第20話 デ・スメット(『シルヴァーレイクのほとりで』の舞台)
翌日朝食後、図書館でサウスダコタ州の地図で調べた結果、『シルヴァーレイクのほとりで』の舞台であるデ・スメットは Brookings または Huron の真ん中辺りに位置している。どちらへもグレイハウンドバスは運行している。そこからはサイクリングに頼るしかないようだ。流石に、自転車には少し飽きがきているが。
Brookings にやって来た。この町は特に緑の多い町だ。まるで森の中に町を造ったよう。いや実際、そうかもしれない。高台から瞰視すると森にしか見えない。
レンタルサイクルを期待して、2軒のバイクショップを当たってみたが、どちらもやってなかった。徒歩かヒッチかと考えつつグレイハウンドのバスデポを訪ねたら、何のことはない。地元だけの路線と思われるグレイハウンド関係のバスがあった。昨日訊いておけば良かった、いつもそうしてるのに。
1日無駄にしたが、ほっとして町を散策してみる。改めてこの町の緑、特に樹木の多さに驚かされる。一昨日、 Walnut Grove からの帰り路に農家の庭先で小動物を見かけたが、やはり野兎のようだ。この辺では普通にいるようだ。
付近に飛行機かヘリの発着場がある。その近くでサーカスが開催されたようで、多くの動物が繋がれていた。中でも、25頭の象は圧巻であった。
まあ、まんざら無駄な1日でもないようだ。
翌朝、デ・スメットに到着。この町は Laura の両親が最期まで住んでいた町であり、また Laura の執筆した大草原シリーズの6冊めから4冊分の舞台となった土地だけあり見どころが集中している。
Surveyor's House は Laura の父親が鉄道で働いていた時、家族で住んでいた家であり、当時の家財道具などが多数展示されていた。友人からの寄付による物が多いようだ。
Ingalls Home は Laura の両親が最期まで住んでいた家であり、Laura や娘 Rose に関する新聞の切り抜きなども随分展示されている。Rose は既に著名な作家であり、Laura に『大草原シリーズ』の執筆を薦めたのも彼女である。
Laura はありのままを書きたかったが、それでは本は売れないと Rose との間で悶着が有ったようだけど、結局先輩作家の忠告を受け入れたようだ。
町の東のはずれには Ingalls家の1880年代のホームステッドが有るので行ってみた。『シルヴァーレイクのほとりで』の舞台になった場所である。田園の一角にあり静かな場所だった。シルヴァーレイクは残念ながら今はその面影はない。水が完全に干上がっているので、雑草のみの草原でしかない。
デ・スメットは静かな町でハイウェイ14を除けば、車での観光客以外あまり人を見かけない。まるでゴーストタウンのようである。
翌日。
Laura と夫 Almanzo のかってのホームステッドが北のはずれに有るそうなので行ってみた。今は家はなく、立て札だけが立っている。
Laura の娘 Rose はこの地で生まれたようだ。当時住んでいた家は火事で焼失 している。その時 Laura は一人息子を亡くしている。
Ingalls 一家が埋葬されている墓地にも行ってみた。お墓は両親はじめ家族6人が横一列に並んでいる。質素な墓である。当時はまだ裕福ではなかったようだ。嫁いだ Grace の墓だけは離れた場所にあった。
100年前に思いを馳せながら、静かに合掌した。