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第5話 さよなら、バンフの町

 午前中、7年ぶりにヒロとテニスをした。あの日生まれて初めて彼からテニスを教わった草原の中のテニスコートで。懐かしい。1時間ほどラリーを楽しんだ。


 その夜、ユキ、マリちゃんからギョーザ・パーティにヒロ、ローリーと共に招待された。10年前にはバンフに住んでいたという日本人と中国人の奥様が泊まっていた。その日本人には見覚えがなかった。偶々顔を合さなかっただけなのか7年前には居なかったのか? ユキ夫妻とはかなり親しいのかな?

 ユキは仕事で帰りが遅く、主抜きで大人6人、ユキ、マリちゃんの男の子2人の8人での晩餐会である。中国料理のオンパレードでとりわけギョーザは美味しかった。中国人の奥様の味付けであろう、流石だ。  


 ディナーの後、私が神戸で撮影したビデオを再生する。これがビデオ撮影未熟な所為で12分ぶんがオン・オフをミスっているのをヒロには打ち明けていた。オフのはずの12分の中にローリーの顔のアップが斜めや真横にドアップでしかも何故かボケて画面が激しく揺れている。まるでホラー映画の化け物みたいだ。ローリーは”オオー!”と声を上げて怒りと恥ずかしさで顔をひきつらせていた。私は申し訳なさでいっぱいであったが、内心少し面白くもあった。あとの6人は特に声を出さなかったがどんな表情をしていたのだろう? ローリーが気になって見損なってしまった。恐らく、私と同じじゃないかな?

 主、ユキは23時前に帰宅した。我々がおいとましたのは午前0時半だった。


 翌朝は雨。遅い朝食後、テニスができないのでヒロ、ローリーの新婚旅行の写真を見せて貰ったりしていたが、諦めてヒロとバンフスプリングスホテルに行ってみる事にした。お昼は日本レストラン『サムライ』で寿司を食べた。シャブシャブもやっており日本人客も随分入っていた。よく流行っているようだ。『杉の家』とはえらい違いだ。場所が良いから仕方ないか。

 『サムライ』に入る前に、その近くでトキオさんに遇った。7年前と違ってヒゲを蓄えている。それにしても、似合わない。

 年に一度、帰国しているようである。その時の会話。


「やあ、トキオさん暫く」

「おおー!」


「ここで、商売してるん?」

「まあな…」


「たまに、日本に帰ってるん?」

「ガールハントにな」


 相変わらずだ。


「もう少しバンフに居るんで、ちょっと顔を出すかもよ」

「忙しいけどな」


 (ナニッ⁉ 誰が行くか!)


 先に『サムライ』に入ってたヒロに話したところ、今は彼とは絶縁状態のようである。理由は訊かなかった。ヒロは家庭を持った。トキオさんは相変わらず女遊びを続けている。まあ、想像はつく。


 翌日。いよいよ明日はバンフを去る。午前中にヒロとテニスを楽しんだ後、一人でバンフ周辺をカメラ持参で自転車で走り回った。

 ケイヴ&ベイスン、バンフスプリングスホテル、レイク・ミネワンカ、バイソン・パドック、マウント・ノーケイ、ヴァーミリオン・レイク。それに、ユースホステルにも行ってみた。7年前と同じロケーションだと思うが、新築で素敵なホステルになっている。

 バンフのギャラリーで観たバンク・ヘッドにも行き当たった。100年前、線路敷設の際石炭を発見した場所で、その頃からしばらくは、バンフの中心地はこの地だったそうである。


 バンフ最後の日は雨だった。

 午前中はヒロの運転で7年前の思い出十分のボウ・レイク畔のロッジまで行って貰った。

 あの日、サイクリングでバンフからジャスパーに向かう途中、レイク・ルイーズを出発してすぐ吹雪に遭い3連泊を強いられたあのロッジである。"Simpson's Num-Ti-Jah- Lodge" と言うようだ。真っ赤な屋根が印象的だ。ロッジが近づくにつれ、雨は雪に変わった。あの時と似てる。

 ボウ・レイクの水は大部分がまだ凍ったままだ。フロントやレストランのフロアが懐かしい。


 バンフ~ジャスパー周辺の湖では、やはりモレーン・レイクが一番美しいようだ。一部水面が凍っているのがまた風情がある。一般的にはレイク・ルイーズ、マリン・レイクがビッグ2ではあるが。

 シャトー・レイクルイーズに入ってみた。日本の店は一軒のみだそうだが何をしている店だろう? 繁盛してれば良いが。


 さて、バンフに戻ってきた。

 日本で購入していたアメリパス・2か月分がバンフから使用できると分かり、早速使ってみる。日本のガイドブックではアメリカでしか使えないと書かれていた。バンクーバーから国境を越えてから使うつもりだったので大いに助かる。


 バンフには約25日の滞在で、前回同様ずっとヒロ、ローリー夫妻にお世話頂いた。いつかもう一度、訪れる日は来るだろうか? 

 ヒロ、ローリーに見送られて、グレイハウンドバスは静かに動きだした。

 バンフの町よ、さようなら。そしてありがとう、ヒロ、ローリー。

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