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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
8.5章_ワン・マン・アーミー!

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SS14.06_それぞれの異界武器

結晶の街、JJのワールド。


ぞぞぞと音を立て、茶をすする。

熱いお茶が喉を通り、腹まで温める。


腹が温まれば、全身もあったまる。


茶請けの団子を食べる。

桃色、白色、緑色。


団子の三兄弟を、次男まで食して、茶をすする。

団子の三男を食して、茶を飲む。


一服。

湯のみを置いて、温かい息をつく。



「婆さんや。たまには、こういうのもいいもんだな。」


「おやおや爺さんや。わたしゃ、まだまだそんな歳ではありませんよ。

 でも、こうやってお外でお茶をするのも、良いものですね。」


「そうとも、そうとも。

 喜んでくれたのなら、連れて来た甲斐があるってもんだ。」


「ふふふ。あなたと一緒なら、私はどこでも楽しいですよ。」


「俺もそうさ。お前が傍にいてくれるだけで、楽しい。」


「「‥‥‥‥。」」


「「あっはっはっはっ――!」」



天晴れ、快活な笑い声。

湯のみの茶をも沸かす。



「―――てっ、ちが~~~う!!」



JJに、「婆さん」と呼ばれた女性は席から立つ。

床几(しょうぎ)という折りたたみ椅子が、上品にかたりと揺れる。



「JJ! いま私たちは何をしてるの!?」

「異界化の原因を、シバきに来た。」


「それをするために、どこに来たの!?」

「住民が避難した、無人の崩壊都市。」


「女をデートで連れ込むところじゃないでしょ!? それ!」

「ぬん?」



JJと一緒にいる女性は、彼のガールフレンド。


プレイヤーネーム、サニー。

本名、清水(しみず) 陽菜(ひな)


JJとは幼馴染で、恋人の関係。



背中まで伸ばした茶色い髪に、茶色い瞳。

髪と瞳の色は、現実世界と同じ色。


服装は、白と赤の巫子装束。

白衣に、赤い袴の、スタンダートな装束。


その服装に、彼女のクラス「ハイランダー」に由来するアレンジを少々。


スコットランドの民族衣装である、ハイランダーキルト。

ハイランダーキルトとは、男性用のスカートとして知られている。


ハイランダーキルトに使用されている、タータンチェックの生地。

これを、巫女装束のアクセントに少々。


紺色の生地に、深緑のラインの入ったタータンチェック生地。

これを加工したマフラーや、腰巻のスカーフを身に着けている。


白と赤の素朴な巫子装束に、暗い色ながら華やかなチェック柄のアイテムを身に着けることで、互いが互いの良さを引き出している。



サニーは、JJを追ってセントラルに来た。

いつ頃セントラルに来たかというと、セツナとダイナが初めて会ったくらいの頃。


別に、一緒にゲームで遊ばなくとも、関係性がどうこうなるような間柄ではないのだが、それはそれ。


女性だって、ときには男の子のように、冒険に憧れることだってあるのだ。



‥‥で、JJに連れてこられたのが、ここ!



「今日はセントラルでデートをしよう。」っていう誘い文句に釣られて、ホイホイ来てみれば――。


連れて来られたのは、ここ!


てっきり、日本では見られない景色をドライブとか、異世界をピクニックとか。

そういうのを期待していたのに、連れて来られたのは、終末ど真ん中!


とても、女をデートで連れ込む場所としては、不適切と言わざるを得ない。

サニーの物言いに対し、JJは、ぞぞぞと茶をすすっている。



「そう言うなサニー。お前は強い。」

「答えになってないよ!」


「クリスマスのゾンビイベントを一緒に遊べなかったから、今日は期間限定のイベントに誘ったんだ。」


「それはすごくありがとうだけど、そうじゃなくって!?」



サニーの趣味のひとつに、ゾンビ映画の鑑賞がある。

彼女にとって、セントラルで行われたゾンビイベント(※)は、垂涎のイベントであっただろう。


※7.5章_恐怖! 恐怖のクリスマスシャーク!  のイベント


だがしかし、それをJJと一緒に遊ぶことは叶わなかった。

あのイベントは、1週間のあいだ開催されていたが、プレイヤーが参加できるのは1度きり。


サニーはゲーマーというほど、ゲームには触れない。

お菓子作りとか、料理が趣味な20歳(※)だ。


※JJとサニー、それとセツナは同い年。

 セツナはまだ誕生日が来ていないので、19歳。


だから、イベント初日も参加をスルーしていた。


結果、壮絶なネタバレと、壮絶な後悔を残すこととなってしまったのだ。


そこで、賢いJJは考えた。

愛する彼女のために気を利かし、デート (ゲーム)に誘ったのだ。


その成果は、ご覧の有様。


――中々の好感触である。(!?)


幼馴染にしか分からない、呼吸があるのだ。



JJは、茶をすする。

ぞぞとすすり、息をつく。


視線は高く――、空に向かってそびえる()()()を臨む。



「失礼します。」



ふぁさりと、陣幕の開く音。

結晶の街を、布一枚で仕切った陣の中に、甲冑姿の侍が入って来る。


腰に刀を佩き、白刃はシリンダーの付いた鞘に納められている。

彼の名を、刀之助(とうのすけ)と言ふ。


刀の助が、JJとサニーの前で膝を折る。



「殿、姫。戦の準備が整いましてございます。」


「うむ。」



スーツに陣羽織を羽織ったJJが立ち上がる。


‥‥‥‥。

この空間に、ツッコんではいけない。


仕方がない。

結晶の街にそびえる日本式の城も、戦がどうのとか言う侍も。


JJなのだから、仕方がない。

‥‥サニーは頑張ってる。



「して、刀之助よ。」

「はっ!」


「合戦の作戦は、どうなっておる?」

「僭越ながら申し上げますと‥‥。ここは、正面突破が上策かと。」


「ほう、訳を聞こう。」

「正面突破であれば、たくさん敵を切れます。」


「なるほど、確かにそれは上策だ。」

「左様にございます。」


「さすがは、我が軍イチの切れ者よ。」

「はっ! 有難きお言葉。」


「‥‥‥‥。」



JJと刀の助を会話を、サニーは黙って聞いている。


‥‥サニーは頑張ってる。

決して、「姫」とか呼ばれて、内心テンションが上がっている訳ではないのだ。


JJは、左手に火薬籠手を装備する。

サニーも、彼の横に控える。



「よし。サニー、刀之助、打って出るぞ。」

「「はい。(はっ!)」」



3人が陣幕から出る。

そこには、JJ軍が整列している。


軍の兵科は3つ。


刀之助が率いる、足軽部隊。

鎚太郎(つちたろう)が率いる、騎馬部隊。

そして、三八朗(さんぱちろう)が率いる、鉄砲部隊。


JJが陣より出たことで、三八朗が軍に号令をかける。



「気を付け!」



軍靴の音が響いて、鉄砲部隊の()()が、一糸乱れぬ動きで気を付けをする。



「殿と姫に対し、敬礼!」



軍人がJJに敬礼し、武士たちはお辞儀をする。

JJは敬礼を全員に返し、サニーはお辞儀を全員に返す。



「直れ!」



殿と姫が、敬礼とお辞儀をやめたタイミングで、号令。

一糸乱れぬ動きを見せる、JJ軍。


そんな彼らを、JJが激励。

士気を高める。



「者ども! 合戦じゃ!」


「「「応っ!」」」


「作戦はただひとつ。前に行って切り捨てろ!」


「「「応ォォ!」」」


「オレが先陣を切る! 高い所で日の出を見たいヤツは、ついて来い!」


「「「応ォォォォォォオオ!」」」



大将が一番槍を務めることを、誰も疑問に思わないし、誰も止めない。


一番強いヤツが、一番前を行く。

何もおかしくはないし、間違っていない。


JJは正しいことを言っているので、軍の士気は上がる。

割れんばかりの声が、空気を震わせる。



「ちょっと待ったァァ!」



そこに、無粋な待ったが入った。

火薬の音が響き、場が静まり返る。


侍たちは刀の鯉口を切り、軍人は銃の安全装置を外す。



「待ったと言ってるだろ。そう怖い顔をするな。」



陣幕の影から、ボロボロの着流しを来た大男が出てくる。


彼の後ろには、人相の悪い集団。

見るなり聞くなり、身なりが卑しい。

ならず者の方が、まだ小奇麗にみえる。


着流しの男は、虚空から武器を取り出す。

巨大な杭が装填された――、火薬銃。


パイルバンカーを肩に担ぎ、ニヤリと歯を見せ、顎を撫でる。



「よう大将。

 城攻めをすんなら、俺たちを使ってみちゃくれないか?

 そこらの()()()よりも、役に立って見せるぜ?」


「貴様‥‥ッ!」



高楊枝などと罵られ、鎚太郎が声を荒げる。

それを、JJが手で静止する。



「名を聞こう。」

「へへ。俺は杭丸(くいまる)ってんだ。」


「よし分かった。お前たちもついて来い。

 ただし、お前たちの配置は一番後ろだ。」


「そりゃあ好都合。俺たちは、のんびり屋なんでね。

 だが、あんまり呆耶呆耶(ぼやぼや)していると、追い抜いちまうからな。」


「良いだろう、面白い。

 うちの武士(もののふ)の前を歩けると思うなら、やってみろ。」



JJの「もののふ」という言葉に、槌太郎は溜飲を下げる。

そして、殿に戦働き(いくさばたらき)を献上すべく、心に喝を入れる。


JJが歩き始める。

その横をサニーが歩き、2人の後ろを刀之助がついていく。


――大将が、戦列の一番前に立った。


火薬籠手を装備した左手を掲げる。


法螺貝の音が、響き渡る。

結晶の天守閣まで聞こえるように。



「全軍‥‥‥‥!

 突撃ぃぃぃいいいい!!!!」


「「「応ォォォォォォオオ!」」」



法螺貝の後には、ラッパの音。

ラッパが、武士たちの足と心に、大和魂に火をつける。



全軍突撃に、敵が気が付いた。

城の周りを巡回していた小型戦車が旋回。


敵の侍が操る、カラクリ戦車隊が、JJ軍たちに向けて突撃する。

敵は、火薬術士と袂を分かった「発破士」軍団。



西暦2232年。

ここセントラルで、侍による合戦の火蓋が切られた。





「さあ行こう、ダイナくん!

 まだ見ぬ冒険が、僕らを待っている!」



灰色の杖を握る、金髪の女性が、ダイナの前を歩く。

スポーティな運動服に身を包んだ、金髪翠眼の女性。


ショートパンツに、黒いレギンス、赤いジャージ。


地球の服に身を包むのは、満月の女神、フィナン。


‥‥なんか、巨岩の光を受けたら、出てきた。


ダイナは、フィナンに腕を引かれる形で、結晶の街を歩いている。



「ちょっと待って、フィナン。

 囲まれてる! ボクら囲まれてるから!

 敵地の真っ只中だから!」


「だいじょうぶさ! 僕とダイナ君なら、楽勝!」



グイグイと、ダイナの腕を引くフィナン。

灰色の杖を高らかに空に向け、散歩気分で異界化した街を歩いている。


ダイナは不安なのだ。


満月のフィナン。

この女神の設定を知っているからこそ、不安なのだ。


そして、その不安は的中する。



――カチリ。



フィナンの足の裏が、何かを踏んだ。

感圧板のような、サムシングを踏んだ。



「あれ?」

「いぃ~~!?」



地雷だ。

地雷を踏んだ。この女神が。


地雷の信管が作動。

中に詰め込まれた火薬を、爆発させる。



「なんの!」



フィナンがダイナを片腕で抱える。

足に力を入れ、2人の姿が消える。



「爆発よりも速く動けば――。」

「ぶぇ!?」



また、地雷を踏む。

また、2人の姿が消える。



「当たらない!」

「びぇ!?!?」



フィナンが走った後ろで、爆発が起こる。

合計で、5つの爆発。


ダイナは、フィナンの腕の中でぐったりとしている。


この女神、テレポートじゃなくて、普通に走って移動している。

一瞬で音速を超えて、一瞬で立ち止まるから、慣性がすっごい。



‥‥胃を、口から丸ごと吐いてしまいそうだ。



フィナンの周囲にある結晶が光り輝く。

光が、2人を焼いていく。



「まずい! 緊急回避!」

「ヴぉぇぇぇぇエ!?!?」



2人は――、光を超えた。


ダイナは知っている。

アインシュタインの相対性理論は正しかった。


ビルの屋上で、フィナンは額を拭う。



「ふぅ危なかった。

 危機一髪だったね、ダイナ君。」


「‥‥‥‥。」



ダイナは、冷たくなっていた。

フィナンの腕の中で、白くなっている。



「ダ、ダイナ君!? 死んでる!?

 大変だ! ど、どど、どうしよう!?」



満月の女神、フィナン。


大当たりだ。

これほど強力な異界武器は、セントラルに存在しないだろう。


同時に、大ハズレだ。

この女神は、パワー系バカなのだから。


腕の中で冷たくなっているダイナに、おろおろのフィナン。



「そ、そうだ!

 こういう時は――!」



灰色の杖を握り右手の、親指を齧る。

知恵の鮭の脂が染み込んだ、親指。


この指を歯で噛めば、この世すべての知恵を得ることができる。


‥‥大抵の知恵は、フィナンには理解できないけれど。


親指を噛み、知恵を得る。

この世界にある、死者の蘇生方法。


満月の女神は、鮭の脂から知恵を得た。



「なるほど! 胸骨圧迫法!

 そんなものがあるのか!」



‥‥すごく、すごくイヤな予感がする。

これは予感ではなく、確信だ。



「待っててね、ダイナ君。

 今、キミを生き返らせるから。」



ダイナを、ビルの屋上に寝かせる。



「鳩尾から指三本分、上のところ――。

 手の、掌底を打つ位置を、そこに置いて――。


 右手と左手を重ねて――。

 肘と肩を固定、体重を掛けるように――。


 ‥‥魔力を、手のひらに集めて。(!?)

 ‥‥血脈(ちみゃく)の流れを、手で感じて。(!?!?)

 ‥‥心臓に、一撃入れるッ。(!?!?!?)」



フィナンの胸骨圧迫は、ビルを割った。

ダイナを起点に、真っ二つ。



「びゅぅぅぅぅぅううう!?!?」



20階建てのビルの天井を、瓦割りみたいな感覚で、全部カチ割る。


ダイナは、地上に空いたクレーターの中で横たわる。

身体が、くの字に折れ曲がり、痙攣を起こして、動かなくなった。



(JJの‥‥、火薬が、恋しい‥‥‥‥。ガクリ。)


「あれ? ダイナ君!? ダイナく~~~ん!?」



‥‥‥‥。

残念。ダイナの冒険は、ここで終わってしまった。



YOU DIED



Continuity?

⇒Yes  No

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