添い寝屋の白猫とゲームがやめられない女の子
「あーあ、眠れないなー」
私はそう言いながらベッドでうつ伏せになりながら、スマホのゲームをポチポチと遊ぶ。楽しいけど、時計を見ると結構遅い時間だ。もう寝ないと明日は起きられなくて学校に遅刻しそうになるかも。
「あ、ラッキー! アイテムゲット!」
でもゲームも面白くなってきちゃった……。このままゲームをやって徹夜で学校に行ってもいいかもしれないな。
真っ暗な部屋でゲームの画面だけが光っていて目に悪いと思うけど、映画を見ているようで特別な感じでワクワクしてしまう。
だからゲームがやめられない。
「ん? 何これ?」
ゲームの途中で小さなアプリ広告があった。可愛い白い猫で【添い寝屋】と書かれてある。
「うーっと、何々? あなたが眠れるまで寄り添ってくれる【添い寝屋】さん。へえ、可愛いゲーム。ちょっとやってみよう」
早速、ダウンロードしてみたが反応がない。
「あれ? なんでタップしているのに、なんで動かないんだろう?」
「ちょっと失礼」
気取った感じの声が私の耳もとから聞こえてきた。驚いていると、私の右肩の方から真っ白な猫が現れた。
私は「うわ!」と驚いたが、白猫は特に驚く事は無くちょこんと枕元に座って上品に言う。
「あなたが私を呼び出したの?」
「え? 呼んでいないけど」
「でも【添い寝屋】のスマホのアプリをタップしていたでしょ」
ほら、と言わんばかりに私のスマホをクンクンと鼻をつける。
えー……。もしかして本当に私が眠るまで本物の白猫が添い寝してくれるのか。普通のゲームと思っていたのに。
ちょっとがっくりしたが、まあいいかなと思った。
「ちょうど良かった。じゃあ、私が眠るまで添い寝して」
「分かったわ」
そう言って白猫は私が操作していたスマホの上に乗ってゴロンと横になった。
「ちょっと!」
「何よ」
「これじゃ、スマホで遊べないじゃない!」
「あなたは眠りたいんでしょう。スマホをいじっていたら、いつまでも寝れないわ」
「そうだけど」
「それにあなたのスマホ、とっても暖かいわ。ここをどいてって言われても嫌だわ。もし抱っこして、どかしたら猫パンチするわよ」
そう言って白猫は優雅に真っ白い尻尾を揺らす。どいてくれる気なんて一切なさそうだし、無理やりどかしたら本当に猫パンチされそう。
それにしても、この白猫はなんだか猫の女王様って感じだ。ユラユラ揺らす白い尻尾やフフンと見る偉そうな黄色い瞳とか。
これだと白猫からスマホを取り戻すのは大変そうだ。
もう! 仕方がない。寝よう。
「どうせ、寝るんだったら私のお腹に枕にしてもいいわよ」
「えー、枕にしたら猫パンチするでしょ」
「大丈夫よ。しかも私のお腹はフカフカよ」
確かに白猫の毛並みはフカフカで気持ちよさそう。恐る恐る頭を乗せると、やっぱりモフモフで気持ちいい。思わず、揉み揉みしてしまう。
「フフン、普段ならこんな贅沢な事は出来ないでしょうね」
「確かに猫って気まぐれで偉そうだから、やったら怒りそうね」
「フフン、今回は特別だからね」
そんな話しをしているとウトウトしてしまった。フワフワな毛並みを頬に付けながら、私は目をつぶって眠ってしまった。
ピピピピピピ!
スマホのアラームが鳴って、ハッと目覚めた。
「あれ? 私、いつの間に寝ちゃったんだ」
窓を見ると朝日が見えていた。いつもスマホのゲームをやりながら眠って起きると、この朝日がものすごく眩しくて目に痛いくらいなのだけど、今日はとってもスッキリしている。
よく眠れた証だ。
「夢の中の白猫のおかげかな?」
白猫が喋るわけないし、ましてやお腹を枕にしてくれるなんてあり得ない、だって猫はわがままだもん。きっと夢だろう。
そう思って学校に行く準備をしていると「にゃあ」と泣き声が聞こえてきた。
窓を見ると真っ白い猫が塀の上に座っていると思っていると、すぐに立ち上がって優雅に白い尻尾を揺らして去っていった。