中を忍者に切りつけられた。
「うぅ――!」
声を、必死で抑えるドリー。
男の子なのだから、泣き言なんて言わない。
ハルの身体に力が戻る。
モノノフを蹴り上げるも、影の中に逃げられた。
ハルの背中を狙い、チューズデイが発砲。
それは見切っていたようで、クルリと回避する。
「ハルさん、後は任せました‥‥‥‥。」
足元で、ドリーが消える。
回復アイテムがクールタイムに入る。
CT360秒。
通常のCTは180秒。
ハルを庇って、ダメージを受けたペナルティだろう。
だが、おかげで命拾いした。
――巨岩の近くで、爆発。
グレイが、ナイトの盾を叩き割った。
やっと、忌々しい騎士の粘着から解放される。
グレイは、そのまま巨岩へと飛ぶ。
自分たち目的は、異界化の収束。
チューズデイの撃破は、手段であって目的ではない。
そして、手段はひとつとは限らない。
あの巨岩を破壊する。
あの光る石が、チューズデイに力を与えているのは明らかだ。
これを、破壊する。
人間のような狡猾さを発揮。
そして、人間の知恵に、竜の力を掛け合わせる。
晶力天灰:崩灰
「灰と消えろ――!」
グレイが、竜の姿を取り戻す。
大きな竜となり、自分よりも、なお大きい巨岩を睨む。
大きな翼を広げて飛ぶ。
見上げるほど大きな岩を、見下ろせるまで高く。
巨岩へ突っ込む。
竜の力を、異界化を起こした岩に叩き込む。
‥‥岩が、輝いた。
太陽のように、眩しく。
グレイドラグーンの身体から、力が抜ける。
竜の姿を維持できない。
光の壁に遮られて、グレイの攻撃は不発に終わる。
空を飛ぶこともできずに、地上に落ちた。
「‥‥クソ。抜け道は塞がれているか。」
真っ当に、チューズデイを倒すしか無いらしい。
自分たちは、ナイトとベルセルクは倒した。
残りの5強クラスは、メイジ・モノノフ・ブレイバー。
‥‥いま、ベルセルクが復活した。
ブレイバーが、ブレイブゲージを使い、ナイトを蘇生した。
ブレイバーは、5強の良いところ取りをしたようなクラス。
ナイトの固さと、回復魔法。
ベルセルクの火力。
メイジの魔法。
モノノフの機動力と、奇襲性能。
スキルやパッシブ欄に限りがあるため、何かは捨てないといけなくなるものの、そのポテンシャルは折り紙付き。
長く、プレイヤーからは理論値最強と称されている。
ハルとグレイは、真っ当にチューズデイを倒す必要がある。
5強を模した、影の異界武器を相手取りながら。
チューズデイが同時に召喚できる武器は2人。
こちらが人数的な不利を背負い続けることになる。
そして何より、気がかりなのは‥‥‥‥。
チューズデイは、復活する可能性がある。
彼奴は、ハルがグレイと出会う前、ハルが始末していたはずだ。
だが、彼奴はいま、落とし子となって自分たちと戦っている。
それに、ヤツの口ぶり。
「人と異なる力に目覚める」
「救世主や支配者に、なれた気分」
「自分は選ばれた」
グレイ、それにハル。
2人とも、似たような懸念を抱いている。
もし、チューズデイが、異界武器の中でも特別な存在――。
例えば、「プレイヤー」になっていたとしたら?
心が折れぬ限り、復活するだろう。
希望がついえぬ限り、立ち上がるだろう。
やはり、巨岩を叩く必要がある。
チューズデイと同時に叩けるなら、なお良い。
巨岩を覆う光の壁を蹴散らし、なおかつチューズデイを仕留める火力。
そうなると、選択肢は必然的に絞られる。
ハルは、グレイに指示を出す。
「グレイ、準備して。」
彼女の前には、ブレイバーとベルセルク、それにチューズデイ。
3人と睨み合うハルは、自分の異界武器にそう指示を出した。
「‥‥‥‥。」
グレイは黙ったまま、翼を広げる。
広げた翼で自分の身体を包み、足元に広げた闇の中へと、消えていった。
ハルの身体から、勇気が抜けていく。
生気を、竜に吸い取られる。
ブレイブゲージを2つ消費。
Ult、発動準備。
準備が整うまで、ハルは1人で戦わなければならない。
しかも、このUltは失敗する。
彼女が、300ポイント以上のダメージを受けると不発に終わる。
攻撃を当てると準備が早く終わり、攻撃を食らうと準備が遅くなる。
――決戦終末兵器を起動させる。
1対3、人数的不利。
2対3でも、拮抗するのがやっと。
「‥‥‥‥。」
二丁拳銃のリアサイトを引っ掛け、スライドを引く。
この動作に、戦術的な意味はない。
半身になり、構える。
右の銃と、右脚を前へ。
左半身を引き、左膝を曲げる。
右腕と右脚を伸ばし、左腕と左脚を曲げた構え。
この構えに、戦術的な意味は無い。
だが、カッコイイ。
人間がするから、この動作や構えに、価値が生まれる。
強い、自分になれる。
子どもの頃に憧れた、強いヒロインに。
――1対3を覆す。
人数的な不利を凌ぐ程度では、うちの竜は満足しない。
覆し、圧倒し、竜を従え、Ultを叩き込む。
‥‥‥‥。
5強が動いた。
ベルセルクは、メイジの姿へ変化。
メイジは灰色の杖に、 ≪魔導書アイスランス≫ の力を込める。
ブレイバーと共に、魔法を発動。
灰色の豪雪と、勇気の火球。
相反する属性が混ざり、化学変化を起こす。
互いが互いの魔力を消し合い、反発する。
混ざり合った空間に、ゼロの魔力、虚無を生み出す。
虚無が爆ぜた。
虚無の弾幕が、ハルに襲い来る。
スキル ≪リボルビングスピン≫ 。
足に着火、腕を引っ込めて、低い姿勢で回転。
そこから、スライディング。
円運動で勢いを溜め、助走なしに地面を速く滑る。
背中で地面を滑り、低姿勢を維持。
虚無の弾幕が、頭の上を掠めていく。
発砲。
AGを1本消費、魔法の矢を連射。
狙いはメイジ。
納刀を封じる。
8本の矢。
無視できない精度と威力。
ブレイバーが盾を呼び出す。
構えて矢を防いだ。
メイジが、杖を鞘に納める。
杖に魔力が戻る。
チューズデイは、紳士杖を新調。
構えて、ハルを照準している。
‥‥スライディングの移動だけでは、彼らのところまで届かない。
パッシブ「R-キャンセル」、「ワイルドアサルト」発動。
「R-キャンセル」には、効果が2つある。
1つ、AGを2本消費して、ブレイブキャンセルと同等の効果を得る。
2つ、ブレイブゲージを消費した時、一定時間のあいだ、AGが1本増える。
ハルは先ほど、ブレイブゲージを2つ消費した。
AGが、2本回復している。
そのAGを1本使い、「ワイルドアサルト」。
強化されたアサルトダッシュを発動。
ハルは、低い姿勢のまま、前傾姿勢となる。
足を動かさず、地面を滑って高速移動。
杖を悠長に構えるチューズデイを、下から蹴り飛ばした。
ワイルドアサルト。
強化されたアサルトダッシュは、ダッシュからアサルトアタックに派生できる。
本来ならば、アサルトステップから派生する、アサルトアタック。
アサルトアタックは、テレポートを挟んで発動するため、動きが読まれやすい。
その攻撃を、高速ダッシュから発動する。
アサルトステップからの派生よりも読みづらく、なおかつ、コンボにも組み込める。
スライディングからの、急加速接近。
メイジを狙わず、チューズデイを奇襲。
ブレイバーの守りの裏を突き、ハルの攻撃が通った。
アサルトアタックに成功、アサルトラッシュに移行。
チューズデイの身体が、高く空に浮く。
ノックバック性能が大きく強化された攻撃により、大きく吹き飛ばされた。
ハルの姿が消える。
瞬間移動。
ブレイバーを地上に置き去りにする。
メイジが、 ≪魔女のブレイズキック≫ とテレポートを組み合わせ、ハルを追いかける。
スキル ≪ムーンスタンプ≫ 。
追いかけるのに必死になったメイジの顔を、両足で踏んづける。
面目丸つぶれ。
魔女は、空から叩き落とされた。
ハルの姿が消える。
自分が蹴り飛ばした、チューズデイに追いつく。
炎のキックを1発。
テレポートして、もう1発。
テレポートして、さらにもう1発。
チューズデイを、巨岩の方へ向けて蹴り飛ばした。
パーティ分断。
下へ移動。
瞬間移動したハルは、ブレイバーとメイジの前に現れる。
同時、アサルトラッシュの効果が終わる。
メイジの姿が、モノノフに変わる。
ブレイバーの姿が、ベルセルクに変わる。
モノノフで翻弄し、ベルセルクで仕留める組み合わせ。
モノノフが遁術を発動。
≪空蝉の術≫ 、忍者が3人に増える。
ベルセルクは嵐を纏い、力を溜める。
‥‥ベルセルクの攻撃を受ければ、Ultは不発に終わるだろう。
分身した忍者が、ハルへ攻撃。
3人で囲み、チクチクと手裏剣攻撃。
リボルビングスピン。
統計学がどうのとか、確率がどうのとかは知らない。
弾道学なんかも、この場で使うには難しい。
ただ、投げるという動作は、腕を振った方向にしか、物を飛ばせない。
3人の忍者の、腕の延長線上。
そこに立たないよう、スピンで立ち回る。
回りながら、位置調整。
巨岩の方向へ、身体2つ分だけ移動。
ハルの前後、それから左方向を、手裏剣が通り過ぎた。
銃の引き金を引く。
右手の銃が、左方向の忍者を射撃。
被弾面積を小さくするため、自分を抱きかかえるように交差させた腕が、敵を照準。
目で狙うのではなく、指で狙う。
自分の親指の延長線上に、忍者を置いて、発砲。
矢が命中し、分身が消える。
手裏剣、2投目。
屈みながら回転。
銃でも、投擲でもそうだが、人間は人間を狙うとき、無意識に胸の部分を狙う。
身体の中心は腹なのだが、胸を狙ってしまう。
だから、屈むと避けられる。
ハルの頭上を、手裏剣が通り過ぎる。
膝立ちの状態から、発砲。
交差させた腕を元に戻す。
腕を前に出し、二丁拳銃の引き金を引く。
2本の矢が、2人の忍者に命中した。
1つは分身で、1人は本体。
本体は、籠手で矢を受ける。
左腕で受け、右手から手裏剣。
その後、素早く印相を結ぶ。
禅定印・外縛拳・虚心合掌。
――刀印 ≪浜之緋桜≫ 。
手裏剣を立ち上がりながら回避すると、お次は火の忍術。
バックフリップで、上を飛び越える。
この忍術は、AG版の忍術。
2回まで、緋桜の刀を振るうことができる。
緋桜を、もういっちょ。
下から上に、刀印を結んだ右手を振るう。
ハルは空中に足場を作り、空中でステップ。
サイドフリップの要領で横に飛んで、火の忍術を避けた。
ハルの頭が、地面の方向を向く。
一難去ってまた一難。
忍者の左手から、マジックワイヤーが伸びる。
ワイヤーで捕まえて、ベルセルクの一撃で終わらせる。
そういう計画。
空中でリボルビングスピン。
スキル ≪ブレイザー≫ 。
回転しながら、空中で榴弾を乱射。
ハルの身体が浮き上がる。
モノノフのワイヤーを避ける。
ならばと、今度はベルセルクがワイヤーを射出。
空中ジャンプを切ったハルを、ベルセルクが捕まえる。
捕まえて、溜めた嵐を叩き込む。
――スキル ≪ブレイズキック≫ 。
ハルの落下速度が上昇する。
ベルセルクのワイヤーは、ハルの上を通り過ぎた。
武器は、人に使われてこそ。
相応の使い手の手に渡ることで、武器は武器としての価値を得る。
5強クラスであっても、それは同じ。
嵐が、落ちる。
鉈が振るわれて、落とされる。
地面が凍てつき、空気は裂ける。
ハルはAGを消費。
AG ≪リボルビングスピン≫ 。
回転動作中、完全無敵となる。
嵐が、氷が、ハルの身体をすり抜ける。
すると、ベルセルクの身体の動きが鈍る。
AG ≪リボルビングスピン≫ で回避を成功させると、攻撃してきた相手の動きを、少しのあいだ鈍化させる。
二丁拳銃の、バレル部分を握り込む。
モノノフは、味方の嵐のせいで、2人に近づけない。
大男を、銃で殴る。
グリップの底で、殴りつける。
右の銃で、頬。
左の銃で、脳天。
膝を1発、顎に混ぜて。
右の銃で、脇腹。
左の銃で、鼻。
右の銃を持ち変える。
Ultパッシブ「反逆心の燕」を発動。
銃に、片側4発、合計8発のリベリオンスタックが装填される。
腕を交差させ、右の銃を発砲。
照準はチューズデイ。
ハルに吹っ飛ばされて、5強に加勢すべく戻って来たチューズデイのスーツを、彗星が掠める。
左の銃を振るう。
ベルセルクの頬を、強打。
身体の回転を利用した一撃に、狂戦士がふらつく。
嵐が収まる。
モノノフが、かぎ爪で切りかかる。
ハルは、マジックワイヤーを射出。
ふらついたベルセルクを捕まえて、モノノフに向けて蹴っ飛ばす。
右の銃を、チューズデイへ。
‥‥向けただけ。
しかし、銃口の先から、的はいなくなった。
左の銃を持ち変える。
グリップを握りしめ、引き金を引く。
青い彗星が、ベルセルクの背中を穿った。
モノノフは、ベルセルクの影から飛び出す。
ハルは腕を交差させる
回転し、位置を調整し、発砲。
青い尾の燕が、モノノフとチューズデイを穿つ。
怯んだ相手に、連続攻撃。
回転し、交差させた腕を元に戻し、伸ばす。
発砲。
回転、腕を交差、発砲。
弾切れ。
ワイルドアサルト。
のこのこ戻ってきたチューズデイの腹に、強烈な前蹴りを見舞った。
彼は再び、巨岩からのマラソンを強いられる。
‥‥‥‥。
まあ、もう走る必要は無い。
時は満ちた。
ハルは、ホルスターに銃を戻す。
右手に、スマートデバイスを取り出す。
側面のボタンを押し――、空に放り投げる。
『センチュリオン、オーバードライブ。』
電子音声が、CEのフォールを告げる。
ハルの頭上に、魔法陣が展開される。
‥‥‥‥赤い。
通常は水色のはずの魔法陣が、赤い。
真っ赤に、終末の炎を見ているかのようだ。
ハルは、ゆっくりと前に歩く。
魔法陣の下にいては、踏み潰されてしまう。
歩く彼女の足元を、影が伸びていく。
赤い魔法陣に照らされて、魔法陣に招かれるように、黒い影が伸びる。
CEがフォールする。
龍が、空からフォールした。
Ult ≪決戦終末兵器:トガルデアラグ≫ 。
赤龍。
彼の者、赤い終末を、Ultの力で再現した、ガンスリンガーの奥義。
銃火器のスペシャリストが辿り着いた、極致。
魔力で再現された赤龍が、空から落ちる。
空が噴火を起こしたかのように、溶けた空気が地上に流れ込む。
龍が降臨し、ハルの背後で爆発が起こった。
溶けた空気の中で、龍が吼えている。
空から流れたマグマが消える
龍が、顕現する。
そこに立っていたのは、灰色の機械竜。
厄災の幼体。
彼は、龍を食ったのだ、影から。
影から、空を飛ぶ厄災を喰らい、龍となった。
グレイドラグーンの心臓が、脈を打つ。
体に、赤い血管が走っていく。
体の隅々、五体全身くまなく、龍の力を巡らせる。
馴染み、滾り、昂る。
‥‥終末兵器が、口を開いた。
異界を焼き払う。
「――そっと、踏んであげるわ。」
左手に、拾った詩集を広げる。
パタン。閉じた音がして――。
ハルは、右手で兵器の引き金を引いた。
振り下ろした右手は、結晶の異界を焼き払った。
巨岩を、チューズデイを、一撃で。
造作も無かった。
龍の眼光、龍の吐息。
地上に向くよりも、空へ咆哮する時間の方が長かった。
龍が咆哮する前方、ハルは、詩集を捨てた。
異界の燃えカスが、詩を焼いていく。
拾った詩集は、この炎が、持ち主の元へ届けてくれるだろう。
燃え殻に背を向ける。
夢から、覚める時がきたのだ。
灯りは要らない。
――朝が来れば、きっとそうなるのだろう。
忘れていく。
夜の中に。
‥‥‥‥
‥‥




