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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
5章_女スパイは、裏切りの蝶。

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5.17_青空を駆ける

JJとダイナがハーマンとの戦闘を繰り広げている最中(さなか)、セツナはシグマ部隊と戦っていた。


ↃↃↃ、シグマ部隊。

本部が擁する影の部隊。


兵士にして軍。

個としての武力という、エージェントと運用思想が共通する部隊。


表舞台でエージェントが活躍する裏で、シグマ部隊は影で暗殺や工作を遂行する。


エージェントが居るからこそ影は人目に触れず、影が深く差すからこそ、表に外道は栄えない。


互いに面識は無いが、互いの仕事を支え合う、良き隣人でありパートナー。

それが、エージェントとシグマ部隊の関係性。


だが、今回ばかりは互いに銃と刃を向けることになってしまった。


エージェントも、シグマ部隊も、セントラルにおいては駒であり歯車でしかないのだ。

この終末世界において、彼らは国家を運営していくための代替可能な部品でしかない。


一角の戦士も、エリート部隊も、英雄でさえ、これは変わらない。


そして、国家運営の指針や正義に、絶対的な唯一の只ひとつは無い。

無いからこそ、互いの信念がぶつかることもある。


そうなった場合、セントラルのルールは簡単だ。


戦いに勝ったヤツが、正義となる。

弱い正義は淘汰され、強い正義が終末から国民を守る。


それだけだ。


‥‥‥‥。

‥‥。


セントラル第5ビルの床を3枚ほど撃ち抜いて、セツナとシグマ部隊は相対している。


上階のハーマンたちとは距離が空き、ちょっとやそっとでは合流できない位置取り。


シグマ部隊からすれば、良い状況だ。

警戒すべき3人のエージェントのうち、1人を簡単に釣り出せたのだから。


しかも、相手は3人の中で最も戦闘評価の低いエージェント。

彼を各個撃破し、自分たちに与えられた任務の成功率を少しでも上げる。


相手はたった1人とも言えど、戦闘力が最も低いと言えど、シグマ部隊に油断も慢心も無い。

現に昨日、彼らはこのたった1人に煮え湯を飲まされている。


夢戻りのエージェントだけあって、正面戦闘としぶとさに関しては、参考にして見習うべき点が多い。


シグマ部隊の擲弾兵が撃ち抜いた床から、ハラハラと粉塵が落ちている。

それ以外に、音も動きも無い、静かな相対が続く。


――――。

静寂を破ったのはセツナ。


彼の足元に稲妻が霹靂と輝く。

スキル ≪ライトニングアクセル≫ 。


足を前に出す。

駆ける速度は電光石火となり、無風の屋内に暴風を巻き起きしながら突進する。


速度を乗せたまま、飛び蹴り。

部隊のリーダーらしき狙撃兵を狙う。


屋内戦闘を想定し、バレルを切り詰め、折りたたみ式のストックを装備したボルトアクションライフル。

小型化され携行性に優れたライフルを腰に下げている。


まずは挨拶代わり、昨夜に世話になったお礼を込めて、狙撃兵に跳び蹴りを仕掛ける。


セツナの攻撃に、義足兵が動く。

義足のスプリングにより、人体では不可能な反発力を地面から経て、加速。


さらに、義足に搭載された火薬を炸裂。

光学迷彩が使えなくなったので、目立つ派手な武装も惜しまずに使うことができる。


稲妻と火薬が、空中で正面衝突した。

衝突の衝撃が、天井に空いた穴を吹き抜けて、上階へと粉塵を巻き上げ逃げて行く。


力が拮抗している2人に向けて、擲弾兵がグレネードランチャー発射する。

銃口から擲弾が山なりの弾道を描く。


セツナと義足兵は、互いの脚を足場にして距離を取る。


その直後、2人が居た場所で爆発が起こり、大気を震わせる。


狙撃手が、ライフルを抜いた。

ストックは展開させず、ライフルを大きなピストルのように扱い構え、一瞬で照準。


引き金が引かれ、弾丸がセツナに吸い込まれていく。


それを、セツナはテレポートで躱す。

テレポートで姿を消し、再びその場に現れる。


シグマ部隊の4人目、防御兵が動く。

昨夜、セツナがヘルメットをカチ割った兵士である。


腕に装備した、シールド生成器(エクスパンション)を起動。

自分の身体を完全に覆えるシールドが展開され、それを盾に突進。


彼の突進を、擲弾兵が援護する。

フルオートグレネードランチャーをぶっ放し、セツナの行動を制限する。


山なりに飛ぶ擲弾は、味方の背中を撃たずに攻撃ができる。

背中さえ撃たなければ、爆風はシールドで防げる。


理に適った連携。


防御兵の後ろに義足兵が続く。


防御兵と義足兵が前衛。

擲弾兵と狙撃兵が後衛というフォーメーション。


擲弾兵のばら撒いた弾は、セツナの後方で爆発した。

前衛から逃げられないようにするための援護射撃。


義足兵がシールドのカバーから飛び出し加速。

加速に任せて、先ほどのお返しとばかりに飛び蹴りを放つ。


セツナは懐から銃を抜く。

バカ正直に突っ込んでくる相手に冷静な対応(マジレス)


ニューナンブが2回、火を吹いて1発が命中した。


そのまま、セツナは半身になって飛び蹴りを避ける。


跳び蹴りに続き、防御兵がシールドバッシュを仕掛ける。

さすがに、これは拳銃でどうこうは無理そうだ。


かと言って、このシールドバッシュに捕まるのも面倒くさそうだ。


セツナは、防御兵の突進をバックフリップで後ろにやり過ごす。


1回転、2回転とやり過ごすしたタイミングで、義足兵が動いた。

セツナの背後から、再び飛び蹴りを放つ。


前衛2人による挟み撃ち。

――それは読めている。


バックフリップで稼いだ勢いを使い、さらに高く跳躍。


義足兵の飛び蹴りを縦方向を使って避ける。


さらに反撃。

バックフリップ中に身を捻りながら、スキルを発動。


スキル ≪シルバームーン≫ 。

足が銀色の弧を描き、義足兵を狙う。


義足兵は、防御兵のシールドを足場に跳躍。

銀色の三日月を躱し、三日月はシールドに受けられて霧散する。


義足兵は、シールドを足場にした次は、天井に着地。


地上の防御兵と、天井の義足兵。

2人の間に、隙間ができた。


そこに擲弾兵が援護射撃を滑り込ませる。


フルオートで擲弾がばら撒かれ、セツナに被害を与える。


擲弾は空中で爆発し、大量の煙を中から吐き出す。

スモークグレネード。


擲弾兵が握るフルオートグレネードランチャーは、変わり種。

トリガーの近くに、「エレメントセレクター」と呼ばれる機構が設けられており、そこを操作するだけで擲弾の性能を変更できる。


エリート部隊が所持するにふさわしい、セントラルの技術力が詰め込まれた武装。


空中で破裂したスモークグレネードは、セツナの視界を奪う。

視界が白く覆いつくされ、シグマ部隊の影さえ見えなくなる。


しかし、シグマ部隊からセツナは見えている。

狙撃兵以外が被っているフルフェイスのヘルメットにはサーモセンサーが搭載されている。


センサーがセツナの体温を発見し、煙の中の彼の居場所が露になる。


涼しい屋内において、人間の体温は高く、目立つ。

機械の力にかかれば、この程度は造作もない。


天井に張り付いている義足兵が、煙の中を標的を狙う。


義足のスプリングが硬質な反発を生み、彼の身体を勢いよく天井から弾ませる。

そして、狙い違わず、セツナへとキックを繰り出す。


――標的の体温が上昇している。


彼の右腕を中心に高温が発生。

熱は身体を包むように、下から上へと噴き上げていく。


センサーが捉えるセツナの像がぼやけた。

体温を上回る熱の中に、セツナの姿が隠れた。


スモークの中に広がる熱によって姿を見失った義足兵の攻撃は空振りに終わる。


着地後、彼は素早くバックステップを踏む。

強化された脚力によって、煙の外まで一足で飛びずさ――。


――逃げる彼を、煙の中から伸びた鎖が捕まえた。


音だ。

彼の着地した音、彼が飛んで退いた音、それらを頼りにマジックワイヤーを偏差射出。


山カン気味のワイヤーは、見事に命中。

捕らえた獲物を、煙の中へと引きずり込む。


煙の先には、太陽を握りつぶしたセツナが待ち構えていた。


右手の太陽を、義足兵に押し付ける。


瞬間、セツナの脚が銃に撃ち抜かれた。

狙撃兵だ。彼が、義足兵の片脚ごとセツナを撃ち抜いた。


スナイプにより、身体のバランスが崩れ、右の拳はクリティカルヒットを逃す。


ややカス当たり気味に命中し、義足兵を吹っ飛ばした。


吹っ飛んだ義足兵は空中でバランスを取り、着地。

彼の前に、防御兵が素早くフォローに入る。


義足兵の右足から火花が飛び散っている。

膝の下あたりに、綺麗な風穴が空いている。


その風穴も、火花が3回飛び散った頃に塞がり始める。


自己修復の機能を持つ金属で作られた義足。

魔法の発見がもたらした、人類の新たな文明の利器。


大型兵器への転用は、運用魔力の制約で現実的では無い物の、歩兵が持つ武器程度であれば、実用が可能になっている。


盤面は、狙撃兵のスナイプによって仕切り直し。


夢戻りのエージェントと、影の精鋭たちによる初動での小手調べ。

互いに初見殺しの応酬を交わすも、それらの悉く(ことごとく)を互いに対処している。


どちらも、現場主義な職場である。

鉄火場で場数をこなせば、嫌でも臨機応変さは身に着くのだろう。


だが、頭数の面でセツナは不利。

現状では、後方部隊に手が届かないため、長期戦は彼によって良くない方へと傾く。


ならば、リスクを取ってリターンを得に行く。


セツナは、地面を強く踏みつける。

ビルの床がめくれて巨岩が目の前に浮き上がる。


スキル ≪グラウンドスマッシュ≫ 。


大岩を、後方部隊に向けて蹴り飛ばす。

一連の動作のあいだに、防御兵は素早く岩の軌道上に移動し、後方部隊を守る。


義足兵はセツナの横合いに回り込み、回り蹴りを放つ。


――釣れた。

AGを消費 ≪アサルトステップ≫ 。


無敵の付いたステップで、義足兵の回し蹴りを躱す。

回避が成立し、セツナの姿が消える。


アクション派生、 ≪アサルトアタック≫ 。


セツナは、シールドを構えた防御兵の目の前に出現する。

彼奴の構えた大きな盾を殴りつける。


アサルトアタックに成功、 ≪アサルトラッシュ≫ 状態を付与。


アサルトアタックは、躱されるとアサルトラッシュに移行ができない。

ならば、()()()()()を狙えば良い。


人は、手にした武器に、無意識に依存してしまう。

ナイフを持つと、そればかり使ってしまうし、盾を持つと、それでばかり身を守ろうとしてしまう。


この点、お行儀の悪さに関しては、エージェントに分がある。

背中に刺さった金属片は武器として使うし、盾は防御もできる鈍器なのだ。


人間の抗い難く矯正しづらい無意識に付け込んで、セツナの思惑は成功する。


アサルトラッシュ状態となり、テレポートを連発できるようになったセツナは、即座に姿を消す。


彼は、防御兵と後衛部隊の中間に瞬間移動。


足を振り上げると、足が火炎を纏い、すぐさま地面を強く踏みつける。

Zキャンセル ≪グラウンドスマッシュ≫ 。


アサルトラッシュによって、ノックバックが強化された地鳴りがシグマ部隊を襲う。


彼らの身体は、意思に反して床から離れて浮かび上がる。

腰に無造作にしまっていたニューナンブを引き抜く。


擲弾兵に一発、狙撃兵に一発。

銃弾は、物理法則を無視して、2人を大きく後退させる。


足に稲妻を纏い、振り向く。

空中で盾を構える防御兵に、稲妻蹴り。


唯一、地鳴りの範囲外に居た義足兵が駆けてセツナに攻撃を試みるも、高めの火炎蹴りにつられて姿勢を低くしたところを、プロレス技のアックスボンバーで刈り取られる。


腕を上方向へ直角に曲げたラリアットが、屈んだ顔面にヒット。

ダメージは少ないものの、ノックバックで身体がハリケーンに巻き込まれたみたいに飛んで行く。


再び、霹靂と雷鳴が轟く。


ノックバックに身体を飲まれた防御兵と義足兵を、雷が追い抜いた。

追い抜き際、雷鳴が身体を突き抜ける。


2人は壁を破壊しつつ、そのままビルの窓を割った。


影が、青い街の青い日差しを浴びる。


青い空の下、青天の霹靂が轟く。

窓の外に浮く防御兵の顔に、セツナの足が乗せられる。


彼は、防御兵を足場にして跳躍。

跳躍の足場にされて、防御兵は地上へと真っ盛りに落ちていく。


部隊を切り離した。


いま、青い空に居るのは、セツナと義足兵。


義足兵はワイヤーを使い復帰。

ビルの窓を足場に着地する。


同じく、セツナも窓に着地。

パルクールスキルの「ウォールラン」によって、重力を度外視した姿勢で地面に直角に立っている。


セツナが、足に雷鳴を宿す。

義足兵が、足からバーニアを吹かせる。


青い空の下、壁を走りながら2人の戦闘が繰り広げられる。


窓を縦横無尽に走り回り、間合いとタイミングを計り、蹴り技の応酬が繰り広げられる。


セツナは、雷と炎の力を交互に纏うことによって、速度を維持する。

雷の瞬発力を、炎の加速力と持続力で維持する。


周囲に何もない、ただっ広い青い地面だからこそできるパルクールテクニックだ。


青い平地を駆ける彼らの上で、爆発が起きて窓が割れた。

JJとダイナが、空に放り出された。


それでも、意識は目の前の敵に集中。

高速道路を走る車ほどの速度が出ている身体を乗りこなし、義足兵との高速戦闘にリソースを注ぎ込む。


義足兵が窓を蹴り、回し蹴りを放つ。

セツナが足に雷を纏っているタイミングを狙った。


‥‥スキルのタイミングがよろしくない。


≪ライトニングアクセル≫ は、直線的な移動に優れるが、旋回能力に乏しい。

そのため、柔軟な攻撃がしにくく、攻め手の引き出しに乏しい。


よって、回し蹴りをスライディングで躱す。

両膝立ちになり、背中を反って、蹴りをやり過ごした。


足に炎を纏い、立ち上がる。

≪ブレイズキック≫ は、加速力と持続力に優れる。


雷ほどの最高速度は期待できないが、加速だけでなく旋回能力の秀でている。


火炎が、雷の速度を維持し、走りつつ旋回。

遠心力で大きく外側に膨らみながら切り返して、義足兵を追う。


義足兵も旋回して切り返し、次の交差に備える。


仕掛けたのは、セツナ。

両脚を窓から離し、ドロップキック。


両足の裏を義足兵に見せて突っ込む。


両者の相対速度は、200kmを越えている。

何か当たるだけで、充分に勝負を決めるほどの威力となっている。


ドロップキックを、義足兵は滑り込んで回避。

同時に、手を窓に付け、摩擦を最大に。


急ブレーキ。

――からの急発進。


義足に仕込んだ火薬が爆発。

足元の窓が破裂するよりも速く踏み込み、セツナを間合いに捉える。


火薬をさらに追加。

空中で無防備となったセツナに蹴りを浴びせる。


空中ジャンプ。

ジャンプを切って、火薬蹴りから間一髪で逃れた。


ドロップキックで伸ばした足の前に見えない足場が出来て、それを足掛かりに窓から離れるように飛んだ。


しかし、高速戦闘中に無理やり軌道を変えたせいで、身体のバランスが崩れてしまう。


空中ジャンプも使い、守りの手札を失った。


ワイヤーでは、この速度を殺し切れない。

仮に殺せたとしても、窓を割られて終わる。


テレポートも、たがが10メートル移動できたところで、高速戦闘では意味を持たない。


義足兵の足元でバーニアが大きく噴き上がる。最大出力。

自身の身の丈と同じくらいの火柱を伴って、義足兵はセツナを間合いに捉える。


義足によって強化された脚力で、セツナを空へと蹴り上げるために足を上げた。


――その時。

セツナが、2度目の空中ジャンプをした。


AGスキル ≪シルバームーン≫ 。

かつて、前作で最強スキルとまで呼ばれた性能を再現したスキル。


セツナは空中でバックフリップ。

銀の軌跡を残しながら、姿勢を整えて空中で跳ねる。


彼を蹴り上げようとした義足兵の攻撃は空振り、セツナはそのさらに上へと跳躍していた。


銀の三日月を空に描きながら、セツナは足を振り抜く。

足が描いた軌跡が銀の刃となり、義足兵へと飛来する。


昼間に昇った三日月は、蹴り出された義足を切断した。


セツナが窓に着地する。

義足兵は空中で制御を失い、空の舞台から退場していった。


落下する義足兵を、防御兵がワイヤーで捕まえようとする。

セツナから蹴り落とされたものの、何とかここまで戻って来た。


義足兵もワイヤーに気が付き、手を伸ばす。

その2人のあいだを、巨大な窓が通り過ぎて落ちて行った。


窓によってワイヤーがたわみ、防御兵の奮闘虚しく義足兵は作戦からドロップアウトした。


防御兵の上では、 地面から大岩をくり抜く要領で窓をくり抜いたセツナの姿がある。


彼は、ガントレットを装備した手の平を下へ向ける。

スキル ≪炎撃掌≫ のチャージモーション。


防御兵は、シールドバッシュで突っ込む。


チャージをさせる訳にはいかない。

AGを消費、アサルトダッシュ。


シールドバッシュに、アサルトダッシュの速度も加えて、渾身の力で突進を繰り出す。


――ブレイブゲージを消費。

ブレイブキャンセル。


チャージモーションを中断。


≪炎撃掌≫ のチャージをブレイブゲージげキャンセルした場合。

手元の火球は自由に使うことができる。


この火球は、AG版の ≪炎撃掌≫ に匹敵する威力がある。


右手で太陽を握りつぶす。

握りつぶし、力を手の平に掌握。


「行けぇ!」


太陽を掌握した右手で、逆水平チョップ!

太陽と盾が空で衝突する。


空に炎弧が奔り(はしり)、盾が灼熱を押し返す。


力と力が衝突し、窓にヒビが入る。

太陽の熱が窓を溶かしはじめ、両者の足が沼に浅く沈み始める。


――拮抗が崩れた。


太陽が爆発し、盾を弾き飛ばした。

防御兵は、弾かれた反動で足がもつれ、セツナに背を向ける体勢になってしまう。


ガラスに足跡を残しながら、セツナは防御兵の()()()()()()


胸に腕を回し、首を脇に潜り込ませ、持ち上げ、後ろに投げて、叩きつける!

バックドロップ。


まだ完全に溶けていない、屋内側の窓を派手に突き破り、セツナは防御兵をホールドしたまま屋内に侵入。

そのままの態勢で屋内の壁を突き破って、防御兵を黙らせた。


2人は重力によって、2枚目の壁から床に落ちて、防御兵は床に沈んだままとなる。


義足兵と防御兵を沈黙させた。

残り2人。


立ち上がり、小走りで周囲をキョロキョロとするセツナ。


残りのシグマ部隊はどこへ?

そもそも、ここは何階?


視線を左右に動かすセツナの足元が爆発によって抜けて――、彼の姿がこの階層から消えた。


‥‥‥‥。

‥‥。

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