第37話 車輪を直すよ。
こう言う回は必要。
ちなみにこの話は後々何かの伏線にしたいと、書いてから数週間後に思ってます。
私とシルフは2つ目の山を越え、後は村まで一直線だ。
「よーし、シルフ。一気に行っちゃおう!」
「はい。お任せください!」
「ゴーゴー、シルフ!」
私はシルフを応援した。
それにしても、ここからはほとんど平原だし、その間にあるのは整備された道だ。何とかなる。
「シルフ、昨日はありがと」
「いえ、私も主人様には感謝しています」
「感謝?」
「はい」
多分ブラッシングしてあげたことだ。
「ブラッシングぐらいなら、いつでもしてあげるよ」
「本当ですか!」
「うん。あっ、でもでも疲れてる時はちょっと無理かも」
私はそうはぐらかしておく。
そんな会話をダラダラ続けていると、不意に視界に止まったのは道の端の光景だった。
「シルフ、あれはなにかな?」
そこにあったのは、荷馬車だった。
しかし様子がおかしい。
馬は全く怪我をしていない様子だけで、その場に立ち止まっている。その近くでは、顔を顰めた、男の人が1人いる。
「困ったな……」
そう聞こえた。
「シルフ、止まって」
「えっ!?はい」
私はシラフに止まってもらった。
そこで荷馬車の近くで困っている男の人に話しかける。
「あの、どうかしたんですか?」
「ん?あぁ、車輪が壊れてしまったんだよ」
そう言われてみてみると、確かに車輪が1つ壊れている。
この世界には当然車みたいな便利なものはない。代わりにファンタジー世界らしく馬が走っている。そこで車輪は、木製だ。
「ホントですね。うわぁー、中が折れちゃったせいで、外側の丸いところがグニャってなってる」
「うん。これじゃあ走れないよ」
男の人は困っていた。
何とかしてあげたい。私はそう思ったので、ビルドメーカーを使うことにした。
「あの、この車輪が直れば動けますか?」
「うん。もし直るんだったらね」
「じゃあ私が何とかします」
私はそう言うと、壊れた車輪に触れた。
男の人は、私の行動に疑問を抱いたらしい。だけど、私は変に取り繕わずに、自分の出来ることをしてあげた。
「何をするんだい?」
「見ててください。すぐに直しますから」
そう言うと、私はビルドメーカーを使った。
すると折れた車輪のパーツたちが次々に復活する。
内側の棒の部分はピンと真っ直ぐになって、支える。それから外側の丸い部分は車のタイヤみたいに、ちゃんとした丸に戻った。
「よし、出来ました」
「う、嘘じゃないんだよね?」
「嘘なわけないじゃないですか。ほら、よーく見てください」
私は車輪を返す。
すると男の人は、まじまじと修理された車輪を凝視する。
普通に考えたらあり得ないことが起きたとしか思えないかもしれないが、完璧に元通りになっていて、疑う余地もなく、修復していた。
「車輪が元に戻っている。あんなに、壊れていたのに」
とんでもない奇跡を目撃してしまった。そう言いたそうな顔色になる。
私も自分が出来ることをして、人を喜ばせたので、嬉しく思った。
「君は一体?」
「通りすがりの冒険者です。それじゃあ、気をつけてくださいね」
私はそう言い残すと、再びシルフの背中に乗った。
シルフは人目を気にするようにして、その場から急いで立ち去る。
その背後からは、男の人の期待のこもった視線が痛いように私に届いていていました。
「お父さん?」
荷馬車から、誰かが降りてきた。
それは彼の娘だった。
「何かあったの?」
「奇跡が起きたんだよ」
彼は自分の娘にそう伝える。
しかし娘はその意味がわからずに、首を傾げてしまうのでした。




