第52話 アイリスの笑顔
再再投稿。特に意味はない。
私達は期待して待っていた。
どんな味なのか、だけではなく、アイリスが何って言うかだ。もしも美味しくないなんて言われたら、私としてもショックだし、それが噂になって、お店の評判も下がるかもしれない。
それは困る。非常に困る。はず。
だから私は緊迫感に包まれて、ミフユさんが戻るのを待っていた。すると、
「皆さん、できましたよ!」
明るいミフユさんの声がした。
するとその手には大きな白いお皿があり、その上にはサイレントフィッシュの素揚げが乗っていた。
「「おー!!」」
私とフェルルは同じ感想が出た。
しかしアイリスは黙ったままで、ミフユさんの揚げた素揚げを眺めていた。
じっと。じーっくりと。薄く揚がったサイレントフィッシュを見つめていた。
「あの、どうかしましたか?」
ミフユさんはそう聞いて来た。
私は「ううん、なんでもないですよ」と答えると、フェルルとアイリスは短く首を縦に振る。
「なら、いいですけど」
これ以上、この沈黙は耐えられない。
私は早速手をつけた。
「み、皆んな食べよう!」
「うん。ほら、アイリスも」
「はい。いただきましょうか」
私は手を合わせて、「いただきます」と言ってから、私とアイリスは手元の箸で、フェルルはフォークで刺して口に運ぶ。
あんっ。おっ!?
「美味しいです、ミフユさん!」
「ほんとほんと。流石にサイレントフィッシュは美味しいし、ミフユさんの腕もね!」
一口食べただけで、それが明確に伝わって来た。
魚のホロホロ感に加えて、天ぷらでもないのにサクッとした皮。パリパリっと音を奏で、一体何に舌と耳を委ねればいいのか、わからなくなるほどに、あっさりとしていてしつこくない程よい味わいが染み込んだ。
「ねっ、アイリスも美味しいよね!」
私はアイリスに尋ねた。
するとアイリスはじっくり噛み締めて、味を確かめる。食事姿は、丁寧で、落ち着きがあった。
それから目を閉じていて、意識を集中していた。
「アイリス?」
私がもう一回尋ねると、アイリスの目から薄らと涙が流れ、口元の口角が上がった。
そして、
「美味しいです!」
「「おっ!?」」
「それはよかったです」
アイリスが「美味しい」と答えて、私とフェルルはタレントみたいに合いの手を入れて、ミフユさんはホッと胸を撫で下ろした。
「揚げ時間も火加減も油の量も計算されていて、水分も程よく口の中でとろけます。美味しい。今まで食べた料理店の中で一番美味しいです!」
「ありがとうございます」
アイリスはご満悦で、にっこりしていた。
するとアイリスは私達にこう言った。
「決めました。皆さん、お願いがあります!」
「お願い?」
「はい。私は家を出てからしばらく経ちますが、こんな優越感に浸り、これだけの高揚感を抱いたのは初めてです」
「そっか」
「ですから、私は決めました。クロエさん、フェルルさん、私をお2人のパーティーに入れてくれませんか?」
そう言われた。
すると私達は顔を見合わせて、
「「えっ!?」」
と間の抜けたような声が出てしまった。
「えっと、何言ってるのアイリス?」
「そうだよ。第一冒険者ギルドには入ってるの?」
「もちろんです。冒険者カードもこの通り」
と言って、アイリスは冒険者の証、冒険者カードを見せてくれた。
間違いない。と言うか、私達と同じランクだ。
「今までは1人でお金を稼いできましたが、そろそろパーティーを組もうと考えていたんです。ですがなかなか上手くいかず、でも、皆さんとならきっと楽しく出来そうなんです!」
「そう言われても」
「私はいいよ?」
フェルルはそう答えた。
流石に私1人の意見では決められないと思い、一度相談しようとしたのだが、フェルルはあっさりOKだった。
「私だって、強引に師匠とパーティーを組んだんだもん。お互い様。それに私は師匠がいいんだったら、誰とだって組むよ!」
と、まるで自分がないみたいだった。
しかし今回は違う。私ももう吹っ切れた。
「わかった。じゃあこれから一緒に頑張ろうか、アイリス!」
「はい!」
こうして私達はパーティーに新たにアイリスを加えるのでした。
何だかこれから楽しいことになりそうだけど、その前に一つアイリスは自分の生い立ちを話しておくことにした。
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