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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
8章_堕落の弾丸

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8.5_囚われの蝶

終末教の集会に潜入したエージェントたち。

そこで見たの物は、厄災を退けた彼らをしても、想像を絶する物であった。



――人災だ。



人の欲望は果てしがなく。

人類を絶滅に追い込んだ厄災さえも、文明の利器として、取り込もうとしている。





「くっそ‥‥。アイツら何なんだ。」



終末教の追っ手を振り切り、セツナは心に貯めた疑念を吐き出す。

戦闘がひと段落して、やっと胸中のわだかまりを吐露できた。


魔薬を扱う宗教家集団。

違法な薬を使って信者を増やしているのだから、碌な奴等じゃない。


それは、分かっていた。


ところがどっこい、いざ集会に潜入してみれば、ヤバさのランクが上がった。



信者をディビジョナー化させる銃器に、光学迷彩を駆使する鳥人間。

もはや、裏社会の悪党が持ちえる技術力を軽く上回っている。


ディビジョナーした信徒の性質も、ナイスデイが操っていたゾンビみたいな連中とは違う。

明らかに、人間としての理性が残っていたし、それに何よりも――。


ダイナが、銃のリロードを行いながら、セツナの言葉に答える。



「ルシフェライザー‥‥、とか言ってたね。

 あの集会は、あれを使うための集まりだったんだろうね。」



ダイナの手元では、ショットガンと拳銃の装弾を、非殺傷壇から実弾へと変更されている。



「考えたくないけど、信者は、ルシフェライザーを常習してるみたい。」

「福音とやらが授かれなくて、暴走した人間を、福音を持つ者が裁いていたんだろうさ。」



車のハンドルを握るJJが、ダイナの補足をする。

言葉を、だいぶ濁して、あそこで行われていたことを、続けられていたことを口にする。



つまるところ、選民思想だ。


一般人を殺人鬼にしたいなら、大義名分をくれてやればいい。

人々を支配したいならば、外部に敵を作ってやればいい。


違いが生み出す優越感。

違いが生み出す嫌悪感。


社会から人々を隔離して囲うのに、これほど便利な道具はない。

好きなだけ、幻想に浸らせてやればいいのだ。


社会的な動物である人間にとって、何者でもない自分という現実は、過酷すぎる。



セツナは、ホルスターに右手を伸ばす。

右手が空を切る。


‥‥そう言えば、デアソラにリボルバーを渡したままだった。


右手は、行き場も無く宙空をふらふらとして、軽トラのアオリを掴むに落ち着く。

弾避けとしての機能するアオリを掴み、力を入れる。


マルから、通信が入る。

同時に、スマートデバイスの地図にマーカーが設置される。



「一度合流しましょう。蝶のお二人から、話しを聞けそうです。」



偶然の巡り合わせで、助けた蝶の2人。

彼女たちは、どうやら事情を知っているようだ。


エージェントたちは、マルのアジトのひとつへと向かう。


情報が必要だ。


ルシフェライザー。

量産が可能で、人間をディビジョナー化させる道具。


あれを、セントラルの表に出す訳にはいかない。


赤龍は、ディビジョナーを殺して回ることを行動原理としている。

ルシフェライザーがセントラルに出回れば、赤龍の逆鱗を撫でることになる。


あんなにカジュアルにディビジョナー化されては、もはやセントラルに未来は無い。


龍が焼くか、人が壊すか。

いずれにしても、社会は死ぬ。


車が、細かい煙を巻き上げながら走っていく。

錆びた町を、青い空を見上げて――。



‥‥‥‥。

‥‥。



「マルさん。ご客人がお見えです。」

「通してください。」


「はい。」



マルから送られてきた座標は、彼らの武器庫だった。


車、銃、そしてCE。

裏社会で頭角を現す彼らに相応しい数々の品々が、確かな技術を持った技師によって管理をされている。


技師は、マルファミリーお抱えの専属技師だけでなく、いわゆる、派遣技師も在籍している。


裏社会にも、様々な人材を派遣している事業があるのだ。


マルファミリーでバーテンダーをしていたデアソラも、その伝手から紹介された人物。

専属契約ではないものの、ファミリーからの人気は高い。


腕が良く、それでいて美人だ。

射撃も達者で、酒の席を乱す輩を制裁することもある。


()えぇ奴をリスペクトするのが、チンピラの掟。

人気が出るのは、当然の結果であった。


今回は、その縁が彼女の身を助けた。

最近、音沙汰が無かったため、マルは密かに()を広げていたのだ。


マルの行動は結果的に、セツナたちの助けにもなった。



「マル、助かったよ。」

「ああ。良いタイミングだった。」

「さっすがマルさん♪」



マルの部下に、応接室に通されるや否や、セツナたちはマルに礼を言う。



「礼には及びません。ただ、利害が一致しただけですよ。」



ピンク色の毛並みのクマさんは、そうやって謙虚に返す。

彼は、御付きの女性型アンドロイドの膝の上で、なでなでしてもらっている。


応接室には、御付きが2人。

蝶の組織のデアソラとオラクル。

そして、エージェント3人。


シバは、マルのアジトを探検中。

車やCEに目をキラキラさせながら、そこで働く技師に癒しを提供している。


話しの本題へ入る前に、デアソラがセツナに銃を返した。



「良い銃だね。

 そして、同じくらいワガママな銃だ。

 僕の言う事なんか、全然聞いてくれない。」


「大丈夫、オレの言う事も聞かない。」



高飛車でワガママで、()()が悪い。

隙あらば、ガンマンの鼻っ柱を蹴ろうとする、じゃじゃ馬。


拳銃と呼ぶには烏滸がましいリボルバーを、ホルスターに収める。


銃を受け取り、デアソラの顔を見る。

その顔色は、どこか晴れない。


窮地を脱した安堵というものが感じられない。


怯えている感じとは異なる、まだ、深刻な事態が解決していない表情。

視線をオラクルの方へとやれば、彼女も同じ表情。


それに釣られて、エージェント3人の表情も固くなる。


デアソラが、意を決して口を開く。



「――助けて欲しい。アゲハが捕まった。」



固くなった表情に、皺が寄る。

奴等に捕まっているのは、デアソラとオラクルだけでは無かった。



「僕たちは、奴等の研究所に潜入したんだ。

 そこで、追われることになって、アゲハは――。


 ハーマンに逃がしてもらったけれど、そのあと、僕たちをかばって捕まった。

 そして、僕たちも他の仲間を逃がして、捕まった。」



ハーマンの名に、3人は反応する。

数奇な巡り合わせだ。


ハーマンは、終末教と繋がっていた。

正確には、終末教の裏で糸引く組織と繋がっていた。


JJが、顎に手を当てる。



「ハーマンがつるんでいた連中は、いったい何者だ?」


「奴等は、X³ (サウザント)。

 知っての通り、人間をディビジョナー化させる兵器を持つ組織だ。」



サウザント、それが終末教を隠れ蓑にして動いている組織の名。

新興宗教を使い、人々を終末に導く存在。


JJは、顎を手でさする。



「‥‥野暮なことを聞くが、なんでそんな組織に潜入を?」


「潜入してから知ったんだよ。

 元々は、妙なCEの噂を追って、その研究所に潜り込んだんだ。」


「妙なCE‥‥。」



おそらく、ナイスデイが見せびらかした、三悪魔CEのことだろう。

あのネタバレサンタは、ハロウィンイベントでプレイヤーに見せびらかすだけでなく、裏社会にも三悪魔の情報を流していたらしい。


なぜ、そんなことをしたか?

そっちの方が、面白いからだろう。


それに、生贄の相場は美女と決まっている。

‥‥彼の中では。


つまるところ、魔女狩りだ。


これが罠だと知っていても、蝶の組織は、自分たちの性分に負けた。

スリルと好奇心に生きる性分が、彼女たちを網に掛けた。


そういうことだろう。


ダイナは、JJとデアソラの話しを聞きながら、自分のスマートデバイスを見ている。

頃合いを計り、蝶の2人にデバイスを見せる。


そこには、サンタ服のナイスデイと、背丈の低い女性が映っている。

少々ぼやけているが、特徴が分かるくらいには鮮明だ。



「この人物に、見覚えは?」



オラクルが身を乗り出す。

ダイナが、スマートデバイスを渡す。



「知ってる! コイツだよ! 研究所にいたのは!」

「詳しく聞かせて。」






「――その必要は、ありませんわ。」



話しの腰を折るように、スマートデバイスから女性の声。


マルが、ネットワークの異常を検知。

何者かが、デバイスをハッキングした。


デバイスの画面が、勝手に変わる。

画面がホワイトアウトし、文字が表示される。



『Melissa.』



メリッサ。この名前は――。

――建物が揺れる。


警報と、怒号。

何者かの攻撃。


話しはあとだ。


全員、応接室を飛び出して、ガレージを突っ切り、外へと向かう。

CEをも格納している、広いガレージの、大きな扉が破壊される。


マルが ≪ポルターガイスト≫ で、破片から部下や他の者を守る。


セツナたちが前に出る。

武器を装備し、構える。


‥‥革靴の音が聞こえる。

砂埃舞う中を、コツリ、コツリと。


銃撃。

マルの部下が、革靴の音に向けて引き金を引く。


靴音を、蜂の巣にしていく。


射撃の手応えはある。

10人掛かりで発砲し、少なくない数が命中している。


砂煙の向こうで、その手応えがある。


そして、分かったことがある。

この、手応えを通して分かったこと。


効いていない。

利き目が薄いのではなく、効いていない。


命中しているからこそ、手応えがあるからこそ、それが分かってしまう。


銃声が止む。

排莢された薬莢が、虚しく甲高い音を立てて、床に散らばる。



「くふふ――。歓迎の拍手は、もうお仕舞い?」



女性の声。

ハッキングされたスマートデバイスから聞こえた、女性の声がする。


砂煙が晴れる。

襲撃者の姿が、露わとなる。


外からの光を背景に、灰色髪の女性が立っている。

写真で見た、背丈の小さい、灰色髪の女性。


髪はインナーカラーとなっていて、内側は紫色になってる。

瞳も、インナーカラーと同様に、紫色。


彼女の足元には、ひしゃげた弾頭が大量に散乱している。


セツナがリボルバーを引き抜く。

ファニングショット。


女性に向けて、3発の弾丸を撃ち込む。

砂煙で見えなかった、手品の種を明かそうとする。


銃声が2回しか聞こえない早撃ち。

弾丸は、迷うことなく女性へと吸い込まれ、肌に触れる寸前で停止する。


動きを止めた弾丸が、肉眼で見えている。


胸に2発、頭に1発。

大口径の弾が、その位置で止まっている。



「良い腕をしているわね。」



唐突な射撃に動じる様子も無い。


――咄嗟。セツナは、頭を左へ傾ける。

理解するよりも速く、身体が動く。


彼の顔の真横を、弾丸が通り過ぎていった。


弾丸は、数十メートル後ろにあった装甲車に直撃。

火花を散らし、跳弾し、砕ける。


跳弾の音で、JJとダイナがやっと振り返る。

‥‥今、セツナはどうやって避けた?



「今のは、当てるつもりだったのだけれど――。

 どうやったの?」



不可視の速度で跳ね返された弾丸。

それを見切って避けた本人は、何も答えない。


自分でも、なんで避けられたのか分からない。

魔力野が魔力の起こりを捉えるよりも前、身体はすでに動いていた。


しかし、彼には鮮明に、ここに反撃が来ると、確信があったのだ。


内なる悪魔が、そうさせる。

内なる悪魔が、そう確信させる。


何も答えない、答えられないセツナ。

彼の沈黙を、女性は別の意味として解釈をする。



「これは失礼。自己紹介が、まだでしたわね。」



頭に被った、小さなシルクハットを取る。

帽子を胸の前に置き、お辞儀をする。



「わたくしは、サウザントの幹部、ルフラン。

 以後、お見知りおきを。」



頭を上げて、帽子を被り直す。


サウザントのルフラン。

探していた人物が、向こうからやって来てくれた。


ダイナが、ルフランに杖の先を向ける。



「あなた1人? 鳥人間は、どうしたの?」



幹部を名乗る重鎮が、護衛もつけずに敵地に乗り込むとは、大した自信である。

紫瞳の淑女は、口元を歪ませる。



「護衛のことを言ってるのであれば、問題ありませんわ。

 わたくし、()()()()()小心者ですの。

 護衛なら、ここに。」



ルフランが右手を上げる。

空間が歪む。


彼女の右側の空間が捻じれ、ガラスのようにヒビが入り、割れる。

割れた先に紫色の空間が出現し、そこから護衛が出てくる。



「「「――――ッ!」」」



現れた護衛に、一同は絶句する。

ルフランは、歪ませた口元から、白い歯を覗かせる。


そう! その表情を見るために、ここまで足を運んだのだ。



「くふふふふ――。美しいでしょう?

 わたくしの元で、永遠に美しい羽根を広げる――。

 この標本を見て欲しくて、ここに来たのですから。」



歪み割れた空間から出てきた護衛。

それは、サウザントに囚われた、アゲハだった。



「‥‥‥‥‥‥‥‥。」



スーツ姿の彼女は何も言わず、ルフランに仕えている。

デアソラやオラクルの、家族とも呼べる仲間の声にさえ、反応を示さない。


デアソラが、マルから貰った拳銃をルフランに向ける。

オラクルは、口元を両手で覆っている。


エージェントの3人も、良い顔をしていない。



「ああ――。揃いも揃って、イイ顔。」



大勢の敵意を向けられて、浴びせられて、それでもルフランは余裕を崩さない。

それどころか、歓びの感情さえ見て取れる。



「人間とは、不思議なもの。

 悲劇を、娯楽にしてしまうのですから。


 心は、不可思議なもの。

 痛みを和らげるために、快楽を生み出す。

 幸福を与えても和らげて、平穏を保とうとする。


 不思議で、不可思議。」



セツナが地面を蹴る。

芸術の素養などない彼に、問答は無用。


霹靂と踏み込んで、ルフランに突進。

拳を振るう。


ルフランの顔を狙った拳は、割って入ったアゲハに受け止められる。

アゲハが腕を立て、セツナの拳を横に逸らす。


逸らされた拳を、すぐに引っ込める。

端から(はなから)、この攻撃が通るとは思っていない。


本命は次の一手。

アゲハが立ち塞がるのなら、それをどかす。


右手の力を緩め、引き戻し、打ち込む。

アゲハの顔面に攻撃。



「‥‥‥‥――っ!」



攻撃が、直撃する寸前で止まる。

攻撃を避けようとも、防ごうともしない、無抵抗な姿に、攻撃の意思が挫かれる。


アゲハの肩を突き飛ばす。

紫色の蝶は、無抵抗に地べたへ転がる。


アゲハの影から、ルフランが姿を現す。


ルフランに、左ストレート。

‥‥また拳が止まる。


拳の先に、アゲハが居る。

ルフランと、アゲハの位置が、一瞬にして入れ替わっている。


手品を披露したであろう張本人は、どことなく冷めた瞳。



「そこは、当てるところでしょう?

 腹を殴られ、うずくまる。

 胸を殴られ、骨が折れて血を吐く。


 それを見て、あなたが絶望する。

 そういう――。」



ルフランは、最後までセリフを言えなかった。


邪魔が入った。

火薬の邪魔が入ったのだ。


火薬刀の抜刀一閃。

火薬が描く黒い煙が、ルフランを縦一閃、両断した。


抜刀攻撃の直前、瞬間移動をしたダイナがアゲハを羽交い絞め。


テレポートは、拘束中には使えない。

手品の正体がテレポートであるならば、有効な手段だ。


ルフランは、JJの奇襲を片手で受け止める。

火力だけは一丁前の攻撃により、少々後ずさる。


ダイナの腕の中から、アゲハが消える。


アゲハは、ルフランの横へ。

手品の正体は、テレポートではないようだ。


ルフラン。

彼女の持つ、特有の異能である可能性が高くなった。


火薬に晒されても、ルフランは涼しい顔。



「‥‥ふぅ。せっかく洗脳を施して、悲劇のお膳立てをしましたのに――。

 メタ読み (物語の先の展開を予測すること)ばかりせずに、楽しんでくださいな。」



ルフランを守るように、目の前に立ち塞がるアゲハ。

紫瞳に、喜色が広がる。



――ルフランは、自分を守ろうとするアゲハの背中を、銃で撃ち抜いた。


ポケットからデリンジャーを取り出し、背中を撃った。

アゲハが膝から崩れ落ち、倒れる。



「「アゲハ!!」」



声を荒げ、仲間の身を案じる、デアソラとオラクル。


自分たちをかばい、この末路。

2人の心を、罪悪感が圧し潰していく。


硝煙を燻らせる銃口。

左手で、帽子を抑えている狂言回し。



「なぜ、これが銃の形をしているか教えて差し上げましょう。」



アゲハの指がピクリと動く。

同時に、背中を丸めてうずくまる。



「あ゛ぁッ! あぁああああ!!」



胸を押さえて苦しみ始める。

苦しさのあまり、喉を掻きむしる。


足元から流れる、苦悶の悲鳴をバックグラウンドに、ルフランは講釈を続ける。



「人間に眠る力を覚醒させる鍵、サイファー。


 ルシフェライザーは、堕落の弾丸。

 銃の使用者ではなく、使用者が望んだ者を覚醒させる鍵。」



――だからこそ、この鍵は、銃の形をしている。



地べたで(さなぎ)のようにうずくまっていたアゲハに、変化が起きる。

スマートデバイスが、鳴動する。



「デア‥‥、‥‥ル。‥‥逃げ‥‥!!」



息も荒く、アゲハは仲間に手を伸ばす。


身体が、勝手に立ち上がろうとする。

魂に寄生するディビジョナーが活性化し、アゲハの肉体と魂を乗っ取る。


僅かに残った自我で、侵略者の侵蝕に抵抗し、自決をしようとする。

舌を噛み切ろうとするも、それを侵略者は許さない。


膝で立ったまま、頭を抑えうずくまる。


もう‥‥、身体が‥‥、抑えきれな‥‥‥‥。





覚醒の時だ。


アゲハの背中を破り、大きな羽根が生えた。

青く発光する、蝶のような羽根。


アゲハの黒かった瞳が、血のように赤くなる。

蝶の異形が、腕を振るう。


突風。

ガレージの中を、突風が襲う。


装甲車が浮き、CEがバランスを崩し、オートパイロットが起動する。

天井の一部が剥げて、剥がれた天井は彼方へと飛んで行く。


セツナとダイナが、突風に負けて転倒し、JJは刀を床に刺して耐える。


一部始終を、ルフランはどこ吹く風、傍観している。

役者の皆に背を向けて、空間を歪ませて紫色の出入り口を開く。


ガレージの、破壊された扉の向こうでは、CEが何機もフォールして来るのが見えている。



「確か、ディビジョナー化を快復させる手立てを、CCCは持ち合わせていないのでしたわね?」



ルフランは振り返り、帽子を上げて見せる。

さよならのジェスチャー。



「ならば、殺す他ないでしょう。

 セントラルの、平和のために。」



言いたい事を好きなだけ言い残して、ルフランは去って行った。


残ったのは、ディビジョナー化したアゲハ。

やって来たのは、CEの大群。



戦いは、避けて通れない。

逃げることも許されない。



――そして、殺すことさえも。



‥‥‥‥。

‥‥。



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