第28話 グランドキャニオン国立公園
Laura に完全に別れを告げた。一気にフラグスタッフに向うつもりだったが、バスが込みそうだったので予定変更して、再度スプリングフィールドに一泊する事にする。
前に訪れた時には気付かなかったが、街はトレイルウェルズ社のバスデポから更に先へ行くとそこがダウンタウンであり、ホテルも2軒ほど建っていた。思っていたより古風で落ち着いた街である。
腕時計の電池が切れていたが、やっと水銀電池が手に入った。時計がないと不便だ。少し早めの夕食を前と同じ韓国料理店で摂ったが、先日の可愛い娘の姿は見えなかった。それにしても、今日のキムチは強烈だ。
さていよいよ今回の旅の最大のハイライト、グランドキャニオンに向かう日がやって来た。写真では何度も目にした事のあるあの壮大な景観と生で対面できる。そう思うと何だか胸がドキドキしてくる。
グレイハウンドバスはスプリングフィールドを出発し、途中に Tulsa と Albuquerque を経由して、フラグスタッフに向かう。Tulsa は問題ないが、Albuquerque は『アルバカーキ』とは発音しにくい。
Tulsa で乗り換えがあった。ここで満員になり、しかも変な老人が乗り込んできた。初めのうちは穏やかだったが、途中から本領発揮し始める。先ずは独り言、次に前席の人に何やらしつこく話しかける。ついには、運転手にバスを停めるよう食ってかかり始めた。バス停に到着したところで下車した。少々、いや相当イカレてるようだ。
バスは途中2度日付変更線を通過して、28時間かけて漸くフラグスタッフに到着した。ここは、グランドキャニオン国立公園と同じく、アリゾナ州である。
グランドキャニオン国立公園の玄関口の街なので早速、観光案内所でホテルの予約はできるか訊いてみた。
"Excuse me , Can I have Hotel reservation in Grand Canyon here?"
"Sorry, You can't here. but, You can stay Bright Angel Lodge probably."
どうやら直接行ってもブライトエンゼルロッジとやらに泊まれそうなので即、グランドキャニオンに行く事にした。
(今なら、観光案内所でブライトエンゼルロッジの電話番号を訊き、直接電話予約を入れるであろう。この頃は安易に考えたのか電話での英語に自信が無かったのか…考えもしなかった)
アメリパスは途中まで使用可であった。他の国立公園同様、グレイハウンドバスは公園の入り口まで。公園内は専用バスのみのようだ。
これ迄訪ねてきた国立公園と違って、車窓からの景観は今一つパッとしない。アリゾナだけあって半砂漠の為、低木とセージブラシのみ生育している。
専用バスはブライトエンゼルロッジ近くに到着した。何をおいても先ずは予約しなければ。理想的には4泊だったが、2泊予約できた。
ロッジのすぐ後ろがグランドキャニオンの南縁 (South Rim) になっている。最高のロケーションである。胸躍らせながら近づいてみる。写真や絵葉書でお馴染みのあの素晴らしい景観が壮大なスケールで広がっていた。
眼前にグランドキャニオンの岩肌を見ながら、南縁に沿って東方面にゆっくりと歩いてみる。40分ぐらい歩いた辺りに博物館が建っていた。そこからの景観は更に素晴らしいものであった。
好天にも恵まれ、南縁からの最高の景観を満喫して夕暮れを迎えた。昼間とはまた違った趣がある。岩肌は昼間と比べると、凹凸が浮き彫りになって黒々としている。黒い筋肉の塊のように見える。これをどう表現すべきか?
黒人マッチョである巨人⁉ 英語では、"Black Giant " か⁉
度肝を抜かれたグランドキャニオンとの対面でした。