第17話 シカゴ入り
三たびデンヴァーに戻ってきた。
前と同じホテルに落ち着いた。夕食も前と同じ日本レストラン『あけぼの』で摂ったが、残念ながら前回親切にしてくれた日本人女性は居なかった。代わりに日系三世の男性が居て、『よしえ』さんという親切な女性は土、日のみの勤務との事だった。
翌早朝、デンヴァーに別れを告げてオマハに出発する。睡眠不足の為、車窓からの景色を見ながら少しウトウト…。
景色は相変わらずの大草原である。東に向かうにつれ、放牧から耕作へと変わってゆく。トウモロコシ畑が随分目立つ。東が近づいてきた所為か、マナーの悪い乗客が出始めた。禁煙席でタバコを吸っているバカ女が2人いた。
オマハのYMCAはすぐに見つかったが満室との事で、それではと安いホテルを紹介して貰ったがいくら探しても見つけられず、途中で見つけた汚いホテルに宿泊する事にする。それにしても外見以上に室内は汚い。部屋が薄暗い為まだマシであるが、明るいともっと大変かも。ただ幸いなことに、ベッドだけはまだマシであった。
翌朝、オールドマーケットを歩いてみる。赤レンガの広い石畳の所々が変形してるのが歴史を感じさせる。その一角に列車の車両を改造したレストランがあったので朝食を摂ったが、安いし感じの良い店だった。
デ・モインへのバスは1時間半遅れで出発した。喫煙席しか空席は無く、3時間に亘って紫煙を吸わされた。車窓からの田園風景はトウモロコシ畑が一面に広がり、所々に農家や林が見られ、実に長閑である。
町は観光地ではないので見どころは何も無い。レストランが無いので会話も無い。YMCA傍の広い川を渡り、ダウンタウンから離れると緑豊かな静かな田舎町であった。
翌朝、シカゴへと向かう。シカゴと言えばギャングのイメージがまず浮かぶ。『ギャングの街・シカゴ』と『ギャンブルの街・ラスヴェガス』は、私には少々苦手な街である。
その苦手なシカゴへ向かう理由。それは『大草原の小さな家』の舞台を訪ねる途中にあるから。シカゴには何ら興味はないけど。
グレイハウンドバスは3日連続の遅延で、心配していた通り満席で最悪の席に座る事になった。ひげ面でガリガリの乞食のような白人男性の隣になり、気持ちが悪いったらありゃしない。
東部に突入しただけあって乗客のマナーも悪く、禁煙席で喫煙している馬鹿どもが7人ほど居た。例の乞食も然り。不快でイライラ、ムカムカしているうちに、『ギャングの街』にやっと到着。何事もなく先ずは一安心である。
さて、この『ギャングの街』を無事、抜け出せるか⁉
シカゴではYMCAが何故か営業停止になっていたので、近くのホテルに2泊する事にした。
翌日、ガイドブックにある観光案内所を探してみたが見つからない。自然科学博物館、シカゴ美術館を訪ねた後はミシガン湖の畔でのんびり…。
翌朝のチェックアウト時にちょっとした揉め事があった。
シカゴのホテルでは、チェックイン時にデポジットとして2ドル50セントを預かると言っていた。ところが、チェックアウト時、別の受付係が返そうとしない。チェックイン時の話をすると、何やらブツブツ言いながら1ドル30セントだけ返してきた。
納得した訳ではないが、何しろギャングの街なので早々に妥協した。1ドルそこそこの為に、命を懸ける訳にはいかない。私はこれから Laura に逢いに行くのだ。
昨夜の調査で、ミネアポリス近くに『大草原の小さな家』縁のプラムクリークおよび Laura ミュージアムがある事が分かっていた。さあ、今から出発だ。