第32話 テイマーになった日
ここから、2.5章。
あれから数日。
私達はギルドに行ってみた。するとそこはいつもと全く変わらない、まったりした雰囲気が立ち込めていた。
「あっ、クロエさんに、フェルルさん」
「クレアさん、おはようございます」
「はい、おはようございます」
私はクレアさんに挨拶する。
ここ数日の間は、ミフユさんの手伝いをしていたから、ギルドに来られなかった。だからこうしてクレアさんに会うのは久しぶりになる。
「如何したんですか?ここ数日、顔を見ませんでしたけど」
「ちょっと、ありまして」
この間のクエストのお礼がてらに、ミフユさんの代わりに、ウエイトレスをしていたのだ。
普段やらないことだし、バイトなんてしたこともないので、上手く出来たかわからないけど、とにかく色々あったのだ。
「そうだったんですか。私は、つい他の町に遠征しているものかと」
「そんなことしないって。ところでクレアさん、今日は何かクエスト来てる?あっ、騎士団以外ね」
フェルルは笑ってそう尋ねた。
しかし、騎士団関係のクエストだけは絶対に引き受けたくないらしい。私も、出来ればやりたくなかった。
「そうですね。生憎、騎士団からもクエストは来ていませんね」
「そうですか。わかりました、じゃあいつも通りコツコツやります」
そう言うと、私はフェルルを引き連れて、クエストボードを見に行こうとした。
しかしそうしようとする、私達にクレアさんは思い出したみたいにポンと手を叩く。
「そう言えばクロエさん!」
「はい?」
「クロエさんって、テイマーになったんですよね。フェルルさんから聞きましたよ」
クレアさんはそう答える。
その瞳の奥は、キラキラしている。
「えっと、はい」
「本当にテイマーになられたんですね、おめでとうございます」
クレアさんは手を合わせて、喜んでくれた。
何だか気恥ずかしい。それにしても、いつの間にフェルルが言ったんだろ。
「ほら、一回ギルドから出前頼まれたでしょ。その時だよ」
ああなるほど。
確かに、ミフユさんがサンドイッチを作った時があったような気がする。その時に、ちょうど手の空いていたフェルルが代わりに届けて来てくれたのだ。その時に、クレアさんとちょっとした話になったみたいだ。
「しかも、相手はあの幻の神獣。氷銀狼、と呼ばれるフェンリルと聞いた時は、言葉が出ませんでしたよ」
フェンリルの異名を今知った。
なるほど、そんなことがあったなんて知らなかったよ。
「そこでなんですけど、クロエさん」
「はい?」
「ちょうどテイマーさん向けのクエストがあるんですけど、どうしますか?」
そう言って差し出されたのは、1枚の依頼者だった。
それを受け取った私は書かれている内容を口にする。
「『薬を届けてください』?しかも、早急!」
その二文字に目を奪われて私は、口をあんぐりと開けてしまうのでした。




