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第59話 目指せ、椎茸!

何故か2本投稿してしまいました。


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 「ちょっと待ってよ!」


 私は逃げるシイタケノシシを追いかけていた。

 その後ろではアイリスが私を追っていて、その手にはいつの間に持ち出したのか、巨大な斧が握られていた。


「は、速い……」


 シイタケノシシのスピードはめちゃめちゃ速かった。

 まさか、転生者の私でも追いつけないなんて、動物の本能って恐ろしい。そりゃそうだよね。だって私達、シイタケノシシを捕まえようとしてるんだもん。当たり前だけど、必死になる。


「クロエさん!」

「アイリス。大丈夫、その斧重くないの?」


 私は関係ないことなのに、気になってしまって咄嗟(とっさ)に聞いていた。

 するとアイリスは真顔で答える。


「はい。大丈夫ですよ」

「そうなんだ」

「それよりです!」


 しかし今度は顔色が変わった。

 熱意とかそんな、強い感情を訴えかけてくるみたいだった。


「それより、なに?」

「クロエさん。シイタケノシシは、私達を怖がっています。おそらく、私とフェルルさんの魔力と気配です」

「魔力と、気配?」

「はい」


 アイリスは顔をコクリと縦に振った。


「マジ?」

「本当です。そのせいもあって、今は必死に逃げています。さっきフェルルさんに伝えてきました」


 そっか。じゃあさっきフェルルが追ってたのに、今はいないし追いついても来ないのは、自分の気配のせいだったんだ。

 って、何でアイリスがフェルルにそのことを伝えられるのさ!


「それはですね、私の影を使ったんです」

「影?」

「はい。影に魔力を込めて、ファルルさんに伝えたんです。フェルルさんほどの人なら、私の魔力をまともに受けても、当てられはしませんよ。多分ですが……」


 多分って・・・いや、まあフェルルなら、あんまり心配しなくても大丈夫だろう。


「じゃあ私が追うよ。1人なら問題ないんでしょ?」

「い、いや、駄目です!」

「どうして?」

「このままストレスを与え続ければ、せっかくの椎茸が痩せ細ってしまいますよ!」


 アイリスはとんでもない勢いで、猛抗議した。

 それにびっくりした私は、目を見開いてしまった。


「ど、どう言うこと?」

「いいですか、クロエさん。私達の目的は、あくまでもシイタケノシシの捕獲ではなく、捕獲は単なる過程であって、納品対象は椎茸ですよ」

「それはそうだよ」


 最初にクエストを受けた際、クレアさんにも、シイタケノシシの捕獲は難しいので、椎茸を幾つか納品してくださいと、言われていた。

 だけど納品するためには、結局捕まえないといけない・・・って、あれ?


「ちょっと待って、じゃあフェルルはどうやって?」

「そこは心配要りませんよ。シイタケノシシの椎茸は剥き出しの魔力器官と繋がっているので、簡単に取れます。ですがストレスの影響で、与える魔力の濃度が下がったり、溜め込んだ魔力を使われてしまったら……」

「椎茸は、痩せ細って、納品できない?」

「はい!」


 どうやら当たったようだ。

 だけどどうしよう。そうなると、かなり面倒なことになる。

 困って私に、アイリスは私に一つ頼み事をした。


「フェルルさん。長くて丈夫なロープを作ってください」

「ロープ?」

「はい」


 一体何に使うんだろうか。

 よくわからないけれど、私はアイリスに言われた通り、近くに生えた木の(つた)を引きちぎると、丈夫なロープに早変わり。


「これでいいの?」

「はい。十分ですよ」

「でも、どうするって……まさか!」

「はい、そのまさかです」


 私は突飛な発想が浮かんでしまった。

 だけど、ここはアイリスに任せてみよう。私はアイリスを信じることにしました。

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