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第68話 水の国

「うーん。ふわぁー、よく寝たー!」


 私は朝から元気いっぱいだった。

 昨日は気付いた時には寝ていたみたいで、私はいつの間にベッドに入ったのかすら、覚えていなかった。


「よーし、今日も頑張るぞ!」


 いつ着替えたのかわからないが、パジャマを脱いで洗い立ての冒険者用の服に着替える。

 匂いを嗅いでみれば、石鹸(せっけん)を使ったみたいだ。アイロンも最近されたみたいで、どうやら昨晩のうちにアイリスが洗濯してくれていたみたい。


「後でお礼言っとかないとね」


 私は屋敷の2階から1階に降りると、リビングで眠っていたフェルルを見つけた。


「おはよう、フェルル」

「ん?あっ、師匠。おふぁよー」


 凄く眠たそうだった。

 両腕を伸ばして無理矢理ストレッチをしているフェルル。さらには、キッチンの奥から朝食を運んできたアイリスも少しお疲れみたいだった。


「アイリスおはよっ。それから洗濯ありがとね」

「構いませんよ。ふわぁー」

「2人とも眠そうだね。何かあったの?」

「ん、えーっと。確かにあれは昨日盗賊が……ねぇ?」

「はい。確か盗賊の方々がやって来て……あれ?もしかして、自動反射行動してましたかな?」

「多分ね」

「なに、そのロボットみたいな」


 初耳な情報に驚きを隠せない私だったが、2人はそんなことどうでも良さそうで、いつでも眠りについてしまいそうだった。

 だけど本人は全く眠いわけではないらしく、むしろ身体の方は調子が良いらしい。

 疲れてるように見えるのは、自動反射行動をしてしまったせい?で、魔力と気力が削れていたそうで、私にはよくわからなかった。



「それじゃあ、行こっか」

「う、うん」

「はい、師匠!」

「今日は私が背負いますよ」


 今日もフェルルが私のことを気遣ってくれて、おんぶしようとしたけれど、アイリスが代わりを挙げてくれた。


「えー、大丈夫だよ。私は平気だよ」

「そうではなくて、クロエさんがですよ」

「私?」

「はい。昨日疲れたのは、私が無理をさせてしまったからです。それと、フェルルさんが勢いよく飛ばしすぎてしまったせいで、風圧などの衝撃が全てクロエさんに当たってしまったために、身体を壊してしまったんですよ。ですから、今日は私が背負います」


 確かにアイリスの(はか)らいは嬉しい。

 だけどそれじゃあ、フェルルが可哀想に思ってしまうけど、そこは私。


「じゃあお願いしよっかな」

「はい、任せてください!」


 私はアイリスの背中に乗る。

 ゴスロリ服が汚れないように、十分注意しながら自分が情けないと思った。

 けれどアイリスの背中は思った以上に頼もしく、私なんて軽々だった。


「大丈夫アイリス」

「はい。それじゃあ行きましょうか」

「あっ、うん。ゆっくりね、ゆっくり」

「わかっています」


 アイリスはにこやかに微笑んだ。

 その姿を恨めしそうにもどかしそうに見つめる視線が気になったけれど、気にしないことにした。

 アイリスもアイリスで全く気にしていないらしく、その足取りは想像以上に軽やかだ。


「このままアクアパッツァまで、一気に行くの?」

「はい、そのつもりです。目指す水の国までは残り200キロ近くですから、少し落とすとして昼頃には到着したいですね」

「うん」


 それから私はアイリスに背負われ、ムッとした顔をして不機嫌そうなフェルルを連れて、水の国『アクアパッツァ』を目指した。

 するとアイリスの言った通り、ちょうど太陽が真上に来るぐらいの時、視線に映り込んだのは、美しいライトグレーの城壁だった。


「アイリス、あれは?」

「水の国の城壁です。水の国は3つの町に分かれていて、あそこが王都です」

「そうなんだ。じゃあもうすぐだね」

「はい」


 アイリスは嬉しそうだった。

 おんぶされながら聞いた話では、水の国『アクアパッツァ』には勇煌の国『プライム』の冒険者の町『ファスト』のように、『フイシュ』『マトマ』『リーブ』とあり、ここが目指していた王都の『フイシュ』らしい。

 今更だけど初めて町の名前を聞いたけど、何だかアクアパッツァの材料を適当にもじったみたいに思ったのは、私だけだろうか?

 なんにせよ、ようやく辿り着いたのでこれでゆっくり休めそうだった。


「フェルル、いる?」

「いるよ師匠」

「後で買い物するかもしれないから、一緒に回ろうね」

「うん!」


 この一言でフェルルのご機嫌も直ったみたいで、何故かホッとした私でした。

 でも同時に単純だとも思ってしまいました。酷いよね、私。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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