8.5_囚われの蝶
終末教の集会に潜入したエージェントたち。
そこで見たの物は、厄災を退けた彼らをしても、想像を絶する物であった。
――人災だ。
人の欲望は果てしがなく。
人類を絶滅に追い込んだ厄災さえも、文明の利器として、取り込もうとしている。
◆
「くっそ‥‥。アイツら何なんだ。」
終末教の追っ手を振り切り、セツナは心に貯めた疑念を吐き出す。
戦闘がひと段落して、やっと胸中のわだかまりを吐露できた。
魔薬を扱う宗教家集団。
違法な薬を使って信者を増やしているのだから、碌な奴等じゃない。
それは、分かっていた。
ところがどっこい、いざ集会に潜入してみれば、ヤバさのランクが上がった。
信者をディビジョナー化させる銃器に、光学迷彩を駆使する鳥人間。
もはや、裏社会の悪党が持ちえる技術力を軽く上回っている。
ディビジョナーした信徒の性質も、ナイスデイが操っていたゾンビみたいな連中とは違う。
明らかに、人間としての理性が残っていたし、それに何よりも――。
ダイナが、銃のリロードを行いながら、セツナの言葉に答える。
「ルシフェライザー‥‥、とか言ってたね。
あの集会は、あれを使うための集まりだったんだろうね。」
ダイナの手元では、ショットガンと拳銃の装弾を、非殺傷壇から実弾へと変更されている。
「考えたくないけど、信者は、ルシフェライザーを常習してるみたい。」
「福音とやらが授かれなくて、暴走した人間を、福音を持つ者が裁いていたんだろうさ。」
車のハンドルを握るJJが、ダイナの補足をする。
言葉を、だいぶ濁して、あそこで行われていたことを、続けられていたことを口にする。
つまるところ、選民思想だ。
一般人を殺人鬼にしたいなら、大義名分をくれてやればいい。
人々を支配したいならば、外部に敵を作ってやればいい。
違いが生み出す優越感。
違いが生み出す嫌悪感。
社会から人々を隔離して囲うのに、これほど便利な道具はない。
好きなだけ、幻想に浸らせてやればいいのだ。
社会的な動物である人間にとって、何者でもない自分という現実は、過酷すぎる。
セツナは、ホルスターに右手を伸ばす。
右手が空を切る。
‥‥そう言えば、デアソラにリボルバーを渡したままだった。
右手は、行き場も無く宙空をふらふらとして、軽トラのアオリを掴むに落ち着く。
弾避けとしての機能するアオリを掴み、力を入れる。
マルから、通信が入る。
同時に、スマートデバイスの地図にマーカーが設置される。
「一度合流しましょう。蝶のお二人から、話しを聞けそうです。」
偶然の巡り合わせで、助けた蝶の2人。
彼女たちは、どうやら事情を知っているようだ。
エージェントたちは、マルのアジトのひとつへと向かう。
情報が必要だ。
ルシフェライザー。
量産が可能で、人間をディビジョナー化させる道具。
あれを、セントラルの表に出す訳にはいかない。
赤龍は、ディビジョナーを殺して回ることを行動原理としている。
ルシフェライザーがセントラルに出回れば、赤龍の逆鱗を撫でることになる。
あんなにカジュアルにディビジョナー化されては、もはやセントラルに未来は無い。
龍が焼くか、人が壊すか。
いずれにしても、社会は死ぬ。
車が、細かい煙を巻き上げながら走っていく。
錆びた町を、青い空を見上げて――。
‥‥‥‥。
‥‥。
「マルさん。ご客人がお見えです。」
「通してください。」
「はい。」
マルから送られてきた座標は、彼らの武器庫だった。
車、銃、そしてCE。
裏社会で頭角を現す彼らに相応しい数々の品々が、確かな技術を持った技師によって管理をされている。
技師は、マルファミリーお抱えの専属技師だけでなく、いわゆる、派遣技師も在籍している。
裏社会にも、様々な人材を派遣している事業があるのだ。
マルファミリーでバーテンダーをしていたデアソラも、その伝手から紹介された人物。
専属契約ではないものの、ファミリーからの人気は高い。
腕が良く、それでいて美人だ。
射撃も達者で、酒の席を乱す輩を制裁することもある。
強えぇ奴をリスペクトするのが、チンピラの掟。
人気が出るのは、当然の結果であった。
今回は、その縁が彼女の身を助けた。
最近、音沙汰が無かったため、マルは密かに網を広げていたのだ。
マルの行動は結果的に、セツナたちの助けにもなった。
「マル、助かったよ。」
「ああ。良いタイミングだった。」
「さっすがマルさん♪」
マルの部下に、応接室に通されるや否や、セツナたちはマルに礼を言う。
「礼には及びません。ただ、利害が一致しただけですよ。」
ピンク色の毛並みのクマさんは、そうやって謙虚に返す。
彼は、御付きの女性型アンドロイドの膝の上で、なでなでしてもらっている。
応接室には、御付きが2人。
蝶の組織のデアソラとオラクル。
そして、エージェント3人。
シバは、マルのアジトを探検中。
車やCEに目をキラキラさせながら、そこで働く技師に癒しを提供している。
話しの本題へ入る前に、デアソラがセツナに銃を返した。
「良い銃だね。
そして、同じくらいワガママな銃だ。
僕の言う事なんか、全然聞いてくれない。」
「大丈夫、オレの言う事も聞かない。」
高飛車でワガママで、足癖が悪い。
隙あらば、ガンマンの鼻っ柱を蹴ろうとする、じゃじゃ馬。
拳銃と呼ぶには烏滸がましいリボルバーを、ホルスターに収める。
銃を受け取り、デアソラの顔を見る。
その顔色は、どこか晴れない。
窮地を脱した安堵というものが感じられない。
怯えている感じとは異なる、まだ、深刻な事態が解決していない表情。
視線をオラクルの方へとやれば、彼女も同じ表情。
それに釣られて、エージェント3人の表情も固くなる。
デアソラが、意を決して口を開く。
「――助けて欲しい。アゲハが捕まった。」
固くなった表情に、皺が寄る。
奴等に捕まっているのは、デアソラとオラクルだけでは無かった。
「僕たちは、奴等の研究所に潜入したんだ。
そこで、追われることになって、アゲハは――。
ハーマンに逃がしてもらったけれど、そのあと、僕たちをかばって捕まった。
そして、僕たちも他の仲間を逃がして、捕まった。」
ハーマンの名に、3人は反応する。
数奇な巡り合わせだ。
ハーマンは、終末教と繋がっていた。
正確には、終末教の裏で糸引く組織と繋がっていた。
JJが、顎に手を当てる。
「ハーマンがつるんでいた連中は、いったい何者だ?」
「奴等は、X³ (サウザント)。
知っての通り、人間をディビジョナー化させる兵器を持つ組織だ。」
サウザント、それが終末教を隠れ蓑にして動いている組織の名。
新興宗教を使い、人々を終末に導く存在。
JJは、顎を手でさする。
「‥‥野暮なことを聞くが、なんでそんな組織に潜入を?」
「潜入してから知ったんだよ。
元々は、妙なCEの噂を追って、その研究所に潜り込んだんだ。」
「妙なCE‥‥。」
おそらく、ナイスデイが見せびらかした、三悪魔CEのことだろう。
あのネタバレサンタは、ハロウィンイベントでプレイヤーに見せびらかすだけでなく、裏社会にも三悪魔の情報を流していたらしい。
なぜ、そんなことをしたか?
そっちの方が、面白いからだろう。
それに、生贄の相場は美女と決まっている。
‥‥彼の中では。
つまるところ、魔女狩りだ。
これが罠だと知っていても、蝶の組織は、自分たちの性分に負けた。
スリルと好奇心に生きる性分が、彼女たちを網に掛けた。
そういうことだろう。
ダイナは、JJとデアソラの話しを聞きながら、自分のスマートデバイスを見ている。
頃合いを計り、蝶の2人にデバイスを見せる。
そこには、サンタ服のナイスデイと、背丈の低い女性が映っている。
少々ぼやけているが、特徴が分かるくらいには鮮明だ。
「この人物に、見覚えは?」
オラクルが身を乗り出す。
ダイナが、スマートデバイスを渡す。
「知ってる! コイツだよ! 研究所にいたのは!」
「詳しく聞かせて。」
「――その必要は、ありませんわ。」
話しの腰を折るように、スマートデバイスから女性の声。
マルが、ネットワークの異常を検知。
何者かが、デバイスをハッキングした。
デバイスの画面が、勝手に変わる。
画面がホワイトアウトし、文字が表示される。
『Melissa.』
メリッサ。この名前は――。
――建物が揺れる。
警報と、怒号。
何者かの攻撃。
話しはあとだ。
全員、応接室を飛び出して、ガレージを突っ切り、外へと向かう。
CEをも格納している、広いガレージの、大きな扉が破壊される。
マルが ≪ポルターガイスト≫ で、破片から部下や他の者を守る。
セツナたちが前に出る。
武器を装備し、構える。
‥‥革靴の音が聞こえる。
砂埃舞う中を、コツリ、コツリと。
銃撃。
マルの部下が、革靴の音に向けて引き金を引く。
靴音を、蜂の巣にしていく。
射撃の手応えはある。
10人掛かりで発砲し、少なくない数が命中している。
砂煙の向こうで、その手応えがある。
そして、分かったことがある。
この、手応えを通して分かったこと。
効いていない。
利き目が薄いのではなく、効いていない。
命中しているからこそ、手応えがあるからこそ、それが分かってしまう。
銃声が止む。
排莢された薬莢が、虚しく甲高い音を立てて、床に散らばる。
「くふふ――。歓迎の拍手は、もうお仕舞い?」
女性の声。
ハッキングされたスマートデバイスから聞こえた、女性の声がする。
砂煙が晴れる。
襲撃者の姿が、露わとなる。
外からの光を背景に、灰色髪の女性が立っている。
写真で見た、背丈の小さい、灰色髪の女性。
髪はインナーカラーとなっていて、内側は紫色になってる。
瞳も、インナーカラーと同様に、紫色。
彼女の足元には、ひしゃげた弾頭が大量に散乱している。
セツナがリボルバーを引き抜く。
ファニングショット。
女性に向けて、3発の弾丸を撃ち込む。
砂煙で見えなかった、手品の種を明かそうとする。
銃声が2回しか聞こえない早撃ち。
弾丸は、迷うことなく女性へと吸い込まれ、肌に触れる寸前で停止する。
動きを止めた弾丸が、肉眼で見えている。
胸に2発、頭に1発。
大口径の弾が、その位置で止まっている。
「良い腕をしているわね。」
唐突な射撃に動じる様子も無い。
――咄嗟。セツナは、頭を左へ傾ける。
理解するよりも速く、身体が動く。
彼の顔の真横を、弾丸が通り過ぎていった。
弾丸は、数十メートル後ろにあった装甲車に直撃。
火花を散らし、跳弾し、砕ける。
跳弾の音で、JJとダイナがやっと振り返る。
‥‥今、セツナはどうやって避けた?
「今のは、当てるつもりだったのだけれど――。
どうやったの?」
不可視の速度で跳ね返された弾丸。
それを見切って避けた本人は、何も答えない。
自分でも、なんで避けられたのか分からない。
魔力野が魔力の起こりを捉えるよりも前、身体はすでに動いていた。
しかし、彼には鮮明に、ここに反撃が来ると、確信があったのだ。
内なる悪魔が、そうさせる。
内なる悪魔が、そう確信させる。
何も答えない、答えられないセツナ。
彼の沈黙を、女性は別の意味として解釈をする。
「これは失礼。自己紹介が、まだでしたわね。」
頭に被った、小さなシルクハットを取る。
帽子を胸の前に置き、お辞儀をする。
「わたくしは、サウザントの幹部、ルフラン。
以後、お見知りおきを。」
頭を上げて、帽子を被り直す。
サウザントのルフラン。
探していた人物が、向こうからやって来てくれた。
ダイナが、ルフランに杖の先を向ける。
「あなた1人? 鳥人間は、どうしたの?」
幹部を名乗る重鎮が、護衛もつけずに敵地に乗り込むとは、大した自信である。
紫瞳の淑女は、口元を歪ませる。
「護衛のことを言ってるのであれば、問題ありませんわ。
わたくし、ご覧の通り小心者ですの。
護衛なら、ここに。」
ルフランが右手を上げる。
空間が歪む。
彼女の右側の空間が捻じれ、ガラスのようにヒビが入り、割れる。
割れた先に紫色の空間が出現し、そこから護衛が出てくる。
「「「――――ッ!」」」
現れた護衛に、一同は絶句する。
ルフランは、歪ませた口元から、白い歯を覗かせる。
そう! その表情を見るために、ここまで足を運んだのだ。
「くふふふふ――。美しいでしょう?
わたくしの元で、永遠に美しい羽根を広げる――。
この標本を見て欲しくて、ここに来たのですから。」
歪み割れた空間から出てきた護衛。
それは、サウザントに囚われた、アゲハだった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥。」
スーツ姿の彼女は何も言わず、ルフランに仕えている。
デアソラやオラクルの、家族とも呼べる仲間の声にさえ、反応を示さない。
デアソラが、マルから貰った拳銃をルフランに向ける。
オラクルは、口元を両手で覆っている。
エージェントの3人も、良い顔をしていない。
「ああ――。揃いも揃って、イイ顔。」
大勢の敵意を向けられて、浴びせられて、それでもルフランは余裕を崩さない。
それどころか、歓びの感情さえ見て取れる。
「人間とは、不思議なもの。
悲劇を、娯楽にしてしまうのですから。
心は、不可思議なもの。
痛みを和らげるために、快楽を生み出す。
幸福を与えても和らげて、平穏を保とうとする。
不思議で、不可思議。」
セツナが地面を蹴る。
芸術の素養などない彼に、問答は無用。
霹靂と踏み込んで、ルフランに突進。
拳を振るう。
ルフランの顔を狙った拳は、割って入ったアゲハに受け止められる。
アゲハが腕を立て、セツナの拳を横に逸らす。
逸らされた拳を、すぐに引っ込める。
端から、この攻撃が通るとは思っていない。
本命は次の一手。
アゲハが立ち塞がるのなら、それをどかす。
右手の力を緩め、引き戻し、打ち込む。
アゲハの顔面に攻撃。
「‥‥‥‥――っ!」
攻撃が、直撃する寸前で止まる。
攻撃を避けようとも、防ごうともしない、無抵抗な姿に、攻撃の意思が挫かれる。
アゲハの肩を突き飛ばす。
紫色の蝶は、無抵抗に地べたへ転がる。
アゲハの影から、ルフランが姿を現す。
ルフランに、左ストレート。
‥‥また拳が止まる。
拳の先に、アゲハが居る。
ルフランと、アゲハの位置が、一瞬にして入れ替わっている。
手品を披露したであろう張本人は、どことなく冷めた瞳。
「そこは、当てるところでしょう?
腹を殴られ、うずくまる。
胸を殴られ、骨が折れて血を吐く。
それを見て、あなたが絶望する。
そういう――。」
ルフランは、最後までセリフを言えなかった。
邪魔が入った。
火薬の邪魔が入ったのだ。
火薬刀の抜刀一閃。
火薬が描く黒い煙が、ルフランを縦一閃、両断した。
抜刀攻撃の直前、瞬間移動をしたダイナがアゲハを羽交い絞め。
テレポートは、拘束中には使えない。
手品の正体がテレポートであるならば、有効な手段だ。
ルフランは、JJの奇襲を片手で受け止める。
火力だけは一丁前の攻撃により、少々後ずさる。
ダイナの腕の中から、アゲハが消える。
アゲハは、ルフランの横へ。
手品の正体は、テレポートではないようだ。
ルフラン。
彼女の持つ、特有の異能である可能性が高くなった。
火薬に晒されても、ルフランは涼しい顔。
「‥‥ふぅ。せっかく洗脳を施して、悲劇のお膳立てをしましたのに――。
メタ読み (物語の先の展開を予測すること)ばかりせずに、楽しんでくださいな。」
ルフランを守るように、目の前に立ち塞がるアゲハ。
紫瞳に、喜色が広がる。
――ルフランは、自分を守ろうとするアゲハの背中を、銃で撃ち抜いた。
ポケットからデリンジャーを取り出し、背中を撃った。
アゲハが膝から崩れ落ち、倒れる。
「「アゲハ!!」」
声を荒げ、仲間の身を案じる、デアソラとオラクル。
自分たちをかばい、この末路。
2人の心を、罪悪感が圧し潰していく。
硝煙を燻らせる銃口。
左手で、帽子を抑えている狂言回し。
「なぜ、これが銃の形をしているか教えて差し上げましょう。」
アゲハの指がピクリと動く。
同時に、背中を丸めてうずくまる。
「あ゛ぁッ! あぁああああ!!」
胸を押さえて苦しみ始める。
苦しさのあまり、喉を掻きむしる。
足元から流れる、苦悶の悲鳴をバックグラウンドに、ルフランは講釈を続ける。
「人間に眠る力を覚醒させる鍵、サイファー。
ルシフェライザーは、堕落の弾丸。
銃の使用者ではなく、使用者が望んだ者を覚醒させる鍵。」
――だからこそ、この鍵は、銃の形をしている。
地べたで蛹のようにうずくまっていたアゲハに、変化が起きる。
スマートデバイスが、鳴動する。
「デア‥‥、‥‥ル。‥‥逃げ‥‥!!」
息も荒く、アゲハは仲間に手を伸ばす。
身体が、勝手に立ち上がろうとする。
魂に寄生するディビジョナーが活性化し、アゲハの肉体と魂を乗っ取る。
僅かに残った自我で、侵略者の侵蝕に抵抗し、自決をしようとする。
舌を噛み切ろうとするも、それを侵略者は許さない。
膝で立ったまま、頭を抑えうずくまる。
もう‥‥、身体が‥‥、抑えきれな‥‥‥‥。
覚醒の時だ。
アゲハの背中を破り、大きな羽根が生えた。
青く発光する、蝶のような羽根。
アゲハの黒かった瞳が、血のように赤くなる。
蝶の異形が、腕を振るう。
突風。
ガレージの中を、突風が襲う。
装甲車が浮き、CEがバランスを崩し、オートパイロットが起動する。
天井の一部が剥げて、剥がれた天井は彼方へと飛んで行く。
セツナとダイナが、突風に負けて転倒し、JJは刀を床に刺して耐える。
一部始終を、ルフランはどこ吹く風、傍観している。
役者の皆に背を向けて、空間を歪ませて紫色の出入り口を開く。
ガレージの、破壊された扉の向こうでは、CEが何機もフォールして来るのが見えている。
「確か、ディビジョナー化を快復させる手立てを、CCCは持ち合わせていないのでしたわね?」
ルフランは振り返り、帽子を上げて見せる。
さよならのジェスチャー。
「ならば、殺す他ないでしょう。
セントラルの、平和のために。」
言いたい事を好きなだけ言い残して、ルフランは去って行った。
残ったのは、ディビジョナー化したアゲハ。
やって来たのは、CEの大群。
戦いは、避けて通れない。
逃げることも許されない。
――そして、殺すことさえも。
‥‥‥‥。
‥‥。




