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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
4.5章_1_兄と妹のデッド・オア・アライブ

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117/229

SS6.15_後は祭り。

「さぁて、マル。神妙にしてもらおうか?」

「うぐぐぐ‥‥。無念‥‥。」


赤い町の、メインストリートの真ん中。

そこに、くたびれたぬいぐるみが転がっていった。


ぬいぐるみを持ち上げて、汚れを払う。


そこに、ハルが仕事用の車に乗って駆け付け、車を降りる。

同じく、マルの仲間であるチンピラもこぞって集まる。


「部下には――、部下には手を出さないでください!」


ハルとチンピラが見たのは、仲間をかばうマルの姿だった。


「マルさんッ!」

「先生ッ!」


ろくでなしである自分たちをかばうマルに、ワルたちの目頭が熱くなる。

慕われているようだ。


セツナはインベントリから手錠を取り出して、それをぬいぐるみの手に掛けた。


「最初から、そのつもりだよ。」


手錠をはめられたクマさんを脇に抱えて、ハルの待つ車に向かう。


「ほらほら、どいたどいた! キミたちも、しばらくは大人しくしてなよ?

 それから、もう教会には手を出さないこと! いいね!」


そう言って、マルを後部座席に放り込んで、セツナは運転席に乗り込む。


「ばいばい。」


ハルは、チンピラさんたちに手を振って挨拶をし、助手席に乗る。

2人と1匹を乗せた車は、赤い町をあとにした――。


‥‥‥‥。

‥‥。


新進気鋭のワル、AIのマル。

彼の戦いは、伝説になった。


都市部のビルを3塔ぶち抜いて、龍と戦ったエージェントとCEを交えた。

そして、最後は仲間をかばって、罪の全てを己が被った。


生半可な悪党では成し得ない大事(おおごと)を、彼は日を浅くして成したのだ。

マルは、ワルの間で神格化され、羨望と憧れの的となる。




――サイドミッション、パーソナル「魔術師(ウィザード)に与える鉄槌」クリア。




マルを捕縛したことで、車内に今回の任務をクリアしたことを知らせるSEが響く。


「「ふあぁ~。」」


兄妹そろって、ほっとひと息を入れる。

今回の任務は、セントラルを巻き込んだ身内争い、壮大なマッチポンプであった。


この事実は、墓まで持っていかなければ。


この後の、マルの処遇が気になる所ではある。

プレイヤーは基本的に、チンピラをぶちのめしはするものの、ブタ箱に入れるようなことはしない。


名付きのワルであれば手錠をかけて、自動運転の護送車で輸送してもらうことはあるが、悪党が逮捕されたあとどうなるかは知らない。


セントラルは毎分犯罪が熾きているクセに、犯罪者の処遇がずいぶんとぬるい。

これがゲーム的な仕様だと言われればそれまでなのだが、この仕様にも一応設定がある。


チンピラたちをぶちのめすだけで済ませているのは、彼らを収容する檻が足りないから。

だからといって、殺すこともしない。


クズにはクズの使い道があるのだ。


彼らは、とにかく迷惑を掛ける。

――内にも他所にも。


他所に勢力を伸ばして、縄張りや()を広げる。


それは、巡り巡って国防の役に立つ。

外からの良くないものを、彼らが排除してくれるのだ。


制服を着た戦士が、国防のためと他所に進軍しては、それは立派な侵略行為だ。

しかし、悪党のクズが他所であれこれするのに、当局は一切の関与をしない。


厄災によって秩序が崩壊し、悪党の手綱を握れていないのは、どこの国もお互い様である。

だから、悪党同士の小競り合いに制服組は関与しない。


そういう、崩壊した世界ならではの暗黙の了解がある。

いわば、現代版の海賊や私掠船と言ったところだ。


悪党の小競り合いや縄張り争いに、公安や制服組は関与しない。

ならばと、それを逆手に取って、国が裏社会に武器や兵器を流すのはNGだ。


正直、どこの国も多かれ少なかれやっているだろうが、あまり派手にばら撒くと、自軍の武器も碌に管理できないマヌケというレッテルを他所に張られる。


その汚名は、社会的な動物にとって耐え難い。

皆、自分の国がナンバーワンであり、特別だと思っているのだ。


表と裏、光と闇、秩序と混沌。

これらに明確な境界は無く、どれも地続きで、国の内外を問わず社会を形成している。


セントラルのチンピラも、内側に銃を向ければ敵だが、それを外側に向けるならば、一応の同士ではある。

だから、チンピラは生かしておく。


魔導兵器の流通とか、ドラゴンの襲来とか、未曾有の危機が迫らない限りは、生かしておく。


「しっかし‥‥、事後処理どうしよう? どうなるんだろう?」


ハンドルを握りながら、ルームミラーを見る。

後部座席には、力無く横たわる、くたびれたクマさん。


「う~ん‥‥、死刑☆」


ハルがイタズラっぽい笑顔で、物騒なことを言い始める。


「MATTE!」


ぬいぐるみが飛んで起き上がった。

体中から冷や汗を流していて、顔色もなんか青くなっている。


「ほらほら~。マル君、死ねば楽になるよ~。

 プレイヤーは不死なんだから、第二第三のマル君として蘇ればいいよ。」

「え? それマジデスか?」

「マル、流されちゃダメだって。取り返しのつかない要素だってあるんだから。」


死ねば贖罪が行われるのか?

それは分からない。


少なくとも過去作では、悪事の罪は、死んだ程度では償われていなかった。


「まったく、これオリーブさんになんて説明したら――。」

「ごきげんよう。」


車が左右に揺れた。

ドライブアシスト機能が作動して、車を車線の真ん中へと誘導する。


「ご、ごきげんよう。」


ビックリして、オリーブの挨拶をオウム返ししてしまう。


「シスターハル、エージェントセツナ、任務お疲れさまでした。

 たった今、盗まれたお酒を取り戻したと、別動隊より連絡を受けました。」


「‥‥それは良かった。」

「ええ、あなたたちのおかげです。ありがとう。


「いえいえ。エージェントとして、すべきことを成しただけです。」


「うふふ、頼もしいこと。

 これからもセントラルの平和のため、良く尽くし、良く信仰をなさい。

 ――信仰は、人の手によって築かれる。」


「「信仰は、人の手によって築かれる。」」


信仰とは、願う物でなくって、築く物。

オリーブは、青石教会の経典に記されている一節を引用し、通信を閉じた。


セツナは、右手で許しを乞うように、十字を切る――のではなくって、三角形を切る。

右手を、額、左肩、右肩と動かして‥‥、ピタゴラスにでも祈っているのだろうか?


「マル。とりあえず、スマートデバイスに戻って見て?」


ワルのマルと、ESS(イズ)のマルは、別扱いだったらしい。

クマさんのぬいぐるみは亡骸となり、ワルのマルは死亡したと、そう判断された。


今後、()()()()()()()には、彼の遺志を継ぐ、第二第三のマルが現れることになるだろう。


‥‥‥‥。

‥‥。



「かんぱ~い!!」

「‥‥乾杯。」


これで3杯目、3回目。

そして、昼間からお酒!


マルとの戦いから数日後、兄妹は現実世界にて、ショッピングモールにあるドーナツ店「ドーナツキャンプ」を訪れていた。

彼らが暮らしているのは、日本の地方都市「にのまえ市」※。


※架空の地名


にのまえ市、漢字で書くと「一市」。

二の前だから、一と書いて、にのまえ。


ただ、漢字表記だと文字のバランスがよろしくないので、ひらがな表記で書かれることが多い。

電車の駅やバス停、役場の名前も、にのまえの表記だ。


その、にのまえ市にある大きなショッピングモールに、2人は居た。

お昼時間の時分に、M&Cで入手したクーポンを使うべく、ドーナツキャンプを訪れたのである。


2人の腰には、銃の刺さったホルスターがベルトで巻かれている。

午前中は、自衛団のボランティアであるパトロールを行っていた。


自衛団の所属を表す腕章を付けて、公共の施設や住宅街を巡回する。


時代は変われど、人は変わらない。

現実でも、素行やガラのよろしくない人間は居る。


(やから)ような人間の害意から、善良な民間人を守るため、自衛団のパトロールは効果を発揮している。

自衛団は制服を着ていない武力、立場は公人ではなく民間人に近い。


不良やクレーマーの心理として、店の人間にデカい態度を取れても、同じ客にはデカい態度を取れない。

揉め事の解決や予防には、民間人である自衛団員の方が都合の良い場合があるのだ。


その心理もあってか、地元の自衛団が懇意にしている居酒屋やコンビニなどは、異常なまでに治安が良い。


なにせ、自衛団は私服の姿をしているのだ。

腕章を付けていなくとも、銃を身に着けていなくとも、一般人よりも高性能なギアを装備している。


ギアは、人間にネクストの力を与え、超人的な身体能力を授ける。


人間がクマに勝てるのか? 無理であろう。

しかも、クマは自分たちと全く同じ姿をしている。


肩で風を切って歩きたい連中にとっては、息苦しい社会である。


刹那と遥花(はるか) (ハルの本名)は、にのまえ市の治安維持に貢献し、その足で昼食へ向かい、ドーナツを頬張っている。

ドーナツは3つ目。お酒も3杯目。


2人の前には、オールドファッション生地を薄く使ったタルトが、1ピースずつ置かれている。

その横に置かれているお酒は、銀月の名を冠するウィスキー。


イギリスのスコットランドで醸造されたお酒で、M&Cとコラボ中ということもあり、期間限定でメニューに追加されていた。


男性向けのドーナツ店ということもあり、ドーナツの種類以上にお酒の種類が充実している。

店内では、喫煙席でナイスミドルな5人組がパイプの煙を楽しみつつお酒を引っ掛け、禁煙席ではセツナたちと同年代の男女グループが談笑を楽しんでいる。


その他にも、家族連れやスーツ姿の男性などなど、賑わっている。


刹那は、目の前のタルトをフォークで切って、口に運ぶ。

ドーナツ生地の上に、ヨーグルトクリームと、キウイやイチゴが盛られたタルト。


オールドファッション生地の甘味を、酸味のあるクリームとフルーツが中和し、全体的に控え目な甘さになっている。

ターゲットを男性としているので、胃もたれするほど甘い商品は少なめだ。


デザートのタルトも同じで、甘さが控えめ。

甘党であっても、そうでなくとも美味しく食べられる。


フォークを置いて、ウィスキーのグラスを持ち上げる。


銀月の女神アリアンロッド、またの呼び名をアランロド。

このウィスキーも、アランという名を持っている。


アランウィスキーを口元に近づける。


酒の見た目は良い。

ロックグラスの中に丸い氷が入れられていて、その中で琥珀色の柔らかい光が目を楽しませる。


磨かれた宝石のような見た目は、まるで満月の光。

丸い氷が、黄金の月光(つきひかり)を滴らせているみたいだ。


素朴で、美しい酒。

男の子が好きそうな、夜のバーで静かに飲みたいと思うお酒。


――が、その味は強烈。

蜂蜜みたいな見た目からは想像もできないほどのアルコール臭が、鼻を刺激する。


なにせ、アルコール度数は約55%。

下戸なら香りだけでノックアウトできる代物だ。


眉をひそめて琥珀を口に含むと、それは口内で暴れ回る。


体温でアルコールが揮発して、鼻を突き抜けて粘膜を刺激する。

舌の上を転ばせて、喉へと運べば、そこも琥珀に溶けた酒気が焼いていく。


喉の下、鎖骨のあたりまで焼けた感覚が襲う。


――女神アリアンロッド、顔が良いだけの女神。

自分の、いつぞやの発言を思い出す。


見目麗しく、その性格はオワっている悪女。

なるほど、アランウィスキーとは良くできている。


「う~~ん! 果物の香り、レーズンみたい。美味しい!」

「マジか‥‥。」


アランウィスキーは、フルーティな味わいとして知られている。

遥花には、濃厚なレーズンと評されるフレーバーが楽しめているらしいが、セツナには、ち~っとも分かりはしない。


アルコールの味しかしないし、感じない。


お酒も入って上機嫌の遥花を横目に、もういちどグラスに口をつける。

‥‥うん、やっぱりアルコール。消毒液。


遥花は、母親に似て酒豪。

母親は、正月やお盆時分になると、日本酒の一升瓶を片手にゲームをしている。


この時に飲む日本酒は、調子に乗って金箔入りの物を選んでいる。

どうせゲームの画面しか見てないのに、見栄えの良い金箔入りを買う理由はいかほどか?


夜になると瓶の中身は無くなって、2本目に突入している。

今年の夏から、空になる一升瓶は倍に増えた。


そして、酒豪の母や遥花のそれよりも、刹那は酒に強い。


ザルという訳ではなく、飲めばしっかりポカポカするし、楽しくなってくる。

でも、気分は悪くならないし、出されれば出されただけ飲むし、注がれれば注がれただけ呑む。


そんなだから、数日前にあったトライアルの慰労会でも、気に入られて色んなお酒をごちそうになった。

慰労会は楽しかった。お酒の味はいまいち分からなかったが。


唯一、大吟醸は美味しいという事だけは分かった。

甘くて飲みやすい。


酒好きの母からすれば、大吟醸は味に濁りが足りないらしいが‥‥。


悲しいかな、刹那はお酒を飲める能力はあっても、お酒を楽しめる才能が無かった。

――サワーとか、とっても良いと思う。甘くて美味しい。


舌の上で暴れる酒気を、タルトのクリーミーな風味で相殺する。

酒乱の女神は、甘味に酔って眠りについた。


ここは、時が過ぎ、氷がアルコールを薄めてくれるのを、ゆっくりと待つことにする。


「それにしても――、遥花も自衛団か。」

「な~に? 改まっちゃって?」


ついこの前、自分がダイバーライセンスを取って、自衛団にもなったと思ったら、もう遥花の番になっていた。

2年、あっという間だ。


「なんか、歳を取る度に、時間の流れが早くなってる気がするんだよね。」

「ジャネーの法則だね。」

「そうじゃんね?」


‥‥‥‥。


遥花が、口元は半笑いで固まり、ジト目の視線を向ける。

刹那はそっぽを向きながら、(かさ)の増したグラスを傾ける。


渋い顔をしたのは、刹那の方。

遥花は、ブルーベリーとジャムがふんだんに盛り付けられたタルトに、フォークを通し頬張って、にへらと頬を緩める。


「ケーキとウィスキー、意外と合うかも~?」

「どっちも味が濃いから、的な?」

「的な感じ。」


ブルーベリーの風味が広がる口を、グラスにつける。

口の中で二層のフルーティな香りができあがって、口の中が幸せになる。


頬がますます緩んでいく。

緩んだ頬で、この後の予定の確認。


「兄さん。お酒の準備はできてる?」

「冷蔵庫に、ちゃ~んと冷やしてる。」


「お菓子の準備。」

「煎餅とか、チョコとか、手が汚れないやつと、アイスとホットスナック。」


「晩御飯は?」

「近くのラーメン屋で良くない?」

「うん、そうしましょ♪」


今日という日は、まだ半日ある。

お昼からお酒を飲んだことだし、今日はもう遊ぶしかない。


2人の食器とグラスが空になる。

両手を合わせて、ごちそうさま。


会計はすでに済ませてある。

デジタルクレジットで、縁 (en)と呼ばれるお金で払った。


縁とは、社会貢献をすることにより貰えるお金のこと。

緑円(りょくえん)とも呼ばれている。


現代日本では、生きていくだけなら円 (yen)があれば充分。


だが、人の役に立つことで貰える縁。

これでサービスの支払いをすることが、一種の社会的なステータスとなり、信用となっている。


自警団は、毎月決まった縁が報酬として支払われている。


この縁は、自分が大人になった証拠でもある。

与えられる側から、貢献する側へと、自分の成長を示すひとつの指標。


子どもの時は、成人すれば大人だと思っていた。

成人して2年経った今では、成人なんてまだまだ全然子どもだと思っている。


トライアルを受けた時もそうだった。


自分の歳上は、もっとしっかりしている。

それは同い年にも言えることで、しっかりした同い年だってたくさん居る。


彼らと比べると、自分が大人だなんて口が裂けても言えない。


一緒にトライアルを受けたお爺ちゃんが言っていた。

「人生は1つのことが分かるようになると、分からないことが3つ増える」と。


お爺ちゃんは続けて言った。

「でも、それが面白いよね~」と、心底楽しそうに語っていた。


――きっと、今の自分はその意味を、正しくは理解できていないのだろう。


「よし! 兄さん、帰ったらスーパーデュクシーコング2だからね。

 102%クリアするまで終われません、だからね。」


「よし分かった。もう何十回もクリアしてるから、楽勝だよ。任せてよ。

 ‥‥まあ、楽勝だけど "きりのもり" のコインだけは、遥花にさせてあげてもいいよ?

 まあ楽勝だけどね? 優しい兄心ってヤツ?」


席を立った刹那の肩を、同じく席を立った遥花がペシンと軽く叩く。


今の刹那に、人生の云々なんて語れないけど、ひとつ分かっていることもある。

――大人になっても、子ども心を忘れてはいけない。


兄妹はドーナツ屋さんに "ごちそうさま" を伝えて、お店を後にする。

ショッピングモールの駐車場には、自動運転の車が待っている。


刹那が運転席に座り、車は走り出す。

きっと、今日も愉快な日になるだろう。




スーパーデュクシーコング2の102%チャレンジは、突如勃発した()()()()コンテストや、動物園でクモの茨渡りチャレンジなど、攻略からの脱線を度々繰り返し、大いに盛り上がった。


――4.5章_1。兄と妹のデッド・オア・アライブ、完‥‥‥‥。







「いらっしゃいませ。」


夜、人も客足も減り、落ち着きを見せるドーナツキャンプ。

そこに、1人の女性が訪れた。


人間の店員の前に行き、注文をする。


「‥‥チョコだくオールドファッションと、手搾りオレンジジュースをいただけるかしら?」

「かしこまりました。お好きな席でお待ちください。」


女性は、お昼に刹那と遥花が座っていたテーブルに座った。

建物の2階にあるお店の、窓際の席。


「‥‥良い夜ね。この世界の月も綺麗だわ。」


誰にも聞こえない、月明かりに溶かされてしまいそうな声で、そう呟く。


――月が昇る夜半前は、女神の分け前。

人の子が眠りに帰る頃、女神は目を覚まし、椅子に腰かけ脚を組む。


今日という物語を書き記せる余白は。残り少ない。

その少ない余白に、物語を記そう。





新月を名乗る女神の物語を――。

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