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コンの記憶

作者: 顎歌

僕の名前はコン。

僕のお家は、お山に囲まれた静かなとこにある

小さなお寺。

僕は生まれてからずっと

この森から出たことがない。

だからずっと一人ぼっち。

でも寂しくなんかないよ。


なんでかっていうとね

木の隙間から入ってくるお日様の光で

日向ぼっこしたりお昼寝したり

たまに来る動物と追いかけっこしたりして

遊んでるから。


寂しくなんかない。

寂しくなんかないよ。


でもね、ホントのことちょっとだけ言うとね。

今よりもっと周りの木がうんと低くて

このお寺にたくさんの人が来て賑やかだったとき

お祭りがあるたびに僕は楽しくなっちゃって

人間の姿に変装して、よく一緒に踊ったり

美味しい食べ物を食べたりして

昔は、すごく楽しかったんだよ。


その時、食べたね、甘くてふわふわしたやつが

美味しくてさ。

あ~もう一回、食べたいな〜。


そういえば、そのとき一緒に食べた人間の子どもが名前教えてくれたっけな。

たしか、わた…あ…あれ?なんていうんだっけ?

………

まぁ、いいや。あの子元気かな。

お祭りのときに転んで泣いてて

僕が傷を治したんだよね。


あの時はまだ不思議な力が使えたからね。

今はもう使えなくなっちゃったけど

僕、すごいでしょ?


んで、一緒にふわふわ食べて仲良くなって

お祭りのあともよく一緒に遊んだな〜

あんなに楽しかったのは初めてだった。

時間があっという間に過ぎてって

お昼寝もする暇もないくらいさ。


だけどね、そんなふうにすごく早く時間が進むから

気づいた時には、お別れの時間になってて

それからもうあの子はお寺に来なくなって

ふわふわも踊りも無くなっちゃってた。


でも僕は、またあの子が来てくれるんじゃないかなって、ふわふわもまた一緒に食べられるんじゃないかなって今でもちょっとだけワクワクしてる。

へ、またお昼寝の夢に出てきちゃうよ。

へ、へへ………ぐすっ、すん

あれ?なんでだろうな……

胸がいっぱいになって苦しいや……。

寂しくなんかないよ、だって……

だから泣いちゃだめだ。泣くなんて……

………

一人は寂しいよ。あの子に会いたいよ。

誰か僕を……


その日は

特別に寒くて空気が澄んだ綺麗な星空の夜でした。

泣きつかれて眠っていたコンのもとに

流れ星の奇跡が起きました。

あの子がコンに会いに来たのです。

コンは嬉しくて嬉しくて泣きながら抱きついて

2人永遠とおしゃべりしたそうです。

そして、コンの身体はゆっくりと

星の光に照らされながら消えていきましたとさ。


そう話し終えたおばあちゃんは

しわくちゃな手で僕の頭を撫でました。

「悲しいお話だったね。」って僕がいうと

おばあちゃんは、いいやって首を振りました。

「なんで?コンは、最後消えちゃうんでしょ?」

ふふっと笑ったおばあちゃんの顔は

他の大人とは違ういい匂いがした。

「そうだ、でもコンは、まだいるよ。」

そうおばあちゃんは

おかしなことを言い出しました。

「ん?コンはもういないよ。」

困る僕をみておばあちゃんは楽しそうでした。

それからさらに可笑しいことをいいました。

「でも〇〇(僕の名前)は、コンを知っているだろ?コンはもういないのに。」


「それはそうでしょ?おばあちゃんに、今コンのこと聞いたんだから。」


確信に迫ったことを僕は言ったはずなのに

おばあちゃんは余裕そうでした。


「私と〇〇がコンを知っている。それでいいんだよ。それだけでコンは今もいるんだよ。」


おばあちゃんは目をつぶって瞼の裏の

なにかを懐かしむように息を吸って僕に言った。


「だからね、〇〇も大事なことや大事な人がいたらずっと覚えていなよ。出来れば、コンもおばあちゃんも未来に連れてってくれると嬉しいな。」


やっぱり意味が分からない僕を

笑いながら撫で回したおばあちゃんでした。

読んでくださってありがとうございます。

神様も人も動植物も忘れなければずっとそこにあると信じたい。

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