表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/73

第73話 エレメス・アクアパッツァ

4章おしまい!

 3日後。

 私達は王の食卓にやって来た。

 ついこの間、エレメスさんと約束した今日この日、お店は休業で、オーザさんの姿もない。立て掛けには“午前中は休業”とのことで、午後からは営業再開するらしい。


「遅いねー、エレメスさん」

「うん。何かあったのかな?」


 待ち合わせには特に時間の指定はなかった。

 私達は静かなお店の中、いつもの席に座りリラックス状態で惚けていた。


「でも、エレメスさんどんな感じで来るのかな?」

「いっそ、変わった格好だったりしてね」

「変わった格好って?」

「例えば騎士の鎧を着たたりとか、爵位(しゃくい)を持って現れたりして」

「あはは、それなら面白いね」


 なんて、口々に話をしていると、突然フェルルとアイリスが何かに気がついたのか、視線を扉の向こうに移した。

 反射的かつ機敏な動きに翻弄され、私は何があったのか尋ねる。

 すると、先に口にしたのはアイリスだった。


「来ましたね、エレメスさん」

「うん。それにしてもこの気配……なるほどね、師匠当たったみたいだよ」

「えっ!?」


 当たったってなんのことだろう。

 首を傾げる私。すると扉が開き、そこに現れたのはエレメスさんだった。


「こんにちはエレメスさん……えっ!?」

「やぁクロエ君。こんにちは。それから2人とも、元気そうで何よりだよ」


 現れたエレメスさんは気さくに話してくれた。

 だけだそれよりも目を引いたのは、その格好だ。

 白いマントを羽織り、腰には金属製の重くて高級感のあるベルトに鋭い剣を差していた。

 はたまたマントの下には水色の下地に、赤い帯を身に付け、気品が溢れていた。

 それはまるで絵本の中の貴族像で、私は呆気に取られてしまった。


「如何したんだい、クロエ君?」

「いや、その。貴族みたいだなって」

「あはは。そうだね。僕もこんな格好、本当は好きじゃないんだよ。君達は如何かな?」

「まあ、似合ってるんじゃない?私、貴族とかそっち系好きじゃないんだよねー」

「似合っています。それに、気配も気品を纏っているようですね」

「うん。見せかけだけどね。さてと」


 エレメスさんは羽織っていたマントをテーブルの上に乱雑に置いた。

 堅苦しいシャツの首を緩め、ため息混じりだった。

 それから話は本題に入るため、エレメスさんは私達に小さな墓を差し出した。


「改めて、この間はありがとう。おかげで家族との間に生じた問題が解決したよ」

「それで戻っていたんですか」

「うん。弟との間にいざこざがあってね、それを解消するためもあって僕はここで答えを探していたんだ。でも、料理が好きなのは本当だよ。それで答えが見つかった。弟と話し合って、それでこうして君達の元に顔を出せたんだよ」

「よかったですね。それで、これは?」

「これは僕から君達への褒美だよ。少しでも何かの役に立てばいいなと思ったんだ。是非、受け取ってくれないかな」


 黒くて高級感とシックさが見え隠れする箱。

 私達はそれぞれ、小さな箱を受け取り中を開けてみると、そこには金色のメダルが入っていた。

 しかもずっしりとしていて、本物の金だとすぐに察しがつき、私は目を丸くした。

 メダルの表面には、『アクアパッツァ』のシンボルで魚の描かれていて、かなり作りがよかった。


「あの、これは」

「登魚のメダル。アクアパッツアにおける、最高名誉の証を証明するもので、これを見せるだけで、この国との貿易が有利になるだけじゃなくて、商業利益が30%上昇と、30%の値引きなどの有益がもたらされるんだよ

「へぇー」

「それだけじゃないよ。このメダルは特注でね、内側に魔法が練り込まれているから、城にも自由に出入りできる優れものなんだよ」

「城にも……はい?」


 エレメスさんは何を言っているんだ。

 私は固まってしまった。

 しかしフェルルたちはと言うと、これまた当然のようにスルーしていて私は止めに入った。


「ちょっと待ってよ。エレメスさんって、もしかして凄い人なんですか?」

「どうしてそう思うのかな?」

「だって、ねー」


 私は目出るとエレメスさんの顔とを交互に見比べる。

 するとエレメスさんは薄っすら笑みを浮かべると、一言だけ答えてからキッチンに行ってしまった。


「言ってなかったね。僕の名前は、エレメス・アクアパッツァ。これからもよろしくね」

「は、はいぃー!?」


 1人お店の中で声を上げていた。

 しかし誰にも迷惑をかけるでもなく、私は1人お店の真ん中で立ち尽くしていて、その様子を呆れるでもなく、


「そんなことより師匠」

「ここでお昼済ませていきましょう」

「あっ、うん。2人は変わらないんだね」

「「はい!」」


 そこだけハモらなくてもいいのにと、取り残されてしまいました。

 だけど手の中にはずっしりとした重みと熱が伝わっていた。

 

「まあいっか」


 キッチンの方からいつもの格好で現れたエレメスさん。

 その顔は清々しく、誰もあの人がこの国の王族なんて知る由もない中、明るく楽しくそれから忙しく働く姿が素敵に思いました。

 

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねなども気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=927623086&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ