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第71話 猫の餌やり

大事な回。

次の日。

 私達は適当な宿の部屋を借り、数日この町に滞在することにしていた。

 昨日はアイリスとエレメスさんとの間にギクシャクとした空気が流れ込み、最悪な状況だった。それを鑑みて、私はアイリスとフェルルを連れ出して、町で買い物をすることにした。


「それじゃあまずはどこに行こっか」

「何も決めてなかったんですか?」

「うん!」


 私ははっきりと言い切った。

 それを聞くや否や、フェルルは私の腕を引き、何処か行きたい場所でもあるのか、陸路で進むことになった。


「フェルル、どこに行くの?」

「ちょっと行ってみたい場所があるんだー」

「行ってみたい場所?」

「そうそう。実はこの町、かなり流通も盛んみたいで、武器を見ようと思って」

「武器?それなら冒険者の町の方がいいんじゃないの?」


 単純な思考で考えれば、冒険者っていう確実に買ってくれる顧客がいる方が繁盛するはずだ。

 おまけに『ファスト』は、冒険者と商業の町。毎日が賑やかで、くだらないことの一つや二つで盛り上がっている。

 にも関わらず、フェルルはチッチッチツと指を立てた。


「単純な武器じゃなくて、珍しい武器だよ」

「武器コレクターだったっけ、フェルル」

「違うけど、ほら昨日は買い物に付き合ってくれるって言ってたでしょ!」


 そう言えばそんな約束もしたっけ。

 覚えていたが、一時的に抜け落ちていた。

 私は思い出すと、「あっ」と声を上げる。


「ほらほら、早く行こうよ!」

「わかったから。走らないでよ」


 まだ足の筋肉痛が取れていない。

 そんな状態でフェルルに走られたら、足への不安も絶大だった。

 そんな時だった。ふと視線が路地の方に向いた。するとそこにいたのはエレメスさんだった。


「あれって、エレメスさん?」

「なにをなさっているのでしょうか?」


 私達は耳を澄ました。

 するとエレメスさんの声が薄らと聞こえて来た。


「おっと。ノエル、シャーミー、ジェシカ。今日もお腹空いてるね。はい、お食べ」

「「「ニャー」」」


 エレメスさんは猫達に餌をあげていた。

 懐いているようだけど、多分野良だ。

 野良猫達は、皆んな毛色だ違っていたが仲が良さそうで、お皿に乗った魚をがむしゃらに頬張る。


「凄い。気を許してるね」

「はい。でも、あの表情。いい顔をしていますね」


 アイリスの言う通り、確かにエレメスさんの顔は朗らかだった。

 それは昨日見せた歪な笑みとは違い、本質としては正しいものだとすぐさま理解できた。


「僕はどうしたらいいのかな。このままでいいのかな」


 何かに悩んでいるようだ。


「確かに昨日あの子に言われたことは合ってるだ。だけど足りない。自分でもなにが足りないのか、わからないんだ」

「それでいいんです」

「えっ!?」


 するとアイリスは顔を出し、エレメスさんに告げる。

 ゆっくりとエレメスさんに近づいていくと、猫達に話しかけた。


「美味しいですか?」

「ニャー」

「ニャーニャーニャー!」

「ミャー!」

「そうですよね。美味しいですよね。私も一口食べてもいいですか?」

「「「ミャー!」」」

「ありがとうございます」


 アイリスは猫の言葉がわかるのか、猫達と容易に意思疎通を図ると、お刺身を食べた。

 すると目を見開いて、


「これです。これでいいんです」

「えっ!?」

「いいんですよ、これで。貴方にはこれが足りなかったんです」


 アイリスはエレメスさんに伝えた。

 自分に何が足りないのか。後は自分でそれを見つけるだけ。

 そこにアイリスが最後に落としたヒントの種。


「この子達の気持ちになってみてください。今貴方がこの子達にしたこと。それこそが、貴方に足りない最後のピースです」

「僕に足りないもの……」

「堅くなくなった」

「本当本当ー」


 私とフェルルも痺れを切らして出て来てしまった。

 エレメスさんは目を丸くしていた。

 だけだじっくりと考え抜いてから、エレメスさんは一言。


「明日、もう一度来てくれるかな。時間は空けておくから」

「はい、喜んで」


 アイリスが代表して答える。

 エレメスさんの表情はまだ暗かった。だけど、答えはすぐ近くにあることを、ここにいる3人は確信していました。

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