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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
4.5章_1_兄と妹のデッド・オア・アライブ

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113/258

SS6.11_鳥籠の向こう

無数の車に、無数のバイク。

そして、空から現れた1両の戦車。


車とバイクは、セツナとハルを囲むように、円状に走行をしている。

2人は、機械の鳥籠に囚われた。


ただちに、この鳥籠から脱出する必要がある。

一般車両はともかく、あの戦車はダメだ。


この状況で相手をできる敵では無い。


戦車の主砲が、遠方からこちらを睨んでいる。

キャタピラが、マルの処理能力では操れない車を潰しながら近づいて来ている。


障害物のおかげで、自慢のスポーツカーに匹敵する装甲能力は使えていないようだ。

不幸中の幸い。


戦車からの砲撃。


砲撃に使用された弾は榴弾。

標的の近くで爆発を起こす、威力よりも加害範囲に重きを置いた砲弾。


これを山なりに撃つことで、鳥籠を傷つけることなく、捕まえた鳥のみを攻撃する。


魔力野が魔力の増幅を感じ取り、それに合わせて回避をする。

テレポート。2人とも、宙に向かって瞬間移動をした。


機械による包囲は地上のみ、空中はフリー。

包囲網を飛び越える。


セツナが脚に雷を宿し、ハルが両手の指を組む。

電光石火となり、宙を駆ける。

ライトソードを召喚。銃剣に乗り、足元に炎を宿し、推進力を増して宙を滑る。


「そう来ると思っていましたよ!!」


マルの声。

その声に反応して、なんと鳥籠の車が宙に浮く。


車が10台ほど宙に浮き、2人の上から降り注ぐ。


「丸かじりデス!」


車両の雪崩に、2人は飲み込まれた。

セツナは上から降ってくる車を足場に、無理矢理、雪崩から脱出する。


ハルは銃剣をしまい、ブレイブバースト。

雪崩を魔力の暴風で弾き飛ばした。


間一髪、雪崩の直撃を避けてやり過ごした。

しかし、鳥籠からの逃避行は振り出しに。


再び、鳥籠の中に戻されてしまった。


雪崩の回避に一杯一杯で、床を転がるように着地する。

床を転がるセツナに、鳥籠のバイクが1台突っ込んで来た。


仰向けになったセツナを轢くつもりである。

バイクの前輪が浮き、それをセツナに叩きつける。


ブレイブアーマー発動。

バイクの質量と速度に、勇気で対抗。


ブレイブゲージは、これで残り1つ。


後輪に脚を踏まれないように調整し、ガントレットで前輪を受ける。

前輪が回転し、ガントレットを黒く染めながら、火花を散らす。


左腿に装備しているバックアップリボルバーを引き抜く。

前輪に向けて射撃。前輪をパンクさせた。


タイヤがバイクのホイールから剥がれ、剥がれたタイヤがセツナの顔を叩く。

前輪は空滑りをするようになり、バイクの車体は勢いを余らせ上方向に跳ねていく。


バイクの拘束を解いた。

立ち上がる。


戦車の砲撃。

ハルがセツナの元にテレポートをする。


パッシブを発動。

アサルゲージを1本消費し、「バリアディフェンス」を展開。


両腕を胸の前でクロスさせると、ハルの周囲に半球状のバリアが展開される。

アサルゲージを消費する、強力なガード。


これは、アサルトガードでは防げない、強弾属性の攻撃であっても、ダメージを大きく軽減することができる。


榴弾が爆ぜ、バリアが砕けた。

2人の体力が、40ほど減少する。


バリアに助けられた。

まともに直撃していたら、この5倍以上のダメージを受けるだろう。


セツナとハルは、鳥籠の中。

先ほどと同じ。


だが、状況は悪くなった。

鳥籠の車が、宙に浮いた。


空からの脱出経路が潰された。


なぜ車が宙を飛んだのか?

十中八九、マルの仕業だろうと推測する。


浮いた車からは、魔力を感じ取れた。

‥‥どういうカラクリなのかは分からないが。


――セツナたちは知らない。

サポットが、この世界のプレイヤーとして存在する時、サポットにも「クラス」が与えられるということを。


マルのクラスは、「サイコテックス」。

AIのためのクラスで、超能力で物質を操ることができるクラス。


動かせる物は物質に限られるが、AIの情報処理能力と組み合わせることで、大量の物質を軍団として指揮することができる。


30はくだらない量の車両をマルはハッキングと、超能力により操っている。

クラスの能力により、ハッキングでは実現が不可能な挙動を物質に与えることが可能となっている。


人間が意思の力で魔力を操るのであれば、AIは演算能力で超常現象を再現する。

種族が異なれば、扱うクラスにも差異が発生する。


鳥籠の前に戦車が到着した。

榴弾で吹き飛ばされるか? 鳥籠に圧し潰されるか?


いよいよ、切羽詰まってきた。


どう乗り切る?

地上も空も包囲されている。


馬力も手勢も向こうが上。

戦車と一般車両の群れ。


どちらかだけなら何とかなる。

両方だから困っている。


この状況を作り出しているのはマルだが、彼を叩くのは難しい。

戦車の相手をしつつ指揮官を狙うのは現実的ではない。


‥‥‥‥。


「ハル、7秒時間を貰える?」

「――無茶言うなあ。」


そう言いながら、セツナの提案にハルは笑顔で答える。

指を組み、銃剣を召喚。戦車に向けて構える。


セツナが右手を床に向けて広げる。

彼の周りを炎の魔力が渦巻き始める。


炎撃掌のチャージモーション。

鳥籠を、融解する太陽で焼き切る。

そのための7秒。


コンマ数秒の世界である戦場において、7秒という隙は、7回は死ぬに充分な時間。

その7回起こる死を、ハルが守る。


――戦車の砲撃。


銃剣を盾に。

銃剣で影を作って、そこに隠れる。


砲撃を銃剣で受けた。


「――――ッ!!」


フィードバック。

銃剣が受けたダメージが、両腕の痛みとなり体力を削る。


残り6秒。


鳥籠の車が突っ込んで来る。

狙いはセツナ。


セツナの頭を超えるようにライトソードを振るう。

彼を狙った車両を縦に両断する。


残り5秒。


セツナの元に駆け寄り、レフトソードを操る。

レフトソードを盾に、再び榴弾を銃剣で受ける。


榴弾が爆ぜて、体力が削られる。


右手にポーションを取り出し、封を割って身体に浴びる。

体力の回復。パッシブ「秘密の調合」により、体力が4割回復する。


残り4秒。


宙から、3台の車両がセツナに襲い掛かる。

時間差で、銃剣のスイングの隙を計算して、銃剣での対応では間に合わないタイミングで、宙から襲い掛かる。


ホルスターから得物を引き抜く。

銃剣を装備中、パッシブ「仕込み刃」と「仕込み針」の効果により、ホルスターには合計で4本のナイフが装備されている。


レフトソードをセツナの前に突き刺す。

戦車の主砲から彼を守る。


ナイフを投擲。

投擲と同時に指を鳴らす。


ウェポンシフトアクション。

ナイフが、レーザー光線に姿を変える。

このレーザーは、「仕込み針」の効果で5本に分裂する。


2本のナイフを投げて、10本のレーザーが網目状に展開される。

レーザーネットが宙から襲い掛かる車の一台目を破壊した。


銃剣のライトソードを振るう。

襲撃してきた車のニ台目を破壊。


残り3秒。

残り1台。


銃剣のスイングは間に合わない。

ナイフの投擲も間に合わない。


――ライフで受ける。


ブレイブゲージを消費。ブレイブアーマーを発動。


ブレイブキャンセルで消せる隙は、プレイヤーの隙だけ。

宙に浮いている武器の隙までは消せない。


ブレイブバーストもダメだ。

衝撃波でセツナまで吹き飛ばしてしまう。


フレンドリーファイアは、ダメージこそないものの、ノックバックは発生する。


だから、ライフで受ける。


腕を交差して構える。

空中から突撃してくる車を、不退転の肉体で受け止めた。


車両からのダメージが、ハルの体力をごっそりと削る。


腕が軋む。衝撃に思わず息を飲む。

息を飲んだはずなのに、口から赤いエフェクトが零れた。


残り2秒。


戦車の砲撃。

榴弾が、組み付き合うハルと車を爆風の渦に沈めた。

車両は爆発し、ハルは吹き飛ばされる。


残り1秒。


砲撃によりセツナを守っていたレフトソードが床に倒れてしまった。

しかし、ハルの操れる10メートル以遠となっており、操作ができない。


鳥籠の車がセツナに向けて最短距離で突っ走る。

戦車の主砲が、セツナを睨む。


――長い、足りない。


この1秒が、いつもの何倍にも感じられる。

引き延ばされた時間と思考が、あと一手足りないことを確信させる。


手を打たねば。


ホルスターからナイフを取り出し、投げる。

指を鳴らす。ナイフは光となり、拡散せずに一筋の閃光となる。


閃光が、車のタイヤを貫いた。

車はスリップし、コントロールを失いつつもセツナに向かって突撃をする。


同時に、戦車の主砲から、榴弾が放たれた。

爆風に視界が覆われ、車が何かを撥ねる(はねる)音が聞こえた。


‥‥‥‥。

‥‥。


爆風が落ち着き、視界が開ける。

7秒の攻防の末の結末が、その先にはあった。


戦車の砲撃、車の突撃。

結果は、火を見るよりも明らかだった。


爆風の先、スクラップと瓦礫の散らばる先。

――そこには、セツナが車を右手で受け止めて立っていた。


戦車の主砲はチョコレートのように溶けて、捻じ曲がって口が閉じてしまっている。

セツナが左手をかざすと、そうなった。


突っ込んだ車も、運転席と助手席が熱によって消滅し、バンパーと後部座席のみの不可思議な形になっている。

彼が右手を添えると、こうなった。


「――流石だよ、ハル。」


車のスリップにより発生した、コンマ数秒のロス。

それが成否を分けた。


炎撃掌のチャージは終了した。

アサルゲージを1本消費し、パッシブ「双子の火星」「安定的な超新星」の効果を発動。


通常スキルの炎撃掌は、AAGスキルへと変化する。

AGGスキル ≪双星炎撃掌≫ 。


右手で受け止めた車のタイヤが熱で溶けて裂け、動けなくなった。

車から手を離す。


右手の太陽が、自身の魔力と熱で溶解を始める。

赤い炎は、その核にドス黒い液体を宿し始める。


黒い太陽を上に掲げ、それを床に叩きつける。

太陽はビルの床を容赦なく溶かし、その延焼をと溶解は瞬く間に鳥籠中に広がる。


溶ける太陽は、ハルの足元にも広がる。

ブーツが溶けた床に沈み込み、足場が泥場のようになり、靴底に赤黒い粘土がへばりつく。


フレンドリーファイアは、ノックバックは受けるが、ダメージは受けない。

ノックバックが発生しない攻撃は、仲間に被害を与えない。


鳥籠を覆う溶解と延焼は、範囲内の者と物に、著しい継続ダメージを与えている。

もし、この熱にプレイヤーが晒されれば、体力は10秒と持たない。


鳥籠は、熱を嫌い、宙へと逃げようとする。

――が、一足遅かった。


車両のタイヤとホイールが溶け、床にへばりつき、鳥籠は動きを止めた。

かろうじて、戦車のキャタピラのみが、黒い液体を含む太陽の熱を耐えている有様だ。


車のエンジンと燃料も高熱にやられ、動かない足を動かそうと回転数を上げて少しすると、静かになった。

場を、戦車のエンジン音のみが、床と空気を振動させている。


鳥籠は崩壊した。今こそ、その外側へ!

セツナとハルは走り、鳥籠の外へと飛び出した。


それを戦車が追う。

他の動ける車両も眠りから覚め、2人を追いかける。


鳥籠は脱した。

このまま、会場からも脱出する。


ハルが、バイクに跨る。

あの、軽トラよりも車体が長いバイク。


キーを指す場所に万能ナイフ突き刺す。

鍵穴がナイフによって潰されて、ナイフが突き刺さる。


バイクのエンジンが掛かる。

万能ナイフでハッキングを行い、また他者からのハッキングから守る。


セツナが後輪の近くにあるステップに足を乗せ、ハルの肩を掴む。

アクセルを切り、バイクは瞬く間に加速し、コンデションが悪い戦車から距離を離し始める。


セツナは主力火器のグレネードランチャーを取り出す。

リロード、弾の換装。


シリンダーを外して、新しいシリンダーを取り付けて、ゼンマイを巻く。

グレネードランチャーに魔力を供給。

魔力の加圧供給をして、擲弾の性能を強化。


銃口から、3発の擲弾が発射される。


それを、横方向にばら撒いて設置する。

擲弾は床に触れると爆ぜて、煙を発生させる。


EMPスモーク。

電気機器や、魔力機器に障害を起こすための擲弾。


それに触れた車両は、コントロールを失い、速度を低下させる。


追加でもう一丁、スモークを追加。

あっという間に6発を撃ち切る。


この時間で、会場の隅まで到着した。

戦いの前、マルの部下であるチンピラたちが脱出していった窓、そこから退場する。


ハルがハンドルから手を離し、両手を合わせる。

両手の人差し指を伸ばして、それ以外の指は閉じる。


数字の「1」を表す手の形を作って、その両手を合わせて、主力火器を召喚。


呼び出したのは主力火器のひとつ、対物無反動砲。

単発式のロケットランチャー。


後方を確認。セツナはロケットランチャーのバックブラストに当たらないように身体を傾けている。

後方確認ヨシ。


ロケットランチャーを肩に担いで、狙いはだいたいで――、引き金を引く。

ロケットランチャーの先端に取り付けられたロケット弾が一直線に窓に直撃し、大きな風穴を開ける。


使い終わったランチャーの筒を捨て、ハンドルを握る。


エンジンはフルスロットル。

ハルのサポット、マドカによって脱出経路はシミュレーション済み。


このまま空へと突っ切る!


2人を乗せたバイクは、ビルを離れ――、地上2000メートルの大空へと飛び出した。

その後を数秒ほど遅れて、戦車や車の大群が追って空へと飛び立つ。


――彼らを迎えたのは風、そして青空。

遮る物の無い、青い日差しを燦々(さんさん)と浴びて、バイクは道なき道を進む。


100メートル、200メートルと前に進むたび、100メートル、200メートルと下に落ちていく。

どんどん空は遠くなり、どんどん地上が近くなっていく。


そんな彼らの眼前には、ビルの屋上が見える。

高さ1000メートルほどのビルの屋上。


バイクはそこに着地し、ハンドルを少々ぶらつかせながら屋上の上を走る。


彼らの後に続くのは、車両の大群。

その数、だいたい50台ほど。


50台のうち、半分ほどは無事に渡れなかった。

ビルに突っ込んだり、地上に落ちて行ったり、大惨事となる。


戦車がビルの屋上を、自重と落下の衝撃で破壊しつつ、バイクの後を追う。

ある程度の自力飛行ができるため、バイクを追跡できるのだ。


主砲が使えなくなっても、鉄塊としての利用価値がある。

体当たりさせるだけも‥‥、いや、体当たりこそがこの戦車の優れた対人武装だ。


バイクは、屋上の地面を名残惜しく思いつつ、2度目のフライトの準備に入る。

アクセルを思いっきり切って、速度はトップスピード。


風を置き去りにして、影さえ置き去りにして、青い車道へと車線変更をした。


200メートル、300メートルと前に進むたび、200メートル、300メートルと下に落ちていく。

ますます空は遠くなり、ますます地上が近くなっていく。


お次の空港は、高さが500メートルほどのビル。

だいぶ、背が低くなってきた。


そのビルの、最上階。

屋上では無くって、最上階。


ガラスを突き破って、最上階の展望台スペースへと侵入した。

ガラスが割れ、ぶつかった衝撃でハンドルが取られ、バイクは横転。


バイクから投げ出されて、床を転がる。

最上階には民間人が居たが、訓練された民間人の危険予知能力は一級品。


被害者は出ず、驚きつつも即座に避難を開始する。


避難と混乱の最中、ごろごろと床を転がるハルに、横転したバイクが迫ってくる。

モータースポーツ、とくにバイクでの横転は、非常に危険だ。


今のハルのように、自分の乗っていたバイクに轢かれる事故が発生する。

極限の集中力を持ってしても発生する、レースの事故。

モータースポーツは、過酷な競技なのだ。


ハルは転がりつつ、床に両手をつける。

スキル発動 ≪サイバーシャドー≫ 。


装備を何もしていない時、両手を地面につけることで、テレポートを発動できる。

また、このスキルによるテレポートは失敗しない。


通常のテレポートは、移動先に障害物や人が居ると失敗して、隙を晒してしまう。

しかし、サイバーシャドーでのテレポートは、移動先に何かあっても、自動で移動先を調整してくれる。


通常テレポートは乱戦時には使いづらいのだが、サイバーシャドーは乱戦時にも使えるテレポートとして活用ができる。


サイバーシャドーが発動し、ハルの姿が地面の影となって消え、慣性を維持したまま空中に影が現れる。

影からハルが出現し、床に落ちていくのを、セツナがスライディングをしつつキャッチ。


ハルを立たせて、その間にスマートデバイスをケースから取り出して、側面のボタンを押してケースに戻す。


立ち上がり、走り出す。

彼らの後ろには、戦車と車。


バイクが開けた穴を更に広げて、団体で展望台に侵入する。


数はだいぶ減った。フライトについて来れなかったのだろう。

戦車1両と、車とバイクが10台ほどになっている。


50台からだいぶ減った。


ここに居ないものは、皆、地上へと落ちて行った。

‥‥地上がどうなっているのか、想像したくない。


展望台は、さほど広くない。

広さにして1辺が300メートルそこそこ。


車とバイクを100台以上並べられる元のビルに比べれば小さいものだ。


アサルトゲージを使い、アサルトダッシュを発動。

300メートルそこそこの展望台を、一気に駆け抜ける。


窓際まで到着し、ブレイズキックを使い、窓を蹴破った。


身体は空を飛ぶことは無く、重力に捕まって地上へと落ちていく。


「ソードコア――。」


落下しつつ、コアレンズを魔導ガントレットに装填する。


ハルは両指を組む。銃剣が召喚される。


そして、組んだ指を素早く解き、指を伸ばす。

右手の五指を上方向に、左手の五指を下方向に。


左手を半回転させ、上下逆さまになった手のひらを合わせる。


EXスキル発動 ≪アプルジャック≫ 。

アサルゲージを2本消費して、銃剣の性能を強化する。


オーバードライブ。


リミッターを解除することで、一時的に銃剣のスキル制限を撤廃し、さらに攻撃速度を向上させる。

銃剣の刀身が、緑色の光をスパークさせている。


『センチュリオン、オーバードライブ。』


続いて、スマートデバイスから機械音声。

空に魔法陣が出現し、そこからCEが出現する。


セツナのCE、プロトエイト。

これで、戦車を破壊する。


プロトエイトが空を落ちていくセツナの元へと駆け付け、コックピットへとテレポートさせる。


コックピットへとパイロットを収容すると同時、CEに大きな魔力が供給される。

ガントレットに装填されたコアレンズが、CEに力を与える。


――ソードコア × 飛燕衝 = 全き番犬の槍(ゲイボルグ)


CEの右手に、魔法の槍が現れる。

機体の胸から肩のラインにかけて、大きな魔力の翼が展開される。

翼の魔力が空気の粘性を強め、CEとハルに空を飛ぶ浮力を与え、落下速度が緩やかになる。


展望台から戦車が飛び降りて来た。

戦車を頭上に捉える。


EXスキル、ゲイボルグ。

EXスキル、アプルジャック⇒アプルヴァル。


アプルジャックは、パッシブ「バッドアップル」を装備することで、強力な追加のスキルを発動できる。

それは、銃剣の名に相応しい、強力なスキル。


プロトエイトが槍を戦車に投げつけた。


「いけぇぇッ!!」


鉄の鳥が握る槍には、神話のような必中効果は無い。


これはただの模造品。

ただの模造品だが、それでも強力な槍であることに変わりは無い。


戦車を槍が貫通し、出力が低下する。


風穴の空いた戦車を、2本の銃剣が照準している。

刀身を覆う緑色の光が強くなり、剣の切っ先へと収束していく。


「アプルヴァル!!」


ハルの号令と同時に、銃剣から、その刀身に負けないほど巨大で太いレーザーが発射された。

2つの閃光が、天を貫く勢いで、戦車に命中する。


先の一番槍で出力が低下し、魔力による防護が弱まった戦車は、2本の光の中で蒸発した。

跡形も残らず、空の藻屑と消える。


戦車の後を、超能力で加速した車が追う。

重力加速度を超える勢いで、CEとハルに降りかかってくる。


それを、CEはカタールで、ハルは銃剣によって両断していく。

空を落ちながら、車両を切り捌き、ハルが最後の1台を仕留めた所で、彼女をCEの肩に乗せ、プロトエイトは地上へと降り立った。


鳥籠を抜け出し、大空へと飛び立ち、止まり木を経て、地上へと降り立つ。

鳥籠の閉塞感も、切羽詰まった緊張感も、大空の彼方へと消えていった。


この大立回りは、間違いなく、過言なく、明日の朝刊を騒がすことになるだろう。


派手で大掛かりな空の戦いを繰り広げた結果、地上には両断された車両が道路に散乱し、辺りは混沌としている。

立つ鳥は跡を濁さないが、飛ぶ鳥は爪痕を残すらしい。


‥‥ディフィニラ局長からの大目玉確定だが‥‥、とりあえず窮地は脱した。


今は、マルとの決着をつけることに集中をする。

勝負はまだついていない。


ゲームは、まだまだこれからだ。

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