表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/73

第42話 ラービット

「フェルル、そっち行ったよ!」

「OK、見えてる。ってうわぁ!」


 私とフェルルは森の中に来ていた。

 2人してここにやって来たのは、当然クエストだ。今回は、ギルドに食材系しかなかったので、ラービットと言う兎のモンスターを捕獲しに来ていた。


「は、速い」

「うわぁ、もう面倒だなー」


 ラービットとは、ラードのような(あぶら)身が特徴的なモンスターで、こってり系好きからは大変好かれているそうだ。

 それだけリピーターが多いので、報酬も破格だったのだが、あまりにも素早すぎて、なかなか捕まえられなかった。


「さっきから私達の手が届かないところばっかり」

「しかも木々で入り組んでる。うわぁ、すばしっこいなー!」


 フェルルでもイライラするみたいだ。

 さっきからラービットは、盛り上がった木の根っこの部分を駆け回っていて、なかなか捕まえることが出来ない。

 このままじゃ逃げられる。そう思い、先回りしてみてもすぐに左右(さゆう)に逃げられてしまっていた。


「うわぁっと!」


 私は追いかけようとして、(つまず)いて転んでしまった。

 顔から思いっきり地面にぶっかったので、そこそこ痛い。怪我はしていないみたいだけど、鼻先が痛い。


「大丈夫、師匠!?」

「うん。でも、このままじゃ逃げられちゃうよ」

「それか、日が暮れてるかもね」


 流石にそれは困る。

 一体どうしたらいいのか、私が悩んでいると、指輪の中から声がした。


主人様(あるじさま)

「その声、シルフ?」


 指輪の中から語りかけたのは、シルフだった。どうしたんだろ?


「主人様、ここは私にお任せください」

「えっ!?」


 思ってもみない言葉が返って来た。

 それは嬉しい。今は人手が足りないもん。いや、狼の手も借りたいんだよ。


「ありがとシルフ。じゃあお願いできる?」

「わかりました」


 私は指輪の中からシルフを呼び出した。


「シルフ、あの兎なんだけだ」

「見えていましたので、問題ありませんよ。あの兎を捕縛(ほばく)すれば良いのですね」

「うん。できるの?」

「もちろんです」


 何とも頼りになる答えだ。

 私はパッと明るくなって、フェルルと顔を見合わせる。流石にフェルルも、自分達じゃ武が悪いことを理解していたので、ここは素直(すなと)にシルフにお願いすることにした。


「じゃあシルフお願い」

「あんまり傷つけちゃ駄目だよー」

「わかりました。お任せください」


 そう言うと、シルフはラービットを瞬時に捕捉(ほそく)して、勢いよく駆け出した。

 そのスピードは圧巻(あっかん)で、森の中を々縦横無尽じゅうおうむじん、縦も横も関係なく、高さすら使って駆け上がる。


「速い!」

「それだけじゃなくて、ほら聞いてみて」


 フェルルに言われて、耳を澄ます。

 すると、シルフの足音がほとんど聞こえなかった。兎は耳がいいから、気づかれないためにわざと足音を消しているんだ。

 それだけじゃない。盛り上がった根っこを巧みに渡っていく。足場の悪さをものともしない。


「もしかして、シラフがやっちゃう?」

「だろうねー。ほら、行った!」


 フェルルのテンションがグンと上がった。

 見れば、いつの間にか超接近していたシルフが、ラービット目掛けて飛びかかっていた。


「ガゥっ!」


 シルフはラービットを背後から襲う。

 そして次の瞬間には、シルフの背中が堂々たしていた。


「う、動かないよ?」

「あっ、戻ってきた」


 立ち止まっていたシルフが、のそのそとこちらに戻ってくる。

 その口はラービットの首根っこに噛み付いていた。


「ま、マジですか?」


 私はシルフの手際の良さに、目を丸くする。


「はい、主人様」

「あ、ありがと」


 シルフの腕があまりに良すぎて、私は言葉を失ってしまった。

 だけど、フェルルは隣でテンションがぶち上がっていた。


「師匠師匠、今の凄かったよね!パッと移動して、シュンシュパって木々の合間を横切ってさ、それからドン、バッ、シュン!って感じで、カッコいいよね!私ももっともーっと速く動けたら、速攻で倒して、師匠のアシストに回れるのになー」

「そ、そっか。でもフェルルは今のままでも十分強いから、私も安心できるんだよ」

「師匠?」

「それと、擬音もばっかりだと何言ってるかわからないから、もうちょっと、言葉を変えよっか」

「はーい」


 何だかシルフの活躍が流されてしまったみたいだけど、実際にはそんなことはない。

 私はシルフとフェルルの頭を自然と撫でていました。


今回はシルフが大活躍のお話でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=927623086&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ