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第一章3   『雪解けに祝福を、春に乾杯を』

 テオが生まれて、家は大忙しになった。ちょうど、冬籠りに向けて準備を済ませていたから、赤ん坊のテオを抱っこしながら家事をする母さんを置いて、僕は父さんと男の仕事をしに行った。


「去年は駄目だったのに、今年はテオが生まれたから男の仕事に行ってもいいの?」

「そうだな。テオが生まれたのもあるし、ウドがお兄さんになったからでもあるな。去年より手のひら一つ分ぐらい大きくなっているだろう? 運動も得意だもんな」

「えへへへ、僕、お兄さんになったんだー」


 父さんに褒められて、男の仕事に向かったはいいけれど、血なまぐさくて僕が手伝えるような仕事はほとんどなかった。

 冬籠りの前の男の仕事とは、食料を準備することだ。獣を捌いて、それぞれの家に持っていく。

 父さんみたいに力のある男がいる家ばかりじゃない。

 メルフィーおばあさんの家みたいに、旦那も息子もいない家には子供たちで食料を運ぶのだ。


「ジーク、ウド、ウィルは肉を持って行って欲しい。寄り道するんじゃねーぞ。お菓子ももらうなよ」

「分かってるよ、アードおじさん! ウド、ウィル、行くぞ!」

「うん!」

「おー!」


 僕たち子供の面倒を見てくれるのは、アードおじさんだ。おじさんって言っているけれど、他のおじさんたちよりは若い。

 ジークとウィルは家が近いし、父さん同士も仲が良い。


「ウドは弟が生まれたんだろう? どうだ? 弟は可愛いだろ?」

「めっちゃ可愛いよ。ジークに弟ができたって聞いて、どんな感じだろうと思っていたけど、こんなに毎日が楽しくなるもんなんだね!」

「ジークもウドも弟がいていいなー。おれんちは姉ちゃんと妹のジルしかいないからなー!」


 姉妹に挟まれているウィルは我慢することが多いらしい。

 一人ずつ一軒分の食料を取ると、村長の小屋で男の仕事をしているおじさんたちに届けることを伝えて、町に出る。


「今年の冬は長引くって魔女のおばあさんが言ってたけど、何をしようかな」


 三人で冬籠りについて話をする。


「じゃあな!」


「ただいま」

「ローマン、ウド、おかえり。今日の夜ご飯はシチューよ。ウド、ちゃんと良い子にしてたかしら?」

「もちろん、二十軒も配ったんだぜ! それより早くテオを抱っこしたいよ」

「汚れを落としてからね。肉の汚れは赤ちゃんには良くないもの」


 夜ご飯の一家団欒。

 やっぱり弟ができるっていいなー。


「父さん、明日も男の仕事はあるの?」

「あるけど、今晩から雪がひどくなりそうだからなあ。母さんとテオが心配だから、昼のあったかい時間に俺だけで仕事に行く。ウドは母さんの手伝いをするんだぞ」

「えー、僕も連れて行ってよー!」

「わがまま言うんじゃありません。……それに母さんはウドが家にいてほしいな。テオと二人っきりなのも疲れちゃうもの。ウドにテオを任せたいんだけど、良いかしら?」

「そっか! テオの面倒を見れるのか! だったらいいや!」


 雪が強くなって、父さんも男の仕事に行かなくなった。

 こうして、冬籠りがはじまった。


 冬籠りはあっという間に終わってしまって、春がやって来た。

 ぽたぽたと雪が解ける音が聞こえてくる。


「春の魔女が来たのね」


 たった一晩で雪は全て溶け切ってしまい、ものすごい量の雪解けが街にあふれている。

 あと一日、二日は外に出られない。

 テオは声を出して笑うようになっていた。

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