第67話 ドッキリボックス
とんでもアイテムはどこの世界でも必要な設定。
夜になりました。
時刻は19時ぐらいです。
結局、私はフェルルにおんぶしてもらって、ここまで来た。そこは森の中にある、少し開けた平らな場所で、私は小さな切株の上に下ろされた。
「よっと。師匠、着いたよ」
「ううっ。気持ち悪い」
私は口を覆った。
フェルルの足は思った以上に速く、しかも常に軽快なリズムで走っていたので、かかる風圧も強烈だった。
そのせいで、顔は痛くて冷たいし、本来楽なはずなのに、途中でモンスターに襲われそうになったりして、フェルルとアイリスがカバーに入る形で、交互に倒していた。
血生臭いが、背中にいた私にも付着して、途中から気分は最悪だった。
それもあってか、気分を害され、手や足の痺れ的なものから、元気を無くしていたようです。
「ごめんね師匠。もう少しゆっくり行けばよかったね」
「う、うん」
「でもそのおかげで明日の昼頃には着きそうだよ」
「うん。そうだね」
「そう言えばさっきの崖、凄かったよね。一応水が張って川みたいになってたけど、あの下に落ちたらただじゃ済まないよ!」
「うん。死ぬね」
今の私は気分は死んだの同じだった。
最初の軽い気持ちが何処へやら、私はがっくし首を曲げて落ち込んでいた。
そんな中、アイリスは私にあるものを取り出してほしいと頼みかけてくる。
「落ち込んでいるところごめんなさい。クロエさん、ハルさんから渡された箱を取り出してはいただけないでしょうか?」
「ちょっと待ってね。はい、これでしょ」
「はい。ありがとうございます」
「ううん、いいよ。私は少し休むから、2人よろしくね」
疲れがピークに達して眠たい。
ソフィアさんの言っていた通り、転生者も無敵じゃない。最強じゃないし、勇者達のポテンシャルに愕然としながら、無茶は良くないと悟った。
そんな折、アイリスは箱の真ん中の赤い凹み部分を押して、箱を地面に投げつけた。
「それってドッキリボックス?」
「そうみたいですね。見てください、この箱の中身ですよ」
「うぉー、凄いじゃん!ねぇねぇ師匠!見てよ見てよ、ほらほら!」
「えっ?・・・えっ!?」
私が顔を上げると、そこにあったのは巨大なお屋敷だった。
少し年季が入った洋瓦の屋根が、またビンテージ感を出している。素敵だけど、一体なんで?さっきまでここにはだだっ広いだけのスペースが空いていたはずだ。
「これ、なに?」
「ドッキリボックスだよ!とっても貴重な、魔法のアイテム」
「魔法のアイテム?」
「そうだよ。箱の中に特定のものを入れておいて、スイッチ一つで中のものが飛び出して、仕舞うのも簡単だよ!」
「魔法のアイテム……そそるね、それ!」
ちょっと元気出た。と言うより、わくわくしてきた。
疲れがピークに達しているのに、私の歩幅は屋敷の扉目掛けて進み、扉を開けると、そこに広がっていたのは、ホテルみたいなエントランスだった。
「す、凄い……」
「そうですね。それになんと言っても、これも貰えるなんて、運がいいですよ」
アイリスが笑顔で微笑んだ。
確かに訳ありでもなさそうなのに、「古いものだから」の一言で、餞別として貰っていいものじゃない。
それに屋敷の中にはたくさんの部屋があって、1階には綺麗なリビングに洗面所、何処に繋がってるのかわからない水栓トイレ。
2階には寝室がいっぱいあって、スペースさえあれば、普通に生活できそうだった。
「うわぁ、ソファーもふかふかだ!」
「いいよね、これ。しかも広い!」
「キッチンも完備されていますね。それでは、腕によりをかけて作りますね!」
「あっ、うん。ちなみに、今日はなに?必要なものがあったら出そうか?」
「いえ大丈夫です。途中でいい物が採れましたから」
「ん?」
あれ、そんなことあったっけか。
記憶にないなと思いながら、そう言えば途中でフェルルが石ころを拾って空に投げて、何か打ち落としたような気が・・・しかも、アイリスがもの凄いスピードで駆け抜けていった気も・・・気のせいかな?
「ちなみに、何作るの?」
「コカトリバードの蒸し焼きです!」
「コカトリ?コカトリスの卵じゃなくて?」
「はい!」
何だか怖いな。
わくわくする気持ちと恐怖に慄いた自分がいる。
それでもアイリスの作る物だから、きっと美味しいはず。フェルルもこの顔だ。
きっと大丈夫と思い、私は晩御飯を食べることにした。
結論から言おう。美味しかった。そしてすぐに寝た。気持ちよく寝た。多分、フェルルに運ばれたような気がするけど、私には当然のことだけど、その記憶はないのよね。
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