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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
6.5章_嵐へ続く

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SS9.06_灰の竜騎

ハルがナイスデイを追い、セツナは赤目と戦う。


それが、プランB。

乗り物の運転が得意なハルに追跡を任せ、セツナは露払い。


ワラワラと建物の中から湧いてくる、赤目の道化(クラウン)の相手をしている。


クラウンは数が多く、力も強いが、動きは鈍い。

駆け足で走れば振り切れるくらいには、動きが遅い。


ただ――。


(キリが無い‥‥。)


クラウンを殴れど殴れど、一向に数が減らない。


それもそのはず。

殴り飛ばした端から、驚異的な再生能力で回復しているのだ。


最初は、小奇麗なゾンビていどの認識だったが、殴っても数が減らないのには、滅入ってしまう。


スキルを発動、 ≪魔女の一撃≫ 。

スキルの出始めをキャンセル。


AGが足りず、本来は発動失敗となるはずのスキルが、Zキャンセルにより性能が変化。

≪魔女の一撃≫ により発生した、昏い太陽の魔力を、キャンセルしたスキルに付与。


スキル ≪魔女のブレイズキック≫ が発動。


黒炎一文字。

足に生じた、墨のような炎が、クラウンの1体を捉える。


炎は、クラウンの胸当たりを横に撫でて焼き、彼奴の身体を浮かせる。

横に薙いだ蹴りが、敵を上方向へと浮かせる。


浮いて、重力に捕まって落ちてくるクラウンを蹴り飛ばす。

前に蹴り飛ばして、ボウリングのように他のクラウンを巻き込んで、転倒させる。


クラウンの群れは、何事も無かったかのように立ち上がって来る。

もう何度も見た光景。


頭を踏み潰してみたり、双子の火球をぶつけてみても、倒せなかった。


感覚的に、正攻法では倒せないと、そう感じている。


イバラ龍を倒した時に使った抗体は、まだ量産に至っておらず、まだ脅威度が定かで無いクラウンに使うのは微妙なところ。


また、抗体を使用された者は、今のところ確実に死亡する。

あれは、ディヴィジョナーの活性化を抑えるのではなく、ディヴィジョナーの活性を暴走させて、物理的な肉体を自己崩壊させるというメカニズムで作用する。


暴走した機械は、爆発すれば止まる。

それと同じことをしているだけなのだ。


抗体とは名ばかりの、劇薬。

しかも、必ず効くという保証も無い。


最悪、自己崩壊を起こせるほどの活性を促せずに、とんでもない化け物を生んでしまう可能性すらある。

それも相まって、気安くポンポン使える代物ではない。


セツナは、平屋のプレハブの上に飛び乗る。

ちょっと休憩。


クラウンたちは、理性を失っているようで、建物に登って来ることは無いようだ。


ただ、怪力のせいで、プレハブが殴られて凹んでいっている。

プレハブを殴ろうとして、同士討ちをしている個体もチラホラと見受けられる。


それらを眼下に、思考を巡らせる。

思考の手は、過去の記憶が保管された棚に手を伸ばす。


こういう不死の敵を倒す方法。

思い当たる可能性をまとめていく。


「‥‥‥‥。」


いくつか、検索にヒットした。


――空が、急激に暗くなった。

分厚い曇り空が広がって、夜みたいに暗くなる。


曇り空の暗がりに、足元で赤目が爛々と輝く。

プレハブに、いくつも穴が開いてグラつき始める。


スキルを発動。

AGを消費。


≪魔女のライトニングアクセル≫ 。


霹靂(へきれき)一閃!

地上に、雷が轟いた。


セツナが飛び上がり、地上へと斜めに急降下。

全身に雷を宿し、地面に向けて掌底を放つ。


雷のオーラを纏い、空から強襲。

地面に突進した衝撃で、纏った雷が爆ぜて空へと伸びる。


巻き込まれたクラウンたちが、空中に吹き飛ばされる。

雷が地面を流れて、爆発の被害から逃れたクラウンを感電させる。


雷に打たれて宙を舞うクラウンも、地上で感電したクラウンも、雷に皮膚を焼かれ黒焦げになる。

黒焦げになり、炭化した身体がボロボロと崩壊し、そのまま動かなくなった。



(ビンゴ! AG技であれば倒せる!)



過去作の経験が活きた。

過去作にも、不死のザコ敵が存在していた。


様々な魔物の姿を模した、影のモンスターで、そいつはAG技以上のスキルでないと倒せなかった。


クラウンも、同様の性質を持っているらしい。

不死が相手なので、AGは無限に溜めることができる。


1体でも生きていれば、AGが枯渇することは無く、倒せずに詰むことが無い。

不死だからこそ許される、突破方法だ。


確信を得たセツナは、コアレンズを取り出す。

ベルトのポーチからソードコアを取り出し、装填。


群がって来るクラウンを蹴り飛ばしながら、コアレンズをもう1枚。

ヘックスコアを左手で取り出し、右手でクラウンの顔面を殴る。


足に雷を宿しながら、コアを装填。

地上から離脱。


建物の壁を走り、屋上へと駆け上りつつ、ガントレットの装填口を閉じる。



「アドベントラ、アドバンス――。」



Ultパッシブ「AAA.S.(エアーズシステム)」発動。

2枚のコアレンズと、1つのスキルを組み合わせ、強力なスキルを発動する。



ソードコア × ヘックスコア × グラウンドスマッシュ = 魔女の破砕鎚



建物を駆け登るセツナの下、地上に魔法陣が描かれる。

バイクや車両を呼び出す魔法陣よりも大きく、CEを呼び出す魔法陣よりは小さな魔法陣。


黒い魔力で描かれた魔法陣が、地上からセツナを追従するように宙へと浮き、彼を追いかける。


セツナが、クリスマスの装飾が施された3階建ての建物を登りきる。

屋上へと足を掛け、跳躍。


地上へと振り返りつつ、地上に目掛けて拳を振るう。


彼の動作に、魔法陣が反応。

黒い魔法陣から、悪魔の拳が伸びて地上を叩きつけた。


拳が着弾すると、その場を中心に爆発が起き、クラウンを滅ぼす。


宙に浮かぶ片腕が、魔法陣をこじ開ける。

陣を力づくで広げて、こじ開け、中から腕の本体が顕現。


CEに匹敵する赤い巨体に、岩の如く硬い肌、ヤギの二本角。

魔法陣から、悪魔の上半身が姿を現した。


建物の屋上から、セツナが拳を振るう。

彼の動きに追従し、悪魔が拳を振るう。


拳が地上に炸裂し、クラウンを薙ぎ倒す。


魔女の破砕鎚 (ヘックス・ガルツヴァイラー)。

怒れる悪魔を召喚し、従えるEXスキル。


セツナが、建物を飛び移る。

悪魔が、地上のクラウンを薙ぎ倒しながら追従する。


腕を横に振るい、触れた尽く(ことごとく)を爆風に飲み込んで、地上を地獄へ作り変える。


スキル ≪炎撃掌≫ を発動。

悪魔が、セツナの魔力を奪う。


奪った魔力を糧として、悪魔が口から灼熱を吐き出す。


マグマのように粘性を持った吐息が、上からクラウンに降りかかり、質量と熱量でクラウンを地に跪かせる。


そこに拳の雨が落ちて、一帯は塵芥(ちりあくた)となる。


不死の軍勢を、赤い悪魔が地獄へと連れ帰る。


巨体が、両腕を振り上げる。

クラウンが寄って掛かるも、彼はビクともしない。


力を溜め、腕の血管が浮き上がり、筋肉が膨張し、拳が何倍も固くなり、大きな魔力を握り込む。


――悪魔の鉄槌が、不死の赤目を地の底、空の果てへ叩き落とした。


‥‥‥‥。

‥‥。


赤目の村は、突如出現した悪魔によって、ものの数分で滅びた。

暗い空の下に、瓦礫を積み上げている。


奇跡的に生き残った村民が、這う這うの(てい)で瓦礫の山から抜け出す。


その背後には、悪魔を呼び出した張本人。

赤目の首根っこを掴み、瓦礫に叩きつける。


不死の身体を再生させている隙に、手錠で四肢を拘束する。



「1体、生け捕りにすれば、怒られないよね?」





――グレイドラグーン。三悪魔CEにして、厄災の幼体。


彼は普段、CEのガレージで封印されている。

生きているCEであり、闘争本能の化身である彼を、ガレージで野放しにする訳にはいけない。


術式の施された鎖で手足を縛り、胴を何重にも縛り付け、封印が施されている。

そうすることで、龍の心臓を押さえつけているのだ。


‥‥まあ、プライドの高い龍の子が、封印に甘んじるのは、戦いが始まるまでの話しなのだが。


グレイドラグーンが、スマートデバイスの要請を察知する。

ハルが、CEを呼び出そうとしている。


暗くなっていたドラグーンの瞳に、光が宿る。

口を開き、熱を帯びた吐息を吐き出す。


封印の鎖が震える。

目覚めた闘争本能が、封印の解除を待たず、強行突破しようとする。


右手の拘束を引き千切る。

次は左手、両の脚。


翼を押さえつける胴体の鎖を引き千切り、ガレージで吠える。

ガレージで働くエンジニアたちを睨んだ後、彼は足元の魔法陣に飛び込んだ。


‥‥‥‥。


暗い空に描かれた魔法陣から、グレイドラグーンが召喚される。

ハルのCEとして投下(フォール)される。


フォールされたCEは、ハルの元へ――。

落ちずに、明後日の方向へ。


空中で翼を広げ、空を雄大と駆けるサンダーバードに向けて機首を向ける。



「――ちょっと!?」



ハルは、自機に置いてけぼりを食らう。

あっけに取られる彼女に、カニのロボットが襲い掛かる。


グレイドラグーンは、CEであって、CEでない。

「生きている」の表現の通り、機械というよりも、生物に近い。


そのため、他のCEとは異なり、パイロットの命令を平気で無視する。

暴走する欠陥兵器、それがグレイドラグーンだ。


この気性ゆえ、並大抵のパイロットでは彼のパートナーは務まらない。


ドラグーンは、パイロットには目もくれず、サンダーバードに突進。

翼を広げた大きさが、自分の倍ほどもある相手にも怯まず、腕の爪を伸ばす。


サンダーバードは、体に稲妻を走らせる。

稲妻の力で、その巨体を素早く操る。


雷の力を具現化、身を包む装甲へと変える。

翼に、刃のついた鎧が。足に、獲物を貫く剣が装備される。


サンダーバードは、稲妻の速力でもって、突進してくる竜を易々と躱す。

後ろに退いて躱したかと思えば、次の瞬間には背後へと移動。


足に装備した剣で背を貫く。


竜の背にヒビが入る。

被弾したドラグーンが尻尾で反撃をするも、やはり易々と避けられる。


背後に居た雷鳥は正面へと回り込み、翼に纏った鎧で突進。

刃を取り付けた翼で体当たりをして、竜を空中から地上へと向けて引き摺り、叩き落とす。


ドラグーンは、あっけなく雷鳥にあしらわれて、地上に転落。

カニに囲まれているハルの元まで転がって来る。


――が、すぐさま起き上がり、翼を広げて空へと飛び立つ。

パイロットのことなど、まるで目に入っていない。


しかし、ハルもハルで、負けん気が強い。


カニの隙間を抜け出して、ドラグーンの脚にワイヤーを撃ち込む。

サンダーバードへと突っ込む竜に、無理やり張り付いた。



「この‥‥‥‥ッ!」



スキル ≪ブレイザー≫ 。

燃える拳を、ドラグーンに見舞う。


彼の足元で、爆発が起きる。

初めて、竜がハルの方を見た。


脚を震わせ、ワイヤーを切断。

宙に放り出されたハルに、尻尾を叩きつける。


細く長い尻尾がハルを叩いて、彼女を地上に埋める。


ドラグーンは、それだけで気が収まらない。

邪魔者を完膚なきまでに排除しようと、強襲。


自分の体重を押し付けるように、空からハルを潰しにかかる。

空から勢いをつけて、右の手の平でハルを潰す。


CEの巨体からすれば、生身など虫を相手取るも同然だ。


――地面に沈むハルが、武器を召喚。銃剣。

二振りの銃剣が、ドラグーンの粗相を咎める。


銃剣を、迫る手の平に突き立てて、手の平を貫通させ、ハルが潰されぬように食い止めた。


沈んだ地面の奥から、竜の5つある指の隙間から、意思の強い瞳が睨む。

教育的指導。


スキル ≪飛燕衝≫ 。

銃剣が、スキルの力で勢いよく振り下ろされる。


ドラグーンの手の平が切り裂かれ、裂けた。


当然、竜は激昂。

地面を蹴り、宙で一回転しながら、細い尻尾を振り下ろす。


それを、銃剣をクロスさせて受ける。

尻尾を銃剣で受け、ハルは銃剣の横へと踊り出し、マジックワイヤーを射出。


竜の胸へと撃ち込んで、跳んで張り付く。

そして、AGをドラグーンに流し込む。


シンクロ。

竜と同調することによって、彼を強制的に従える。



「――開けなさいッ!」



なおも、抵抗するドラグーン。


固く閉じた、胸にあるコックピットの隙間へ指を入れるようにして、力づくでコックピットを開ける。

身体ひとつ分だけ開いた隙間から、内部に滑り込んで乗り込む。


すぐさまコックピットが閉まり、今度はドラグーンが黒雷を発生させる。


――黒雷。

ゼナスと呼ばれる、三悪魔の保有する機能。


パイロットの生命力を力に変換する、恐ろしい機能。


ハルが、機内で黒い雷に打たれる。

ドラグーンが、口うるさいパイロットを黙らせて、物言わぬ生体電池にしようとする。


黒雷に、シンクロで対抗。

ドラグーンの体表に、黒い稲妻と青い閃光が同時に走る。


雷鳥に今にも飛び掛かりそうなドラグーンは、動きをギクシャクとさせ、その体を翻す。


ハルが、操縦桿を強奪。

機体をカニの方へと向ける。


小物の相手をさせられるドラグーンは、大層ご立腹。

怒りのボルテージが、みるみる溜まっていく。


この短い堪忍袋の緒が切れると、竜は言うことを聞かなくなる。

‥‥もともと、言うことなんて聞いていないが。


ドラグーンは、八つ当たりをするように、カニに襲い掛かる。

カニの数は6体。


その内の1体に飛び掛かり、片手で軽々と持ち上げて、地面に叩きつける。

地面にひっくり返ったカニが、ハサミをブンブンと振り回して危ないので、ハサミの根っこを持って振り回す。


人よりも遥かに大きなカニも、CEには体格で劣る。

カニを振り回して、同士討ち。


即席の武器として、ブンブン振り回していると、ハサミが千切れて、吹っ飛んでしまう。

吹っ飛んで、建物に激突し、深く埋まって事切れる。


仕方が無いので、手元に残ったハサミを、別のカニにプレゼント。

胴体へと深々と突き刺して、仕留める。


軽く空を飛んで、別の個体を上からペシャンコにして仕留めて、残り3体。


熱線を撃って来た個体の攻撃を躱し、カニの頭部を、強靭な竜の顎で食い千切る。

ノコギリのような歯から黒雷が走り、鉄の体を食い千切り、咀嚼して飲み込む。


捕食。ドラグーンの右手に負った傷が、修復していく。


グレイドラグーンの持つ、ゼナスの効果。

捕食により、敵の力を奪い、自分の物とする。


この調子で、残りのカニも捕食。

通常のCEでは有り得ない、体力の回復を行って、大物の雷鳥に備える。


ドラグーンが吠え、飛び立つ。


小物は片付けた。

溜まった鬱憤を空にぶつけるように、翼で風を切る。


雷鳥は、地上に居る相手には、積極的に手を出さないようだ。


巨体ゆえに、ビルが立ち並ぶ地上には降りにくいのだろう。


ハルが、ゼナスを発動。

ドラグーンに自分の力を与える。


生命力を代償に、ドラグーンを強化。

失った体力は、ポーションで回復。


竜の前腕の骨が浮き上がり、体から突き出る。

突き出た骨は鋭く、獲物を屠る双剣となる。


グレイドラグーンの捕食能力は、パイロットへの適応も可能。

これにより、ドラグーンはパイロットのクラス特性やスキルを獲得することができる。


ゼナスにより、竜は銃剣を獲得した。

同時に、翼が真っ赤に燃え始める。


≪黒雷ブレイズキック≫ 。

炎の推進力で加速。


先ほどのリベンジと、雷鳥に斬りかかる。


速度を乗せて、右銃剣で突き刺し。

――雷鳥の姿が掻き消える。


ハルが、魔力野で雷鳥の動きを追う。

彼奴は、上に避けた。


ドラグーンの直上、雷が落ちるかの如く、雷鳥が突進。


今度は、ドラグーンの姿が掻き消える。


テレポート。

エージェントなら、誰でも使えるスキル。


竜の巨体がテレポートで消えて、雷鳥の落雷は空振る。

そして、動きを止めた雷鳥の前に、ドラグーンが出現する。


両の銃剣で切りつける。

下から逆袈裟を放って、雷鳥の体にクロスの斬撃を浴びせた。


初めて、ドラグーンの攻撃が通った。


ドラグーンは調子に乗って、追撃。

ハルの操縦を聞かずに、突きを放つ。


――あっけなく躱されて、背後から剣で刺される。



「‥‥‥‥もう!」



コックピットでむくれるハルに、ちょっとシュンとなるドラグーン。

さすがに反省したのか、大人しく操作をハルに譲る。



「ふふ、よろしい。」



背中に受けた攻撃により、崩したバランスを制御する。

上から翼で切りつけようとする雷鳥の攻撃を、バレルロールでやり過ごす。


なおも急降下する雷鳥の背を追いかけるも、ドラグーンの速力では追いつけない。

加速と最高速では、相手に分がある。


雷鳥は、雷の力を使い、ジグザグと狙いを絞らせないように飛行し、高度を上げて空へと戻る。


両雄、空中で睨み合う。


雷鳥が動く。

ここに来て、何の捻りもない体当たり。


真っ直ぐ最短距離で、翼で切りつけに来た。


それを、間一髪で受け止める。

魔力野が、相手の起こりを捉えてくれて良かった。


一瞬でCEの最高速度以上に加速する攻撃を、見てから回避なんて不可能だ。


雷鳥の翼を左銃剣で受けて、右銃剣で反撃。

反撃は、稲妻の後ろ回避によって避けられる。


始めから、突進と回避をワンセットとして組んでいたようだ。


ドラグーンが動く。

左銃剣を口の中へ。


バリバリと銃剣を噛み砕いて、再利用。

右腕が変形し、もう1本銃剣が生えてくる。


重心が偏り、機体がやや右方向へと傾く。

想定外の武器変更に、やや戸惑い気味のドラグーン。



「ふふふ――。これが当たれば、2倍強い!」



――もしかすると、操縦桿を渡したのは失敗だったかもしれない。

――もしかすると、コイツはダメなヤツかも知れない。


翼から炎が噴き上がり、雷鳥に銃剣突撃。

重い右腕を、左手で支えながら突撃する。


威力2倍となった銃突は、当たり前のように避けられる。

‥‥さて、上か後ろか?



(――後ろ!)



魔力野が、雷の流れを読み切る。

雷鳥が背後に現れて、竜の背中を、剣で引っ掻いた。


ドラグーンには申し訳ないが、これは耐えてもらう。


雷鳥の追撃。

こちらに振り返らない竜に対して、剣戟をもう1発。


ライフで受ける。

そして――。


武器を換装。

バルカン砲。


ドラグーンが振り返る。

振り返りながら、竜の高度が落ちて、雷鳥の剣戟が外れる。


黒雷と、闘志を混ぜ合わせ、力に変換。

ゼクロス。


黒雷で生命力を奪い、シンクロで闘志を流し、ドラグーンの出力が上昇。

左腕から生えた、高度を維持できないほどに重い武器を、片手で持ち上げる。


腕に生えたバルカン砲が、回り始める。

赤黒い稲妻と、蒼い閃光が走り、曇天に弾丸の嵐が吹く。


嵐に撃たれ、雷鳥は空で錐もみをする、嵐から逃れるように、雷の力で逃げ、距離を取る。


バルカン砲は、雷鳥の圧倒的な速度に対し、圧倒的な弾幕で食らいつく。

ハルの体力と闘志を根こそぎ奪いながら、雷鳥の体力を削っていく。


バルカン砲の砲身が赤熱し、焼ける。

武装をパージ。


捨てた武器が、空から落ちて、ビルに大穴を開けた。


雷鳥が、よろよろと体制を整える。

そして、自分に雷を落とし、傷を癒し失った力を蓄え直す。


反対に、ハルの方はボロボロのまま。

機体はまだまだ持つが、ハルの精も根も底が近い。


バルカン砲を撃つためのリソース、バルカン砲を構えるためのリソースで、体力もAGも大幅に消耗した。

今ので決まってくれれば良かったが、この世界はそんなに甘くない。


――だが、まだまだ作戦はある。



「よ~し。ドラグーン、プランBでいこう。

 当たれば2倍強い、だからね。」

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