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山の木の実

作者: 火水

縄文の昔に、思いを馳せて

山の近くに住むカカたちは、山の木の実をとって来る


そのトトたちは、山に出かけ、

獣たちの、その命を貰いに行っていた


我が地は、そんな場所だった


とある秋…夕暮れが、陽の光を追い越すようになった時

偶々、とても多くの木の実が取れたその秋があったそうな


何代か前の、カカのカカの上の人、

バサマの1人が

「木の実、様々な形を成してる」

と、言い出した


どれどれと、その時分のカカたちは

木の実を分け始めた


丸っこいもの、細長いもの

平べったいもの、歪なもの


気付いたら面白くて、分けることも楽しみのひとつ


さてさて、皮を剥き…


それまでは、ただただ、集めて潰していたひとつひとつ


分けたら、このひとつひとつは

どのような物?


カカたちは悩んだ末に

『元より、食物…齧ってみよう』

と思い立つ


毒かも知れぬ

毒であったら、死ぬかも知れぬ

焼いても毒、生でも毒

焼いたら食えても、生なら毒

…、

顔を見合わせ

『焼いて食える物なら、そこそこ毒ではあるまいよ』

という、結論に達したのか

それでもひとつずつ、少しずつ、

木の実を味見をしていった


渋い物、臭い物、何の味もしない物…

一個の木の実のの中でも

べべッと吐き出す事もなく、何とはなく飲み込めた木の実があり

遠くの方で、甘味が感じられるものもあった


手を動かす間の暇に任せて分けてみる


甘味とは何ぞや?

暇に任せて語り合うと

行き着く先は…それは、乳の味…であった


『ふむふむ』と、納得し合い

沢山採れたのを良い事に、少しだけ甘く感じる木の実を残し

その木の実への感謝と畏敬の念と共に、埋めて育てる事にした


甘い木の実は、近くへと


狩から戻ったトトたちは、肉を捌き、焼く間に

「木の実はどうだった?」

と聞く

カカたちは、ざっくり採れた木の実を置き火の中で予め炒っておいて

「たくさん採れた」

と、差し出した


「「あぁ…」」

と、トトたちは笑顔で木の実を手に取る

パキパキと、殻ごと齧り付き、飲みこむトトもいれば

殻は、べべッと吐き出すものもいたが

過酷な猟を経験したトトたちの無事に

とやかく言う者はいなかった


肉は、当分に分けられ

ひとつの集落は喜びに満ちていく


甘き木の実は集落の近くに

焼けば香ばしい木の実は、そこより少しだけ遠くへ

遠くには、苦いものを

カカたちは撒くことにした


来年は

皆んなが食べられるくらい

甘い木の実が食べられますように

トトたちが、怪我せずに帰って来れますように

カカたちは祈る



甘かれ木の実


伸びろよ木の実


生きとし行けるまま

緩やかな縄文は長く続いたみたいですが


いつか、終わります

終わりました


縄文への憧憬を込めて

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