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第1章: 神の降臨

広大な宇宙の中で、地球は静かにその歴史を重ねていた。しかし、5万年以上の時が流れ、地球はかつての栄光を忘れられた星となっていた。太陽系の惑星たちは、かつての主であった地球の動静に疑念を抱き始めていた。


「地球が沈黙している……もう何万年もの間、音沙汰がない。」


太陽系連合軍の司令部で、惑星火星の総督が唇をかみしめながら呟いた。周囲には、土星、木星、そして海王星の代表たちが集まり、緊迫した空気が漂っていた。火星の総督の目には焦燥が浮かんでおり、その視線は重く、全てを見透かすようなものだった。


「このままでは、地球が我々の脅威となることは間違いない。今こそ、連合軍を集結させ、地球を我々の支配下に置くべきだ。」


木星の代表が力強く声を上げると、全員が一斉にうなずいた。その目には、決意と恐れが入り混じった色が浮かんでいた。彼らは、地球がかつての栄光を取り戻すことを何よりも恐れていたのだ。地球が再び太陽系のリーダーとして立ち上がれば、彼らの支配権は脅かされる。地球を再び屈服させるためには、今しかない――そう確信した彼らは、ついに太陽系連合軍を動かす決意を固めた。


---


 地球圏


連合軍の艦隊が地球圏に到達した時、彼らの胸には確かな勝利への期待があった。各惑星からの強力な武装を持ち寄り、数千隻にも及ぶ艦隊が宇宙空間を埋め尽くしていた。各艦には最新鋭の兵器が搭載され、その破壊力は一撃で星を消滅させるほどのものであった。


「全艦、配置につけ!地球圏への侵入を開始する!」


指揮官の号令と共に、艦隊は整然とした隊列を保ちながら地球を取り囲むように広がり、その猛攻が始まろうとしていた。彼らはこれまで数多の戦いを勝ち抜いてきた。そして今、この地球を手中に収めることで、彼らの支配が完成するはずだった。


しかし、その瞬間、艦隊の内部で異変が起こり始めた。突如として宇宙空間が歪み、まるで時が止まったかのように静寂が広がった。そして、暗闇がゆっくりと彼らを包み込み、恐怖がじわじわと広がり始めた。


「何が起こっている……?」


艦内のモニターが一斉に警告を発し、兵士たちは狼狽した。電子機器が次々と誤作動を起こし、通信も途絶えがちになった。緊張が高まり、兵士たちの表情には焦りと不安が浮かんでいた。彼らがこれまで経験したことのない異常事態に、指揮官も対応に苦慮していた。


その時、闇の中から一つの影が浮かび上がる。それは人の形をしていたが、その存在感は次元を超えており、見る者全てを圧倒する何かがあった。影は徐々に明らかになり、その姿がはっきりと現れた時、連合軍の兵士たちは言葉を失った。


「私は翡翠……人類を超越し、全てを見守る者。」


その声は穏やかでありながらも、全宇宙に響き渡るような威厳を持っていた。連合軍の兵士たちは息をのんだ。目の前に現れた少女――翡翠は、ただの人間ではない。彼女の瞳には、悠久の歴史と無限の力が宿っていた。


「地球を侵略しようとする者たちよ……その愚かさを、我が力で教えてやろう。」


その言葉に続いて、翡翠はゆっくりと手をかざした。次の瞬間、地球全体を覆うように輝くシールドが展開された。それは古代魔法「ビシュヌ神の加護」――誰もが知る伝説の魔法だった。シールドは、連合軍のあらゆる攻撃を無効化し、そのまま全てを跳ね返した。


 「攻撃が……通じない?どうなっているんだ!」


兵士たちは慌てふためき、艦内は混乱の渦に巻き込まれた。彼らはこれまで無敵を誇っていたが、今、目の前で繰り広げられる光景は彼らの常識を覆すものだった。攻撃がまるで意味をなさないどころか、逆に跳ね返ってきているのだ。


「全艦、最大火力で再攻撃だ!地球を制圧するんだ!」


指揮官は必死に指示を飛ばした。艦隊の武器は最大出力で解放され、無数の光線が翡翠と地球に向かって放たれた。その光景は、まるで宇宙そのものが燃え上がるかのような壮絶さだった。しかし、その攻撃も全てがシールドに阻まれ、無力化されてしまった。


「無理だ……あれは、どうやっても破れない。」


ある兵士が呟いた。その言葉は、艦内の全ての者の心を代弁していた。彼らは無敵だと思っていた自分たちが、たった一人の少女によって完膚なきまでに打ちのめされていることを実感した。そして、その恐怖が彼らの心にじわじわと広がっていく。


翡翠は静かに彼らを見つめ、その表情には一切の感情が感じられなかった。彼女の瞳は冷たく、まるで無限の時間を超えて全てを見透かしているかのようだった。


「これが、あなたたちの愚かさに対する報いだ。」


翡翠は再び手をかざし、今度は自らの力を解放した。彼女の魔法「破滅のアンロック」が発動し、目に見えぬ力が宇宙に広がっていく。それは、死の風の如く連合軍の兵士たちを次々と襲い、彼らを無慈悲に消し去っていった。


兵士たちは次々と消えていくその瞬間、自らの命が翡翠の一言で終わることを悟った。その恐怖は、彼らの心を完全に麻痺させ、戦う意志すら失わせた。彼らはただ、消え去ることを恐れながらも、何もできないまま滅びていった。


「たった1時間で終わる……愚かな挑戦者たちよ、私の力を思い知るがいい。」


翡翠の言葉通り、1時間後には太陽系連合軍の姿は跡形もなく消え去っていた。艦隊は無に帰し、彼らが持っていたはずの圧倒的な力も、今や見る影もなかった。


しかし、翡翠の心は安らぐことはなかった。彼女はさらなる脅威を予感していた。宇宙は広大であり、まだまだ未知の存在が潜んでいることを翡翠は知っていた。彼女は静かに宇宙を見つめ、その視線は太陽系の遥か彼方――オールトの雲を捉えていた。


---


 太陽系連合軍の基地


太陽系連合軍の司令部は、基地内に設置された巨大なモニターを見つめていた。彼らの前には、地球圏で展開された惨劇の映像がリアルタイムで映し出されていた。次々と消えていく艦隊、無力化される攻撃――その全てが、彼らの目の前で繰り広げられていた。


「これは……一体、どういうことだ?」


火星の総督は驚愕の表情で立ち尽くしていた。その目には、信じられないという感情が浮かんでいた。彼らはこれまで数多の戦いを勝ち抜き、無敵を誇ってきた。しかし、今、その力がまるで意味をなさないことが明らかにされていた。


「まさか……地球が、こんなに強大な存在だったとは。」


土星の代表も震える声で呟いた。彼らは地球を軽視していた。5万年という時が経ち、地球は弱体化しているはずだと考えていた。しかし、現実は全く異なっていた。地球には、かつての栄光を取り戻した者――翡翠が存在していたのだ。


「このままでは、太陽系連合が危機に瀕する。彼女を止めなければならない。」


木星の代表が焦燥感に駆られた声で言った。しかし、どうすればよいのか、誰も答えることができなかった。彼らがこれまで信じてきた全てが、今崩れ去ろうとしていた。


「我々は……愚かだったのか?」


海王星の代表が、誰にともなく呟いた。その言葉には、深い後悔と絶望が込められていた。彼らは地球を支配することが自らの安全を確保するためだと信じていた。しかし、その信念は今、翡翠によって完全に打ち砕かれていた。


「これからどうする……?」


基地内は深い沈黙に包まれた。彼らの心には、翡翠に対する恐怖と、地球に対する不安が渦巻いていた。今や彼らは、翡翠の力に対抗する術を持たず、無力感に苛まれていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 翡翠の圧倒的な力がヒシヒシと伝わってきて、これでもまだ少しの力と思わせるような地球を守るための無慈悲さが良かった。 [気になる点] 各星の司令部のセリフによって、連合軍に所属している星達の…
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