第39話 Sランクテイマー
2.5章ラスト。
無事にクエストを終わらせて、ファストの町に戻ってきた私達。
早速クエスト完了を報告するため、冒険者ギルドに行くことにした。
「結構早かったね」
「はい」
私はシルフを連れて、冒険者ギルド前までやって来た。
そこでシルフはいつもなら指輪の中に戻ってしまうはずだけど、今日は一緒にいてくれた。
「シルフ、少しは人混みも慣れた?」
「多少ですが」
何とも歯切れが悪い。
私はそんなシルフの一緒にギルドの中に入った。するとそこにはフェルルとクレアさんの姿があって、楽しそうにお喋りしている。
「うーん、やっぱりつまんないなー」
「ですが、クロエさんと一緒の時よりもかなり稼いでいますよ」
「それじゃあ前と一緒だもん。はぁー、早く師匠戻って来ないかなー」
「多分そろそろのはずですよ。あっ、フェルルさん、後ろを見てください」
パッと振り返るフェルル。
表情は一瞬、曇っていたけど、私の姿に気がつくと、フェルルの顔が明るくなった。
「師匠!」
「はい、師匠だよ。元気してた?寂しくなかった?」
「そんなことないよ!」
「ふふっ。お帰りなさい、クロエさん」
「クレアさん、ただいまです。今、クエストから帰って来ました。無事完了です」
私はそう答える。
正直、さっきの会話からフェルルの気持ちは汲み取れた。だけど、そのことをあえて言わないでおく。だってフェルルって、後で絶対「本当に本当に寂しくないもん!」とか言ってくるから。
「そうですか。では、こちらが報酬です」
「ありがとうございます。そう言えば、さっき「1人の方が稼げる」とか何とか言ってませんでしたか?」
私はちょっとだけ切り込んだ。
しかしフェルルは黙ったままで、クレアさんもにこやかな笑みを浮かべているだけだった。怖い。てか、気味が悪い。
「あー、はい。わかりました、私が黙ります」
「「その方がいいよ(ですね)!!」」
2人に完全に押し切られてしまった。
そう言えばもう1つ話したいことがあったんだ。
「あの、クレアさん。これって知ってますか?」
私は鞄の中から、クエストで貰った勾玉アクセサリーを見せた。
するとフェルルとクレアさんは覗き込むように見ると、「「これって……」」と、含みを持たせる。
「あの、やっぱり知ってるんですか?」
「はい。こちらはマガタマ村の特産品で、銀狼の勾玉と言うアイテムですね」
「銀狼の勾玉?」
「うん。確か、フェンリルがモチーフになってる、石器製のアクセサリーのはずだよ」
「フェンリルモチーフ?」
私はふと、隣にいるシルフを見た。
「それじゃあもしかして、クレアさんが私達にこのクエストを紹介してくれたのも、わざとですか?」
「さぁ、何のことでしょうね?」
クレアさんはとぼけてみせる。
だけどその反応から、本当にそうなのだとすぐに察しがついた。
「ちなみにそのアイテムって、すっごく珍しいんだよ」
「そうなの?」
「持ってたら、良いことあるんだって」
フェルルが補足してくれた。
そんな凄いアイテムをタダで貰えたのは、かなり幸運なことだろう。この時点で、良いことあるよ。
「と、そうでしたそうでした。クロエさん、おめでとうございます」
「えっ、何がです!?」
突然、クレアさんは真面目な雰囲気を発した。
「今回のクエストの結果から、クロエさんにはSランクテイマーの資格を授与します。おめでとうございます、クロエさん!」
「は、はぁー?」
クレアさんは私にプラチナ色のメダルを渡した。ゲームだと、最高ランク的なやつだよね。
「凄いじゃん、師匠!」
「そうなの?」
「Sランクテイマーなんて、早々いないよ!」
「へ、へぇー」
正直意味わからなかった。
だけどフェルル曰く、テイマーにはランクがあって、まずSランクに選ばれるには、ドラゴンみたいな神獣クラスのモンスターと契約して、お互いに固い信頼関係を結ばないといけないとか、何とか。
「私とシルフが、Sランク?」
「どうなさいましたか、主人様?」
しかし肝心のシルフは、興味なさそうだった。
私もよくわからないけれど、それだけの信頼が他人から見ても、あるのだと思うと嬉しかった。
と言うことで、私はSランクテイマーになった。まあ、だからと言って何がどうと言うわけでもないんだけどね。




