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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
8.5章_ワン・マン・アーミー!

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SS14.05_異界武器(アルムテルム)

「良いことを、教えてあげる。」



カチリと、留め具が嵌る音が響く。

銃を構える。



「セントラルでは、エージェントの命は軽いの。

 あなたたち消耗品と一緒か、それ以上にね。」



人質のセツナを始末して、ライザは野盗に銃を向ける。


リボルバーを両目の前に置き、左手を右手首の上に置く。

リストブレースという握り方を、我流に崩した構え。


シングルアクションリボルバー (※)を撃ちやすい握り方。


※発砲する前に、撃鉄を手動で上げる必要がある銃。

 自動で撃鉄が動く、ダブルアクションに比べ、引き金が軽い利点がある。



この、安定感に欠けるリストブレースというグリップ方法。

リロードの時に見せる、スイングアウトやスイングイン(※)のリロード動作。


※手首の動きを使って、シリンダーを取り出したり、入れ込んだりする動作。

 パーツの歪みや故障の原因となるので、現実世界ではNG。


それらは、彼女の自信の現れ。


暴れる猛獣を、片手で飼いならす腕前。

雑に扱われようが、歪みひとつ生じない信頼性。


武器としての自分自身に対する、絶対的な自信。



「あんたたち全員、あたしが相手してあげる。」



ハルが空から飛び降りて来る。

グレイが、ライザの横に降りてくる。



「姉上、我にも半分寄越せ。

 この身体(ネルウス)(マグナ)を、確かめておきたい。」



どうやら武器姉弟が、この連中の相手をしてくれるらしい。


ハルは、リーダーとしてこれを承諾。

一緒に戦う身として、2人の力を確認しておきたい。



「ライザさん、グレイ、よろしく。」


「ええ。」

「――フッ、契約は成ったな。」


「兄さんも、それで良いでしょ?」

「いいよ~。」



話しを聞いていたセツナが、返事をして立ち上がる。

何事も無く立ち上がって、周囲の野盗をドン引きさせる。


テレポートを発動。

ライザの左横へ瞬間移動。


開幕早々フレンドリーファイアを受けたが、気を取り直して――。

ここの見せ場は、ライザとグレイに譲ることにする。



「よ~し! ライザ、キミに決めた!」



ピシッと指を差し、ライザのホルダーとして、彼女に指示を出す。

し・か・し。



「あぁん!?」



しかし、それを素直に聞くライザでは無いのだ。

ライザは、めいれいをむしした。


セツナの襟首を掴む。



「え!? あの――!?」



セツナの足が、地面から離れる。

猛牛の腕で、軽々持ち上げられる。



「あたしに――、命令するなぁぁぁ!!」


「ごめんなさぁぁぁい!?」



セツナは投げ飛ばされた。

野盗の包囲を飛び越えて、瓦礫の上をゴロゴロと転がる。


ひょいと、グレイがハルを持ち上げる。

床みたいに薄い(かるい)ハルを両手で持ち上げ、ライザに差し出す。



「姉上、こちらを。」


「あら、気が利くわね。」


「あれ? あれあれ!?」


「ちょっと我慢してね、ハルちゃん。」



ハルは、ライザに襟首を掴まれて、投げ飛ばされた。

空中で宙返りをして、両足でキレイに着地する。


瓦礫が積み上がった場所で、セツナが高みの見物をしている。

ハルもその横に行って腰かける。


さて、お手並み拝見。


結晶の生えた野盗どもは、やっと我に返る。

奇襲を仕掛けたはずなのに、4人があまりに自由過ぎるから、ペースを握られてしまっていた。



「バカにしやがって‥‥! やっちまえ!」


「ふん、野良犬が吠えるんじゃないわよ。」

「ククク――。貴様らの血で、魂の渇きを潤してくれよう。」



武器と武器。

物と物。


異界化した街で、人の姿を持った物同士の戦いが始まった。





ライザとグレイ。

それと、結晶の異界にて、人の姿を得た「道具」たち。


彼らを、異界武器(アルムテルム)と仮称しよう。


銀色の大地「フロド大陸」には、フーライと呼ばれる国があった。

その地では、この世の万物に精霊が宿るとされていた。


日本語で表現するならば、「八百万の神」とか「付喪神(つくもがみ)」のニュアンスに近い。


フーライは、人間とそれ以外の境界が曖昧な国だった。

国には、人だけでなく、様々な(あやかし)や精霊が住んでいた。


そして、人が妖となったり、精霊が人となったりすることも、珍しくは無かった。


その文化と歴史の中で――。

フーライに、とある呪術が生まれた。


万物八百万の精霊に、人の形を与える技法。


フーライの人間は知っていた。

人の形とは、人ならざる力によって構築されていることを。


人は妖であり、精霊である。

精霊もまた、妖であり、人である。


この奇妙な隣人関係と、血縁関係を用いた呪術。


形代(かたしろ)、あるいは晶晴術(しょうせいじゅつ)

この呪術はそう呼ばれ、銀色の大地に人知れず広がっていった。


銀色の大地は滅び、いまは失われた技術。

それが、創造による殺戮(オルギン)がもたらした異界化により、甦ったのだ。



‥‥‥‥。

ライザとグレイが、精霊の力を解放する。



「「晶力解放(ラピスサクスム)。」」



ライザの銃に魔力が集まる。

グレイの身に着けているシルバーアクセサリーが、意思を持って動き出す。


スキル発動。

晶力解放――。



「「蛇((へび))!」」



ライザの銃から、複数の毒蛇が放たれる。


スネイクショット。

悪魔を召喚すると呼ばれる銃から、散弾を発砲。

紫色をした、毒矢のような子弾が、5発放たれる。


毒矢を速射。


ファニングショット。

引き金を引いたまま、右手の親指と、左手の人差し指を交互に使い、早打ち。


2回の銃声で、3発の弾丸が発砲された。

合計15匹の毒蛇が、無名の異界武器をまとめて仕留める。


対してグレイの攻撃は、1体だけが対象であった。


尻尾のように垂らしていたシルバーが、異界武器1人の胸を貫く。

銀細工を伸ばすみたいに尻尾が伸び、(へび)が獲物を捕食する。


銀の尾が抜かれ、捕食された異界武器は倒れ伏す。



「ククク――。奪ったぞ、お前の力!」



グレイドラグーンを象徴する不協和の力、ゼナス。

捕食により、相手の力を我が血肉に変える。


グレイが、両手を地につける。



「光に焼かれ、影と消えるがいい‥‥!」



地面から、幾つもの結晶が生える。

先ほどライザたちを不意打ちした、光って爆発するトラップ。


ハルとセツナは、自分たちが座っていた瓦礫の山の影に隠れる。



「†黄昏の地平フォールン・ホーリーライト†」



突き出た結晶の柱が輝き始める。

光が、異界武器とライザを焼き始める。



「この‥‥愚弟がッ!」



どさくさに紛れて、姉にフレンドリーファイアをするグレイ。

ライザは毒づき、怒りに任せて地団駄を踏む。


晶力解放:地


セツナが使うスキル ≪グランドスマッシュ≫ に似た技。

足を踏み鳴らし、地盤を破壊。


脆くなった地盤に左手を突っ込み、めくり上げる。


地盤を持ち上げ、岩の盾として、†黄昏の地平フォールンホーリーライト†から身を守る。



光が強くなり、爆発する。

爆発の当たり所が悪かった異界武器たちが、戦闘不能となった。


敵の増援が、騒ぎを聞きつけて集まっている。

キル稼ぎには困らない。


ライザが、地盤を蹴り飛ばす。

凶暴な暴れ馬の蹴りで、岩盤はサッカーボールみたいに飛んで行く。


‥‥グレイの方へ向かって。


グレイは、シルバーアクセサリーを変形させる。

≪晶力解放:巳≫ には、シルバーの形を自由に変えられる能力もある。


シルバーが液体となる。

増殖しながら形を変えて、グレイを岩盤から守った。


液体から固体に変質したシルバーが、衝撃を受け止め、返り討ちにして岩盤を砕く。


銀の膜から、棘が撃ち出される。

複数本の棘は、ライザの銃から呼び出された毒蛇によって、溶かされた。


熱を帯びた棘が、地面にへばりつく。


ライザとグレイの、互いの目が合う。

互いに、殺気立つ。


戦闘中であってもお構いなし。


姉弟喧嘩が勃発する。


元々、気性が荒い武器同士。

持ち主(ホルダー)が兄妹という繋がりだけでは、完全に制御できていない。


互いに、自分こそがナンバーワンだと、信じて疑わない。


自分がナンバーワンだと、ホルダーに分からせたい。

その承認欲求と、生来の闘争心と混ざり合い、化学反応を起こす。


感情の化学反応が、意思決定に影響を与える。


無名のザコよりも、姉(弟)を倒した方が、ホルダーへのアピールになる。

結果、戦いの中にあっても、2人は姉弟喧嘩をする。


チームワークなんて言うのは、このコンビに存在しない。

ダメな方向に息が合い、相変わらず足並みは揃わない。


ここは任せろと言った言葉は何処へやら。

闘争に燻る硝煙に当てられて、自制が利かなくなる。


ハルは、姉弟喧嘩を目の当たりにしても動かない。

リーダーとして、この場は2人に任せると言った以上、動かない。


セツナも、リーダーの意思に従う。



無名たちが取り囲むなか、グレイが動いた。

≪晶力解放:風≫ 。


ハルが使うスキル、 ≪リボルビングスピン≫ に由来するスキル。


グレイが右手で、弧を描く。

人差し指をすーっと横に滑らせる。


彼の指を追うように、結晶の弧が宙に描かれる。


結晶に、左手で触れる。

魔力が流し込まれ、結晶が巨大化する。


左手を前に押し出す。

巨大な光を反射する三日月が、ライザへと向かう。


見え見えの攻撃を、ライザはスライディングで回避。


狙いを外れた三日月は、姉弟喧嘩に巻き込まれた無名たちを惨殺した。


ライザは、スライディングをしながら、左手を地面につける。


スキル発動、 ≪晶力解放:銃≫ 。

悪魔を召喚する銃の力。


彼女の周囲に、10個ばかりの魔法陣が地面に描かれる。


魔法陣から、悪魔が召喚される。

棘で覆われた、枯れ草の、悪魔。


枯れ草の正体は、タンブルウィード。

西部劇で、道をよく転がっている、あれだ。



「いけ!」



ライザが命令をすると、タンブルウィードが転がり出す。

西部劇では、荒野の殺風景さを表現するために使用されるタンブルウィード。


だがしかし、現実世界のそれは、そんなに詫び錆びに満ちた習性をしていない。


これの植物は、群生するのだ。

群生して、季節風で転がり回り、人や建物に被害を与える。


ライザが、左手にソードオフレバーアクションライフルを構える。


荒野で、イエローボーイの異名を持つ、傑作ライフル。

イエローボーイは、ライフルであるにも関わらず、拳銃の弾が流用できた。


ライザが、リボルバーとライフルの引き金を引く。

赤い蛇が10匹、トリガーから召喚される。


蛇は、タンブルウィードに潜り込む。


潜り込み、枯れ草は燃える。

‥‥この草は、群れで襲い掛かるだけでなく、良く燃えるのだ。


直径1メートルの草の塊。

それが10の軍勢となって、グレイに襲い掛かる。


グレイは、背中に翼を生やし、躱す。


草は、空を飛べない。

タンポポじゃあるまいし。


燃え盛る迷惑草は、これまた蚊帳の外の無名たちに迫り、火だるまに変えた。


竜の異界武器が、空から強襲。

≪晶力解放:焔≫ 。


ハルの使うスキル ≪ブレイザー≫ を模したスキル。


闇の炎が、竜の姿を形取る。

竜のオーラを纏い、空からライザに殴り掛かる。


≪晶力解放:炎≫


セツナの ≪ブレイズキック≫ と同等の性能を持つ、ライザのスキル。

彼女の持ち主を彷彿とさせる、後ろ回し蹴りを披露。

空飛ぶトカゲを迎え撃つ。


赤い炎と黒い炎が衝突。


衝撃が大気を震わせ、地面から土ぼこりを舞い上げる。


力は拮抗し、自分たちの攻撃の反動で、2人の距離が離れる。

2人を囲む無名たちからの銃撃が、喧嘩を煽る歓声のように響き渡る。



≪晶力解放:剣≫



グレイが大剣を装備する。

縦に回転をしながら、勢いに任せて空から剣を叩きつける。


黒い火柱が空に伸び、地上を黒く溶かしていく。


大振りな攻撃にライザが当たるはずも無く、グレイは散弾を叩き込まれる。

それを、銀の壁で防ぐ。


壁を、ライザが殴りつける。

銃弾でビクともしなかった銀の壁が、凹む。


彼女の、左手の形に沿って、凹む。



「クソ、ゴリラめ‥‥。」

「あぁ!?」



銃よりも、素手の方が強いと証明してしまったライザ。

彼女を、銀の棘が襲う。


棘が、身体に刺さる。


気合いと根性で、無理矢理耐える。


足に炎を纏う。

炎の慣性を使い――、壁を貫く。


ライザの拳が、銀の壁を貫通した。

壁が液体となり、グレイの制御が崩れてしまう。


拳を、大剣で受けようとするグレイ。

中段に構えた大剣を、ゴリラが、お構いなしに素手で掴んだ。



「――!? このゴリラ。」

「誰がゴリラじゃぁぁあ!!」



グレイの身体が、放物線を描く。

大剣を起点に、縦方向に。


ライザに持ち上げられて、地面に叩きつけられた。


リボルバーが、グレイを睨む。

ハンマーが起き、引き金が引かれる。


リボルバーは‥‥、無名のザコを撃ち抜いた。


勇敢にも、姉弟喧嘩に突貫したザコは、儚くも散った。


ライザが、タンブルウィードを召喚する。

グレイが、彼女の足元で大剣を振るう。


闇の旋風(かぜ)を纏い、足元を一回転。


ライザは跳躍し、大剣からは焔が噴き上がる。

旋風と焔が熱波を作る。


枯草は燃え、転がり、ギャラリーが阿鼻叫喚となる。


それを、もう一度。

先ほどよりも大量の枯草と、高温の熱波が、無名の集団を襲った。


大都市のど真ん中で、山林火災が発生する。


無名たちは、人の身体を得てしまったばっかりに、武器姉弟に近づけなくなる。

火災の熱で足止めされて、近づけない。



ならばと、彼らは人間兄妹に標的を変えるが‥‥。

語るまでもなく、ボコボコにされてしまう。


ハルが双銃を構える。

スキル ≪リボルビングスピン≫ 。


クルリと回転しながら、敵に接近。


Ultパッシブ「反逆心の燕」を発動。

パッシブの効果で、スキル ≪飛燕衝≫ を強化する。


銃に4発の、リベリオンスタックをチャージ。

片方4発、両方で8発。


スキル ≪反逆の飛燕衝≫ 。

銃口から、強化された弾丸が発砲される。


彗星の如く、青い尾を引く弾丸。


身を翻しながら撃った弾丸が、2体の無名を仕留める。


さらに、 ≪リボルビングスピン≫ 。

90度転身、腕を交差、発砲。


反逆の燕が、また2体、仕留めた。


ハルの背後から攻撃。

木製のバットを持った無名が襲い掛かる。



新スキル ≪ムーンスタンプ≫ 。

宙返りで空中を舞い、相手を踏みつけるスキル。

Fキャンセル属性で、踏みつけ攻撃をキャンセルできる。



ハルは、敵に背を向けたままバックフリップ。

無名の頭上を通り過ぎる。


バットを持った無名は、背中に岩塊が直撃し、すっ飛んでいく。


セツナが、見学席に使っていた瓦礫の山の、解体作業をしている。

解体作業ついでに、無名どもにぶつけている。


ハルは、 ≪ムーンスタンプ≫ をFキャンセル。

攻撃動作を、 ≪リボルビングスピン≫ でキャンセルする。


頭を地面に向けて、空中で一回転。


回りながら引き金を引く。

燕が、2体の敵を仕留める。


強力な弾丸によって、敵を1撃の元に次々と沈めていく。


Ultパッシブ「反逆心の燕」。

再使用までに180秒のクールタイムが必要だが、AG消費無しで強力な攻撃が可能となっている。


リボルビングスピンの機動力と合わせれば、高機動高火力の実現が可能。



――ハルの頭上に影が差す。

空から、岩の雨が降って来る。


雨ごいをしたのは、彼女の兄、セツナ。


ちまちま解体作業をするのがダルくなった彼は、瓦礫の山の根っこを蹴り飛ばした。


ブレイブゲージを消費して、青いポーションを飲んで、 ≪AG魔女のブレイズキック≫ 。


スキル ≪魔女の一撃≫ の出始めをZキャンセル。

魔女の技法により、ブレイズキックにエンチャント。


墨汁の如き黒い炎が、横一線に伸びる。

AGにより延焼範囲が上昇した黒炎は、瓦礫の足元を刈り取り、魔女の魔力で持って、山を抜いて持ち上げた。


瓦礫の雨は、ハルと無名たちに容赦なく降りかかる。


ハルは、雨の中をくるくると舞う。

雨の縫い目を潜り抜ける。


大きな雨粒だけの直撃を避るように、リボルビングスピン。

足元に炎を纏いながらステップを踏み、頃合いを見て跳躍。


スキル ≪ムーンスタンプ≫ 。

雨が終わる直前、空中の雨粒の上に乗り、スタンプ。


幸いにも雨に打たれなかった無名に、岩の塊をプレゼントした。

炎上する岩が、無名に直撃する。


空中で燕を放ち、地上に着地。


生き残りの頭を蹴って着地。

転倒した敵を踏みつけて、銃を向ける。



「やめといた方がいいよ。

 ちょっと強いんだ、私たち。」



その忠告も、時すでに時間切れ。

下手に人間兄妹に手を出してしまったばっかりに、無名たちは壊滅した。


さて、山林火災の方へと目を向ければ――。

機械竜が、空に咆哮していた。



≪晶力天灰(てんかい)崩灰(ほうかい)



晶力天灰とは、プレイヤーのEXスキルに該当する技。

あの凶暴姉弟は、喧嘩にEXスキルまで持ち込み始めた。


ハルが、セツナの方を見る。

セツナは、両手を頭の後ろに組み、山林火災の方へと歩いていく。



グレイの晶力天灰に当てられて、ライザも晶力天灰。



「やってやろうじゃない‥‥!

 覚悟なさい!」



リボルバーをリロード。

手元を見ずに、竜を睨んだまま、操作を終える。



≪晶力天灰:六魔(りくま)



グレイが、ライザに襲い掛かる。

一時的にCEの姿を取り戻したグレイが、虫のように小さくなった姉を、手で潰そうとする。


リボルバーが火を吹く。

ファニングショット、5発。


5発の弾丸が、五芒星となる。


CEの手が、五芒星に止められる。

止められて、弾かれた。


ならばと、CEは拳を握る。

拳から、黒い炎が噴き上がる。


五芒星に守られたライザが銃を構える。


竜が拳を振るう。

ガンマンが、引き金を引く。



‥‥五芒星から、悪魔が召喚された。



それは、暴食であり、暴力である。

ただ、大きな、魔力の塊。


純粋な力のみで構築された、暴食の王。


暴食の悪魔が、不協和の悪魔と衝突する。


竜の拳に、亀裂が入る。

五芒星に、亀裂が走る。


紫色した暗い光が、一帯を覆う。


太陽の光を遮り、眩しいのに暗い。

明るいのに、暗い。


力と力の衝突が、周辺の結晶を破壊する。

無名の残党を、力の余波だけで吹き飛ばす。


結晶は割れ、光り瞬くも、暴力に圧し潰されて輝けない。



――異界武器は、精霊であり人間である。

精霊には「格」が存在する。


武器精霊の格とは、優れた持ち主に使われることによって高まる。


優れた戦士が使う武器に宿った精霊は、強い力を持つ。

上澄みのプレイヤーともなれば、よりいっそう、強い力を持つ。


上澄みのプレイヤーに選ばれた精霊もまた、上澄みの精霊となるのだ。



そんなのが、身体に帯びた凶暴性と闘争心の赴くままに行動すると、こうなる。

辺りは、弱者が滅びる地獄と変わる。



――暴力と暴力の拮抗が崩れる。



竜の腕が砕けた。

五芒星が砕けた。


互いにぶつかる相手を見失った魔力は暴走。

轟音と暴風を起こし、嵐に姿を変えた。


瓦礫さえ浮かせる嵐が、戦域に発生する。


嵐の目の中。

人の姿に戻ったグレイが立ち上がる。

ライザも立ち上がる。



まだ、やるつもりでいるらしい。



大剣を握る。

銃をリロードする。


走る、距離を詰める。


大剣の間合いになる。

銃必中の間合いになる。


精霊とは名ばかりの、悪魔の視線が交錯。

闘争心を乗せ、ぶつかり――。






――割って入ったホルダーに、じゃれ合いを諫め(いさ)られた。






「はい、そこまで。」



銀色の籠手が、銃口を逸らす。

炎の蹴りが、大剣の軌道をズラす。


2人のあいだに割って入ったセツナが、2人の攻撃を止めた。


無粋な乱入に、武器が凶暴な瞳をホルダーに向ける。


銀色の尻尾が伸びる。

セツナの背後から、地中を伝って。


不意打ちを事も無げに掴む。

掴んだ尻尾を引っ張ると、グレイが転倒する。


ライザがセツナに銃を向けようとする。

銃を握る手首に、尻尾を絡ませる。


ライザの腕を封じ、セツナは左腿からリボルバーを抜く。


銃口を、ライザの頭に向ける。


暴走する異界武器を、セツナが鎮圧した。



「これ以上続けると、こわ~いリーダー出てくるからね?

 怪獣が火を吹く前に、やめとこう?」



ハルは、今でこそじゃじゃ馬だが‥‥。

昔は怪獣だった。


本人は、昔の自分を、内気な性格だと思っているらしいが。



サブリーダーの、実力行使による説得からの、言葉による説得。

順序が逆である気もするが、説得は成功。


グレイは尻尾を引っ込め、ライザは銃をしまった。


2人が暴れたおかげで、無名の異界武器たちは全滅。

2人の実力も、よく分かった。


頼りになる。

――分かり切っていたことでは、あるのだが。



‥‥‥‥。

‥‥。



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