第40話 賑やかな町並み
3章スタート!
冒険者の町、『ファスト』。
ここにはたくさんの冒険者達が日々、冒険者活動をしながら生活をしている。
生活自体は、ほとんどがお金に困っているような底辺冒険者ばかりらしいけど、それでも皆んな明るく楽しく暮らしている。
そんな楽観的で陽気な人達が多い。
それから『ファスト』には、たくさんの施設が、点々と置かれている。
それらのほとんどは皆んな気のいい人達で、何かと助けてくれた。
この町は、冒険者に優しい町だと、私は強く思っている。
「師匠、おはよー!」
私はそんなことを思いながら、静かに窓辺で黄昏ていると、勢いよく部屋のドアが開けられた。
そこにいたのは、私を師匠と慕ってくれている可愛い女の子。巷では、知られていないけど、元は騎士で今じゃ勇者だった。
「おはよ、フェルル。今朝はいつに増して元気だね?」
「元気が一番だよ!そ・れ・に」
「ん?」
私は首を傾げる。
しかしすぐにフェルルの言いたいことが、理解できた。
1階からとんでもなくいい匂いがする。
コンソメの優しい香りが、鼻の奥に届いた。
「そっか、もうお昼だっけ?」
「そうだよ師匠。今日は、ミフユさんのお手伝いでしょ」
私はフェルルにそう言われて、思い出した。
今日は日頃のお礼を兼ねて、ミフユさんのお店のお手伝いをすることになっていた。すっかり忘れてたよ。
「ごめんごめん、すぐ行くから」
「もうしっかりしてよね、師匠!」
「はいはい」
私はフェルルと一緒に下の階に降りた。
今日もたくさんの人がミフユさんの料理を食べに来る。私達も頑張らないといけないね。
「ミフユさん」
「私達も手伝うよー!」
私とフェルルはキッチンで料理をしていたミフユさんに声をかけた。
するとミフユさんはいつもの笑顔で、私達を迎えてくれる。
「クロエちゃんに、フェルルちゃん。ありがと、今日は日曜日だから子供連れのお客様が多そうなの。手伝ってくれるのは、ありがたいわ」
私とフェルルはエプロンを木製ロッカーの中から取り出すと、いつも通り着る。
私が赤で、フェルルが青色。
カフェ店員のような格好に着替えると、伝票とインクが染み込まれた羽ペンを持っておく。
私がビルドしたので、振ってもインクは落ちてこないようにしてある。ボールペンと同じに使えたので、便利だった。
「本当に便利ね」
「あはは、そうですね」
この世界にないものなので、簡単に一般発売するわけにもいかず、ここでしか使えないけど、喜んでもらえて嬉しかった。
さてと、無駄なお喋りをしてる暇もなくなるぞ。
もうすぐ人がたくさん入ってくる。
それで、時刻はお昼時。
宿屋『篠月』の店内には、相変わらずたくさんの人が押し寄せて、大繁盛だった。
「はい、では日替わりがお一つ、お子様ランチがお一つですね。かしこまりました」
「ミフユさん、こっちは日替わり二つ、あっちはエビフライ定食と、サンドイッチ盛り合わせ、向こうの人はコーヒーのおかわりだって」
「ミフユさん、注文です」
私とフェルルは忙しなく、注文を取っていた。
いやいや、流石に手が足りない。こんなの今までよくミフユさん1人でやってたと思うと、とんでもないと思った。それもそのはずで、さっきから客足が全然減らないので、お店自体はいいけど、私たちの方がへばっちゃうよ。
「はぁはぁはぁ」
「疲れたね、師匠」
「でもそんなこと言ってられないよ。ほら、次行くよ!」
「はーい」
私はフェルルを連れて、さらにウエイトレスとして務めた。
そんな時だった。ふとお客様の1人こんなことを言っていたのを聞いてしまった。
「ここのがやっぱ1番だよな」
「ああ。でも、向こうの店のも最近美味いらしいぜ」
「それだったら、あっちのパン屋のサンドイッチもそうだろ」
「向こうの店は魚料理が名物らしいな」
料理の話で持ちきりだった。
聞けば他のお客様も同じような話をしているじゃないか。ついこの間手伝った時は、そんなに盛り上がっていなかったのに、ここまで料理の話題で持ちきりになるなんて、一体何があったんだろ?
私は手は休めなかったけど、気になって仕方なかった。
「はい、カレーライスですね。かしこまりました」
とは言っても、忙しいんですけどね。
私はフェルルと一緒に、頑張っているのでした。それで終わった後には・・・
「「つ、疲れたー」」
スライムみたいに、とろけました。




