表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/73

第38話 勾玉の首飾り

今回はマガタマムラのお話なんだな。

  荷馬車(にばしゃ)を助け、私とシルフは村を目指して急いだ。

 途中、襲ってくるモンスターの姿はなく、快調(かいちょう)に進めた。そのおかげで、まだ太陽が真上に来る前には、村に辿り着くことが出来た。


「シルフ、あの村だよ」

「わかりました」


 シルフは村の門前までやって来る。

 2本の木を立てて、入り口っぽくしていた。

 村の入り口には、村の名前が書いてある。


「『マガタマムラ』?」


 マガタマって、あの勾玉(まがたま)だよね。私は中学の時の歴史の教科書に()っていた、クルンと丸まっている、変な形をした石を思い出す。

 よく観光地なんかで、アクセサリーとして350円ぐらいで売っているやつだ。


「シルフはどうする?」

「指輪の中で待機(たいき)しています」

「でもそれじゃあクエスト違反(いはん)してるって、言われちゃうよ。今回だけは、我慢(がまん)して一緒(いっしょ)に来て」

「わかり、ました」


 明らかに、シルフは嫌がっている。

 しかし私の言葉を命令(めいれい)と思い込むことにして、従ってくれた。ごめんね。


「それじゃあ行こうか」

「はい」


 私とシルフは村の入り口をくぐった。

 村の中はかなり静かで、家の数も少なかった。

 しかし村の中では畑で野菜が育られていて、(そば)では、畑作業に(いそ)しむ人の姿がある。


「すみませーん!」

「ん?」


 畑作業から少し離れ、私達に気がついた。


「なにかようかー?」

「この村の村長さんの家って、どこにありますか?」


 私はそう尋ねる。

 すると畑作業をしていた男の人は、「この道を真っ直ぐだ」と教えてくれる。

 私は、「ありがとうございました」とお礼を言いペコリと頭を下げると、シルフを連れて、畑前の道を歩く。


「親切な人だね」

「そうですね。全ての人間が、こうであればよいのですが」

「そう上手くいかないよ」


 人間嫌いなシルフからしてみれば、正義も悪もないのかもしれない。それでも、優しい気持ちに触れることで、少しは考えも変わるかもしれない。


「シルフ、私のことは好き?」

「もちろんです」

「じゃあフェルルや、ミフユさんは?」

「主人様ほどでは、ございませんが」

「そっか。じゃあ、もっと好きになれるように頑張ってもらわないとね」


 私はにこやかに答える。

 しかしシルフは目を丸くしていました。



「ここかな?」

「ここですね」


 私とシルフは言われた通り、真っ直ぐ道を進んでみると、そこには確かに一軒(いっけん)、他の家よりも大きな家があった。

 村っぽい感じ。昔話に出てきそうな村長さんっぽい家の外観だ。


「すみませーん、冒険者ギルドから薬を預かってきました」


 私がドアをドンドンと叩くと、ガサガサと(きし)んだ音を立てて、勢いよくドアが開かれる。


「冒険者ギルドから!」

「はい。えっと、薬です」

「おう!待っていたんじゃ!」


 中から現れたのはいかにもなお爺さんだった。

 その人は、私が鞄から薬瓶を取り出すと、奪い取るみたいに持って行ってしまった。

 私とシルフはぽけーっとしていて、その場に立ち尽くすが、10分ぐらい経つと、お爺さんが戻ってきた。


「いや、ありがとう。冒険者さん」

「いえいえ。それより、大丈夫ですか?」

「うむ。(まご)が数日前に熱を出してしまってな。薬を買いに行こうにも、孫を放っておくわけにもいかず、いやぁー、本当に助かったわい」


 そうだったんだ。

 確かに、お孫さんを1人にして、買い物に行くなんて出来ないよね。

 話によれば、その子の両親は出稼ぎに行っていて、今はいないらしい。そこで私達に白羽(しらは)の矢が立ったのだ。


「おや、そちらはフェンリル様かの?」

「はい。私の相棒(あいぼう)の、シルフです」


 私はシルフは毛を撫でた。

 するとお爺さんは、「うむうむ」と首を縦に振ると、思い出したように何かを差し出す。


「そうじゃ、これを持っていくといい」


 そう言って渡されたのは、勾玉(まがたま)が3つも付いた首飾りだった。


「あの、これは?」

「この村の特産品じゃ。お礼に持って行ってくれ」


 そう、押し付けられる形で手の中に握りこまされた。

 勾玉は色がついているとか、ガラスみたいに綺麗だとかじゃなかったけど、なんだか(おもむき)があって、私は結構気に入った。


「ありがとうございます。大切にしますね」

「そうしてくれるの、嬉しいわい」


 私とシルフは無事にクエストを完了し、よくわからないけど勾玉のアクセサリーをもらった。

 後は街まで帰るだけ。

 私とシルフは今度は躊躇(ためら)うことかく、全速力が戻るのでした。

 そうしてギルドに戻る頃に、私達を待っていたのは・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=927623086&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ