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少女は歩み続ける。自身の願いのために。

「やぁぁぁぁぁ!!!」


 点々と等間隔で光る街灯のみの薄明かりと月明かりが照らす中、たった一人少女がたたずんでいる。本来であれば地に足が付いているはずが、見間違いでなければ少女は器用に空中で止まっている。その正面にあるのは、一匹の《《異物だった》》ものだ。

 既に少女に撃破された異物は少しづつその姿を塵に変えていく。現世においては、実在するはずがない物と、その少女は日夜一人で敵対していた。

 淡い青色と純白をメインにした、戦闘服は派手好きな年ごろの少女が好んで着ても全く不思議ではない。

 肩よりも少し長い、色素の薄い茶髪と同時にスカートが風になびく。まだ幼い表情だが、その眼差しは決して、子どもが無邪気に遊んでいる時に見せるものではなかった。


「今日はこれで終わりかなぁ?」


 辺りを見渡し、敵対対象を探す。もし何もなければ、すぐにでも家に帰るのだが、最終確認を怠る訳にはいかない。

 それは誰のためでもなく《《自分のために》》。


「大丈夫そうかなっ」


 そうつぶやくと、ゆっくりと降下していき、武装を解除する。自らが望むだけで着脱可能な戦闘服は、この使命と同時に、夢の中で与えられたものだ。年ごろの少女には、荷が重すぎる物ではあるものの、少女には必要なものだった。

 その水玉模様のパジャマからでは、さっきまで異物と戦闘していたとは、到底思えない姿だ。もし、お節介な大人に見られでもしたら、確実に声をかけられることだろう。


「早く帰らなくちゃ。最近は物騒な事件も起きているし」


 また、明日学校がある彼女からすれば、一刻も早く家に帰り、温かい布団の中で眠りにつきたい。それに、もしこんな時間にこんな所にいるのを、誰かに見られでも通報されてしまうかもしれないからだ。過去に一度補導されかかったことがあるため、なおさらである。


「みんなのためになるのも簡単じゃないね」


少女が気にかけていることが、もう一つある。

それは、ここ最近世間を騒がせているとある事件だ。道端で意識不明の状態で見つかる事件が、多発している。


「最初のころみたいに、危ない目にあうことも減ったけど、こうも毎日出てこられるんじゃ、寝不足になっちゃうよ」


 緊張感はあるものの、この日常にも慣れ始めたころあいだ。この生活がいつまで続くかも分からないため、不安との戦いでもある。しかしそれに見合ったものを、少女は望んでいるため、辞めるわけにはいかない。


「え!?」


 突如少女の前に現れたのは、見慣れた異物とは違う物だった。しかし、直感で同じ部類のものだということは分かった。


 戦闘服を解除してしまった今、攻撃を受けようものなら、《《死》》はとても近しいものだ。

 急いで距離を取ろうとして、戦闘服を着用しないまま浮遊する。


「いやぁぁぁ!!!」


 後ろにいる異物から、大きな音がうねり出てくると同時に周りを一切気にしない叫び声を上げる。危険を察知して振り返ると、空中に大きな溝のような物が形成されている。

 少女は瞬時にそれが、なにかの術式だと理解する。しかし、今それに対抗できる択を少女は持ち合わせていない。


「なんで! 今までは一度出てきたら終わりだったのに!」


 きちんと残党がいないか、確認してから武装を解除した少女からしてみれば、理不尽極まりない。しかし、誰が決めたでもないルールなんてお構いなしだと言わんばかりに、行動の手を緩めることは無かった。

 次の瞬間、溝の向かって大きく体が引っ張られた。必死に抵抗するものの、少女を吸い込む力は弱まらない。


「やだ!」


 魔法武装は間に合い、溝に向かって攻撃するものの、少女の攻撃は吸い込まれて、消えてなくなる。


「どうすればいい!?」


 踏ん張りが効かなくなり、少女は溝に吸い込まれていく。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」
















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